矢山有作の発言 (本会議)

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○矢山有作君 私は、日本社会党を代表し、このたびの異常な長雨による災害に対し、政府にその対策をただすものであります。この際、まず被災農民の諸君に心からお見舞を申し上げます。
 さて、昨年末から本年当初にかけての異常寒波に引き続く、四、五月以来の長雨による災害は、西日本全域において想像に絶するものがあり、加うるに、この災害は現在東日本にも及びつつ、次第に全国的な広がりを示し、その被害は日増しに増大し、まさに未曾有の災害というべき様相を呈しております。すなわち、四月下旬から降り始めました長雨は、関東以西の各地方において気象台創設以来の降雨日数となり、また日照時間がきわめて短く、しかも降水量は平年の三倍、気温は平年に比べて、最高気温はやや低目でありますが、最低気温は著しく高く、そのために平均気温が高い。したがって、まれに見る高温多湿で、圃場は過湿の状態が続きました。そのために、麦類は腐れて病害が蔓延し、焼き捨てるしか方法のない状態で、実質的には収穫皆無といってよいありさまであり、たとえ多少の収穫があったにしても、品質はきわめて悪く、そのほとんどが政府買い入れ対象外になると見込まれ、果樹も病害が発生し、生理落果を起こし、収穫皆無のおそれがあるし、野菜、菜種、その他の工芸作物についても、根腐れ等により収穫激減が予想され、さらに水稲にもその被害は及び、苗の軟弱、また病虫害の発生が伝えられております。予想もできない未曾有の大災害であり、西日本の農作物災害だけですでに六百億ともいわれておりますが、事態が明らかになるにつれ、とてもこれだけでとどまりそうにはなく、さらに被害額は巨大なものになると思われ、農民諸君の不安と焦燥は見るに忍びないものがあります。過去半年に及ぶ労働が実を結ぼうとするやさきに、収穫不能になった麦にみずから火をかけて焼き捨てる農民の悲しみを見るときに、天災だといって片づけておくわけにはいきません。農業基本法は、農業の自然的、経済的、社会的制約による不利を補正し、農業従事者が他産業従事者と均衡する生活を営むことを主眼としております。今次災害は、農業の自然的制約による不利の端的な現われであります。災害対策として政府の考えているところを見ると、単に従来の制度の範囲内でとりうる施策を述べたにすぎず、これでは、政府自身の言う、未曾有の災害に対処して農業の自然的制約による不利を補正する積極的施策とは言い得ません。全国の農民は、農業基本法下初めての未曾有の災害に対する政府の施策はいかなるものかと注視し、大きな期待をかけております。今後の営農と生活の不安におののく農民に対し、再生産の意欲と方途を持ち得るように、従来の施策にこだわらず、新たな立法施策を講じ、積極的な災害対策を打ち出していただきたいと存じますが、総理の基本的な御方針を承りたいと存じます。
 また、災害対策としては、災害対策基本法を初め、数多くの立法がなされておりますが、それは主として施設災害に対するものであり、農作物に対する災害に対し、農民の営農と所得を補償するものとしては、農業災害補償法、天災融資法、自創資金融通法などがあり、しかも、これらの立法は複雑多岐でありまして、その運営において、十分な効果を発揮しておらないのが実情であると思いますが、これではとうてい、このたびのような異常災害に対処し、被災農民に希望を持って立ち上がらせることが困難であります。そこで、農作物災害に対し、農民の営農と所得を補償するために、いわばこれらの天災を国家で補償する、そういう趣旨の立法をなさり、かつまた、罹災によって一時的生活困窮に陥る者の救済のために、援護法のごときものを制定される御意思はありませんか。この点につきまして、総理の御所信を承りたいと存じます。
 以上の根本的な立法措置は、このたびの災害にかんがみ、今後の災害に対処する恒久的な措置でありますが、以下、今次災害に対する緊急措置として、それぞれ御所信を承りたいと存じます。
 まず最初に、農林大臣に数項目についてお伺い申し上げます。
 第一に、天災融資法のすみやかな発動と、長期低利の営農資金の融資であります。今度の被害は、きわめて甚大であり、それに加えて、今冬の降雨と豪雪等によりまして、農家は農外収入も激減をいたしておりまして、営農資金に非常に苦慮いたしております。この点につきましては、先ほど激甚災害地域に指定するという農林大臣のお話がありましたが、激甚災害地域に指定する場合の基準は、きわめてきびしいものがあります。この基準を緩和し、広範に激甚災害地域に指定をされるようにお願いしたいと存じます。
