松本七郎の発言 (外務委員会)
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○松本(七)委員 きのうの本会議で日韓会談についての緊急質問を行なったのですが、総理大臣の答弁、もちろん外務大臣も聞いておられて奇異に感じられたと思う。もしこれを奇異に感じられておらないとすれば、少し国会議員としての感覚がぼやけているのじゃないか。今までの池田内閣の日韓会談に対する方針、それに基づいた国会における答弁、特に最近における答弁の移り変わりを見ていると、議院内閣制をとっている日本の政府が、国会での答弁をもっと真剣にして、国会を通じて国民に話をし、国民に政府の方針なり時の政府がとっている考え方を明らかにするという態度が私は欠けておると思う。国会で、答弁でその場をのがれていればいいというような態度が明らかに見える。というのは、きのうの総理大臣の答弁にこれは非常によく出ていると思うのです。具体的に今言いますけれども、外務大臣の答弁にもそういう点が考えられるのは、この間参議院の答弁で、今度の軍政四年間延長の問題で話されたときに、今の状態では、今の韓国朴政権に、合理的な提案、それからそれを妥結する能力がないのではないかという疑いを持たれた答弁をしていますね。今、それ以後、韓国の政情というものはますます混乱に陥っている。それにもかかわらず、依然として、今度はとにかく交渉はやるんだ、こういう態度。特に総理大臣の答弁を見ますと、きのうは、注目すべき点は、軍政であろうが何であろうが、そういうことはかまわないんだ、それが一つですね。それから、もう一つは、とにかく合法的でありさえすればいい、こういうことでしょう。合法的な政権であれば、それがどういう成立過程であろうが何であろうが、そういうことはかまわずにとにかくやるんだと言う。ところが、それは今までの答弁からすると今度は全く逆な答弁になってきている。それから、きのう言われたもう一つ大事な点は、民政移管ということは交渉の条件ではないんだ、こういうことを言われましたね。ところが、大平外務大臣は、小坂さんと途中からかわられたから、はたしてどれだけ池田総理の国会における答弁を詳しくずっと経過を御存じかどうか、私は知りませんけれども、いやしくも、小坂さんのあとを継いで、そして新しい方式をもって日韓会談に乗り出した以上、やはり、内閣としての今までとってきた態度くらいは当然知っておられると思うのですね。
だから、この際、そういう観点から少しはっきりしておきたいのは、第一、朴正煕を中心にしたあの軍事クーデターが起こったときに、私どもは、この政権は第一には非民主的な性格を持っている、それから、非合法的なものである、それから、非常に不安定な政権である、そういう政権を相手に日韓交渉を進めることが、両国国民の利益の観点からしても非常に危険だ、こういう観点から質問をずっとやっています。速記録を調べてもらえばよくわかる。そのときに政府の一貫して答弁されてきたことは、おもな点は大体三つある。それは、一つは、非合法的ではないということで、その合法的な政権だという理由としてあげられたのが何かといえば、大統領が依然としてあるということなんですね。尹大統領は選挙によって大統領になったので、その大統領が依然として存続しておるということ。これは速記録を見てもはっきりしておるように、朴政権が合法的だということの根拠としてこれをあげられたのです。それから、非民主的だという私どもの批判に対して、政府の言われたのは、いや、これは民政移管が約束されているのだ、民政移管ということをもって、このクーデターで政権を取ったけれども、朴政権は民主的なもので、非民主的なものと断定するのは早い、民政移管を約束しているのだから、これは民主的なものとして考えていいのだ、こういう説明だったわけです。それから、不安定についての説明としては、外国が何十カ国これを承認しているからとか、そういうこともあげられておる。しかし、これはむしろ日本の自主性の欠除を暴露するような説明であると私どもは思うのですけれども、外国がどういう態度をとっておろうが、一番大切な点は、日本政府として説明してきたことは、大統領がいる、依然として選挙で選ばれた大統領がいるじゃないか、もう一つは、民政移管するんだから、そんなに非民主的なものではないんだ、こういう説明をずっとやってきているのです。その大統領が去年の三月二十四日にやめたのです。この朴正煕のやり方というものは今後憂慮にたえない、民政移管は一応約束しておるけれども、これはただ軍服をせびろにかえるだけの形ばかりの民政移管であって、これは本来の民主主義を逸脱したものとなるのではないかという不安を述べながら、大統領は自分はとても責任を負えないと言って昨年の三月二十四日にやめたわけです。だから、日本政府が今までこの朴正煕と交渉することの根拠としてあげておった合法政権だという唯一の理由である大統領というものがなくなったわけです。そのあとの説明はそれじゃどうかというと、その肝心の大統領がいなくなったものだから、今度は民政移管一点ばりで説明してきているのです。ずっと速記録を調べてごらんなさい。ところが、今度その民政移管そのものが延期されようとしている。これは革命のときの公約違反であり、あのときの朴正熈の公約は、必ず軍部は国防の任務に専心する、政治には関与しない、こういう約束であったのが、一向そういう方向に向かわないというので、むしろ革命勢力の中から批判が出てきて、今日の事態を招いたわけでしょう。そして、もう民政移管さえ今度は軍政四年の延長でどうなるかもわからないというような状態です。こういう状態になったものだから、しかも政府はなお交渉を何かの理由で続けたいという腹がおそらくあるからでしょう、きのうの池田総理大臣のように、軍政であろうが何であろうが、そんなことは問わない、民政移管は交渉の条件ではないのだ、こういうことを公然と言われるようになった。こういうことになると、私は国会の審議というものは何の意味があるのかということにならざるを得ないと思うのです。
これらについて、外務大臣は、一体、今までの池田総理大臣あるいは小坂外務大臣がとってきた、内閣として国会に答弁してきたことにどれだけの責任を持たれるのか、私は疑わざるを得ないのです。あなたはこれらをよく調べておられるのかどうか、そして、それでもなお昨日言われたような答弁が、正しいと言われるならば、それをわれわれに納得のいくような説明をこの際していただきたい。