阿部竹松の発言 (本会議)
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○阿部竹松君 私は、各会派を代表いたしまして、相次いで発生しております炭鉱災害の犠牲者の方々に対しまして深い哀悼の意を表しますると同時に、ただいま川上為治君が提案されました炭鉱災害防止に関する決議案に対しまして、賛成の討論を行なうものであります。
近年、炭鉱災害が続発いたしまして、多くの人々の生命が失われているわけでございますが、その数を二、三あげてみますると、昭和二十七年−六百七十九名、二十八年−六百九十六名、二十九年−七百九名、三十年−六百六十六名、三十一年−六百十二名、三十二年−六百五十三名、三十三年−六百三十二名、このように毎年々々七百名に近い炭鉱労働者が犠牲になっているのでありまして、このことは、毎日暗い地底の中で労働者が一日に二人ずつ人命を奪われているということを意味しているわけであります。さらに具体的な事例をあげてみまするならば、日本の北の果てにあります北海道の茂尻炭鉱で一瞬に六十名、太平洋炭鉱の三十九名、夕張炭鉱の四十名、あるいは勝田炭鉱の六十二名、久恒鉱業の三十六名、新入炭鉱の二十三名、江口炭鉱の二十九名、豊州炭鉱の六十七名、このように次から次へと多くの犠牲が出ているわけでございまして、特に今回問題になっておりまする上清炭鉱の七十一名、あるいはまた大辻炭鉱の二十六名と、尊い人間の生命が次から次へと失われていっておるのでございまするが、これこそまことに残酷な物語でございます。
さきにあげました夕張炭鉱のガス爆発につきましては、昨年の二月十二日に、私はこの場所から、当時の通産大臣でございました今の池田総理大臣に対しまして質問を行なったわけでございまするが、その際、当時の通産大臣、現池田総理は、「鉱山監督官の機能をもっと発揮させたい。また、保安指導員等も増員させたい。資源技術試験所を拡充して、早期に危険を発見するとか、いろいろな技術の研究によって予防措置を講じて絶滅をはかる。」このように当時の池田通産大臣は答弁をなさっておるわけでございまするが、なお、あわせまして、「合理化は即保安とつきものであって、保安を考えずに炭鉱の合理化ということはございません。私は、合理化は保安を主としていくべきだ、また生産計画というものが、やはり保安計画と一体をなさなければなりません。」このように当時の通産大臣池田さんは御答弁をなさっておるわけでございまするけれども、なかなか池田さんの御答弁の通りに現状はいっておらないのは皆さん方御承知の通りでございます。ところが、上清炭鉱の例をとってみまして、さらに調査をして参りました参議院の調査団の報告書を抜粋して申し上げてみますると、報告書の内容には、「災害発生の原因については、事故十日前、百馬力コンプレッサーに故障があったこと、五十馬力コンプレッサー座の天井その他に防火施設が不十分であった等、施設の欠陥が原因ではないかという疑いが強かった」ということを調査団が申しておるわけであります。なお、調査団の報告によりますると、「私どもが現地を調査いたしました結果、痛感いたしましたことを申し上げますると、第一に、保安管理者の指揮のもとに行なわれた火災発見後の措置は、主扇風機を停止し、火災の拡大を防止し、消火に努める点に重点が置かれ、坑内深部の七、八十名の誘導、救出の作業がおろそかにされたのではないか。第二に、坑内は二十五度の急傾斜の上、坑道は狭隘で規格に達せず、特に退避あるいは脱出すべき風道、排気道の状態が非常に悪く、また、延焼範囲はコンプレッサー室八平方メートル及びその付近の約二十平方メートル余のごく小部分であるのにかかわらず、七時間余の長きにわたって消火ができず、そのため多数の犠牲者を出したことは、消火器、貯水槽等の消火設備が全く整備されておらず、また、救護隊及び救護機具の設備等が全くなかったため、早急に救出作業が行なわれなかったということであります。」このように調査団が申しておるわけでございます。また、大辻炭鉱の調査に参りました調査団の報告でございまするが、これも同様、「コンプレッサー室周囲の保安を軽視していたのではないかと思われることであります。たとえ乙種炭鉱であったといたしましても、炭層付近に保安設備不十分なコンプレッサーを配置することは、きわめて危険であったにもかかわらず」と、この状態を放任しておいたということを報告しておるのであります。この二つの報告でもわかるように、総理のお約束が、はたして下部のそれぞれ炭鉱経営者あるいは保安監督官に浸透しておったかどうかということが、きわめて疑わしいわけでございまするが、もちろん総理以外にも、たびたび監督関係者からも再三再四にわたって御答弁をいただいておるわけでございまするが、特に保安協議会等に至りましては、再々開催して保安の完備を期するという言明がございましたにもかかわらず、三十五年には三月と九月の二回しか開いておらないという実態であります。
