久保三郎の発言 (運輸委員会)
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○久保議員 ただいま議題となりました鉄道新線建設緊急措置法案の提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。
この法律案は、日本国有鉄道が行なう鉄道新線建設の、緊急かつ計画的な実施を促進するため、鉄道新線建設十ヵ年計画の策定とその実施に要する国庫負担等について必要な規定を設けようとするものであります。
御承知のとおり鉄道新線の建設は国の産業開発、経済発展、あるいは地域格差の是正のためには大きな役割を果たすものであります。したがって、鉄道敷設法第一条別表により定められています予定鉄道線路は総数において二百三十一線に達する多きを数えております。
ところが、そのうち現在建設工事を進めておりますいわゆる着工線はわずかに四十八線であり、また次に着工を予定されています調査線は十五線という実情であります。しかもこれらの着工線及び調査線につきましても、現在国鉄が行なっております毎年六十億ないし八十億程度の建設資金の投資規模では、今後十年先はおろか、二十年先になっても完成を見ないのであります。今日までの建設のテンポをもって今後を予測しますならば、着工線及び調査線の合計六十三線をすべて完成させるためには四十年ないし五十年の歳月を見込まなければなりません。加えて鉄道敷設法第一条別表の予定鉄道線路二百三十一線の全部を完成させるとすれば、これは何百年もかかり、その必要とする建設資金もこれまた天文学的数字となるのであります。
鉄道新線の建設が必要とされながら、なぜこのようにそれが進まないのか、その理由は大きく分けて次の三点にあると考えられます。
その第一は、現在の国鉄の経営方針であります。国鉄はその経営が苦しいあまり、いわゆる企業性の追求に急となり、独立採算制というたてまえからも、金のもうかる面にのみその力を注ぐといった経営の方針にならざるを得ない状態にあります。そのためその本来の使命である公共的任務についてややともすれば欠けるうらみを持つのであります。しかも最近における輸送の逼迫は、鉄道新線の建設よりも、現在線区の輸送力を増強し、激増する輸送の要請にいかにこたえるかが重要な問題となってきております。すなわち輸送力増強と輸送の近代化が緊急の仕事となっているのであります。これらは三十二年度から始めた国鉄第一次五ヵ年計画及び三十六年度からの第二次五ヵ年計画を通じて示された今日の国鉄の偽らざる姿であります。
このままの状態を続けておるならば、新線建設の面において毛きわめて大きな問題が横たわっていると考えるのであります。現在、建設が進められている着工線と、近く着工する予定の調査線の全部について建設を完了されるまでに必要とされている総工費は合計して五千億といわれております。これらの資金についてどのように確保するかが大きな問題であります。すでに国鉄は第一次及び第二次五ヵ年計画を通じ、今日までの長期負債の総額は六千億に達しています。先日発表されました国鉄諮問委員会の答申によりますと、今後とも現在の投資規模を維持して国鉄が輸送力の増強、輸送の近代化を進めますならば、昭和四十五年には負債の総額は二兆四千億をこえ、支払い利子のみでも年間約千六億円、つまり予定される収入の二割が利子の支払いに充てられるという国鉄経営の破局を予測しているのであります。さらにこの推計には鉄道新線の建設を含めておりませんから、これに今日以上に鉄道新線の建設を行なうこととし、そのための借り入れ金を増加することとすれば、破局が一そう早く訪れるであろうことは論をまちません。
鉄道新線の建設のために巨額の資金を必要とし、その資金措置の困難さが、鉄道新線の建設が進まない第二の大きな理由なのであります。
加えて鉄道新線の建設は、その資金が巨額であるのみならず、完成までの懐妊期間が長く、未稼動資産となって経営上にもまた多くの圧迫を加えるのであります。これらの点よりしますならば、その建設資金の手当てをどうするかを考えない限り問題は解決しないのであります。
