秋山長造の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○秋山長造君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になっております両法案に反対をいたすものであります。
 本法案が参議院に参りましたのは、つい一週間前のことであります。このように問題の多い、いわくつきの重要法案の審議には、どんなに急ぎましても、少なくとも一カ月程度は絶対必要であることは、天下の常識だと思います。衆議院でまる二カ月ももみ抜いたものを、わずか一週間、しかも連休を間にはさんだ一週間で、われわれ野党四派の最小限度の修正要求にさえ耳をかすことなく、さっさと上げてしまおうとするのが、そもそも無理な話だと思うのであります。一体、二院制度における参議院の役割、その存在意義はどこにあるでしょうか。言うまでもなく、党派感情を越えて冷静に慎重審議を尽くすということ、この一点にあると信ずるのであります。にもかかわらず、このような因縁つきの重要法案を会期末ぎりぎりに持ち込んで、ろくろく審議の余裕も与えないで、いきなり強行しようという政府与党の態度は、参議院の存在を全く無視するものでありまして、これでは参議院などはなきにひとしいと思うのであります。(拍手)早い話が、来たるべき参議院選挙において、お互いは何と言って国民に訴えたらいいのでありましょうか。これではまるで参議院は要りませんと言うほかはないじゃありませんか。われわれは、こういうむちゃなやり方には共同責任を負うことができません。
 第三に、政府原案は、政府が必ず尊重すると繰り返し公約してこられました審議会答申の最も重要な点をことごとく骨抜きにしていることであります。
 その一は、連座制、特に配偶者、親子、兄弟のいわゆる親族連座に、同居、意思を通じて、禁固以上の刑、執行猶予のつかない場合、検察官の公訴というような十重二十重のワクをはめて、全くのお飾り規定にしてしまった点であります。その二は、高級公務員の立候補制限をこじつけの違憲論で押しつぶして、広く公務員一般の選挙運動の規制ということに変えてしまった点であります。その三は、政治資金の規制に、「当該選挙に関し」というワクをはめて骨抜きにした点。その四は、後援団体の寄付の禁止を、これまた「当該選挙に関し」というワクをつけて有名無実にした点等々であります。
 第三に、このようにして、いいかげん骨抜きにされた政府原案が、衆議院自民党の四点にわたる便乗修正によって、さらに後退し、改悪されたことであります。特に、従来一貫して運動員に対する報酬の支給を禁じてきた選挙法の建前をくずして、選挙運動員に、新たに、一日三十人、一人七百円の報酬を支給できることにした点と、後援団体の寄付の禁止を、衆議院選挙においては解散の翌日から投票日までの間、参議院選挙については任期満了の三カ月前から投票日までの間に限定したことは、事実上、運動報酬という口実のもとに、半ば公然と大がかりな買収への道を開くことになり、また常時、後援団体を通じての事前運動、買収供応を公然と認める結果になりかねないと思うのであります。しかも、こういう非常識な便乗修正をやりながら、衆議院自民党の修正者は、われわれの委員会へ参りまして、「金のかからない明るい選挙のための表現上、技術上の修正に過ぎない」などと放言し、池田総理もまたこれに口裏を合わせて、修正は、政府原案の不明確な点を明確化し、足らざる点を補強したものであるなどと、ぬけぬけと答弁されたのであります。われわれ野党四派は、この点を深く憂えて、政府原案の手直しは時間的に無理としても、せめて衆議院修正のうちのこの二点だけでも、参議院の良識と名誉にかけて再修正するよう、政府、自民党側に再三強く申し入れたのでありますが、小林委員長以下自民党委員各位の非常な御努力があったにもかかわらず、衆議院自民党の複雑怪奇な内部事情のために、われわれの要望はついにかなえられなかったことは、返す返すも残念であります。(拍手)
 最後に、しかし、われわれの最も腹にすえかねるのは、本選挙法改正問題を通じての総理、総裁としての池田首相のまことに無責任な態度であります。池田総理大臣は、昨年春の国会において、また六月十六日選挙制度審議会の第一回総会において、さらにまた十二月二十六日審議会答申を手渡しにこられました審議会の野村会長に対して、繰り返し答申尊重の旨を約束されたはずであります。また、忘れもいたしませんが、去る一月十九日の施政演説におきましては、重ねて答申尊重を公約された上で、さらに次のように述べられたのであります。「困難を克服することなくして飛躍と発展を望むことはできません。新しい年に臨み、新たな課題の挑戦を前にして、私は国民諸君とともに覚悟を新たにするものであります。」。まるでケネディ張りの名文句を使って、こう然としてわれわれに訴えられたのであります。しかるに、その後の経過を見ますと、自民党の抵抗に出っくわして、審議会答申が大幅に後退して自治省案となり、それがさらに党内各派閥の袋だたきにあって、ずたずたにされて、ついに今私どもの目の前に見るような骨抜き法案になってしまったのでありますが、この間、池田総理は、一切の責任を安井自治大臣一人におっかぶせて、拱手傍観、決してみずから乗り出して、党内の取りまとめなり審議会答申を貫くための努力をしようとはされなかったのであります。これでは池田総理は、国民をだまし、国会を愚弄したと言われても仕方がないではございませんか。施政演説に示されましたあの御決意、あの意気込みは、一体どこに行ったのか。私は、本問題を通じて終始孤軍奮闘された安井自治大臣の御苦労には、心から御同情を禁じ得ないのでございますが、(拍手)しかし、その反面、池田総理大臣の、肝心なときには冷淡かつ無責任、そうして今になって急に法案に執着をして、がむしゃらに押し通そうとする開き直った態度には、断じて承服できないものであります。(拍手)
 御承知のとおり、池田総理大臣には、「私はウソは申しません」という名文句がございます。以前には、池田総理大臣がそうおっしゃいますと、国民の多数の者が拍手をして喜びました。しかし、今やそういうことを申された場合に、国民は手をたたくのではなしに、げらげら笑ってしまうのであります。これが偽らざる大衆感覚と考えます。池田総理大臣は、聞くところによりますと、安岡正篤氏に師事されておられるということであります。私も安岡正篤氏の書物をよく読みますが、安岡氏がその中で「復初の説」ということをしばしば書いておられるのであります。復初とは初めに返るということであります。初心に返るということであります。私はこの際、池田さんは、安岡氏の言葉に従って、初心に返っていただきたいと思うのであります。「初心忘るべからず」ということをもう一度考えていただきたいということを、私は失礼ながらこの席から申し上げておきたいと思うのであります。いさぎよくこの際このような不完全な骨抜き法案を撤回して、審議会答申の線で初めから出直していただきたいということを申し上げたいのであります。
 とにもかくにも、こういう状態で参りますならば、来たるべき参議院選挙は、一昨年の総選挙をおそらく上回るような、おそるべき物量選挙、おそるべき腐敗選挙になって参ることは必至であります。いな、すでにそうなりつつあることは皆さんがよく御承知だと思うのであります。一体その責任はだれが負うのでありますか。私は、あげてこの責任は池田総理大臣その人が負わなければならないということをはっきり申し上げまして、簡単ながら反対の討論を終わらせていただきます。(拍手)
    —————————————

発言情報

speech_id: 104015254X02219620507_006

発言者: 秋山長造

speaker_id: 29453

日付: 1962-05-07

院: 参議院

会議名: 本会議