小柳牧衞の発言 (本会議)

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○小柳牧衞君 私は自由民主党を代表いたしまして、池田総理並びに関係閣僚に質問いたしたいと存じます。
 昨佃、池田総理並びに関係閣僚まり施政方針の概要について承ったのでありますが、さらに一そう明確に承っておきたい問題があります。
 その第一は、総理の国際情勢に対する認識、判断についてであります。申すまでもなく、わが国の国際上における立場よりいたしまして、この判断はあらゆるわが国の施政の基調となるからであります。それでお尋ねいたしたいことは、アメリカ外交の基調についてであります。アメリカの政権がアイゼンハワーよりケネディに移ったとはいえ、元来、超党派外交を基調としていた国柄たけに、外交の方針がにわかに一変するとは思いませんが、対共産圏外交にはやや変調を生ずるのではないかという一般の見方でございます。アイゼンハワー政権には、過去八年間に積み重ねられた行きがかりがあって、問題の解決を困難ならしめていた面があったのは事実でございまするが、こうした一画は、ケネディ政権になってかなり払拭されるだろうと期待されているのであります。われわれはこの変動によりまして、あるいは自由貿易の問題や、あるいはまたドル防衛の問題等についても関係の大きいことを感ずるのではありまするが、それらの中でも、最もわれわれが注意を払わなければならぬ問題は対中共政策の変化でございます。ケネディ大統領は、中共が必要ならば食糧を送ってもいい、こういうようなことも言っておりますが、対中共政策の将来はどういうふうに展開していく可能性があるか、この問題に関連いたしまして、政府の日中貿易に対するお考えも承りたいと考えるのであります。
 次にお尋ねいたしたいことは、所得倍増計画と物価政策についてであります。所得倍増政策は、わが党新政策の核心でありまして、これを遂行することは池田内閣の最も大きな使命でございます。所得倍増計画が絶対にインフレを起こさぬ理由及びこれに対する周到なる政策については、昨日それぞれ説明があったのでございまして、われわれはそれを了承するものでありますが、しかし、申すまでもなく、政治はあくまでも理論に立脚いたしまして、しかも、その実行にあたりましては、人心の機微を察しまして、そのおもむくところに任意をしなければならぬことは当然でございます。それでありまするから、われわれは、この観点よりいたしまして、いわゆるインフレ・ムードに注意を払わなければならぬと思うのでございます。それで、第一に考えなければならぬことは消費の増大の問題でございます。企画庁長官の言うごとく、今後の経済成長をささえる主要要因は個人消費支出の増加にあると思います。しかし、消費について静かに考えなければならぬことは、今日国民一般が好景気を安易に受け取りまして、消費の面においてなかなか旺盛であり、消費は美徳であるという言葉さえも横行して、消費革命を謳歌している現状でございます。私は、消費をあながちとがめるものではありませんが、実力を越えた消費生活は結局において国民生活を不健全にするのみならず、所得倍増政策の大きな障害となるとさえ憂えているものであります。現代はムード時代といわれるほど、一たん燃え上がったムードの火というものは、枯野を走る火のように、なかなか容易に消えないものと思うのであります。従って、消費の増大を慎重に考慮し、明確適切な物価政策を堅持して、需要供給の調整をはかる必要があると思うのでありまするが、この点についての政府の所見をお尋ねいたす次第であります。
 次に、減税についてお伺いいたします。減税につきましては、政府は法人税、通行税などの間接税合計千百三十八億円の減税を断行することとし、三十六年度には千五十億円程度の減税を見込んでおります。だが、一方におきましては、先ほども指摘のあったように、ガソリン税の増税あるいは租税特別措置の整理と相待ちまして、三十六年度の純減税額は六百二十八億円となっております。今、減税の額と税の自然増収額とを比較いたしまするというと、昭和三十二年の一千億減税が自然増収額の二五%に上っていたのに対し、三十六年度の減税は自然増収見込額の一六%程度にとどまっております。これは、申すまでもなく、きわめて高率の経済成長から出た三千九百億円という空前の巨額な自然増収を対象とするからであります。世間では、三千九百億という巨大な自然増収がある以上、減税はさらに大幅であってしかるべきだという意見もあるようでございます。昨年春に税制調査会は、国民の租税負担率は国民所得の二〇%程度にとどむべきであるという意見を提出しておりまするが、昭和三十五年度の租税負担率は国民所得の二〇・五%であります。三十六年度は、予想でありまするからわかりませんが、あるいは大体そういうことになるのではないかと思われるのでありまするが、税制調査会が、申すまでもなく、あらゆる角度から慎重な検討を加えた結果出された意見は、十分にこれを尊重すべきものであると考えるのであります。従って、今後引き続いて大幅な減税を行なっていく場合に、税制調査会の意見の通り、国民の租税負担率を国民所得の二〇%に押えるように努めるということは適切な措置であると考えまするが、政府はこれに対してどういう御所見でありまするか、お伺いいたしたいのであります。
