河野密の発言 (本会議)
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○河野密君 私は、日本社会党を代表して、当面の政治課題について、池田内閣の施策をただし、われわれの納得し得ない多くの点に関して、国民とともに政府の責任を追及せんとするものであります。(拍手)
一九六四年を迎え、早くもちまたには前途多難の声が伝えられ、内憂外患こもごも起こるのではないか、日本を取り巻く四囲の情勢は一段ときびしさを加えるのではないかとの声が高まっております。
昨年の総選挙において最大の課題となった高度成長政策是非の問題、消費者物価高騰の問題は、昭和三十九年度予算編成を通じても何ら具体的の解決を見ないまま経済情勢は刻一刻と深刻の度を加えてまいりました。(拍手)これは具体的には証券界の未曾有の不況、不渡り手形の増加、企業倒産の増大等にあらわれていると思います。かてて加えて不安な人心動揺を反映するかのごとく人災のあとは絶えず、凶悪犯罪は増大の一途をたどっております。
一方、眼を海外に転じてみますと、ケネディ米大統領の暗殺を機会として、世界は再び逆コースにあと戻りするのではないかと懸念されてまいりましな。南ベトナムのこんとんたる政治情勢、アフリカ大陸における不断の動揺、パナマ騒乱の勃発、特にアジア諸地域における緊張状態の持続など、一九六四年の多難を予報するかのようであります。したがって、世界経済の前途も予断を許さず、ソ連圏、EEC、アメリカ経済圏と、相拮抗する経済ブロック間の競争も一段と激化してくるのではないでしょうか。かかる見地からするならば、アメリカのドル防衛政策も決して偶然にあらずといわざるを得ないのであります。事態はそれほどきびしいのです。しかし、われわれは、池田首相の施政演説から、残念ながらこのきびしさを看取することができませんでした。(拍手)
池田内閣は過去三カ年の施政を通じて、どこの国よりも忠実にアメリカの外交経済政策に奉仕してまいりました。ところがこれに対するアメリカ側の報償は何であったでありましょうか。日本の国際収支を脅かす利子平衡税の創設でありました。また、池田内閣は、米国国策の要求するまま、日韓会談を進め、台湾政権を支援し、対中国消極政策をとってまいりました。それに対する報償は何であったでありましょうか。最近における台湾政権からのボイコット、国交断絶に近い仕打ちだけではありませんか。こうした内外情勢を背景として、池田内閣それ自体も大きな曲がりかどにきたと申さなければなりますまい。(拍手)しかり、政策の大きな転換を必要とする曲がりかどにきたのです。
以下、私は、具体的の諸問題について、第三次池田内閣がいかにこの曲がりかどに対処せんとするか、質問したいと考えるものであります。
第一は、原子力潜水艦の寄港問題であります。
池田内閣は、昨年度、モスクワにおいて調印された核実験停止協定を承認しました。この協定はいまだ理想的とは、言い得ないにしても、とどまるところを知らない世界の軍拡競争、特に核兵器競争に抑制的な役割りを果たすものとして、われわれもまた双手をあげて賛成いたしました。しかし、これはあくまで序曲的なものであって、さらに進んで一切の核武装を禁止し、全面的な軍縮に進まなければなりません。これにこたえるように、米ソともに軍事費の削減を断行しようとしているのであります。しかるに、池田内閣は、昭和三十九年度予算において防衛費を約三百四十億円増強し、アメリカ原子力潜水艦の寄港を許容しようとしているのは何ゆえでありましょうか。原子力潜水艦の寄港の問題を、政府はもっぱら放射能による海水の汚染等、安全性の問題のみから論議しているのでありますが、真実はもっと高いところにあるのです。これが国際関係に及ぼす影響、東西対立に与える軍事上の問題、核兵器の持ち込みを許さずというわが国の国民的悲願をじゅうりんする問題等から断固として拒否すべきものと信ずるが、政府の明快なる御答弁を求めるものであります。(拍手)
