農林水産委員会

1961-05-10 参議院 全133発言

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会議録情報#0
昭和三十六年五月十日(水曜日)
   午後一時八分開会
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  委員の異動
本日委員松本治一郎君辞任につき、そ
の補欠として江田三郎君を議長におい
て指名した。
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 出席者は左の通り。
   委員長     藤野 繁雄君
   理事
           秋山俊一郎君
           櫻井 志郎君
           亀田 得治君
           東   隆君
           森 八三一君
   委員
           青田源太郎君
           石谷 憲男君
           植垣弥一郎君
           岡村文四郎君
           河野 謙三君
           重政 庸徳君
           田中 啓一君
           高橋  衛君
           仲原 善一君
           堀本 宜実君
           阿部 竹松君
           江田 三郎君
           大河原一次君
           北村  暢君
           小林 孝平君
           清澤 俊英君
           棚橋 小虎君
           千田  正君
           北條 雋八君
  国務大臣
   内閣総理大臣  池田 勇人君
   農 林 大 臣 周東 英雄君
  政府委員
   法制局長官   林  修三君
   法制局第三部長 吉国 一郎君
   農林政務次官  井原 岸高君
   農林大臣官房長 昌谷  孝君
   農林大臣官房審
   議官      大沢  融君
   農林省農林経済
   局長      坂村 吉正君
   農林省農地局長 伊東 正義君
   農林省振興局長 斎藤  誠君
   農林省畜産局長 安田善一郎君
   農林省蚕糸局長 立川 宗保君
   食糧庁長官   須賀 賢二君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       安楽城敏男君
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  本日の会議に付した案件
○農業基本法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○農業基本法案(天田勝正君外二名発
 議)
○農業基本法案(衆議院送付、予備審
 査)
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藤野繁雄#1
○委員長(藤野繁雄君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 委員の異動について報告いたします。本日、松本治一郎君が辞任、その補欠として江田三郎君が選任されました。
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藤野繁雄#2
○委員長(藤野繁雄君) 農業基本法案(閣法第四四号、衆議院送付)、農業基本法案(参第一三号)、農業基本法案(衆第二号、予備審査)、以上三案を一括議題といたします。
 この際、池田内閣総理大臣の出席を得ましたので、総理大臣に対する質疑を行ないます。質疑の要求の委員の発言は、委員長において順次指名いたします。江田三郎君。
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江田三郎#3
○江田三郎君 農業基本法の内容の質問をいたす前に、まず衆議院の段階における基本法の扱い方につきまして、総理のお考えを承りたいのでありますが、私があらためて申すまでもなく、農業基本法は、農業憲法、将来の日本の農業の長い進路を決定する重要な法案でありまして、私たちもあるいは民社党もそれぞれ農業基本法の提出をいたしておるわけでありまして、私たちはもとより私たちの案が一番いい、こう考えます。しかし、おのおのそれぞれ長所もあれば、欠陥もあるわけであります。そういう点については、百年の大計をきめるものだけに、十分な審議をしなければならぬ。特に基本法は、非常に抽象的なものでありますが、これが内容を十分究明しますためには、基本法に基づく関連立法の審議も並行して行なっていかなければ、内容が的確にわかりかねるわけであります。そういう点から、私どもは自民党社会党の両党首会談をお願いいたしまして、そこでこの法案の重要性なり関連立法の数、こういう点からいって、しかもそれぞれ各党から出されておるという関係からいって、これはこの国会で十分審議をするのが無理なんじゃないか、できれば継続審議がいいのじゃないか、こういうことを申しましたが、この点は総理も継続審議ということはいけないというので、われわれもあえてそれにこだわるわけじゃなくて、慎重な審議ということをお願いしたわけであります。
 ところが、衆議院における事態は、慎重審議とはまるで逆な方向へ進んでしまいまして、総理が総選挙にあたって公約をされました話し合いの政治というせっかくのいい慣行というものがくずれてしまったわけであります。特にその後の衆議院本会議をどうするかということにつきまして、私は書記長、幹事長会談をお願いしまして、益谷さんにいろいろお尋ねをしましたが、特にその中で私たちが申し上げたことは、すでに参議院における農林委員会の理事会において、第一回の理事会が九日ということになっているのだ、そうすると、九日までに実質的に衆議院における結論をつければ参議院の審議に何ら支障がないことなんだから、それまでには、もし八日というなら八日、六日というなら六日、四日というなら四日、きちんと公党として責任を持つから、まだ審議残りの点がたくさんあるのだから、もう少し衆議院の段階において審議をしてもらうことがいいのではないか、こういうことまでお願いをしたわけであります。何もいつまでもやれとか、あるいはぎりぎりまで引っぱるということじゃなしに、要はわれわれとしましては、この法案は十分審議をしなければ、あとに禍根を残す、こう考えましたのでお願いしたわけでありますが、それにもかかわらず、一方的におやりになりました。きのうの段階に至って、両党の国会対策委員長会談で、衆議における農基法の審議は遺憾であった、こういう申し合せができました。その遺憾であったということを、ただ文書に書いたところで、それだけでは何にもならぬのでありまして、一体総理は、自民党総裁として、あのような強硬態度をとられたのはどういうわけか。そのまずお考えを承りたいわけです。
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池田勇人#4
