小柳牧衞の発言 (本会議)
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○小柳牧衞君 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております両法律案につき、賛成の討論をいたすものであります。
私は、賛成趣旨を明らかにする前に、特にこの際、一言申し上げておきたいことがあるのであります。このたびの公職選挙法の改正に関連し、国会における両院のあり方について、いささか所見を申し述べたいと思うのであります。国政の動向を大きく左右するものは、国民の代表を選出すべき選挙がいかに公明活達に行なわれるかにかかっているといわれております。この意味で、選挙法は民主政治における国政の基本法と申しても過言ではないのであります。したがいまして、選挙法の審議には十分慎重審議を要するのであります。今回衆議院より本院に公選法改正案が送付されるにあたり、会期末も切迫した時期にこれが行なわれたということは、はなはだ遺憾とするところであります。議案の審議については、国会の両院は平等の立場に立っておりますので、でき得る限り他院の立場を尊重して、努めて審議の促進をはかるべきことは、二院制の本質に照らしまして当然のことであり、両院相互の義務であると考えるのであります。ことに本案のごとき重要法案については、特別の配慮があってしかるべきであり、今回の措置について深く遺憾の意を表するものであります。
次に、本改正案に賛意を表する理由につき、その趣旨を明らかにしたいのであります。
本改正案は、選挙制度審議会の答申に基づき、現行の選挙制度について広く各方面で論議されてきたほとんどすべての事項にわたる大改正であり、選挙の公明化のために寄与するところまことに大なるものがあると考えるのであります。すなわち、現在の個人候補者本位の選挙を、政党本位の選挙の建前に大きく一歩を進めますとともに、候補者の政見が選挙民に十分に周知されるように、選挙運動に関する制限を緩和し、ポスター、はがき、新聞広告等の数を増加して自由な選挙の理想に近づけようとしているのであります。また、法定選挙運動費用の積算を合理化し、後援団体について新たに規制を設ける等、選挙資金の明朗化をはかるとともに、選挙の公営を拡充しているのであります。さらに他方において、選挙の公正を害するような悪質な違反に対しては、いわゆる連座制の強化、公民権の停止の強化その他制裁規定を整備しようとしているのであります。本改正案は、選挙制度審議会の答申に基づいて提案された質量ともに画期的な改正であり、選挙公明化のために大きな前進を約束するものであります。しかるに野党の諸君は、この改正案をもって選挙制度審議会の答申を骨抜きにしたものであると主張されますが、これは、はなはだしく皮相な見方であるといわなければなりません。改正案が答申の二、三の点について手直しをしていることは事実でありまするが、それはもっぱら憲法上の疑義を残さないための必要からであります。国会に提出すべき法案について、政府は、いやしくも憲法違反の疑義なきを期すべき義務を有することは当然であり、この観点に立って、政府が立法技術上の配慮を加えて法律案を作成して、国会に提出されたことは、当然のことといわねばなりません。
次に、改正案について野党の諸君が答申と異なると言われる三点について、わが党の見解を申し述べたいと存じます。
まず第一点は、連座制の強化についてであります。答申は、連座の対象に候補者の父母、配偶者、子及び兄弟姉妹を加えることとしたのでありますが、これは、「すべて国民は、個人として尊重される。」という憲法第十三条及び「身分によって差別されない」とする第十四条の精神に照らし問題があるのであります。すなわち、答申が、単に親族という身分を持つがゆえに連座の対象としようとするものであれば、それは、すでに解消されたはずの古い家族制度のもとにおける身分によって個人を差別することであり、時代錯誤もはなはだしいと申さなければなりません。そもそも、いわゆる連座の制度は、選挙運動において重要な地位を占める者が買収等の犯罪を犯し、そのためその当選人の選挙運動が全体として不法性を帯びている場合においてのみ認めらるべきものであります。したがいまして、単に親族なるがゆえにということでは足りません。候補者と同居している親族で、候補者と意思を通じて選挙運動をした者が悪質違反を犯した場合に当選を失わしめるものとした政府案は、当然の措置であるといわねばなりません。また答申は、連座による当選人の失格を、総括主宰者などに対する選挙違反の刑事判決の確定と同時に、自動的に生ずることとしております。しかし、憲法第三十二条は「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定しているのでありまして、いやしくも当選人の失格という重要な制裁が、裁判の手続を経ないで課せられるということは許されないところであります。したがいまして、政府案のように、検察官が訴訟を提起することにより、当選人と訴訟提起者との間の不明朗な取引を遠ざけるとともに、訴訟によって連座に該当するかどうかを適確に判断させるものとすることは、これまた当然の措置と言わねばならぬのであります。