政府は、原子力潜水艦が核兵器でないという理由の一つとして、寄港を求められている潜水艦は、核武装可能なポラリスでなくノーチラスであると説明し、かかるがゆえに、自由主義諸国はみな寄港を認めていると申してまいりました。たとえば、昨年の解散国会において、わが党の河上委員長の質問に答え、池田総理は、これは潜水艦の推進力が原子力であるというだけで、ポラリス潜水艦と違いまして核武装していないのでありますと述べております。しかるに、最近のアメリカ国防当局の発表によりますと、ノーテラスにもサブロックをつけて核装備をすることにしたと申しております。池田首相は、前の答弁で、核武装した、また核武装可能な潜水艦でないから寄港を認めてもいいのだと申しましたが、そこで私は池田総理に質問いたします。核武装をした、もしくは核武装可能な潜水艦の寄港は断固として拒否される考えと思われますが、間違いありませんか。アメリカ国防当局がサブロックを装備していると明言している以上、安全性の問題等に立ち入るまでもなく、当然に寄港を拒否すべきものと考えますが、間違いありませんか、明快な御答弁を願います。(拍手)
さらに、池田首相は、日本が安保条約に調印した以上、潜水艦の寄港を認める義務があると申してまいりましたが、アメリカ太平洋艦隊司令長官は、原子力潜水艦の寄港は単なるレクリエーションのためである、寄らなくてもいいのだが、日本の港の娯楽施設が完備しているから寄るのだ、こう申しているのであります。これによると、安保条約と何らの関係のないことは明瞭であります。これをしいて安保条約上の義務と結びつけ、寄港承認に踏み切ろうとあえてするのは、卑屈なる媚態外交と申すほかはありません。(拍手)政府に質問いたしますが、レクリエーションのため日本の港を使用する申し出を許容しなければならないということが、安保条約のどの条項にありますか、責任ある御答弁を願いたいと思います。(拍手)
なお、これに関連してこの際承りたいことがあります。先般、池田総理は、ケネディ米大統領葬儀に参列して帰国した際の記者会見において、今後の国際情勢をいかに見、いかに対処するかとの記者団の質問に対し、ケネディ大統領の精神が生き続けていると述べ、池田精神もケネディ精神と同様なものである、池田精神を貫いていくのだと、こう然と言い放たれました。私は寡聞にして今日まで池田精神の何たるかを聞いておりません。(拍手)いわんや、ケネディ精神の特約日本版である池田精神については、全く何も知らないのであります。この際、池田精神とはそもそもいかなるものか、その具体的な内容を明らかにされたいと思います。(拍手)
ケネディ大統領のことばの中で、私の忘れ得ないものは、人類が戦争を絶滅しなければ、戦争が人類を絶滅するであろうという一言であります。少なくとも彼はこの信念のもとに平和共存を促進し、彼なりにそれが具体化に努力したと考えます。池田首相は、その誇示する池田精神において、どこかでその片りんでもお示しになりましたか、この際はっきりとお伺いしたいと思います。(拍手)
質問したい第二の点は、日韓会談についてであります。
日韓会談はすでに長い歴史を持ち、幾たびか失敗を重ねてまいりました。池田内閣が会談の口火を切ってからでも、すでに三年の歳月をけみしております。われわれは、この日韓会談に対して、一、日韓会談によって南北朝鮮の対立を激化し、極東の緊張を一そう悪化するおそれあること、二、韓国の政情がきわめて不安定であり、現朴政権の前途も予測しがたいこと、三、技術的には、懸案の一括解決という日本側の主張に対して、請求権のみを食い逃げされるという事態が起こる公算が大きいこと等の見地から、日韓会談に反対の意思を表明してまいりましたし、現に反対をいたしております。ところが、政府は何ゆえか日韓会談を急いで進めようとするのであります。政府は、李承晩ラインの問題を含む漁業問題の解決、竹島の帰属問題など、一括解決の見通しがあるのでありましょうか。交渉の経過から見て、これらの一つでも解決できないならば、会談を即時打ち切るべきものと思いまするが、政府の見解を尋ねたいと思います。(拍手)
政府は、最近、近隣外交を主張し、これをもって日韓会談促進の論拠としているのでありますが、近隣外交といえば、朝鮮民主主義人民共和国も当然問題となるはずであります。しかるに、北朝鮮を視野の外に置いて日韓会談を進めることは、何としてもわれわれの納得し得ないところであります。