○国務大臣(池田勇人君) 別に私は強硬態度をとったとも考えません。衆議院におきまする本案の審議につきましては、私もたびたび出席いたしました。質疑応答に入ったのでございますが、私はこの大切な農業基本法は相当審議せられたと考えておったのであります。時間にいたしましても、一般法案とは、相当慎重に、また時間をかけてやっております。また、公聴会、地方の調査会も済みました。私は大体あのころに審議が終わるということが、あの経過を見ながら適当であろうと考えたのであります。ただ委員会の終局に至りまして、ああいう騒ぎが起こったことは、まことに遺憾でございます。また本会議におきまして、社会党の方々が出席なさらなかったということも、私は遺憾だと考えておるのであります。しかし、これも今日に至っては、また正常化の軌道に乗ってきたことは、まことに喜ばしいことだと考えております。なお、継続審議ということも初めから聞いておったのでありますが、これはもう根本的に考え方が違う。私は衆議院段階において継続審議を口にされることを非常に遺憾に思っておったのであります。従いまして、党首会談におきましても、そういう考え方で進んでもらっては困る。ぜひこれは上げたい。重要な法律案であるがゆえに、一日も早く上げたいということは、われわれの念願であり、また、農民多数も早急に今国会で上げるべきだという意見も多いのでございます。しこうして今、九日までは審議しないのだから、その間十分に衆議院でやったらどうかというお話でございまするが、これはもう何と申しまするか、話がほとんど決裂したころのあれでございます。われわれといたしましては、参議院の審議期間を衆議院でどうこういうわけにはいきません、やはり参議院も相当の日数を今から与えるようにしなければならぬ。いつから審議を始めるかということは、参議院の問題でございます。われわれは一日も早く、また相当長時間審議をいたしましたので、十分な措置ではございませんが、結果から申しまして、しかしわれわれとしましてはこれが適当な方法であると考えた次第でございます。
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江田三郎#5
○江田三郎君 これは、まあ、総理は十分の時間をかけたということを言われるのですが、この点は、前の総理の岸さんも同じようなことをよく言われました。何時間かけた、何日かけたということをもって審議を尽くしたか尽くさないかの基準にしておられるようでありますが、私も、総理が四日も衆議院段階において委員会に出られたというので、議事録を一応拝見いたしました。しかし、あの議事録を読んで見ますというと、問いに対してはほとんど答えておられぬのであります。まことに抽象的な、きれいな言葉は使っておりますけれども、具体的な質問に対して何ら答弁をされていない。たとえば所得倍増とこの基本法との関係につきましても、あるいは農地を取得するところのあるいは農地の移動に伴うところの資金関係あたりについても、てんで答弁になっていないわけなんであります。そういうような、答弁が当を得ていないというだけでなくて、まだ、あの衆議院における審議の状況を見ますというと、非常に重要な問題がたくさん残っておるわけです。たとえば一子相続の問題というようなことは、これはたびたび今日までも問題になりましたが、この点は現行憲法と抵触するのじゃないかというような有力な意見もあるわけであります。あるいは教育事業を拡充するという問題につきましても、教育のあり方というものが、なかなか検討を要するわけでありまして、たとえば農家が子弟を大学へ行かす、自分の金で、あるいはあと相続者が相続するその財産の中から子供を学校に行かして、それを二次産業、三次産業の従事者に仕上げていくというのは、一体これは農民にとっては、他産業のための負担をしておるのではないかというような問題もあるわけです。あるいは試験研究機関にいたしましても、今日までの過小農を中心とした農業技術から、そうでないいわゆる近代的な農業に持って行くための試験研究機関というものは、あり方が全然変わってしまわなければならぬわけです。そういうような点については、何ら触れていないのでありまして、それを私どもが申し上げた。すでに参議院において理事会が九日に開かれるということがきまっておるのだ、それまでの間、一週間早かろうと、三日早かろうと、十日早かろうと、何ら参議院の実質的な審議に影響はないのだから、それまでの間何日間でも審議を続け、そうして上げる日は、きちんと両党間の約束で責任を負うようにしたらどうかという私たちの考え方は、私は決して不当なものでないと考えるわけでありますが、どうも総理の方は、遺憾であったということは言われるけれども、何が遺憾か、一向にわけのわからぬ今答弁をされたわけであります。しかし、私はそういう問題について、ここで衆議院の審議がよかった悪かった、あるいはその責任をどうこうといって繰り返したところで、もう死んだ子供の年を数えるようなことになりますから、そのことをこれ以上申そうとは思いません。それよりも、法案の実質的な審議に進んだ方がいいと思いますが、ただ、私はこの際総理に申し上げておきたいことは、総理は衆議院の答弁の中で、農業の前進というものは、政府がやるのでも政治家がやるのでもなくて農民自身がやるのだと言っておられました。これは非常にりっぱな言葉であります。農民自身がやるのだということ、この言葉を総理がほんとうに腹の中に最後まで持ってやっていただきたいと思うのであります。一体、国会の審議というものは、私はただ採決だけが目的でないと思うのでありまして、もし採決だけが目的ならば、もう答えはとうに出ているわけであります。そうではなくて、国会の審議を通じてこの法案がどういう内容を持っているかということを、よく国民に、特に農業基本法であれば農民に徹底をさせる、どこに問題があり、どうしなければならぬかということを考えてもらう、そういう審議の過程というものを通じて、国民を教育と言っては、おこがましいのでありますが、国民に法案の内容を周知徹底せしめるというところに、議会政治の審議の本質があると思うのであります。ただわけのわからぬうちに結論を急ぐということは、決して当を得たものでない。それは少なくとも総理が言われるところの農民自身が農業の前進をやるのだという考え方とは、非常に違ってくるわけでありまして、農民の中には、総理が言われるように、賛成している者もいるでしょう。しかし同時に、これは六割の首切りになるのではないかという心配を持つ者もあるわけであります。一体、自分たちは農村に残る四割なのか、首を切られる六割なのかというようなことを真剣に心配している人があるわけでありまして、そういう諸君の心配をそのままにして強引にやるということは、農民自身に農業の前進をさすゆえんのものではないわけでありまして、今後の審議にあたりまして、この参議院では衆議院のようなことを繰り返さないで、ぜひ慎重な審議をやってもらうということを、自民党総裁としての池田さんにお願いしますと同時に、政府の首脳としての総理も、何でもいい、時間をかければいいんだ、質問をそらして本質に触れないで、何時間かけたという実績さえ作ればいいという考え方は、この際はっきりとやめていただきたいということを申し上げて、そこの点をちょっとお聞きしておきます。
