堂森芳夫の発言 (本会議)
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○堂森芳夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提出の昭和三十八年度補正予算案に対し、反対の討論をいたすものであります。(拍手)
反対の第一の理由は、本補正予算の提出の経過についてであります。
本年十月、臨時国会が開かれました際、政府は補正予算案を提出し、総理は、本院に対しすみやかなる審議を求め、また、大蔵大臣は、そのすみやかなる成立をお願いすると要請をいたしたのであります。これにこたえまして、わが党はすみやかに審議に入り、その成立に協力する態度を明らかにいたしたのであります。ところが、これに対しまして、総理は、審議はお願いいたしましたが、どうしても通してくれとは申しませんと、この壇上から放言をいたし、直ちに本院を解散いたしたのであります。一体、政府が国会に案件を提出するにあたって、審議はお願いするが、必ずしも成立しなくてもよいなどという、言語道断のことがはたして許されるでありましょうか。(拍手)
いずれにいたしましても、さきの解散、総選挙によりまして、補正予算の成立は、自民党政府の党利党略のために、さらに、具体的に言いますならば、自民党内の一派閥の利益のために、あわてふためいて解散を行なったために二カ月もおくれたのであります。しかも、この二カ月の間に補正予算の内容が少しでも改善されたというのでありますならば、政府もいささか弁解の余地がありましょうが、全くそのような事実はないのであります。これでは、二カ月の間、一体政府は何をしていたのかといわざるを得ないのであります。これが反対の第一の理由であります。
第二は、この補正予算の性格についてであります。
池田内閣発足以来、この三年の間に、物価は上がり、格差は広がり、不安は増大をいたしたのであります。総理が経済成長率や国民総生産につきましてやたらに数字を並べ、得々と語っている間に、犯罪と交通事故はふえてまいっておるのであります。特に物価の値上がりは国民生活に大きな圧迫を加えており、それが池田内閣への批判となってあらわれ、閣内でも意見の不一致を見るに至っておるのであります。総理は、さきの臨時国会で、本院におきまして、一両年中に物価を安定させると言明をいたしたのでありますが、それから間もなく選挙中に卸売り物価まで上がり始め、卸売り物価だけは上がらないからだいじょうぶだと言っておられました総理の強弁は、またまた事実によって裏切られたのであります。その上、選挙後、池田内閣が物価対策としてまっ先に着手しようといたしておるのは、実はタクシー料金の値上げを認めようということであります。政府のやり方を見ておりますと、国会開会中あるいは選挙の際には、公共料金の引き上げには口をつぐみ、国会が終わるか選挙が済めば、公共料金の引き上げを認めるというやり方であります。
一体、公共料金を引き上げながら物価を安定させるなどというようなことがはたして可能でありましょうか。(拍手)その不可能であることは、過去三年間の物価の値上がりが証明しているところであります。要するに、池田総理は、物価が少々上がっても経済さえ成長すればかまわないという考え方を持っているからであります。このような考え方に対し、さすがに池田内閣の中でさえ批判が起きております。たとえば、佐藤国務大臣は、国民は物価安定に二年も待てないと、公然と批判をいたしたのであります。また、さきに物価懇談会でも、公共料金値上げは一年間ストップという結論が出たのであります。ところが、この補正予算には、物価対策として具体的にどうするという経費が全く無視されており、これでは、さきの選挙中の物価安定の公約は全くほご同然だといわざるを得ないのであります。(拍手)これが反対の第二の理由であります。
反対の第三の理由は、国家公務員給与改定の内容についてであります。
本年八月、人事院勧告が発表されました際、わが党はこれを批判する声明書を出し、その態度を明らかにいたしたのであります。一つは、人事院の調査が実態を正確に把握していないことであります。二つは、民間給与に比べて勧告の水準が低いことであります。三つは、勧告の時期が常におくれていることであります。ところが、このたび政府が提出いたしました給与改定案は、この勧告をさらに下回り、五月実施の勧告にもかかわらず、政府案は十月実施となっているのであります。また、物価値上がりの今日、公務員が最も関心を持つ格差是正につきまして、内閣総理大臣は二十六万円から一挙に四十万円と、十四万円の値上げとなっておりますが、初任給の引き上げは、そのわずか百分の一の千四百円の値上げとなっているにすぎません。池田総理が所得倍増を唱えてから上がったものといえば、物価と総理大臣の給与だと世間で言われておるのは当然と申さねばならぬと思うのであります。(拍手)政治家の当然の心がけとして、天下の憂いに先立って憂え、天下の楽しみにおくれて楽しむという名言がありますが、今回の総理大臣の給与の引き上げを見ますと、池田総理は天下の楽しみに先立って楽しんでいるとしか思えないのであります。これでどうして国民の先頭に立つ政治家といえるでありましょうか。これが反対の第三の理由であります。
反対の第四の理由は、事故対策についてであります。
本補正予算では四百四十三億円の国鉄東海道新幹線工事費の穴埋めの予算を計上しておりますが、これほど国民の感情を無視した予算はございません。新幹線局長でありました大石常務の収賄、逮捕事件まで引き起こしました予算の乱費、計画のずさんさから八百七十数億円、最終完成までには千二百億円の予算不足を来たしたといわれております新幹線工事は、オリンピックまでとのかけ声で、国鉄の最重要事業として現在拍車をかけておりますが、この反面、昨年の三河島、本年の鶴見事故と、いずれも百数十名の死傷者を出す大事故が相次いで起こっているのであります。これらの事故は、先日わが党の緊急質問の際、石田国鉄総裁が明らかにしましたように、池田所得倍増政策による施設能力を無視した輸送増強要請に基づく過密ダイヤがその根本原因であることは明らかであります。しかも、東海道新幹線予算乱費のため予算不足を来たしました分を、三十八年度の国鉄一般予算のうち、安全保安対策費であります取りかえ、改良工事を延ばし、これを東海道新幹線のほうに回して使ったのであります。東海道新幹線のために保安対策がなおざりにされていたのでありますから、大事故が頻発するのは当然のことと申さねばなりません。したがって、現在最も緊急を要することは、新幹線工事のために押えられておりました踏切改善とか車内警報、自動停止装置の増設、信号機の改良、構内改良などの緊急保安対策を急ぐことであり、この経費を当然今回の補正予算に計上すべきなのであります。一般国民にとりまして、東海道新幹線がオリンピックまでにできようができまいが、あまり関係のないことであります。このような多額の予算があるのであるならば、毎日すし詰め電車に詰め込まれ、しかも、常に大事故の恐怖にさらされておるサラリーマンとその家族を安心させてくれというのが偽らざる世論であります。
また、三池三川鉱の世界史上にもその例を見ない大災害に対して、政府は、石炭鉱業合理化事業団から整備資金の十億円の繰り上げ融資をしたのみで、その後の保安確保対策、遺族補償対策、罹災者補償対策につきましては、いまだに何らの手も打たれておらないのであります。先般、東京で開催されました石炭世界大会に出席いたしましたイギリスの燃料長官は、日本の炭鉱の災害状況を調査いたしまして、もしイギリスが日本のようであるならば、燃料長官は死刑に値すると言ったといわれておるのであります。(拍手)
政府は、その社会的責任をとらないのみでなく、災害の原因がはっきりしてからという理由で、いまだに手をこまねいてながめておるのであります。炭鉱の災害が石炭合理化の進展とともに増加していることは事実が証明しているところであります。所得倍増計画が大きく破綻しましたように、抜本的対策と銘打ちました現在の石炭合理化もまた大きな矛盾を露呈しておるのであります。したがって、政府は直ちに石炭合理化計画を変更し、早急に社会化して、国民経済の発展に資するための具体策を確立することがきわめて緊急の課題であると考えるものであります。これは、要するに、一般の通学、通勤者の不安をそのまま放置して、新幹線をオリンピックまでなどといい、また、炭鉱保安はそっちのけで、ただ合理化ばかり進める池田内閣の態度は、かつて池田さんが言いました「貧乏人は麦を食え」の再版であると申さねばなりません。また、池田内閣の人つくり政策は、その実、人こわし政策であるという本質が、本予算案に最もよくあらわれているといわなければならぬのであります。これが反対の第四の理由であります。
以上、四つの理由によりまして、わが党は本補正予算案に反対をするものであります。私は、これをもって反対討論を終わるものであります。(拍手)