そこで、私は、当面の日韓会談に関連して、次の諸点について政府の明快な御答弁をわずらわしたいと考えます。
第一、請求権問題が無償二億ドル、有償二億ドルにきまったと伝えられるが、いかなる根拠によってさような数字が算定されたのであるか、この請求権と北朝鮮との関係はどうなるのか、植民地統治の賠償ならば、当然全朝鮮に及ぶべきものと思うが、どうであるか。第二、請求権とは別に漁業補償が問題となり、韓国側要求の補償額は一億八千万ドルと伝えられておりますが、政府はこれに対していかに対処されるつもりであるか。第三、政府は、常に一括解決を主張してきたし、その方針はあくまで貫くべきものと思うが、はたして一括解決の見通しが到るか。国際法違反である李承晩ラインの問題、竹島の占領問題を未解決のままに日韓会談を政治的に推進することは、われわれは絶対反対でありますが、首相の明確なる御答弁を求める次第であります。(拍手)
第三は、中国問題についてであります。
昨年末から本年初頭にかけて、中国の周恩来首相は、中近東からアフリカ新興諸国に対して長途の親善旅行を行ない、多大の成果をおさめつつあるようであります。また、フランスのフォール元首相は、ドゴール大統領の特使として昨年秋北京を訪問し、話題を投げたのでありますが、フランスは、いよいよ中国との国交回復に踏み切る外交方針を決定し、近く具体的措置に出ると伝えられております。フランスが中国承認、国交回復の挙に出ますならば、国際情勢が大きく変わることは必至でありまして、中国の国連代表権承認の宿題も、その解決は単なる時の問題となってまいりましょう。フランスの新しい中国政策によって最も打撃を受けるのは、アメリカであります。アメリカは、中国封じ込め政策をもって唯一の対中国方針と考えて、頑強にこれを固執したばかりでなく、アメリカの援助を受ける多くの国々にも同じ態度を強要してまいりました。ケネディ前大統領も、一昨年ワシントンで開かれた第二回日米貿易経済合同委員会の席上で、日本に対して中国封じ込めを強く要求したではありませんか。しかし、一方では、中国を国連に入れることなしに世界の平和も軍縮の達成も望み得ないことがだんだん明らかになってまいりました。かかる情勢の中にあって、フランスの中国承認の態度が国際政局に大きな一石を投ずることになるのは明らかであります。
そこで、私たちは池田首相に尋ねたいのでありますが、日本政府の対中国新政策いかんであります。わが国は、従来、中国の国連代表権問題では、終始一貫アメリカのお先棒をかつぎ、足軽の役目をつとめてまいりました。昨年はアルバニアの出した中国代表権案に対して、賛成四十一、反対五十七、棄権十一の中にあって、あえて反対の態度をとりました。わが国は依然としてこの態度を続けるつもりでありますか。むしろ率先して中国の国連代表権承認に一役買うべきものと思うが、どうでありましょうか。(拍手)
政府は口を開けば政経分離を言い、外交関係は別として、日中貿易の拡大をはかるのだと申してまいりましたが、かかる首鼠両端を持する政策の長く許されないことは明らかであります。フォール仏元首相も、その北京報告の中で、六億の人民がいるという現実は否定できないと申しておりますが、六億人民の持つ経済的な価値に着目していることは明らかであります。フランスが敢然としてとろうとしている政策こそ、わが国が世界に先がけてとるべき方針ではなかったでしょうか。この際政府の考え方を聞きたいと思います。(拍手)
中国問題がこの段階にきた以上、政府は、この際政府の特使を中国に派遣するか、他の外交的接触をはかるか、日中国交回復の問題についてすみやかに話し合いに入るくらいの勇断を持つべであると思うが、どうでありましょうか。(拍手)
池田内閣の対中国政策はこれまでまことに因循こそくでありましたが、これはアメリカに追随した結果でありましょうか、それとも、池田内閣自体の独自の判断によるものでありましょうか。アメリカに強要された結果であるとすれば、外交権を他国の制肘にゆだねるゆゆしき問題であり、自主的判断によるものとすれば、池田内閣の見識のない態度を糾弾せざるを得ません。(拍手)いずれにしても、池田内閣の反省を求めつつ、はっきりとした答弁をこの際要求するのでございます。