 さらにまた、この際、特に天災融資法をもってしては救済しがたい被災農家に対して、長期無利息の資金措置を講ずる特別立法をやるべきだと存じますが、これに対する御所信もあわせて承りたいと存じます。なお、これらに対しましては、特に大蔵大臣からの御答弁もお願いいたします。
 次に、自作農創設維持資金については、災害資金貸し出しワクの拡大とともに、早急に追加割当をやっていただきたいということ、また、災害による収入減対策として、特に生産性、収益性の高い蔬菜園芸の不時栽培を振興する必要があると思われるので、これら振興地域に対する新しい技術導入のために、農業改良資金のワクの増大についても配慮されたいと存じます。
 なお、先ほど御質問もありましたが、すでに制度資金等による融資を受けているものに対しては、償還期限の延期の措置をとることはもちろん、これら資金の借り入れ手続については、できるだけ簡素化をはかっていただくとともに、すでに被害農林業者の中には、被害多額のために、牛を売り払うなどする者も続出している実情ですので、早急に要求に応ずるよう措置されたいのであります。
 また、農協は、農家に対し肥料等の貸付を行なっており、これは農作物の収穫によって回収しておりますが、今次災害により回収不能となり、その上、被害農家の預金引き出しの傾向も出てくることを考えると、農協の経営については、資金手当等に格段の配慮を加え、系統資金の利用に遺憾なからしめるよう措置する必要があると思いますが、御方針を承りたいと存じます。
 第二に、本年産麦類の政府買い上げについてであります。今次長雨による被害は、特に麦類においてはなはだしく、収穫皆無にひとしい状況でありますが、多少の収穫があったにいたしましても、政府買い上げ対象外の等外下がほとんどであると考えられます。かつ、共済加入の状況もきわめて低位であることを思いますとき、農民所得の減少を極力緩和するために、これら等外下麦についても、その全量を政府の責任において買い上げるための特別の措置をとっていただくことを強く要望いたします。農林大臣は先ほどの御答弁で、等外下につきましては、仕分けして、えさに向くものは農協系統に買い上げさせ、えさにも向かぬものは、共済の損害評価にあたり、収穫のないものとして取り扱うという意思表示をされておりますが、農協系統に買い上げさせるにいたしましても、政府の責任において、かつ、等外下全部について買い上げの措置をとっていただきたいのであります。なお、共済金の早期概算払いの措置をとることはもちろん、損害評価にあたっては、現地の被害実情を十分に反映するように措置されたいと存じます。
 第三は、麦類、菜種、野菜その他の種子の確保と購入費助成についてであります。長雨による湿害、病害で、種子の生産見込みも大幅に下回ると予想され、その確保はきわめて困難と思われますので、早急に種子確保対策及び種子代に対する全額助成の措置をとっていただきたい。
 第四は、病虫害防除対策についてであります。被害の主因は湿害と病害によるものであり、特に病虫害は今後多発の傾向にあります。各地の農業試験場の予測によりましても、ことしは水稲のシマハ枯病その他の病虫害の大発生が予想されるといいます。もっとも、すでに各所に発生を見ておりますが、したがって、防除のために多量の農薬を必要としますので、これが購入代金については、特別の助成措置をとっていただきたいと存じます。政府は、従前は、種子、農薬、肥料等については補助金制度をとっておったのに、最近、融資に切りかえておられますが、災害に際してまで、融資はしてやるが補助はしないというような、冷酷な態度は絶対におとりにならぬようにしていただきたいと存ずるのであります。
 なお、病虫害の早期予察と適期防除について万全の対策をとられるとともに、ことしは気象庁の予測によりましても冷害の心配もありますので、今後の稲作については、周到な配慮のもとに、適切な指導体制をとっていかれることが必要であると存じますが、これらについての御方針を承りたいと存じます。
 第五は、食糧用及び飼料用麦の被災農家への格安の払い下げ措置についてであります。大臣は、食用麦については市場に流通しておるから、それを購入すればよいと言っておられますが、被災農家の所得の激減と飼料不足に対処いたしまして、政府所有の麦類を農協を通じて格安で払い下げる措置をとっていただきたいのであります。