第二点は、高級公務員の立候補制限についてであります。かりに答申のように、かつて公務員であったことのゆえをもってその立候補を禁止するといたしますならば、それは「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とする憲法第十四条の規定に違反するのではないかという疑義を、どうしても払拭されないのであります。もとより、公務員の職権を利用する選挙運動は厳に取り締まられなければなりません。しかしながら、だからといって、憲法の原則をじゅうりんしてもいいということにはならないのであります。立候補の制限ということは、国政に参加するという国民の重要なる権利を制限するものでありますので、単なる憶測や主観的な基準によってこれを制限することは、絶対に許されないのであります。そもそも、高級公務員の立候補制限が問題となりますゆえんは、公務員がその公権力を乱用、利用して、選挙運動を行なうということにあるのであります。今回、政府案が、国及び地方の公務員を通じて、地位を利用して選挙運動を行なうことをきびしく禁止するとともに、役所が組織的に動いて選挙違反を犯した場合には、その当選を失格せしめることとしたことは、けだし当然のことであり、また答申の精神を生かすものであります。
第三点は、政治資金についてであります。今回の改正案は、国または地方公共団体と特別の利益関係にある会社その他の法人が、選挙に関して政党等に寄付することを禁止しようとしております。野党の諸君は、「選挙に関する寄付」に限らず、「政治活動に関する寄付」もすべて禁止すべきであると主張されております。しかし、政党政治の健全なる発展のためには、健全なる政党の成長が必要であり、そのためには、政党の財政的基礎が確立しなければならないことは言うまでもないのであります。この場合において、政党がその資金源をどこに求めるべきかは議論の存するところでありますが、政党がみずから固有の資金源を十分に持たない現段階において、その政策に賛同する者に政治資金を仰ぐことはやむを得ないのであります。したがって、「選挙に関する寄付」を規制することは必要でありましょうが、選挙に関係のない「政治活動に関する寄付」まで直ちに禁止することには、なお検討すべき問題が少なくないのであります。政治資金一般の規制の問題は、政党制度の確立の問題と並行して慎重に検討さるべきものであると考える次第であります。
次に、わが党は、衆議院の段階において、政府案の四点について修正を行なったのでありますが、そのうち一点は、選挙の実際面からみた手直しであり、他の三点は、いずれも政府案の規定内容をより明確にしたものであります。
その第一点は、立候補届け出前の演説会についてであります。政府案のように、立候補届け出前の演説会という方法で、言論文書による選挙運動を自由にする道を開くことは、選挙に関する従来からの方向を転換する新機軸であり、考え方自体としては間違ってはいないのであります。しかし、現実の選挙の実態に照らしてみると問題があるのであります。すなわち、このいわゆる事前運動が認められることになりますと、選挙運動は年中開催されることになり、そのための費用も莫大となって、金のかからない選挙の本旨に沿い得ない面もあり、いずれにしても現在の段階では時期尚早であると言わざるを得ないのであります。
その第二点は、選挙運動のために使用する事務員に対する報酬の支給についてであります。この点について政府案は、機械的事務に従事する場合に限って報酬を支給できることといたしておりましたが、機械的事務を少しでもこえたときに直ちに買収だとすることは行き過ぎであり、選挙の実際としても同一人がこれらの事務に従事するのが通常なのであります。また、選挙運動は無償でなさるべきであるからといって、使用する事務員にまで日当を支給できないということも常識に反するのであります。したがいまして、一日一定数以下に限って使用する事務員に対して報酬を支給することといたしますのは、むしろ選挙を明朗化するものとも言えるのであります。
その第三点は、後援団体に関する規制についてであります。今回の改正案は、後援団体が選挙区内の者に寄付することを禁止し、また候補者が後援団体に対して寄付することを禁止しようとしておりますが、政府案は、当該選挙に関してこれらの行為を禁止するものとしております。しかし、このような規制は、その禁止される期間を法文上明確にいたすことが、事柄の性格上実効があがるものと考えられるのであります。
その第四点は、連座の対象となるいわゆる地域主宰者についてであります。この地域主宰者についての選挙制度審議会の答申は、「相当広範囲にわたって選挙運動を主宰した者」としており、これに関する政府案によりますと、「数個に分けられた選挙区の地域の選挙運動主宰者」となっております。しかし、数個ということは相当幅のある概念でありますので、事案によって、捜査当局の判断によって左右されたり、最終的には裁判所の判決によらなければ定まらないこととなり、特に当選人の失格に及ぶ重要な事項でありますから、これを明確にしておくことは当然であると思うのであります。
なお、国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案は、今回の公職選挙法の改正案に見合って、選挙の執行経費の基準を規定するとともに、最近における公務員の給与の改定、賃金の変動等を勘案して、選挙の執行経費の基準に所要の改正を加えたものであり、選挙の執行経費を確保するため必要なるものと考えるものであります。
以上をもちまして賛成の討論を終わります。(拍手)
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