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池田勇人#6
○国務大臣(池田勇人君) 私が衆議院の審議に参加しましたということは、やはり内容の点につきましても私はいろいろと考えてみたのでございます。で、質問の点が農業基本法を制定し、今後いかなる農業施策を毎年々々実績を見ながらやっていくということを、今すぐここできめるというふうな考え方の御質問と、それから私は先ほど言われましたように、農民自身がやっていかれる、政府はそれがやりいいように農民の気持を汲んでやりいい道作りを政府がさしてもらうという考え方、他の法案、一般の法案とは違いまして、こういう方向でスタートを切りましょう、スタートを切ったあとにおきましての施策は、今後の実態を見ながらやっていこう、こういう建前なのでございます。この十年後にどうなるか、あるいはこの問題をどうするか、あの問題をどうするかということをいろいろお聞きになりますが、その点がわれわれの考え方と違うのであります。私は内容におきましても、もうこのくらいの審議でいいんじゃないか、もちろん十分審議を衆参両院において尽くさなければなりません。お話しの通り、農民自身に十分知っていただくことは当然でございます。しかし、知っていただくということのために、大事な法案が、あなた方先ほど来言われておったように、今国会は継続審議だということを頭に置かれて審議々々と言われても、これはわれわれとしてはとられないというので、時間的に考えましてやったのでございます。時間のある限り十分審議しなければならぬということは、江田さんのおっしゃる通りでございます。
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江田三郎#7
○江田三郎君 だから、最終ゴールを何日に上げなければならぬというような考え方でやるのは、ほんとうに法案の審議としていいかどうか疑問があるわけでありまして、そうではなくて、疑問の点はどこまでも国民の前に、農民の前に解明していくのだ、これは野党の責任でもあるし、与党の責任でもあるし、国会全部の責任としてそういう姿勢が絶えずなければならぬわけでありまして、そういう点から、衆議院のあのあとで両党の申し合わせを発表しなければならぬような愚を繰り返さないように、総理としても慎重な努力をお願いしておきたいのでありますが、あまりその点に触れるというと、あとの肝心の質問の時間がなくなりますから、私はこの内容に触れて参ります。
 まず第一は、日本農業が大きな曲がりかどに来ておる、あるいは労働力の問題からも、あるいは消費構造の問題からも、あるいは所得の問題からも、いろいろな点において農業が非常に立ちおくれをしたということ、そこがこの基本法の出発点になっておると思うのでありますが、この農業の立ちおくれをもたらしたのは、どこに一体問題があったのかということであります。その点は政府の方の基本法の前文を見ますというと、私は必ずしも明確でないと思うのでありまして、私たちは、社会党の農業基本法の前文にありますけれども、農民が、あるいは日本の農業が今日非常な立ちおくれを来たしたのは、政治の責任であると考えているわけであります。その点は、ひとり終戦後の政治というのでなくて、由来農民というものが封建時代から、あるいは明治初年の資本主義の原始期の時代から、あるいはまた、その後の資本主義の発展期において、女工哀史のようなああいう農村が低賃金労働者の供給源にされて、しかも肺病になったら村に帰ってこなければならぬ、あるいはまた戦時中のこと、あるいはまた、戦後の食糧不足の中で強権供出をもって臨まれて、農民に蓄積の余裕を与えなかった。そういうような一貫した、封建時代から一貫したところの政治の方向というものが、今日農民を非常に立ちおくらしておるのだという認識をしておるわけであります。その点について、総理は一体どういう考え方を持っておられるのか。そういう現状を持ち来たしたものがだれの責任かということがはっきりしなければ、そこから出る答えもまた違ってくるわけであります。たとえばある一方からは資本主義的な合理主義の観点から安上がりの農政という議論が出るでしょう。ある一方からは、国の責任をもっと強くしなければならぬという考え方が出るでしょう。そういう点について、一体今日の農村の立ちおくれというものが、われわれは今日までの政治が少なくとも農民に親切でなかった、農民いじめだった、こう考えるのでありますが、その点についての御認識はどうですか。
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池田勇人#8
○国務大臣(池田勇人君) 政治が農民いじめだったと言われまするが、政治にもいろいろなときがございます。いつごろの時代をおっしゃるのかわかりませんが、少なくとも私は日本の資本主義経済発展の途上におきましては、十分ではございません。十分ではない。やはり国を富ます意味において、重工業に政府が非常に力を入れた。これは早急に伸ばすという考え方と、もう一つは、富国強兵、こういう特別の軍国主義的な考え方で政治が行なわれたときには、えてして農民、中小企業の方の力は弱くなるのは、歴史の示す通りでございます。しかし戦後に至りまして、農地改革によりまして、私は一応農業、農民はここに何と申しますか、一つの画期的な時代が来たと、これによりまして一時的には農民の方も相当よくなっておりますから、戦後の何と申しますか、第二次、第三次産業が急激に伸びた場合におきましては、農業が農地改革がありましたものの、やはり社会的、経済的、自然的悪条件によりましてどうしても立ちおくれる、これは相当進んだ社会保障制度の国におきましても、えてしてありがちなんです。これをためる、直すためにはどうしたらいいかということが、今度の農業基本法を出したゆえんでありまして、欧州諸国から比べますると四、五年くらいおくれております。あるいは六、七年おくれているかもしれません。そのおくれを一日も早く取り返そうというので、新しい農村作りというのが、そうしてそれが新しい国作りに通ずるというのが、農業基本法を早く御審議を願いたいという私の気持であるのであります。
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江田三郎#9
