曾禰益の発言 (外務委員会)
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○曾祢益君 私は、この条約に対しまして賛成の討論を行ないたいと思います。明日は——今晩ですか、イギリスの外務大臣が日本に来る。これは何でもないようですけれども、日本から総理がしばしば戦後イギリスをたずね、あるいは外務大臣がたずねても、イギリスから総理はおろか、外務大臣が日本に来るということもいまだかつてなかったのではないかと思う。それは直接には、日英通商航海条約が調印され、できるならば、その批准を促進するという意味で来るのだと思う。これは考えてみると、相当画期的な事件であり、時たまたまわれわれが本院においてこの条約の審議に当たっておるわけでありまするが、隔世の感なきを得ない。かつてイギリスは、日本はチープレーバーの国である、ソーシャル・ダンピングの国である、これは残念ながら戦前はまさにそのとおりであった。戦後におきましても、日本のある外務大臣がイギリスに行ったときに、テレビに出演して、いきなり、日本が模造品、これを作っている、どうじゃとやられて大いに恥をかいたというように、イギリスがまだまだ日本に対しては非常に警戒的な制限貿易措置をとってきたことは御承知のとおりであります。これを撤廃させて、ガット三十五条の援用をやめさして、いわゆるガットの場において日英のほんとうの自由な通商関係を打ち立て、もってイギリスばかりでなく、ベネルックス、フランスあるいは英連邦の中におけるガット二十五条援用国に対する一つの足がかり、これの撤廃の足がかりを作るという意味において、私どもはこの条約に注目し、あとに申し上げるように、また同僚羽生委員がいろいろ申されておるような難点もありまするけれども、大局的な見地から、この条約に、一つのいい方向として、第一のステップとして賛成するものであります。しかし、われわれの審議の中にも明らかであったように、なるほど三十五条撤廃はできた。原則として最恵国待遇、場合によっては内国民待遇を相互に約束する形になった。しかし、その代償として、ただ単にバイラテラルな形であるいわゆるセーフガード条項とか、緊急事態に対応する留保条項があることはまだしも、現実には今日までのいわゆるネガティヴ・リスト、対日差別品目の百八十品目が、その半分近くが何らかの形で事実上差別待遇をそのまま認めなければならない。その形が、一部では残存輸入制限品目、センシティヴ・アイテムという形が残り、いま一つは、自主規制という、しかもそれが覚書交換で本条約ではない。形においては国際条約ではないという形をとりながら、現実には、この審議を通じて政府当局も認めたように、現実にはっきりした国際約束の形をとっておる、野坂委員も指摘されたとおり。これははなはだ残念なことであり、まあ少し極端な言い方をすれば、確かに名は取ったけれども実はどこまで取ったか。実を捨てたと言っては語弊であるにしろ、決して安易に楽観的に手放しで歓迎されるような内容ではないと思う。事態はそのようにシビアなものである。われわれは、外務当局が非常に苦心をしてここまで来たことを了とするけれども、しかし、こんなものは——まあこんなものと言うのは言い過ぎかもしれないけれども、この内容で、外務大臣が手放しで名実ともに取ったなんという、そういう不謹慎な態度でこの条約を迎えることは、私ははなはだよろしくない。そこで、そういう問題、内容であることを十分に承知の上で、ぜひ政府にこの際希望を強く申し上げたいのは、第一には、この条約の内容であるセーフガード条項あるいはセンシティヴ・アイテム並びにこのいわゆる自主規制というものについて、こういうものをすみやかに条約の期限内においてもなくすような真剣な努力をされることが、これは私は第一の希望である。同時に、この条約ばかりでなく、今、日本がこれを契機として、一方においては諸外国に日本品に対する差別待遇の撤廃を要求すると同時に、日本みずからが、自由化、ガットの精神に近い残存自由化をどうしていくかという大きな問題が起こってくる。それらの問題に対する対外通商政策としての確立した方針もまだ聞いていない。対内政策として毛、一体政府が何を考えておるかというと、まことに私ども不安でならない。ただ単に特定な産業を独禁法からはずして、これを自由化に備える。これは私は全然それを不必要であると言うのではございません。ややもすれば独禁法の穴抜けをねらうようなことになってはならないし、それが国の戦略的な産業、たとえば特殊鋼なり自動車なんかにどういう程度のことをやるのが妥当であるかというようなことについて、十分な考慮がめぐらされていない。いわんや、日本のひよわい中小企業なり、あるいは輸出産業の一つの基盤である中小企業なり、日本のもう一つのひよわい産業である農業がどうして自由化に対して守られていくのか、それらの問題について、いわゆるガットの場においてでけっこうであるけれども、あるいはバイラテラルな条約で、ほんとうに広い意味でセーフガードの条項を一体どういうふうにしていくか、対外対策の基本方針というものをわれわれは一つも示されていない。そういうことでは非常に私は心もとない。それから対内政策としても、今申し上げたように、単に大きな産業、この産業を保護しなければならないことはわかっても、その保護にのみ走らずに、中小企業なり農業に対する基本的な体質改善で自由化に向かえるような基本的政策がない。
それから第三に、一番基本的な問題は、まだまだ日本が、ヒューム外相が来て大いに外交辞令でいろいろはなやかな面もあるでしょう。それからさらには、去年の九月にエコノミストが・日本をもう一ぺん見直そうじゃないか——コンシダー・シャパンという特集版みたいなものを出して、日本の経済に対する見方を変えてくれ、これは決して池田内閣の所得倍増計画の成功ではなくて、日本の勤労者の団結や、日本のそういう努力の結果、いわゆる近代的な工業国の段階に近づいたということに対する認識だと思う。だが同時に、日本のまだ賃金水準は低い。したがって、ほんとうにイギリスとの間にこういういろいろな差別的な残存するセーフガードその他を撤廃しようと思うなら、やはり日本がこれだけの世界に経済成長率を誇っておる反面において、日本のまだ賃金が低い。そういう問題を直して、いやしくもそういった差別待遇の一切の口実を与えないようにするという基本的政策というものが私は確立されなければいかぬ。
以上、私どもの基本的な考え並びにそれに基づく希望を付しまして、本案に対する賛成の討論を終わります。