 次に、公共事業についてでありまするが、道路、港湾、治山治水等、経済活動の基盤を整備するために、大幅な予算の増額を行なったことは、国民所得倍増計画の線に沿うものでありまして、きわめて当然の措置であります。しかし、過去の道路計画あるいは治山治水計画など、一たん立てられた計画がその実行面において必ずしも予期の成果をあげていないことを考えますると、すなわち、あるいは官庁間の権限の立場からいたしまして仕事がおくれるとか、あるいは、はなはだしきに至っては、その工事が目的に沿わないというような立場からしまして、会計検査院等より指摘されたこともあるのでありまするが、政府としましては、今後生じ得べきあらゆる隘路を打開する対策がなければ、この計画というものは成果をあげ得ないと思うのであります。
 それで、伺いますることは、まず第一に、わが国の工事能力の問題であります。従来わが国の土木事業は、主として人の力によりまして、機械力によらないというような特色を持っておりましたが、そのためにきわめて低能率でありました。近来はよほど改善されたのでありまするが、はたしてこの大きな計画を十分に消化する能力があるかないか。その点についての政府の御見解を承りたいと思うのであります。なお、これに関連いたしまして、特に都市等におきましては、土地収用の関係のためにずいぶん仕事がおくれておる実情でありまするから、いわゆる土地収用法の運用について十分に注意をしなければならぬのでありまするが、これについての御所見を承りたいと思います。
 なお、この公共事業をやりまする上におきまして、地方財政に直接間接に大きな影響を及ぼすことは当然でございまして、すでにこれらの仕事が地方負担の困難より適正に遂行のできなかった実例もあるのでありまするから、この大きな公共事業を遂行する上におきましては、地方財政に対しましてどういう注意を払っておるのか、その点につきまして当局の御意見を承りたいと思うのでございます。
 次に、私は社会保障についてお伺いしたいと思います。昭和三十六年度の社会保障関係費は二千四百六十六億円でありまして、その増加率は三四・七%に達しております。まさに社会保障の画期的躍進といわなければなりません。このように社会保障制度が著しい拡充を見たとは申しながら、国民一人当たりの社会保障費の額、あるいは予算総額に占めるその比重などの点におきましては一わが国は先進国に比べてまだ低い水準にとどまっております。私は、所得倍増計画と並行し、いな、その一環として、社会保障拡充の長期計画があってしかるべきだと考えるのであります。わが国の社会保障制度は今後十年間にどの水準まで向上させるのか、そうした目標を定めて、逐次その目標に向かって努力を重ねることが大切であります。社会保障の長期計画に対する総理の御所見を伺いたいと思います。
 次に、社会保障のうちで、当面の重要なる問題の一つは、医療費の引き上げの問題であります。諸般の事情からして、医療費の引き上げはやむを得ないといたしましても、医療費の負担が今後無視することのできない大きな社会問題となる可能性があると思うのでありまして、政府はこの点をどうお考えになっておられるかを承りたいと思います。また、医療費の増高は、国民健康保険を所管する市町村の財政にも少なからぬ影響を及ぼすことは当然でございます。これに対しまして、いかなる対策を政府は持っておられるか、あわせてお伺いいたしたいと思います。
 次に、私は、農業政策についてお尋ねいたしたいのでありまするが、農業政策は、今や転換の時期にさしかかっておることはしばしば言われる通りであります。戦前における農村人口の状況と今日の趨勢とを考えてみまするというと、そのことが十分に了解できると思うのでありまするが、実に、昭和三十年と昭和三十四年を比較いたしまするというと、約百五十万の減少を示しております、こうした大規模な人口の移動は、いろいろの理由もありましょうが、その根底には、都市と農村との生活水準の開き、農林業と他産業との所得の格差ということがあって、この傾向を生み出したといえるのでございます。今後、日本の経済が高度の成長を続けるにつれまして、この傾向はますます増大するでございましょう。かくては、農林業と他産業との所得の格差は縮小するどころか、むしろ拡大するおそれがあるかもしれません、都市に比較しまして著しく低い農村の生活水準は、いつまでもその差を縮めることはできないでございましょう。従って、今後の農林業は、より少ない労働力をもって飛躍的に大きな収益をあげ得るように経営形態を進めて、それによって農林業者の所得を都市勤労者のそれと匹敵するほどに向上させなければなりません。それがためには、農業の体質改善、その近代化が必要でありますが、これが所得倍増計画の一環としての今後の農業政策に課せられた最も大きな問題であると思うのであります。私は、政府が、農林業の体質改善、その近代化について、いかなる施策をするお考えであるか承りたいのであります。