○江田三郎君 だから戦前の富国強兵の政治というものが農民をいじめたことがあったかもしれませんが、戦後の農地改革以後においては、そうではないと言われるわけでありますが、もしそうでなければ、こういうような事態にはなってこないわけなんであります。いじめるというのは、何も主観的な問題ではないのでありまして、客観的に農業というものが他産業とつり合っていけるような施策をとっていたかどうかということが問題なのであります。そういう点になりますと、残念ながらこういう結果が出たということをもってみても、その施策が当を得ていなかったということは言い得るわけであります。特に総理は、よく農民は民族の苗しろだというようなことを言われます。あるいはせんだって水戸に行かれまして、水戸黄門光圀の何かの歌を引っぱり出しておられましたが、そういうような認識というものが、一体どうなのかということなんであります。これは別の言葉で言えば、農本主義の認識だ、農本主義の考え方だ、農本主義というのは一体何なのか、農本主義というのは、結局は封建領主が百姓からしぼり上げるためのゼスチュアに私はすぎないと思うのであります。そういう点が、この政府の基本法の前文に、幾多の困苦に堪えつつ、その務めを果たしてきたが、このような農業及び農業従事者の使命は、今後においても変わることはないという、この前文を読んでみますと、私はやはり、ただいま申しましたような民族の苗しろであるとか、農は国のもとであるとかいうような美しい言葉を並べるけれども、結果においては、搾取を強化した封建領主の考え方の一貫したものが流れておると言わざるを得ないわけでありまして、もっと端的にお考えになれば、政治がほんとうによろしきを得ておれば、主観的な問題ではないのですから、このような結果にはならなかったと思うのであります。その点をはっきりしていかなければ、先ほど申しましたような安上がりの農政というような、非常な一方的な資本主義的合理主義の立場の農業政策に陥るおそれも十分あるわけであります。私は所得倍増計画なり、あるいはその他の政府の発表した計画をずっと数字を追って参りますというと、残念ながら結果においては安上がりの農政なり、あるいは資本主義的合理主義というものに貫かれておると思う。封建領主は、うまい言葉を並べて人民から直接搾取いたしましたが、そうではなしに、新しい資本主義の政治家は、うまい言葉を並べて、結局資本主義的合理主義の方向へ物事をずっと引きずり込むというようなことになるんではないかと思うのでありまして、その点の御見解を承っておきたい。
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池田勇人#10
○国務大臣(池田勇人君) 民主主義の時代におきまして、しかもまた、農民の方々が人口の相当部分を占め、また産業としても、国としてりっぱな国作りを建設するために、農業の必要性がある場合におきまして、今お話しのような考え方で政治ができるものではないと思う。私は各階層の人がみんな協力をして、お互いにその途に安んじるような方法を講ずるのが、政治であると思うのであります。で、最近におきまする農業も農業自体として考えますと、他の国あるいは昔の農業の発達に決しておくれをとってはおりません。ただ問題は、日本の置かれた地位で第二次、第三次産業が急激な、人の驚くほどの進歩をいたしたために非常なそこに格差が出てきたのであります。従ってその格差を画期的な措置、方法を講じて少なくしよう、格差をだんだん縮めていって、農業自体を農民の生活をよくしようというのであります。これが早かったか、おそかったかということにつきましても問題はある。私は、ただ外国に比べて数年、七、八年おくれたかもわかりません。今これを一日もないがしろにすることではないという、こういう気持で言っているのを、私は、資本主義によって農民から搾取しようというような考え方だろうと言われることは、私は心外でございます。何も水戸斉昭公が農民から搾取しようとしてあれを作られたわけではない。名君でございまして、そうして農民の方々の生活を考えようという善なる気持で出ておるのでありまして、われわれもこういう気持で今後進んでいこうというので、決して農民をないがしろにしようという気持でやっておるのでは毛頭ないわけでございます。
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江田三郎#11
○江田三郎君 総理は神信心をなさるのだから、人のやることを善意に解されるということは、非常にいいことだ、いいことだけれども、しかし封建領主の農本主義というものが、決して客観的に農民の地位を向上したものでないということは、これは私がくどくど言うことはないと思うのでありまして、それ以上触れませんが、ただ、日本農業の立ちおくれについて、欧米先進国に比べて四、五年もしくは七、八年おくれておるのではないかという、この認識が相当違ってくるのではないかと思うのであります。たとえば今アメリカ農業と日本農業と比べて、日本農業の労働生産性が幾らになっておるのか。おそらく十七分の一か、二十分の一程度になっておると思うのでありますが、これは五、六年とか、七、八年とかいうような違いじゃないのでありまして、この日本の過小農経営の持っておるところの欠陥というものは、とてもそういうような違いよりも、もっともっと本質的に違うわけなんでありまして、そこでまあ今度の基本法の政府の構想を見ましても、構造改善ということが大きな柱になってきておるわけでありまして、そういう点を、ただ今のような形を三年なり五年なり、七年なり八年と続けていけば追っつけるというようなその認識というものが、非常に私は甘いのじゃないかと思うのであります。そこにまだ農業というものをほんとうに真剣にお考えになっていないのじゃないかということが言えるのじゃないかと思うのでありますが、その点はどうですか。
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池田勇人#12
○国務大臣(池田勇人君) 私の言葉が足りなかったのだと思いまするが、私は日本の農業が先進諸国に対しまして、三、四年なり、四、五年なりおくれておるというのじゃございません。そういうことを言ったのじゃないのでございます。われわれが農業基本法を出した、農業を新しい農業にしていこうというこの農業基本法の提案がドイツに比べて三、四年、こういうふうに言っておるのでありまして、もうアメリカから比べましたら、御承知の通り全体の所得が一人当たり八分の一でございます。イギリスに比べましても四分の一、十年間で倍にしようといったって、アメリカがそのまま足踏みしても四分の一かになる。五、六年、六、七年実態がおくれているというのじゃない。農業施策に対して根本的な今回の農業基本法のようなものをドイツは三、四年前に出しておりますが、三、四年おくれた、あるいは五、六年おくれた、こう言っておるのでございます。実態が七、八年おくれておるとか、三、四年おくれておるという意味じゃございません。
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江田三郎#13