こういうような状態を今日まで続けて参りまして、多くの大悲惨事と数多くの炭鉱災害を未然に防止することができなかったわけでございまして、全く残念なことであります。池田総理並びに全閣僚に対しまして、私は、自分の子供が、あるいは兄弟が、このような危険な職場で働いているとした場合、不安を感じないのかということを、強く訴えたいのでございますが、炭鉱に働く人々の生命を守るために、鉱山保安法の抜本的改正は一刻も猶予を許さない状態でございまして、一刻も早く改正していただきたいと思うわけでございます。特に鉱業法の改正にいたしましても同様でございまして、相次ぐ災害の重大な要因となっておるわけでございまするが、租鉱権問題あるいは鉱区の整理統合などの抜本的解決こそ今日の急務でございます。
また、監督行政にいたしましても、重大な欠陥があるわけであります。福岡鉱山保安監督部の監督官たちは、保安を充実すれば採算が合わないと、公然と保安法違反をしている炭鉱さえあると、監督官みずからが申しておるわけでございまして、こういう点にも十分留意してやらなければならぬと思うわけでございます。あるいはまた、福岡鉱山保安監督部の実態はどうかということを申しますると、四百八十一の炭鉱がございまして、炭鉱の坑口にいたしまして千七十一の坑口があるわけであります。これをわずか四十名の監督官で監督をしているわけでございまして、その巡回も三カ月に一ぺんしかできないという、まことに憂うべき状態でございまして、これではとうてい、刻々と変化する自然を相手にして石炭を採掘している坑内の危険は防ぐことができないという状態でございまして、いかに優秀な監督官といえども、なかなか末端まで監督が不可能だということが言えるわけであります。さらに、監督官の公務執行に対する暴行脅迫等につきましては、さいぜん提案者の川上為治君が申した通りでございますが、これがこのまま放任されているところに問題があるのでございまして、法治国家として、あるいはまた常に法を守らなければならぬという政府の考え方について、いささか疑問を持つわけであります。特に、上清炭鉱の責任を感じて、みずからの生命を断った谷監理課長補佐の行動は何を意味するかということが、よく御理解できるのではないかと思うわけであります。それにまた、政府は、監督行政の現場で働く監督官が安んじて働けない実態を正しく見まして、その対策にきぜんたる態度をとるとともに、監督行政の強化に重大な決意をもって臨まれることを強く要望するものであります。
次に申し上げたいことは、遺家族に対する完全援護の問題でございまして、夕方帰るつもりで出て参りましたそれぞれの従業員が、そのまま不帰の人になるという、かかる悲惨な結果、一家の大黒柱を失って気の毒な遺家族が路頭に迷うという状態を無視できないし、これが現実の問題であります。今日の法律では、御承知の通り、遺家族補償は平均賃金の千日分でございまして、金額にいたしましてわずか平均六十五万円程度しか支給されていないという事実であります。深い悲しみと激しい憤りの涙に明け暮れている遺家族に対しまして、政府は完全なる援護と十分なる補償を行なうという制度の根本的な改善策を立てていただきたいと思うわけであります。また、豊州炭鉱の水没事故による犠牲者の遺体は、現在でも、御承知の通り、半年を経過しているわけでございまするが、いまだ収容されておりません。一体、政府はいかなる収容策を考えているのか。そういう点において十分なる御検討をお願いすると同時に、総理大臣あるいは通産大臣は、遺家族の方々の心情を十分お考えになっていただきたいと思うわけであります。
統発いたしまする炭鉱災害を防止するために根本的な解決策は、石炭鉱業安定のための政策の確立と、そのすみやかなる実行のほかにないわけでございます。しかるに、かかる実態はどういうことかと申し上げますると、上清炭鉱を調査いたしました参議院調査団は、「石炭不況によるコストダウンを急ぐあまり、保安設備が不十分なまま放置されている現状にかんがみて、現在の石炭対策を根本的に再検討しなければならぬ」と報告しているわけであります。炭鉱災害の続発が、千二百円のコストダウンという問題とからみまして、あるいはまた十一万人の企業整備をしなければならぬという合理化政策とからみまして、災害現場の調査にも十分参画された調査団の方々が報告されておるわけであります。政府はこの実態を十分認識されまして、炭鉱の保安安全設備改善のために長期低利資金を十分確保し、積極的に援助政策を進めていただくと同時に、炭鉱の休廃山に伴う諸対策の確立を早急に行なっていただかなければならぬと思うわけであります。
私の所属いたしておりまする日本社会党は、御承知の通り、石炭鉱業を長期に安定させるために、今国会に、石炭の生産体制の確立、流通機構の整備を主要な柱といたしました石炭鉱業安定法案を出しているわけでございまするが、幸い、この決議案の第一に、石炭鉱業安定政策の確立がうたわれておりますることは喜ぶべきことでございまして、的確なる判断のもとに着々と実施をしていただきたいと思うわけであります。石炭産業の安定政策を、まじめに、献身的なる態度をもって樹立していただくことを強く要望する次第であります。
以上申し述べましたような政策を完全に実施されてこそ、初めて痛ましい犠牲者の霊を慰める道であることを最後に強調いたしまして、私は賛成討論を終わるものであります。(拍手)