自民党内には台湾ロビーと称する一群があり、政府の中国政策をゆがめ、牽制するとのことでありますが、政府はこれと敢然と戦う勇気ありや、お尋ねしたいと思います。(拍手)
第四に、日米合同委員会について質問いたします。
近く日米合同委員会が東京で開催されようとし、そのメンバー、議題等がすでに発表されました。これによると、現下の国際情勢の変動を反映して、当面の政治的課題である日韓問題、日中問題、中国の国連代表権問題などの諸懸案が当然論議されると思われます。しかも、その結論についてはきわめて重要なものがあると予想されます。
そこで政府にただしたいのでありますが、一つ、この合同委員会において、アメリカ側から日本に対して、日韓会談の早期妥結、日中貿易の抑制等の圧力が加えられる場合において、政府はこれに対していかに対処するつもりでありますか。二つ、アメリカは日本に対して貿易の自由化を強く要求しながら、他方、日本の対米輸出に対してこれを制限しようとしております。政府は、アメリカの輸入制限問題に対して、合同委員会においていかなる態度をとろうとするのであるか。三つ、沖縄返還の問題、原子力潜水艦の寄港問題等に対して、当然強硬なる態度で臨まれなければならないと思うが、どうでありますか。特に沖縄は、ケネディ声明以来の動きを見ても、アメリカの無期限占領の方針はますます強化されるばかりで、返還の見通しは暗くなるばかりでありますが、政府は、アメリカに対してどういう手を打ってきたか、また、この合同委員会を通じて打とうとするのか、伺いたいと思います。先年はスエズ事件、近くはパナマ事件に徴してみても、外国が他国の領土を永久的に、軍事的に占領するという不自然な状態は、長続きしないことは明らかであります。日本政府は沖縄返還に対していかなる方策をとろうとするのか、明確にしてほしい。四つ、アメリカの海外援助の打り切りと関連して、日本の防衛力の増強、低開発地域援助の肩がわり等が強く要請されると思われるが、これに対して日本政府はいかに対処するつもりであるか。五つ、アメリカのドル防衛政策の一環としてとられた利子平衡税の緩和についてどうするのであるか、合同委員会を通じてこれを強く要望するのか、これらの点について明快なる答弁をわずらわしたいと思います。
第五番目は、三十九年度予算問題であります。私は、昭和三十九年度予算案にあらわれた政府の財政経済政策について質問いたしたいと存じます。
第三次池田内閣の編成した昭和三十九年度の一般予算は、総額三兆二千五百五十数億円、前年度比一四・二%増という膨大な予算であります。しかも、これに組み込みかねた予算は特別会計に回し、債務負担行為に逃げ、地方予算に移譲するというからくりまでやっておるのであります。また、財政投融資計画は総額一兆三千四百余億円、前年度に比べて二〇・八%増という膨大なものであります。
問題の第一は、これがはたして国際収支の改善と物価の安定をはかることを目途とするという政府予算編成の方針に沿い得たかの点であります。問題の第二は、一般予算における当然支出の増加、新規事業の経費等、その財源をすべて税の自然増収に仰いでいることであります。問題の第三は、政府が呼号し、選挙を通じて公約した平年度二千億減税も、膨大な自然増収の見積もり、ガソリン税等の増徴によって、全く申しわけばかりの、影の薄いものとなったことであります。現に、昭和三十八年度の当初予算が、税の負担率二一・五%であるに対して、三十九年度は二三・五%と上昇しているのであります。問題の第四は、地方財源補てんのために、政府保証債の発行を許容したことであります。地方債とはいいながら、元利保証の地方債は、実質的の赤字公債であり、政府が耳をおおうて鈴を盗む態度で赤字公債の発行に踏み切ったことであります。(拍手)問題の第五は、自民党の圧力に屈して、農地報償や在外資産の補償など、問題の多い国庫支出に対して、明年度以降の約束をしたことであります。
いまこれらの一つ一つについて質疑することは差し控えますが、基本的な二、三の問題について政府の所見をただしたいと思います。
その第一は、自然増収の問題であります。