○江田三郎君 そういうことはどうでもいいですが、やはりごまかしのない答弁をお願いしたい。問題は、農業基本法を出すときがドイツより何年早かったか、おくれたかということではないわけでありまして、やはり今後の貿易自由化を考え、あるいは今日の所得の格差を考える場合に、どうやって農業を追いつかしていかなければならぬかということなんであります。そういう点になってくるというと、たとえばドイツ、日本と考えてみましたところで、完全雇用が行なわれて、労働力の移動が自由にできる国とそうでない国、あるいは経営面積からいいましたところで、過小農である国と、少なくとも十町以上作っておる、あるいは家族制度のあり方の問題、そういう点が非常に違うのでありますから、私はよほど掘り下げた検討の上に立った行き方をされぬというと、ただ農民に大きな期待だけを与えて、そうしてあとでとんでもないさか恨みを受けなければならぬことになるのではないかと思うのであります。そこで、一体今度の基本法の目的というものは、一つには生産性の格差の是正という問題がありますし、一つには、他産業従事者との所得の均衡ということがあるわけでありますが、この政府の案を見ますというと、まことに回りくどく書いてあるわけでありまして、第一条に、「農業従事者が所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することができることを目途として」、なんでまあこう回りくどいことをお書きにならなければならぬのか、それほど自信がないのかという点なんでありますが、さらに一体、他産業従事者というのは具体的にだれをさすのか、この点をはっきりさせていただきたいと思います。他産業従事者といいましたところで、あるいは自営の中小商工業者というのもそうでありましょうし、あるいは農村に住むところの勤労者もそうでありましょうし、都市に住む勤労者もそうでありましょうし、いろいろな違いがあるわけでありまして、なぜこういう回りくどいことを言わなければならなかったかということと、同時に、ここに書いてある他産業従事者ということは具体的にどういう階層をさすのか、この点をはっきりしていただきたい。
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周東英雄#14
○国務大臣(周東英雄君) 便宜、私からお答えいたしますが、他産業従事者というものは何をさすかということでありますが、これは全面的に一つにまとめてきめることは困難だと思います。江田さんも御承知のように、農業者というものは、一面自営の者が多い。これは一面においては他の自営しておる業者というものとも比べられますが、一面におきましては、勤労者というものの所得がどうなるかということになると、農業が一つの勤労者と見て、それと比べるという問題になる。一々別々に比べるということは比べにくいと思います。私はそういうふうな、ある場合においては他の自営の業者と比べる場合もございましょうし、また他産業に従事しておる勤労者というものの所得というものと比べる場合もございましょう。そういうふうにいろいろの場合がございますので、一律にこれをきめることはできないと思うのであります。
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江田三郎#15
○江田三郎君 それでは答弁にならぬじゃありませんか。勤労者という場合と、労務者という場合、あるいは中小企業者という場合、農村に住む勤労者という場合、おのおの違うんだ。だから違うなら違うで、ここに書いてある他産業従事者というのは、具体的には何をさしているのかということがはっきりしなければ、いろいろな違いがあるのがありますというだけでは、答弁にならぬ。
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周東英雄#16
○国務大臣(周東英雄君) それはそれぞれの場合に従いまして、社会的に言う妥当性な業者と比べるのであります。それらの問題はどの地域の何というものは、農政審議会等において私はきめていきたいと思っております。
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江田三郎#17
○江田三郎君 もしそういうような認識に立たれるなら、米の相場をきめるのに、秋田県の米は幾ら、岡山県の米は幾ら、九州の米は幾ら、こういうふうに変えていきますか。
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周東英雄#18
○国務大臣(周東英雄君) 米の価格をきめる場合においては、生産費からの計算とパリティ計算を織り込んで生産費所得補償方式をとってきめております。その場合におきまして、生産費における賃金のとり方は、勤労者の賃金が標準となっておる。これは大体全国的に別々にきめることも一つの方法でありましょうけれども、今日のような買い入れ統制をやっております場合においては、個別にいくように一応全国的な指標をとり、そこに一つの妥当性な価格を認めてやるのが現実的であります。
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江田三郎#19
○江田三郎君 時間の制限がなかったら、農林大臣のお説をたびたび聞かしてもらうのもけっこうでありますが、どうも残念ながら時間の制限がありますから、答弁にならぬ答弁はやめておいていただきたい。これは私は非常に専門的なことを聞いておるのじゃないのでありますから、これは一つ総理の方からお答え願いたい。私も専門屋でありませんから、そんな専門的な質問はいたしません。私はごく常識的に質問いたしておるのであります。この他産業従事者というのは何をさすかということは、これは総理がお答えできる問題でありますから、これは総理の方からお答えいただきたい。
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池田勇人#20
○国務大臣(池田勇人君) 専門的でない、一般的な考え方でお答えいたしますと、他産業従業者というのは、農業以外の産業の従事者。笑いそんなら、どれをとるか、こういう問題でございます。どれもとれないのであります。産業によりまして、規模別によりまして、地方別によりまして、いろいろ格差が今ある。それをそのどれをとるか。社会党におかれても、やはり他産業従事者と、こう言っておられるでしょう。それなら、社会党さんに聞きましょう。他産業とは何かと言ったら、江田さんは、都市労働者と均衡をとると言われるかもしれません。しかし、これは私はちょっとむずかしいのじゃないか。やはりそこは、同じ労働者におきましても、都市労働者におきましても、中小企業の労働者と千人以上の大企業の労働者とは、百対五十ぐらいになっておるのが実情でございます。そこなんです。そこで、これを格差を地方別、規模別あるいは業種別の格差をずっと縮めていこうというのが、われわれの目的なんでございますから、他産業と申しましたら、全般的に客観的に考えての比較を見るよりほかない。だから、常識的に言えば、お笑いになるかもしれませんが、農業以外の各種産業、そうして、その規模別、いろいろな差を見て平均的に客観的にきめる一つの所得水準と答えるよりほかありません。
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江田三郎#21