また第三の理由として指摘しなければなりませんのは、建設された鉄道新線の経営の問題であります。戦後鉄道新線の建設が再開されましたのは、名目的にもせよ日本が独立したといわれました昭和二十七年からでありますが、その後今日までに約六百億円にのぼる資金をもちまして、合計五十四線、二千九十六キロの新線を建設しているのでありますが、そのうち開業致しております線区は全線二十一、部分八の二十九線、六百五十一キロにすぎません。しかもこれらの新線は今日に至るもすべて赤字経営であります。今後建設されるであろうところの新線につきましても、資料によりますと、海峡連絡鉄道を除きまして、そのいずれもが、すべて赤字経営を予想されておるのであります。かりに先ほど申し上げました現在の着工線及び調査線につきまして、すべて完成したときの経営について予測してみますと、営業上生ずる赤字は利子負担を含めずして年間六十四億円をこえると予想されるのであります。このようなことでありましては、新線の建設が進めば進むほど国鉄の経営はますます苦しくなり、ごく最近の機会に決定的な破局を迎えるであろうことを予想しないわけには参りません。
また一般に、鉄道経営は巨大な固定資本を必要とするにもかかわらず、一方では安い運賃で大量輸送を行なうという公共的使命を持つものでありまして、投下資本に対して利潤の少ないのが特徴とされておる企業であります。したがいまして、従来から営業しております線区と、新しく建設された線区では、その減価償却費に大きな違いが生ずるのでありますが、それを理由として、線区ごとに違う賃率を適用し、事実上鉄道新線のみ高い運賃とするようなことは許さるべきではないと考えます。したがいまして、今日のままの状態で鉄道新線の建設を促進いたしますならば、結果において全体の運賃値上げを早い機会に導き出すこととなり、これまた私どもとして容認すべからざることとなるのであります。
鉄道新線の建設について考えます場合には以上のような現実に立って、これを一つ一つ解明し、その解答を与えてやる立場に立たねばならぬのであります。
そこで、政府提案の鉄道建設公団法案は率直に申し上げて、これらの根本的な問題には何らの解決が与えられておらないように考えるのであります。公団をつくれば、新線の建設が促進されるというがごとき、ごく単純な理解しかなされていないのではないかといわざるを得ません。同法案によれば、本年度の政府出資はわずかに五億であります。他は国鉄出資七十五億を予定しているのでありまして、この限りにおいては何等従来の建設規模と変わりがありません。このようなものであるなら別に公団を設ける意義がないと思うのでありまして、どうも納得ができない点が多いのであります。その上公団でつくりました新線は原則として有償で国鉄に貸すか譲渡するというのであります。自分で金を出してつくったものにさらに金を出して借りるといった不合理な規定が書いてあるのであります。しかもそれは前にも申しましたようにすべて赤字が予想される線区でありますから、かりに無料で借りましたといたしましても、赤字の重圧に悩まされるのは当然のことであります。しかも同法案は、赤字経営によって生ずる国鉄の負担について何らの規定もいたしておりません。それはつまり、赤字は国鉄で始末せよとのことでありましょうが、これはたいへん不合理な話であります。その上、公団ができますと、せっかく長い間の経験を持つ国鉄工事要員を二分することとなり、第二次、第三次という五ヵ年計画の過程ですでに不足が伝えられています工事要員をさらに縮小し、その弾力的運用を失わしめるといった損失、あるいは公団役職員、特に管理者ポストのみが増加する結果になるといった大きなむださえ生むのであります。
要するに公団の設置は百害あって一利なしという結果になるのであります。
もちろん政府提案の鉄道建設公団法案が出されるに至った経緯は簡単なものではございません。その基本は、鉄道建設審議会の昨年五月に出されました建議に基づくものであることは十分承知をいたしております。ところが、この建議の根幹をなすものは実は建設資金の確保に関するものであって、すなわち鉄道新線の建設は一般国民に与える有形無形の便益の増大と国家経済に与える効果の多大なることにかんがみ、国家的な政策上の見地から論ずべきであり、日本国有鉄道の企業的立場からのみこれを論ずべきではないことは明らかである、したがってこの矛盾解決の方法としては、鉄道新線の建設を道路、港湾整備等と同様に政府の公共投資とする以外にないものと思量せられる、よって今後の新線建設については、政府が公共事業として、その主たる財源を負担することが適当であると述べております。この前提に立ってのみ、国鉄と別個の組織を必要とする旨示唆したものにすぎないのであります。ところがいつの間にかこの本末を転倒し、枝葉の部分のみが持ち出され、幹の部分は置き忘れられている感が強いのであります。
このような政府案の基本的欠陥をただし、今日の国鉄の実情及び新線建設のあり方などの諸点を正しく理解する中から、ここに鉄道新線建設緊急措置法案を提案する次第であります。