 次に、中小企業についてお伺いいたします。中小企業は大企業と対立的に考えられるのでありまするが、しかし、中小企業の業種を見まするというと、大企業には必ずしもそのものがあるというわけでもないのであります。かくのごとく見まするというと、わが国の中小企業というものは、産業上特殊の存在であり、しかもきわめて産業上重大な役割を演じておるのであります。従って、中小企業に対するいろいろの問題は、最も力強く考えてみなければならぬと思うのでありまするが、この二つの見方からして思われることは、まず第一に、大金業と中小企業の所得の格差を少なくするということが所得倍増の方針であるといたしますならば、政府はいかなる方法でこの格差を縮めるというお考えでありまするか、その方途をお尋ねいたしたいのであります、次に、かくのごとく社会的にも、また、産業的にも重大な企業である中小企業の振興につきましては、従来とも設備の近代化あるいは減税、財政投融資等、いろいろやっておりまするが、所得倍増計画に伴いましてさらに一そうこの点について力を入れなければならぬと思うのでありまするが、主としてどういう方面に最も力を入れる考えでありまするか、その方策を承りたいと思うのであります。
 最後に、私は治安対策についてお伺いいたします。治安問題は、一方においては産業振興の基盤をなすものでありまして、所得倍増を期するためにも根本的に考慮をすべきものと存じます。しかるに、最近、政治的、社会的現象のうちで最も憂慮にたえないものは、自己の主張を貫くために、法秩序を無視して、暴力をもって事を決しようとする風潮であります。このような考え方は、その動機や理由のいかんを問わず、また、個別的たると集団的たるとを問わず、ひとしく民主社会の基礎を破壊するものでありまして、断じて排除しなければならぬのであります。このような暴力の排除には、一般国民の間に、あらゆる暴力に対して勇気をもって断固これを否定する気風を喚起することが不可欠の条件であります。世上一部には、自分の目的のために手段を選ばず、あるいは悪法は法にあらずとして法秩序を無視し、ひいては暴力を肯定するがごとき考え方があるということは、まさに遺憾のきわみでございます。このような雰囲気を社会より一掃することが最も根本的な問題であると思うのでありますが、この点について、総理はいかなる所信をもっておるのか、お伺いいたしたいのであります。
 次に、最近における犯罪の傾向を見まするというと、数年来の経済の繁栄と社会生活の向上にもかかわらず、犯罪の発生は年を追うて増加するとともに、犯罪が悪質化、暴力化の一途をたどり、特に青少年の犯罪が激増しつつあるということは、まことに憂慮にたえないのであります。これらの根本的解決は、結局広義の教育の振興に待つのほかはないとは思いますが、従ってまた、道徳教育というようなことにも関係をもっておると思われまするが、特にこの青少年の犯罪増加について教育の面より文部当局の意向を承りたいと思うのでございます。さらに、治安を維持し、犯罪を少なくするためには、警察、検察、裁判の機能の強化充実、裁判の独立性の保持、警察官の職務の尊重とその資質の向上等、所要の措置をとる必要があることはもちろんでありますが、また、犯罪は単に刑罰取り締まりの対策にとどまらず、広く社会福祉対策として考えなければならない面も多いのであります。犯罪の温床となる不良生活環境の一掃をはかるとともに、保護矯正施策を徹底し、広く社会福祉的立場から総合的な犯罪防止対策を立てる必要があるのであります。また、言論、出版、映画等、広くマスコミの協力を得ることが犯罪防止の風潮を浸透させる上にあづかって力があると思うのでありまするが、これらの点について関係の大臣はいかなる所信を持っておられますか、お伺いいたしたいと思います。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 103815254X00419610131_011

発言者: 小柳牧衞

speaker_id: 894

日付: 1961-01-31

院: 参議院

会議名: 本会議