○江田三郎君 だから、具体的に他産業従事者というのはきめかねる、こういうことなら、こういうことを法案の中に、法文の中に出すのがおかしいのじゃないか。そこで私は、そういう点があるから、今年の参議院本会議におきましても、この点を総理に質問したわけであります。当時まだ政府の農林の今度の基本法ができていないときでありまして、農林省案がありました。農林省案でいくというと、農村地区における他産業従事者との所得均衡だ、こういうような内容になっておるわけです。それでは、都市と農村との格差というものは一向に是正できぬじゃないか、その点を一体どうするのかということを、私は総理に質問したわけであります。ところが、そのとき総理は、ここに写してきておるのですけれども、「私は、農村の方々の所得を、他の産業の方々の所得と見合うようにしたい。農村における他の人々の所得ではございません。全体的に農村の所得を上げまして、他の一般産業との格差を少なくしていこう、だんだんなくしていこうというのが、私の農村に対する政策でございます。」、こうはっきり言われた。そこで、これは少なくとも、農林省案で出ておる考え方とは違うのじゃないか、それでよろしいのか、こう言って重ねて私が質問しましたところが、総理は二度目の答弁の中で、「私の理想は、農民の方々が農村における他の産業の方々と一緒になることで満足いたしておりません。農村の人も都市の人も、とにかくその所得格差を少なくし、だんだんなくすることを私は理想として進んでおるのであります。」、こういうことをはっきり言われておるわけなんであります。こういうことがはっきり言われておれば、目標というものは、私はもうこれではっきり出ておるのじゃないかと思うのであります。そこから見ますというと、われわれ社会党の案のように、この「農民の所得及び生活水準が他産業に従事する者のそれと同一水準になるように高めあわせて農村と都市との生活文化水準の格差を解消する」、ここに持っていかなければならぬわけなんであります。少なくとも、総理が本会議でなされた答弁を今もなお肯定されるなら、社会党の案の通りにならなければならない。それを質問するというと、農林大臣の答弁はどうでもよろしいけれども、どこにもそんな具体的なものはない、的確なものはないのだ。それでは一体、農民は美しい言葉をいただくけれども、その中身はそのときどきで、たとえば農村における労務者と均衡をとらされるのかもわからない、あるいは、そうでないかもわからぬ。何のことか一つも安心はできないわけでありまして、少なくとも、この農業基本法における、ただいま申しました点は、第一章総則の国の農業に関する政策の目標なんであります。その目標からして的確な答えができなくてぼやけておるようなことで、一体、何の農業基本法かということを言わなければならぬのであります。重ねてお尋ねしたい。
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池田勇人#22
○国務大臣(池田勇人君) 本会議で答えたことも、今ここで答えたことも、私の信念には変わりはないということは、江田さんもお認めいただけると思います。しからば、あなたのおっしゃるように、都市の生活と農村の生活と同じように、もう農業者の所得を同じように、こう言われますが、必ずしも、それは理想でございまして、その通りにはいきません。あるいは町村におきましても労働者がいるが、しかも、われわれの新しい国作りとして、理想は、都市も地方も同じようにしようというこの言明から申しましても、これは社会党さんの言われるのと違いがありませんが、われわれは全般的に将来を広く考えたときに、他の産業ということははっきりすると思うのであります。具体的にそれをきめましても、なかなかその通りいきません。いろいろ理想を掲げて、それに向かって都市と農村を同じようにする、これはわれわれの所得倍増の目標なんであります。わかり切ったことですが、問題は、どこに照準を合わせるかというと、他の産業、これで私は十分だと思います。しかして、その場合におきましても、たとえば都市を相手にする、都市のどの辺を比較対象にするか、これは具体的の問題で今後いろいろな施策をやっていく上に考えるべきことで、理想は他の産業ということで私はわかると思います。
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江田三郎#23
○江田三郎君 そういう点がはっきりしないと、たとえば重要農産物の支持価格をきめる場合に、一体農家の自家労働賃金を幾らに見るかということが、まるで見当がつかなくなってくるわけなんです。そこで、単に他産業従事者といっても、いろいろの取り方があるわけであります。そういう点をはっきりさすことが必要だと考えているから、農林省案には農村における他産業従事者ということに規定したんでしょう。私は、まあ農林省ともあろうものが、なぜ一体農村における他産業従事者との均衡をとるような、そういう農民をいつまでも低い文化なり経済の水準につなぎとめようとしたのか、その真意を理解するに苦しむものでありますけれども、まあ農林省のことはどうでもよろしい、あと政府案が出ているわけでありますから。ただ、この政府案が出された以上は、そういうちゃんとした、きちんとした規定をとった他産業従事者というものを出された以上は、それが一体具体的に何をさすものであるかということがはっきりしなければ、第一章の第一条の最初のところからしてそういう点がぼけておるのでは、私はこういうふうな基本法では、農民としては何をつかんでいいのか、全く雲をつかむような、所得倍増のかけ声の中で物価の値上げが出たような、そういう不安をまた持たなきゃならぬということになると思うんです。
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周東英雄#24
○国務大臣(周東英雄君) 念のために申し上げておきますが、江田さん先ほどから二度、農林省原案に農村における他産業従事者云々と書いてあったといいますが、そういう原案はございません。これは誤解のないようにはっきりさせておきたいと思います。それから私が先ほど申し上げた、他の産業に従事する者というようなものにつきましても、同じく他産業と申しましても、やはり産業の経営者であるか、またその従事者であるか、あるいは労働者、勤労者であるかということは、やはりはっきりそれぞれによって考えなければならぬ。これは一がいに一つの形に私はまとめがたいのじゃないかと思う。これは社会党案にも他産業従事者と書いてある。それはどういう形になりますか、これはまあいろいろお考えはあると思いますけれども、私はやはりそこに一律に、一体、一つにきめがたいと思うのであります。私はそれは、おのおのの場合、業種である場合、勤労者である場合、どっちにきめるか、あるいはその総合所得について総合的に生活を均衡させるというふうに見るのか、これはやはりむずかしい問題で、そういう点をそれぞれの場合において農政審議会等において妥当性があるところに一つをきめていこうと、こういうのであります。これは私ははっきりしておると思います。
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江田三郎#25