申し上げるまでもなく、この法案は、鉄道新線の建設は、従来どおり日本国有鉄道をして行なわしめることを前提とし、建設公団といったような別な組織によることを考えておりません。それは、すでに申しましたところで明らかなように、国鉄か公団かが現在新線建設の問題点ではないからであります。国鉄の技術陣をもってすれば、今日予定されております鉄道新線の建設は決して不可能ではございません。いな、むしろ国鉄の技術陣の手にまたなければ、かえって多くの障害さえ予想されるのであります。さらにつけ加えて申し上げますならば、政府は現在ある公団その他の政府機関につき、なるべく合理化し、その縮小をはかろうとの方針と承知しておりますときに、公団を新たにつくるというのでは筋が通らないかと考えます。いたずらに組織をつくり、機構を複雑にするようなことは厳に慎しむべきでありましょう。
鉄道新線の建設が遅々として進まない理由として、冒頭三つの点を指摘いたしました。この三点について、どのように解明するかによって、新線建設の正しい回答が与えられるのであります。この提案は、この三点について次のように措置することが骨子となっているのであります。
その第一は、鉄道新線の建設は、単に国鉄といった企業的な立場だけから見ることを排除し、政府において、日本国有鉄道及び鉄道建設審議会の意見を十分に聞き、高い見地、広い視野より、国の政策として、本年度以降十ヵ年計画を定めることとした点であります。
もちろんこの十ヵ年計画の策定にあたりましては、法案に規定いたしました必要な手続を経ることは当然でございますが、特に、その計画を具体的に樹立するにあたって、いやしくも世間から政治路線の指弾を受けますような、政治的圧力によってそれが左右されることのないように、厳正に取り扱われることは絶対の要件であります。しかも路線の選定にあたっては、個々の路線について、他の輸送機関、たとえばバスとかトラックとかの自動車輸送との競合がどうなるかといった問題、あるいは鉄道新線の建設よりも道路建設のほうがより住民福祉の向上に役立つのではないかといったような問題など、総合的な立場に立って、科学的な検討が加えられ、今後の経済発展、地域の開発とも関連した十分な配慮がなされねばなりません。
計画がいわゆる総花式となりますと、いたずらに予算の乱費となり、十分な経済効果を発揮し得ないのみか、国としても過大投資、あるいは二重投資、三重投資の弊害となり、大きな損失を招く結果となるのでありますから、この点は、ぜひとも慎重の上にも慎重を期さねばなりません。
なお十ヵ年間の新線に対する投資規模はおおむね三千億円程度が適切妥当ではないかと考えるものであります。
第二点は、十ヵ年計画に基づく鉄道新線の建設に要する経費の半額を国において負担し、国鉄経営に加えられる圧迫を幾らかでも緩和するとともに、新線建設の隘路となっています建設資金の確保をはかろうとしている点であります。この点については、すでにるる申し述べたとおりでありまして、多くを申し上げる必要はございません。しかしながら、特に次のことについてのみ触れておくことが必要であろうかと考えます。
それは、国の負担をなぜ半額としたかということであります。本来ならば、日本国有鉄道は全額政府出資の公共企業体でありますし、きわめて苦しい経営をいたしておるのでありますから、全額政府負担であっても当然ではないかと考えるのであります。
またそういう意見もしばしば聞かれるのでありますが、現在におきましては、他の政府機関、あるいは他の道路、港湾といった公共事業に対します国庫の負担割り合いを勘案し二分の一と定めた次第でありまして、この点は十分な御論議を承りたいと考えるところです。
第三の点は、国鉄が新線を完成後、その営業にあたって免じた欠損について、国から補助を行なうことを明らかにした点であります。これは現在予想される鉄道新線のほとんどが赤字経営であろうと推測されることにかんがみ、新線の建設によって免ずる国鉄の経営上の圧迫を幾らかでも排除し、それによって、健全な経営を維持するための措置でありまして、補助をする具体的な額は、毎年度の予算によるのでありますが、その基準となります計算の方法は運輸省令で定めることにいたしております。
以上がこの法律案の提出理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
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