曾禰益の発言 (本会議)
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○曽祢益君 私は民主社会党を代表いたしまして、池田内閣の施政方針に対して質問いたしたいと存じます。
まず、外交方針について総理の所信を伺います。私は一年前に、第三十八国会にあたっての代表質問の中で、総理が東西交渉が失敗した場合の情勢の急激な悪化を考慮に入れていない点に警告を発するとともに、一そうの切迫感をもって、核兵器禁止協定の成立と核兵器保有国の拡散防止にあとう限りの努力を傾けることを、首相に強く要請いたしました。不幸にして国際緊張が激化した今日、総理が今回の演説において、核実験禁止問題や軍縮問題の早急な解決が困難であることを述べ、この問題が関係国間の話し合いできめられることを漫然と待っているかの態度を示しておられるのは、私の断じて承服し得ないところであります。国民は、総理が昨年九月、本院並びに衆議院において成立した核実験禁止に関する決議に基づいて、もっと精力的、能動的に、この決議の趣旨達成のために働くことを期待しているのでありまして、ここにあらためて、核兵器禁止に関する首相の所信と政策とを明らかにされたいのであります。行き詰まっている核実験禁止協定や軍縮問題を打開することが、いかに重要であるか、いかに緊要であるかを示す一つの事例といたしまして、中共の核武装の動きが、共産圏を含む全世界の心配の的となっていることをあげることができます。
このように一面からしても、中共問題は、もはやほほかぶりを許さない本年の政治課題となっております。私は、昨年の国連総会における岡崎代表の演説が、単に中国問題の複雑さを訴えるだけに終わり、問題解決への方向には全く触れなかったことを遺憾千万に思うものであります。私は、その方向とは、北京政府に対して、中国の国連代表権を認める原則に立ちつつ、台湾問題の処理については、ソ連案のような頭ごなしの台湾の否定ではなく、台湾住民の意思を問うことを含めた問題の合理的解決の道を、国連の場を通じて発見するように努めることであると信じます。このような根本方針を持たず、ただただ、そのつど外交で当面を糊塗しようとする政府の外交に対し、国民が不満と不安とを抱くのは当然しごくと存ずるのであります。(拍手)国連総会における中国代表権問題は、事の本質から見て、重要事項として取り扱わるべきは理の当然であるが、日本が重要事項指定方式の提案国となったことは、もっぱら審議そのものの実質的たな上げをねらうところのアメリカの片棒をかつぐ自主性のない姿を示したもので、池田外交の一大失態であります。中国という一つの民族国家の中に、二つの政権がその正統性を争うという、異例なきわめてデリケートな事態に対し、日本としてあまり立ち入った議論をすることは、賢明でも建設的でもないと思われます。かといって、わが国の中国に対する基本的態度は、あらゆる国、あらゆる政権に対し、完全な独自性を持たねばならないことも、論を待たないところと存じます。政府、自民党は、台湾とアメリカに追随し、社会党は、先般の鈴木・張共同声明のように、全く中共ペースで百八十度これと対決するのでは、日本の一体性は失われ、国内に三十八度線が作られ、国民の不幸まさにこれに過ぐるものはないと存ずるのであります。(拍手)かかる事態を回避し、進んで外交の超党派性を探求するため、まず多数党をバックとする池田内閣、いな、池田総理みずからが、対米追随外交の汚名を返上するよう努めるべきと信じます。総理の腹蔵のない所信をただしたいのであります。
朝鮮半島の安定は、日本の平和安全と至大な関係があり、われわれは、朝鮮がすみやかに平和的に統一し、民主国家として安定することを望むが、冷戦のもと、これが近く実現の見込みのない限り、わが国としては、国連が認めた韓国との間に懸案解決に努め、ひいて国交の正常化に至るのは当然であります。したがって、日韓会談阻止のごとき運動は、いかにとりつくろうとも、北鮮側に立った偏向であり、われわれはこれにくみしないのであります。けれども、池田総理としては、すみやかに党内における積極論、消極論を統一調整し、請求権問題に対しては、どんぶり勘定的な解決を排し、筋目折目をただし、軍事独裁から文民憲政への移行を条件とし、また、日本が韓国と一切の軍事的結びつきを持たないこと、これを中外に明らかにするなど、慎重さと自信とをもって、まず世論の統一に努め、拙速を排しつつ折衝に当たるべきと思うが、総理の所信をお伺いしたいのであります。
