田中角榮の発言 (本会議)
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○国務大臣(田中角榮君) 加瀬さんの御質問に対してお答え申し上げます。
在来は企業減税を中心にやっているのであって、所得税に対しては非常に薄いという御質問でございましたが、財政演説で申し述べましたとおり、過去に一兆一千五百億にのぼる減税をいたしましたが、その九〇%に近いものが所得税減税であるという事実をもってみましても、この内閣が所得税中心の減税をやってきたということは事実であります。
それから第二点は、企業、輸出振興、貯蓄等の独占企業を中心とした租税特別措置法について、改廃の意思があるかということでございますが、今、総理が述べられましたとおり、租税負担の公平の原則もありますし、いろいろな意味から考えまして、これらの特別措置がなくても、日本の産業、日本の経済がりっぱにやっていけるような日本をつくることが目標であります。しかし、ここで申し上げておきたいことは、日本は貿易依存の国であります。これは私が言うまでもなく、明治初年から、日本の生糸やお茶のみを輸出をして、われわれ九千六、七百万の民族がここまで生きてきたのではないのであります。御承知のとおり、戦後の管理通貨の日本の貨幣、いわゆる外国に対する裏づけは何によってやっているかといいますと、国際収支の問題であります。いわゆる日本の貿易が伸びて、外貨の裏づけがあるかないかによって、日本の経済はきまるのであります。お互いが今、公共投資をやろうとか、また文教の拡充をやろうとか、お互いの実質賃金を伸ばそうとか言っても、一にかかって国際収支にあることはおわかりのとおりであります。国際収支を前提としないでわれわれの生活をレベルアップしようなどということは、これは夢であって、実現性はないのであります。そういう意味におきまして、日本の貿易を伸ばすために、御承知の、来年の春を目標にしまして、IMF八条国に移行し、ガットにおける関税一括引き下げに前向きの態勢で臨むという、しかもOECDに加盟して資本の自由化をはかろうということは、こういうふうないわゆる貿易・為替の自由化体制を進めなければ、日本の輸出は伸びないのであります。自分が貿易・為替の不自由化をやっておって、しかも外国に日本の物を買えと言っても、言い得てできないのであります。でありますから、開放経済体制に向かいまして、産業の基盤拡充のため、また、資本蓄積のため、種々の特例を行なうことで、所得税減税と同じ目的を達成しなければならないのであります。皆さんは、ただ所得税だけを減税すれば一般国民の生活が楽になると言っておりますが、しかし開放経済に向かいまして、日本の産業が——日本の基幹産業が現在の石炭企業や海運企業のようにみんななってしまった場合に、一体、生活の源泉は守れるでしょうか。この事実を無視して日本の経済対策は成り立たないのであります。そういう意味におきまして、開放体制下において、この特別措置につきましては、これを改廃するというよりも、一部強化をせざるを得ない状態にあることは、御承知のとおりであります。しかも、そうすることによって、お互いの開放体制に対処するりっぱな国際競争力ができて、やがてわれわれの将来は約束をせられ、実質賃金が上がり、生活がレベルアップせられるのだという事実を、お考えいただきたいと思います。その意味におきまして、所得税減税を進めますとともに、これら特別措置におきましても適切な減税を行なって参りたい、かように考えます。
〔国務大臣早川崇君登壇、拍手〕