河野密の発言 (本会議)

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○河野密君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員花村四郎君は、七月一日朝、神田駿河台の日本大学病院において逝去せられました。私は、日ごろから花村君の清廉な人格に深く敬服いたしておりましたので、君の計報に接し、驚愕おくところを知らなかったのであります。
 いま諸君のお許しを得て、議員一同を代表し、追悼のことばを申し述べますに際して、痛恨の情さらに新たなるを覚えるのであります。(拍手)
 花村君は、明治二十四年八月、長野県南安曇郡豊科晦に生まれました。若くして青雲の志を抱いて上京し、日本大学法科に学び、文字どおり苦学力行の末、大正六年に卒業されました。引き続き母校の研究室において研さんを重ね、大正八年、弁護士として世に出られました。花村君は、郷党の先輩で弁護士であり、衆議院議員であった翠川鐵三先生を深く尊敬し、先生の歩んだ道を進むべく勉学につとめ、弁護士試験にも抜群の成績で合格されたのであります。
 当時、小作運動がしばしば巻き起こされたのでありまするが、正義感に燃える弁護士花村君は、いつも弱者の味方となって東奔西走し、小作人の利益擁護のために奮闘し、早くも少壮弁護士として頭角をあらわし、その前途を嘱望されていたのであります。(拍手)ことに、大正十四年香川県下大田村伏石に起こった小作争議、いわゆる伏石事件に際しましては、進んでその弁護を引き受け、武装警官の配置に抗議し、ついに検束のうき目を見るに至るなど、若き日の花村君の面目躍如たるものがありました。(拍手)自来、私たちは、花村君に深く傾倒し、党を異にしながらも、常に畏敬の念を失わなかったのであります。
 故鳩山一郎先生は、つとに若き花村君の才幹を認め、その人となりを愛しておられましたが、君もまた先生のこの知遇にこたえて努力を重ね、昭和七年以来、東京市会議員及び府会議員に当選し、東京市政、府政の刷新をはかり、その発展に大きな功績を残されたのであります。
 昭和十七年のいわゆる翼賛選挙に際しては、君は非推薦でありながら、当時の東京第五区から立候補し、みごとに当選されたのであります。(拍手)自来、本院議員に当選すること前後八回、十八年六ヵ月の長きにわたって在職せられました。
 在職中は、その該博な知識と豊富な経験を生かして各方面に活躍されましたが、中でも、青少年問題には深い理解と愛情とをもって真剣に取り組み、また人権擁護の立場から、科学的捜査方法の確立に特に力を尽くされました。昭和二十四年二月には、法務委員長に選任され、翌二十五年五月まで、同委員会の運営に当たられました。そのほか裁判官訴追委員、弾劾裁判所裁判長、または両院法規委員長に選ばれ、法律家としての才幹を遺憾なく発揮されたのであります。かくして、君は多年にわたり本院議員の職務に精励され、まことに大きな功績を残されたのであります。
 また、党にあっては、民主自由党、自由党、日本民主党の総務その他枢要の地位について党務に活躍されました。
 昭和二十九年十二月、第一次鳩山内閣の成立に際し、その識見と手腕を認められて法務大臣に任ぜられ、翌年の第二次鳩山内閣においても再び法務大臣につかれました。大臣在職中は、その才能を十二分に発揮して公正事に当たり、よくその重責を果たされたのであります。
 花村君は、かつて幾たびか海外に渡り、各国の司法制度その他政治経済事情について調査研究をされ、見聞を広められたのであります。一昨年の十一月には藤山経済企画庁長官の顧問として第十九回ガット各国大臣の総会に同行出席し、帰途欧州各国の実情をつぶさに視察して帰朝されました。
 君は、実に学識豊かな法律の専門家であり、多忙な時間をさいて、日本商科大学、千葉商科大学等に法律を講じて後進学徒の指導育成に当たり、また「陪審法通義」「独逸弁護士法論」等の著書をも公にしておられます。
 思うに、花村君は、すぐれた資質を刻苦勉励によって伸ばし、よく今日を築かれた、まれに見る努力家であります。権威に屈せず、信ずる道を最も忠実に進んで来られた不屈の闘志闘魂は、まさに人々を圧倒するものがありました。(拍手)しかも、高潔にして円満な人格者であり、常に誠意をもって人に接し、毀誉を離れて人のために尽くされたのであります。君が広く本院内外の人々から絶大の信望を受けておられたのも、一にその誠実な人柄によるものと信ずるのであります。(拍手)
 君は、よわい七十一歳、必ずしも天寿を全うされたとは申されません。現下政局多端の際、私どもは君のような練達にして有能な士が、さらに長く本院にあって国政に参画されることを確信しておりました。しかるに、いまにわかに君の御逝去にあい、この期待のむなしくなったことは、国家国民のためにまことに惜しみても余りあることと存じます。(拍手)
 ここにつつしんで君が生前の業績をたたえ、その人となりをしのび、衷心より君の長逝を惜しんで、哀悼の意を表する次第であります。(拍手)
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 裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙

発言情報

speech_id: 104305254X05019630706_004

発言者: 河野密

speaker_id: 28496

日付: 1963-07-06

院: 衆議院

会議名: 本会議