首相は、今回の施政方針演説の中で、特に欧州共同体とアジア外交に言及しておられますが、その内容は、単なる思いつき的であり、はなはだ物足りないのであります。思うに、わが国の新しい経済外交の基本構想としては、(イ)アメリカ、カナダ及び太洋州を加えたグループ、(ロ)EECすなわち欧州経済共同体及び欧州とアフリカの一部、(ハ)共産圏、さらには(ニ)東南アジアなどの開発途上の国々という、世界の幾つかの経済圏に対し、全体的、体系的な総合計画を立てるとともに、いたずらにイデオロギーにとらわれず、これらの各グループとの間に有効な多角的な結びつきを持つように検討すべきであり、今やこの時期がきていると信じます。また、経済外交と国際政治とは表裏一体であり、アジアの開発途上にある国々に対するわが国の経済外交の推進は、また同時に、これら諸国を、軍事援助よりも一そう有効な方法で共産主義から守る道と信じます。総理の御意見をただしたいのであります。
首相は日米関係についてはあまり語っておりませんが、鳴りもの入りの日米貿易経済合同委員会の開催などにかかわらず、ケネディ大統領の一般教書や予算教書によっても、アメリカのドル防衛政策は、はなはだきびしいものがございます。首相はAID入札からの日本商品締め出しや輸入綿製品に対する賦課金の徴収などの諸懸案についても、もっとわが国民の気持を率直にアメリカに伝えて、国民の納得する解決を求むべきであり、また、ガリオア、エロア援助については、わが党が、かねて主張したごとく、これを一種の道義的な債務性あることを認めるとしても、アメリカの債権放棄と、東南アジア開発援助に引き当てという方式について、なぜアメリカにもっと強くこれを要請しなかったか。この点、国民の納得できるような、的確なる首相の御説明を願いたいのであります。
次に、経済問題を中心とする内政について質問いたしたいのであります。
池田首相が「経済は池田におまかせ下さい」との自己過信のもとに進められた、いわゆる所得倍増政策の過去一年の業績を顧みれば、それは首相の重大な見通しの誤りと、機を失した対策の拙劣さの結果であるところの、民間設備投資の行き過ぎと経済の過熱、国際収支の悪化、金融引き締めによる中小企業の黒字倒産などに見られる安定成長の完全な失敗と、景気の波動と消費物価の上昇による労働者階級や庶民の生活の破壊、さらには社会の各方面におけるあらゆる格差の増大がその特徴であります。首相は今回の演説で、不承々々この失敗を認めておられまするが、このみずから招いた経済危機の打開のために、施政演説の中でお説教口調で国民に協力を求める前に、いさぎよく罪を国民に謝し、責めを負うて職を辞するのが、政治の姿勢を正し道義を確立する道と信ずるが、首相の率直なる見解を披瀝していただきたいのであります。
以上の責任論とは別に、当面、経済危機を打開し、経済の安定的成長並びに格差の解消に努めなければならず、これがため、財政金融政策においては引き締め基調を守り、国際収支の均衡を回復することが至上命令であることは、論を待ちません。しかるに、政府の施策の全般に現われたところでは、国際収支の均衡を本年十月ごろまでになし遂げようという真剣な意欲も、これを実現する確信も、ともに欠けていることを、私は、はなはだ遺憾とするものであります。その証左の一つが三十七年度予算案の性格であります。新予算案は前年度に比して二四・三%増しの空前の大規模であり、しかも、大蔵原案よりさらに六百億円も実質上増された反面、当初考えられた繰り延べ予約方式はけし飛んでしまい、明らかに景気刺激的なものとなってしまいました。これでは、三十七年度の成長率を五・四%にとどめ、引き締めを堅持し、すべてをあげて国際収支の均衡を回復しようという政府当初の決意とは、完全に矛盾するものと言わなければなりません。財政は、放漫、金融は引き締めという政策は、無理であるばかりでなく、中小企業にとってはまさに破壊的ですらあります。首相はこの予算の性格を景気刺激的ではないと断言する自信をお持ちであるかどうか。また、蔵相、経企庁長官の見解もあわせて伺いたいと存じます。
次に、予算編成にあたって、閣内のいわゆる大物実力者が面子にかけてぶんどり競争を行ない、また自民党が選挙目当ての農地補償、軍人恩給のベース・アップ、及び高等学校増設を犠牲とする小中学校の教科書の無償配布を内閣に強要し、政府が屈した結果、無性格的な総花予算となったばかりでなく、後年度財源の弾力性を一そう失う悪例を開いたことについて、財政的に明るいはずの総理、総裁として、いかにお考えであるか、あわせてお答えを願いたい。