○江田三郎君 いずれにしろ、はっきりはしていないのであります。なお、農林省の案の中で農村における他産業従事者というようなことがないと、こう言われますが、これは農林省案の中には、わが国の農業がこれと比較し得べき他産業の生産性の向上と云々ということがあって、これと比較し得べきということは、一体どういうことかといいますと、こういうことを突き詰めていきますというと、基本問題調査会の中にはそういう意見が十分にあったことは、農林大臣も知っておられると思うのでありますが、ともかくそれはそれとして、他産業従事者というものはいろいろあるんだ、そのどれともきめかねるんだ。どれともきめかねるんなら、それなら総平均でいくのか。何か具体的のものがなければ、今後何をするといったところで、一つの目標がもうはっきりぼけちまったのでは、仕方がないということなんであります。私は、これ以上この問題について質問を繰り返しましたところで、満足な答弁はできぬと思いますので、いずれまたあとで同僚の諸君から質問があると思いますから、その程度にしておきますが、この農林省の基本問題調査会事務局の出した「農業の基本問題と基本対策」の解説版などを見ますというと、大体この八十六ページにも書いてありますけれども、現状においては、つまり結論的に言えば、一町以上一町五反未満とか、あるいは一町五反以上二町未満の層では、大局的に見て、他の勤労大衆、勤労階層との均衡は下回るんだということが、ここに書かれてあるわけなんであります。従って、まずまあこの答えが妥当かどうかということは、まだ検討を要する点がありますけれども、一応この基本問題調査会の考え方でいくというと、少なくとも二町以上の経営でなければ、現状においても均衡はとれぬということが書かれてあります。そこで一体、こういうような基本問題調査会の答申をもとにされて今度の基本法ができたんだと思うのでありますが、一体この所得の均衡をとった将来農業の姿というもの、それをたとえば十年後の日本農業の姿というものを総理は一体どういう青写真を持っておられるのか。この点は、衆議院のこの論議を議事録で見ますというと、なかなかどうもぼんやりしてしまっているのでありますが、少なくとも私は一つのこういう基本構想というものを出した限りにおいては、それは大体五年後にはこう、十年後にはこう、大ざっぱな青写真というものはこういうものだということが与えられなければならぬと思うのでありまして、農民諸君がこの法文を読んで、なるほどけっこうな言葉だけ使ってあるといったところで、それで何も信用するものじゃないのでありまして、大体こういうような青写真なりというものは示されなければならぬと思うのでありますが、その青写真を一つ示していただきたい。
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池田勇人#26
○国務大臣(池田勇人君) この自由主義経済を建前としておりまするわれわれといたしましては、一つの目標というものを作りますが、これを計画的にどうこう十年間見ることはこれは困難だ。共産主義国の今の直接統制をやって自由を無視してしまっているようなものでも狂いやすいのは御承知の通りでございます。また、わが国におきましても過去二回作りました。昭和三十年と三十二年、五年計画を作っても、御承知の通りもう一、二年で狂う、こういう状況でございます。従って十年後に、しかも非常な伸び方をしている日本におきまして、これの青写真ということは、私は何人も作り得ないと思います。そこで、所得倍増計画というのが企画庁のあれで出ましたが、これは一応の試算でございます。だから私はこれを閣議決定するときにおきましても、これは今までの経過から見ても、五年の分ももう二、三年立たないうちに狂ってしまうのだから、だから前の三十二年のあの狂った分に置きかえる、こういうことで、この通りにはなかなかいきません。ただ企画庁の関係で、前の三十二年の新経済五カ年計画、これというものをやめてしまわなければいかぬ。何にもならぬ。それにかわるものだとしてやっている。なかなか困難だ。ただ、私は個人的に総理になる前にいろいろ研究はいたしました。これは総理としての答えじゃないのですが、もしお許しを願えるなら、個人的なあれとして言うと、大体九%程の十年間の伸張があれば、私は第一次産業はまあ五〇%程度ではないか。それから第二次産業は大体三〇〇%、いわゆる三倍ちょっとこえるのではないか。第三次産業が三倍ちょっと以下ではないか、二倍七、八というふうになるのではないか、そうなってきますと、第二次、第三次産業への新規労働者を入れても、三倍になったときには、新規労働人口の一般のふえようでは足りない。そうして見ると、今の農村が、第二次、第三次は三倍になっている。片一方が五割ふえたくらいで、日本の経済の格好はどうなるということを考えて、今の当然の結果として、新規労働者のみならず、今の農民の方々が相当第二次、第三次産業に回らなければ、九%の十年間の増長率は、なかなかもう労働力の関係で行き詰まってしまうというので、私はあのときに、専業農家、第一種兼業、第二種兼業の区別をせずに、農業を主たる部分とするものは相当減ってくるであろう、こう私は言ったのであります。一一%の増の場合と、九%の増の場合と、七%の増の場合と、いろいろやってみましたが、三分の一になるというのは、一一%の増を続けた分の数字と九%の数字を言い間違いであったものですから、二時間後に訂正しておきました。そういう一応の格好は私個人としては作ってみたのでございます。しかし責任の地位におきまして、しかも今の現在の状況を見ますと、そういういろいろな試算はあるけれども、少なくとも三年間九%の増は見込めるのじゃないか、こういうので全体の分だけを今見てやったわけなんです。しかるところ、昭和三十五年を全体の総生産を一兆三千六百億として、九%の見積りを三年間でやりましたところ、三十五年の、私の当初の九%は実績においては一三、四%の増を来たしておるのであります。というふうな状況でございまして、十年後の青写真と申しましても、これは責任のある人は、これはなかなか申し上げかねる。で、私は責任のない立場のものを申し上げたのでございますが、なかなか困難、しかも、これはあなたが是認して下さったように、農村がよくなるかよくならないかということは、政府の努力もありますが、農民自体の熱意と行動力によってきまってくる。われわれはその熱意、行動力を伸ばすように道作りをしようというのでございますから、私はここで自由経済の立場におるわれわれといたしまして、青写真ということは、これは作ってみても、かえって今までの実績が示しておるごとく、その青写真は何にもならぬことになると思いますので、個人的の想像は申し上げておきますが、まあ三年間におきましてもそういうふうな状況でございます。ただ、私は成長過程においてのみ所得の格差の均衡が是正できる、こういう観念で言っておるのでございます。
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江田三郎#27