 第六に、この際、特に要望申し上げたいのは、現在何らの補償措置もない果樹、野菜等、園芸作物に対する救済措置であります。これら農産物は、選択的拡大の名のもとに、政府によって強く奨励されてきたものであり、しかも、農家は、これに対しては、多額の資金と労力とを注ぎ込んできております。したがって、今次災害による農家に与えた物心両面の打撃はきわめて大なるものがあります。しかるに、これらに対して何らの救済措置もとられぬということでは、政府は、無責任、無慈悲のそしりを免れないと思います。適切な補償措置がとられ、これら農民をして再生産の意欲を持ち得るように、格別の御配慮をいただきたいのでありますが、これについては大蔵大臣からも御所信を承りたいと存じます。
 第七には、農業共済団体等の事務費補助金の増額についてであります。今次被害は、全筆にわたり、かつ、生育不ぞろいによる評価の長期化及び再評価等、現地評価日数及び事後処理事務の極度の増大のため、組合等、連合会の経費が増加いたしますので、このたび要した損害評価事務費の全額を助成されたいと思うのであります。
 最後に、長雨による田畑の損壊、堤防、取水口等の農業用施設の災害も出ておりますが、これら土地生産力の低下を来たす災害個所の復旧は早急を要するし、とりわけ、これからの稲作にたちまち差しつかえる灌漑用水路の損壊については、早急に復旧の措置をとっていただきたい。なお、今後の集中豪雨等により、災害の多発が予想されますが、それに対しても万全の対策をとっていただきたいと思いますが、これに対しての御方針を承りたいと存じます。
 次に、大蔵、自治、厚生の各大臣にお伺いいたします。被災農民の多くは、当分の間、無収入の状態が続くと思いますので、この対策としては、第一に、国税、地方税の減免に際して、被害による減収を十分織り込んだ配慮が必要であるし、また徴収猶予の措置も必要であります。第二に、生活保護法の弾力的な運用、世帯更生資金の貸付ワクの増大も必要になってくると考えられます。また、被害地の地方自治体は、災害により歳入が減少し、一方、支出の増大が免れ得ないところであり、財政的に困難を来たすことは明らかでありますとともに、適切な災害対策をすみやかに進めていきますためには、普通交付税の繰り上げ交付はもちろん、つなぎ融資や起債、特別交付税の交付についても、特段の配慮がなされなければならないと存じますが、これらの諸点について、それぞれ主管大臣からその御方針を承りたい。
 次に、災害対策の完全なる実施を期するためには、先般の豪雪被害、旋風及びひょうによる被害等とあわせて、この際、すみやかに補正予算を編成し、財政的裏づけをすべきであると考えますが、これについての総理のお考えを承りたいと存じます。
 最後に申し上げたいことは、農業基本法はできましたが、その目標として掲げられた農民と他産業従事者との所得は、均衡するどころか、ますます所得格差は拡大しております。かつて、政府のから宣伝によって農民に夢を抱かせた農業基本法は、今や、農民に大きな失望を与えつつあります。失望の中にも、農民は、その生産と生活を維持するために、懸命に苦闘を続けております。そのさなかに未曾有の大災害におそわれ、しかもその被害の度は拡大の一途をたどっております。私は幸いにして、去る十日から昨日まで、中国地方の災害実情の調査に党から派遣され、つぶさに現地の被災状況を見、また被災農民の諸君と語る機会を得ました。いつもの年ならば、発動機や脱穀機が景気のいい音を立てているころなのに、ことしは、どこへ行きましても、田畑に人影さえまばらで、ただ刈り集めた麦を焼く白煙があちこちに立ちのぼり、そのそばで手をこまねき、悲痛に顔をゆがめた農民の姿が見られるのみで、農村は不気味な静けさに包まれております。そうして被災農民の心配は、さらに今後に予想される稲作の被害に及び、文字どおり不安と焦燥のただ中にあり、とても、週末を箱根で楽しんだり、ゴルフに興ずるなどということは、及びもつかぬことでございます。私は特に総理並びに農林大臣の郷里の広島の農民諸君と話す機会を得ましたが、その人々は異口同音に、総理、農林大臣にこの悲惨な農村の被災の実態をぜひ見てほしい、われわれ農民の悲しみをはだで感じてほしい、そうして、農業基本法に定められたことが、うそでない証拠を、抜本的災害対策を打ち出すことによって実証してもらいたい、それでなくてはわれわれ農民は浮かばれないと、総理に伝えてくれと叫んでおります。このマイクを通じて、被災農民の期待にこたえるべく、総理初め各大臣のあたたかい思いやりのある御答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 104315254X02519630614_014

発言者: 矢山有作

speaker_id: 25740

日付: 1963-06-14

院: 参議院

会議名: 本会議