国際収支改善の困難は、輸出の振興と輸入の抑制の双方に存在しております。特にEECが米ソに匹敵する経済圏の実力を持ち、短期的には圏外に対して閉鎖性を持っていること、及びアメリカが強大なEECとの接近には熱心で、EECに対しては関税の引き下げに応ずる一方、これより魅力に劣るわが国に対しては、綿製品に対する賦課金その他の輸入の規制や、バイ・アメリカン政策の押しつけなどを続ける傾向がございまして、これらは日本経済の孤立といっては言い過ぎかと思いまするが、わが国の貿易の前途は容易ならざることを示しておるのであります。それにもかかわらず、政府は、当面最も重要な国際収支の均衡、特に輸出四十七億ドルの達成にいかなる対外的具体策と成算をお持ちであるのか。また予算案に見られる輸出振興策は全く不十分と認められるが、総理、通産相の意見がいかがであるか伺いたい。
次に、池田内閣の無計画かつ大企業本位の成長政策の犠牲となった社会の諸階層に対する施策について、総理並びに関係閣僚の所信をただしたいと存じます。
中小企業対策については、首相は口を開けば、不況乗り切りについて十分な融資を云々されるけれども、それも必要でございましょう。だが予算面での中小企業近代化促進のための施策はお粗末千万でありまして、これでは、貿易為替の自由化とEECなどからの競争に対抗して、また国内企業がますます集中化、巨大化する傾向すらあるおりから、そのおりの中小企業対策としては全く落第といわなければなりません。なお、中小企業基本法制定の要があると思うが、この点について総理並びに通産大臣からお答えを願いたい。
農業につきましては、首相は、農業生産の選択的拡大と経営の近代化が急速に進展しているなど、のんきなことを述べておられまするが、鳴り物入りの農業構造改善事業費も予算面ではきわめて少額にすぎません。為替貿易自由化と強大な経済圏との競争という宿命を前にして、米麦を中心とする農業を、近代化された農業、他産業との収益の格差を縮める農業に変えるのにはどうするのか、食管制度は堅持するのかしないのか、河野構想はどうなるのか、あらためて首相並びに農相から御所見を伺いたい。
庶民、特に都会の労働者、サラリーマンの主婦たちは、消費物価は三十六年度末までに一・一%以上上げないという首相の公約が破られ、すでに年末に東京では八・八%とはね上がった今日、もはや、収入の増加がやがて消費物価高に基づく支出増を吸収していくから、それまでは待てという首相の説得を、すなおに受け入れようとはいたしません。消費者物価安定においての確たる方針を首相並びに経企長官から伺いたいのであります。
労働者は、政府の失政のしわ寄せのために賃上げのストップに甘んぜよという日経連や労働大臣の主張を、断じて容認いたしません。特に不況産業である石炭、海運、肥料工業に対し、政府が顧みるところがはなはだ不十分であることに強く抗議しております。経済成長の陰に取り残された同胞である被生活保護階層に対しての、総理のいわゆるあたたかい配慮が、わずか一三%の扶助基準の引き上げでは、とうてい物価高を帳消しできず、福祉国家などとは及びもつかないありさまであります。
以上の諸点につき、総理並びに通産、農林各大臣より所信を伺いたいと存じます。
最後に、私は池田内閣が大資本に奉仕する自由放任経済に立脚する限り、日本の働く国民のすばらしいエネルギーにこたえ、これを計画的に導いて、経済の安定的な成長をはかり、近代的な福祉国家を作ることは、望みなしと断言してはばからないものであります。われわれ民主社会党は、暴力や革命のような激変を通じてではなく、議会を通じて、平和のうちに現在の社会経済体制を変革し、完全雇用の達成、社会保障の充実、所得の引き上げと均衡化を実現し、経済の二重構造を解消し、もって民主社会主義社会実現への第一歩として、まず勤労者の福祉国家を実現するために、本国会の会期を通じて、ざらに国民にかわって池田内閣の経済社会政策を徹底的に批判し、衆議院における予算組みかえ要求と相待って、池田内閣との対決点を国民の前に明らかにする意向であることをここに表明いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