○江田三郎君 まあ、今の話は半年前に私が同じことを尋ねたら、総理は違った答えをされただろうと思うのです。半年前にはなかなか所得倍増計画に自信を持っておられました。まあ、私も所得倍増計画の本をここに二、三冊持っておりますけれども、こういうものを国民は全部見せられ、聞かされたわけでありまして、所得倍増十年間のたとえば所得が倍になるというような幻想を持たしてもらったわけなんです。しかし、今その池田さんの経済成長計画というものが、あるいは国際収支の面から、あるいは物価の面から再検討を要する段階ではないかということが、だんだんと言われておる中ですから、半年前には自信を持って答えられたことも、今日では自信を持って答えられないということで、条件が変化していると思うのであります。それはともかくといたしまして、一体計画経済でないからして、十年先の青写真ということは示されないのだ、もしそういうことをおっしゃるのなら、たとえばこの第二章のうち、農業生産の中の第八条に「需要及び生産の長期見通し」ということがあるわけでありますが、この長期見通しということは、大体において何年先のことを言われるか。特に農業の場合には、特に耕種農業でもそうでありますけれども、牛を飼うとか何とかいうことになるというと、相当先を考え、計画を立てなければなりません。そういうことがうまくいかぬために、たとえば牛よりもっと簡単な豚でも、あれほど値が上がったり下がったりするわけでありまして、やはり農業における長期見通しという場合には、普通の鉱工業における条件とは違っておると思うのでありまして、法案の中にはっきり長期見通しということを書かれるほど、この基本法には長期的な問題がいろいろ出てくるわけでありますが、しかるにかかわらず、十年後の青写真が示せないというのは、これでは池田さん、答弁にはならぬじゃありませんか。
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池田勇人#28
○国務大臣(池田勇人君) 十年以内の所得倍増の自信がなくなったとおっしゃるが、そうじゃございません。私は国民とともに自信を持って進んでおる。今申し上げた数字でも九%ぐらいずついったならば、十年じゃございません。七、八年でなってしまいます。しかも今実績は九%以上五割増しという一二、三%、決して十年以内の一〇%を私は自信をなくしたのではございません。半年前のそれよりもっと自信が強い。実績がそれを示しておる。そしてそれは農民の方々、また全国民がおやり下さるので、私はその先達になって道を作ろう、こう思っておりますので決して自信を喪失しておりません。ますます強めておる。ただどちらかといえば、そんなにしては行き過ぎるから、少しぐらい水を飲んだり、走り方をゆるめたりしたらどうかという気持はないことはございませんけれども、まだそこまでいっていない。私は自信満々、外人と会うたびに、非常な驚きと賞讃と激励を受けているような状態でありまして、ますます強気になっておるのであります。そして長期見通し、青写真というものは、これは今作った青写真で、そうしてその分が違った青写真になるよりも、もっといい青写真はあなた方の力で、今私が作ったよりももっといいのができるのですから、お見せしません。個人的には今申し上げた通り五割増しと言っていますが、五割増しというのは、米麦が五割増すと言っているのじゃございません。他の農産物が相当増してくる。長期というのはどうかといったら、二年も長期でございましょう。五年も長期でございましょう。あるいは十年も長期でございましょう。われわれ長期としては、二十年後、三十年後を考えて日本の国作りをしなければなりませんが、さしむき十年というものを目標において、そして今の施策は三年、こういうのでいっておるので、各農業の種類によりまして、いろいろな計画が出てくると思います。長期とは何年と区切ることはできないと思います。
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江田三郎#29
○江田三郎君 私たち農村へ参りまして、農業基本法の話なんかをいろいろやってみますというと、農民諸君の質問というのは非常に具体的なんですね。法案にどういう言葉が並べてあるかということよりも、自分たちの農業経営はどういう形になるのだ、そのことを非常に心配をしておるわけです。農民というものは、私が申すまでもなく、非常にその点については現実主義的なんです。高等学校の生徒に倫理の話をするような問題じゃないのでありまして、そこで特にこの農業基本法の前文の中には、最後に書いてありますけれども、「ここに、農業の向うべき新たなみちを明らかにし、」こう書いてあるわけです。そうすると、一体、政府の施策というものはどういう方向にいくのか、農業を前進さすのは究極的には農民自身でありますけれども、しかし、それは今の世の中におきまして政府の施策とまるで反対の方向へ行こうといったって、できるものじゃないわけであります。政府の施策と方向をマッチさせながら、どうやって創意工夫を働かして自主性を生かしていくかということです。そういう農民諸君にほんとうに一生懸命になってもらおうというのならば、少なくともここに基本法の前文にありますように、日本の将来の農業の姿というものはどういうものだ、どっちへ進んだらいいのかということがはっきりしなければ、ただ生産性を上げていけ、所得が均衡をとるようにやっていくのだというだけでは、とても農家の諸君の心からなる賛同というものは得られないと思います。なぜ、そういうことについてはっきりしたことが言えないのか。今言って、またあとで違ったらいかぬ、あるいは違うかもしれません。どんなに計画経済にしたところで、日本だけが孤立した国でもないのでありますし、世界の情勢の中で、いろいろ世界に新しいことができるのでありますから、計画は違って参ります。しかし、少なくともその当時のわれわれの最大の力をもって、これがわれわれの描き得る将来だというものを出していかなければ、農民としては安心してやれるわけはない。将来どうなるかわからぬのに、これからこつこつ荒れたたんぼを耕して、こやしを入れて一人前のたんぼにする、こんなことができるわけはないのであります。
 そこで、そういうことはそういうことといたしまして、この所得倍増計画によるというと、昭和四十五年における家族経営の構成として、将来御承知のように二町五反経営を百万、そして一町を二百五十万、五反を二百万、もっともこれは成長率の違いによって多少の違いはありますけれども、こういうような一つの青写真を出しておるわけです。もちろん、青写真というものは、この経営面積だけでは出るわけではございません。同じような一町経営といっても、高級蔬菜をやっておる一町と米だけ作っておる一町ということは違うということはわかります。しかし、大体の輪郭というものは出せるわけなんであります。ここに一応こういう数字が出ておるのでありますが、この数字というものは、もうほごのように捨ててしまわれるのか、これはこれで生きておるかどうかということを端的にお答え願いたい。
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