藤田進の発言 (本会議)
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○藤田進君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま御説明になりました河川法案について、若干の質疑をいたすものであります。
今度のこの法案は、従来の河川法を廃止して新しく創設するというものであります。従来のものが、御説明のように、七十年前、明治二十九年、日清戦争の直後に、法律ということよりも、命令を保護するという法律の姿で提案せられまして、当時、伊藤内閣が自由党の——自由民主党ではなく自由党との妥協によって成立したものです。世論もかなり反撃をもって、当時の記録を見ますと、不人気な法案であったことはもとよりでございます。自来七十年間、その法文においては依然として命脈を保って参りましたが、しかし、実体的にはかなり内容の変化を遂げて参りました。その間、大正年代以来たびたび改正の議が起こりましたが、しかし、その間、実を結んだ例がなかったのであります。
今回、最近における各般の社会経済的発展の背景があるということで、池田内閣が現行法に終止符を打って新河川法を提案せられたのであります。このこと自体につきましては、一応の賛意を表するものであります。
しかしながら、このような重要な法案を創設するにあたりまして、その準備過程における政府の態度並びに法案の内容を考えてみますと、きわめて遺憾だと言わなければなりません。すなわち、わが国ほど水の依存度の高い国は他に例を見ないのであります。したがって、河川に関するところ一般の公共に及び、また水の流動性、破壊性及び公共性より、水を治め、水の利を調和せしめ、公共用物としての河川を、機能的に、その保金と利用に関する実体的基本法たるこの河川法につきまして、ただ建設省にまかせっ切りであったと言わなければなりません。過去、農業基本法を初め、あるいは労働基準法その他、また現在採用されつつある刑法等々を見ましても、それぞれ長い時間をかけ、あるいは審議会を設け、公聴会等を経て、そして国会にかなりゆとりのある時間に提案をされているのであります。しかし、本法案は、慎重審議の上すみやかに可決されたいとは言われますけれども、もうすでに会期もあとわずかであります。後議院である参議院として、まことにその間の時間的あるいは内容的に問題があると言わなければならないのであります。特に建設省は、この法案の前段である要綱案の発表を二月二十七日にされているのであります。その発表いたされますや、全国の知事会とか、あるいは自治省その他の強い反対を受けまして、農林、通産、大蔵など、関係各省との折衝が非常に難航いたしまして、法案の見通しを危ぶんだのであります。知事の意見を十分聞かないで、また、建設省の付属機関で現在設置法の中にある河川審議会の議を経ていないで起草提案をされたというのが、実情であるのであります。私どもは、過般の地方選挙でも、地方・中央の直結政治、知事と中央の直結ということが非常にやかましく言われたのでありましたが、この直後のこの法案を見ますというと、まさに中央直結の政治の実態というものを知るのであります。知事が全面的に毎日のように反対をしてきている理由をあげている、こういうものは聞かないままにここに出されているということを痛感するのであります。河川行政は、広く、国民の安寧福祉、産業経済の発展に重大な影響を及ぼすことはもちろんでありますが、地域住民に密着すること、また必然であります。この重要法案について、学識経験者あるいは地方の関係当局等、各方面の意見を十分聴取するところの時間的余裕がこの上とも必要であると私は思うのであります。これらにつきまして、総理並びに建設大臣の所見をお伺いいたすところであります。
質問の第二は、本法案を提案しなければならなかった社会経済的な背景についてであります。
近時、水害の頻発によりまして治山治水の重要性が一そう痛感され、このために河川管理の責任体制の適正化、明確化が要請されて参りました。また、水資源の利用が、工業あるいは都市川水等の逼迫から、高度化、多面化いたしまして、河川利用が機能的に競合する度が強くなり、水配分の適正化が緊急要事となりました。そして、河川利用の高度化に対応して、大規模なダムあるいはダム群、大規模取水施設等の河川工作物が多くなり、これが河川状況、河川の利用形態等々に種々の影響を与えまして、これに対応すべき河川管理を明確にする必要があり、さらに、以上の諸問題を含みつつ、水資源の開発、利用、保全の総合化、これが水系的、広域的、総合開発的な重要機軸となってきたことなど、これらが理由であるのでありましょう。しかし、河川をめぐって治水利水両面の利害対立はもとより、水利用の相互間でも、電源開発とか、あるいは農業用水、上水道、特に工業用水などの間に利害対立を生じまして、さらに水質汚濁問題が生ずるなど、河川をめぐる社会経済的利害は二重三重に交錯対立しているのであります。そして、これらの利害を代弁する行政機関は数省に分立しているのであります。元来、治水に重点を置く建設省は、河川は単一の管理系統によって管理されなければならないとし、それでなければその責任は果たし得ないという立場をとっているのであります。これは新河川法案を通じても明確になっているところであります。そこで、問題は利水についてであります。農業用水に重要関心を持つ農林省は、農業用水権の内容についてその優位性を認め、また、通産省は発電水利、工業用水等について、また、厚生省は上水道用水を、さらには運輸省は港湾区域内での港湾行政と河川行政の問題があるのであります。また、これに加えて、上流地域は、砂防行政、治山保安林行政など、総合統一的運営をはかる必要があるのであって、特に利水における水系ごとの利水計画は総合性を要する重要課題であります。建設大臣は、各種の利害や見解の相違を代弁する関係行政機関の長と協議をいたしまして、その調整の任に当たることといたしておりますが、今年三月、行政管理庁が勧告しているように、利水計画の総合性を促進するためには、水行政協議会の制度を活用する必要があるとし、また水利調整の制度としては、一県内事業については、知事の調整義務を河川法に明確化し、知事で調整困難なもの及び二府県以上にわたる事案については、水行政地域協議会というような調整機関を調整の揚として設けて、協議会が積極的に調停あっせんをはかることが、実際的であると指摘しているのでおります。総理は、このような犬牙錯綜する利水調整を、建設大臣にその責任を負荷するだけで十分遂行し得るとお考えになりますかどうか、これら調整機関の設置の必要性について明確なる御答弁をお願いいたすのであります。通産大臣、自治大臣は、建設大臣が調整責任を持つことだけで十分だとお考えになりますか。他に調整機関としての協議会等の設置が必要であると考えられるのでありますが、この点の御所見をお伺いいたします。
第三は河川は公共用物と明定しただけで、従来のように私権の制限条文を規律しなかった理由と、河川行政の影響についてお伺いするのであります。
河川の物理的概念といたしまして、「自然水流または自然水流の流水の疏通を良好ならしめるための築造された人工水流」であるとされているのであります。しかるに、水流とは、流水とその地盤をなす敷地との総合体をさすのでありますが、流水は常にその水量に増減があり、いかなる部分をもって河川区域とするか、第六条の規定はきわめて不分明であります。したがって、河川現況台帳及び水利台帳の調整はきわめて必要となって参ります。現在の河川法におきましてもこれが規定されているにかかわらず、きわめて不整備であるのであります。本法を契機に調整を期することができるかどうか、建設、自治両大臣にお伺いをいたします。
第四の点は、政府の水行政に対する諸施策の重点は、治水と利水のいずれを指向しているかという点であります。この法案は、河川を水系として考え、治水、利水を両立いたしております。これは必然的にダム群の構想が背景にあることを示しているのであります。ところで、法第四十六条から第四十九条まで、ダムの操作、危険防止のための措置及び記録の作成等に関する規定でありますが、ダム設置者に対する義務規定だけであって、河川管理者の責任は不明確なのであります。何となれば、ダム群の洪水調節の技術は、水文学上の進歩はありましても、いまだ完成の域に達しておらないのであります。洪水調節と称しながら、実は利水のための調節操作を行ない、下流部を危殆に陥れた事例は、多目的ダムその他で幾多の事例があるのであります。特にダム群による洪水調節の場合、ダムの埋没は、それ自体が命取りになるのでありまして、たとえば長野県の美和ダム及び高遠ダムのごときは、一洪水によりまして実に三〇%余りの土砂で埋没をみたのであります。法第十六条で、河川管理者は一水系ごとの工事実施基本事項を定めることといたしておりますが、国土の保全及び開発は、何と申しましても洪水防御にあるのであります。洪水防御が先行しなければ、いかに利水施設が完備されましても、洪水の前に屈服することは必然であるのであります。私は、かく考えますがゆえに、総理及び建設大学並びに利水機関を代表して通産大臣等に、いかようにこれらの点をお考えになっているか、御答弁を願うものであります。
第五は、河川の費用負担についてであります。
河川管理に要する費用の負担原則として、一級河川にかかるものにあっては国、二級河川にかかるものにあっては都道府県の負担と明らかにしております。しかしながら、一級河川にかかる管理及び修繕に要する費用について知事に管理委任した指定区間につきましては、建設大臣管理の場合とその費用負担に格差をつけております。また、河野建設大臣の当初の考え方は、一級河川の管理権は国に移す、そのかわり維持管理費は全額国庫で負担するというものでありました。ところが、全額国庫負担について大蔵大臣は非常に強い反対をされまして、結局、総理の裁断となったところであります。これは昭和四十四年度までは現行どおりで行なうのだ、そうして治水十カ年計画の完了を待って再考するというものであります。ところで、河野建設大臣は、機会あるごとに治水十カ年計画は改訂するのだと言明しておられる。したがって、早晩、一級河川を四十河川程度にすると言われますと、現在の直轄工事の河川のほとんどが二級河川となります。二級河川でありましても、きわめて重要水系が、その地域性に応じて起こってくることが非常に必然性として考えられるのであります。また、大災害が発生して大規模工事が必要となる場合も想定されるのであります。その場合、四十四年度までは現行どおりだと言われましても、地方にとっては重大な問題であります。現在の地方財政力からいたしましても、とうてい一公共団体だけの力では遂行し得ない場合が生じてくるのであります。自治大臣は、この変則的な費用負担について何ゆえに合意されたのであるかをお伺いいたします。大蔵大臣は、かかる負担をもって河川工事が支障なく遂行できるという確信がおありになるか、負担に格差をつけた理由と合わせて明確な御答弁を願いたい。
最後に、この法案では、政令、省令の委任が約八十あるのであります。きわめて不分明な法案であり、また関連する他の法律の条文整理も行なわれず、実に奇態な法案であります。したがって、これらの内容が明示されない限り、めくら判を押せということになる。何といたしましても、水に関連するわれわれ社会経済生活の実態は、ただ河川法によってのみ、そのワク内だけで解決できるものではありません。現に水制度に関連する法律は実に多種多様に及んでいるのであります。このような状態でございますので、将来一定の調整機関というものを設け、そうして治水利水両面にわたっての諸法律を調整される必要があると、このように考えているものであります。その総合調整が行なわれるという確信がおありであるかどうか、総理並びに関係大臣にお伺いいたしまして、私の質問を終るものであります。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