逐年増大する財政支出をまかなうために、その財源として自然増収を充当することは、予算編成の常套手段となっております。しこうして、この自然増収の名のもとに見積もられた歳入と見合った歳出を振り当て、これをもって健全財政と誇示してきたのであります。昭和三十九年度の三兆二千五百数十億円にのぼる予算も、これ以外の何ものでもありません。しかし、これがはたして健全財政の名に値するものでありましょうか、私は多大の疑問を持つものであります。そもそも自然増収とは何でありましょうか。もちろん、生産拡大に基づく税収の増大もありましょう。しかし、その前に、膨大な国費の支出を基調とするインフレ政策の結果の租税へのはね返りではないでしょうか。(拍手)試みに逐年の自然増収の状況を見ますと、昭和三十三年度の自然増収千五十一億、三十四年度千八十六億、三十五年度二千九十六億、三十六年度三千九百三十億、三十七年度四千八百七億、三十八年度三千百三十一億となっております。しこうして、三十九年度の自然増収は、減税を差し引いて五千九百八十九億、約六千億となっておるのであります。ここでわれわれの直ちに気のつくことは、前年度の当初予算において三千百三十一億しか見積もらなかった自然増収を、今度の当初予算では、一躍六千億見積もっておるということであります。しかも、前年度の経済成長は、名目一三・六%、実費八・二%、物価の上昇は八%であったのに対して、三十九年度は名目九・七%、実質七%、物価の上昇四・二%だといっておるのであります。だれにもこのからくりは明白であります。もちろん、三十八年度の自然増収は、その後千七、八百億円ほどふえておりまするが、それにしても、自然増収と経済成長と物価上昇との間に微妙な関係のあることは明らかでありましょう。
私は率直に申し上げます。自然増収六千億が可能であるためには、物価の上昇も四・二%にとどまることはできません。経済成長率ももっと上げなければなりません。したがって、政府が誇示しておりまする国際収支の改善と物価の安定に奉仕する予算ということは、この面からくずれ、返上しなければならないと存ずるのであります。(拍手)自然増収を大きくしなければ財政支出がまかなえない、自然増収を大きくするためには、財政支出を大きくして、経済の成長を助けなければならない、財政の支出を大きくすれば、物価の上昇を避けられない、物価が上昇すれば財政支出にはね返ってくる、この悪循環を繰り返しているのが現在の経済情勢であり、ここに物価騰貴の真の原因があると思うのであります。政府は、このような予算を組んでおきながら、なお物価を抑える自信がありますか、あるとすれば、その具体的な政策を示していただきたいと思います。(拍手)
さらに問題となりまするのは、自然増収七千二百億、減税分を差し引いて六千億という、まさにぎりぎりの線、満配の予算を組んでおるのであります。これによって予算の弾力性は全くなくなりました。弾力をつけようとするならば、一そうのインフレ政策をとる以外にありません。
そこでお尋ねしますが、補正予算を必要としないのですか。補正予算を組む必要が生じた場合において、どこに財源を求めようとするのでありますか。田中大蔵大臣は気前よく満配の予算をお組みになりました。こんなつかみ取りの予算を組むくらいなら、田中大蔵大臣を待つまでもなく、だれにでもできることであります。ただし、これは政府の言う国際収支の改善と物価の安定を目標とする予算にはほど遠いものであるということを警告し、言い分があれば、承りたいと存ずるのであります。(拍手)
最後に、憲法問題並びにこれを中心とする池田内閣の政治的姿勢について質問したいと存じます。
憲法調査会は、すでに発足以来八年の年月を費やし、報告書を取りまとめる最終段階に到達いたしました。憲法調査会の意見は、そのつどそのつど新聞等を通じて概要については承知いたしておりますが、改憲論者、非改憲論者それぞれに見解を表明し、なかなか結論に至らないようであります。政府は、この調査会の結論が出された場合に、いかなる態度をとられんとするのでありますか。池田首相は、一昨日の施政演説において、世論の動向を十分に尊重し、慎重に対処すると述べておりますが、過去数回の選挙を通じて、護憲を旗じるしとするわれわれの得票が伸びておるという現実を何と判断いたされますか。
憲法は国権の大本を定めたもので、みだりに改憲を口にすべきものではありません。歴史を回想するまでもなく、憲法を改正するときは、革命のときか、革命に準ずべき政治的変革の行なわれるときであります。したがって、憲法がしばしば改められる国は、決して政治的に歓迎すべき国だと申すことはできません。その上、現行憲法は、その基調とする民主主義、絶対的平和主義、国際協調主義等の諸点において、理想的と言い得ないにしても、最も高度に新しい政治理念を生かしたものと言えます。このゆえに、われわれは憲法擁護の旗じるしを政治的信条の第一に掲げているのであります。しかるに、多くの改憲論者は、現行憲法の基本である民主主義をゆがめ、絶対的平和主義を否定せんとし、その見地から憲法改正を行なわんとしておるのであります。これは全く時代の動向に逆行せんとするものであり、断じて許すことができないと存じます。(拍手)
また、与党の改憲論者の中には、憲法第一条と憲法第九条をそのままに存置するという前提のもとに改憲しようではないかと主張する者がありますが、これは憲法改正のいかに重大な意義を有するかを理解しないものであります。第二義的な改正のために憲法改正の先例を開くならば、憲法は容易に改め得るものなりとの安易感を与え、憲法軽視の風潮を助長し、ひいては政界動揺の因をなすものと思われます。かかる見地において、この議論にも同調し得ざるものであります。
われわれは、憲法調査会が最終段階にきた今日、その審議の経過にかんがみ、改憲問題に対して断固政府が終止符を打たれんことを待望してやみません。(拍手)憲法調査会の審議経過を顧みるとき、また、改憲論者が無理やりにも憲法改正を押し切らんと狂奔している姿を見るとき、本調査会に参加を拒んだわれわれの態度の正しかったことを痛感するものであります。(拍手)われわれは、池田首相の改憲問題に対する率直なる態度の表明を要望してやみません。
憲法問題に関連してわれわれの銘記したいことは、国権の最高機関が国会である現政治制度のもとにおいて、選挙が重大なる国事であり、これを冒涜するものは現政治制度を冒涜するものだということであります。しかるに、昨年施行された衆議院議員の選挙は、はたしてどうであったでありましょうか。公明なる選挙と言い得たでありましょうか。私は、もちろん、枝葉末節の選挙運動の行き過ぎについてとやかく言おうとは思いません。しかし、あまりにも醜悪なる内情については、この際粛正を叫ばざるを得ないのであります。ことに、私の痛憤おくあたわざるゆえんのものは、白昼公々然と、背番号候補者というがごときものがあらわれ、これに対して一木の指も触れることができなかったという一事であります。彼らの目的とするところは、選挙運動をやゆし、選挙に対する国民の関心を失わしめ、議会政治に対する国民的不信の念を植えつけんとするにありました。しこうして、それはある程度成功をおさめたと考えられるのであります。しかし、私のさらに痛憤にたえないのは、これと与党の一部の者との間が無関係でないということであります。(拍手)先日行なわれた東京都知事選挙違反事件の公判において、にせ証紙、はがき横流し事件が自民党の最高幹部と無関係でないことを、検事みずからが論告しているではありませんか。(拍手)この事件の被告と背番号候補者とは、同一人か、もしくは同一系統の人々であります。したがって、今回の背番号候補者が自民党の最高幹部と無関係ではあり得ないと思われますが、いかがでありますか。最近、これらの人々と与党内の派閥抗争とのからみ合いが生じ、心ある人々を憂慮せしめていることは、知る人ぞ知る、まことに嘆かわしい現状ではありませんか。(拍手)池田首相は、総裁としてこれらの問題をいかに考えられますか、率直なる御答弁をお願いしたいと思います。
外交方針をめぐる台湾ロビー、朝鮮ロビーの暗躍といい、右翼勢力とのからみ合いといい、どこに近代化があるでありましょうか。(拍手)与党の反省を求めるとともに、池田首相のこれらの問題に対する確固たる答弁を求めて、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇〕