西村関一の発言 (外務委員会)

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○西村(関)委員 南ベトナム民族解放戦線の部隊、いわゆるゲリラ部隊がすでに南ベトナムにおけるところの領域の八割、その人口の五割を支配しているということは、これはアメリカ側の報道関係においても認められておるところでございます。これが北からの武器・弾薬・人員の補給によってなされておるかどうかということにつきましても、南ベトナム民族解放戦線は全く北から独立した組織であり、機構であり、独立した活動をやっているということも事実であると思うのであります。もちろん、同じベトナム人同士、同じベトナムの完全解放を目ざしておる立場から、南北の交流が全然ないとは言えないと思いますけれども、しかし、多量の武器・弾薬・人員の補給が北から行なわれておるということは、どうしても考えられないのであります。アメリカ側が提示しておりますところのいわゆる証拠というものも、その基礎がきわめて薄弱であるということは、アメリカの世論の中においても出ておる。アメリカの上院あたりにおけるところの議論も、どうも北に対する爆撃の根拠は薄弱じゃないかというような議論も出ておるくらいでございます。
 私も現地へ参りましたが、あの十七度線を越えで、あそこから南へ入ってくるということは、もちろんできません。北ベトナムのヴィンからラオスのラクサオに入り、さらに南ラオスを越えて南ベトナムに入ってくるいわゆるホーチミンルート、これは私もプノンペンからハノイへ四時間にわたってちょうどその上空を飛んだのでありますが、見渡す限りのジャングルであります。トラや野象の通るところであります。そういうところを多数の武器・弾薬・兵員の補給路として用いるということは、どう考えてみても、これはおとぎ話としか受け取れないのであります。事実そういうホーチミンルートなるものが存在しておるかどうか。私はハノイにおいてホーチミン大統領に会いましたが、全くそういうものが存在するはずがないし、する必要もないというようなことを言っておったのでございます。また、海上からの補給と申しましても、これは、最近においてこそ民族解放戦線軍が海岸地帯の一部を支配いたしておりますけれども、従来は、一応、海岸地帯におきましては、南ベトナムの最南端の地方を除きましては、サイゴン政府軍側が押えておった。そういう状態で、海上からの補給ということも従来はできなかった。最近におきましては、ユエの南方でありますとか、北の海岸地帯も民族解放戦線軍の支配に帰しておるようでございますけれども、そういう情勢の中において、海上からの多数の武器・弾薬・人員の補給というようなことは考えられないのであります。
 同時に、南ベトナム民族解放戦線部隊が南ベトナムにおけるところの民衆の支持を受けておるということは、私はいろいろな階層の人たちに会いましたが、南ベトナムの新聞記者の諸君、南ベトナム側の報道関係の人、また政治家もインテリ層も、みな異口同音に認めておるのであります。私はアメリカの軍人とたまたまユエにおいて会う機会がありました。いろいろ話し合いをいたしましたが、このアメリカの軍事顧問団の中尉が私に語ったところによりましても、ベトコンはいずれの地域においても民衆とともにおるので、どこからどこまでがベトコンであって、どこからどこまでが非戦闘員であるかという区別がつかない、幾ら村から外へ出ろと言っても、村人たちは村の外へ出ないから、やむを得ず無差別爆撃をやらなければならないということを言っておったのであります。しかも、このアメリカの軍事顧問団の中尉は、もうこういう戦争はいつまでも続けるべきではない、一日も早くやめなければいけないのだ、何のために戦っているのかわけがわからないのだというようなことさえも言っておったのであります。民衆の中にあって民衆とともに戦っておる南ベトナム民族解放戦線部隊の数が増加しておるということは、そういうところに根拠がある。北からの補給ではなくて、戦闘を繰り返すたびごとに二百とか三百とかいうような政府軍の部隊が行くえ不明になる、多数ベトコン側に投降するということも事実である。そのときにアメリカ製の武器弾薬を持って投降してくる。その投降した政府軍の部隊の武器弾薬及びろ獲された武器弾薬をもって彼らは戦っておる。トイホアの飛行場を攻撃いたしましたときにも、その攻撃のために用いましたところの迫撃砲はアメリカ製の迫撃砲である。これはアメリカ側が報道しているところでございまして、むしろ、ホーチミンルートによって武器弾薬が補給されているのではなくて、ジョンソンルートによって、アメリカの武器弾薬によって戦っておるということのほうが事実に近いのであります。
 私は、戦争でございますから、全然北からの補給がないということは言い切れないと思いますけれども、しかし、非常に多くの部隊や非常に大きな量にのぼるところの武器弾薬が北から補給されておる、そういうことのために報復爆撃をやるということは、非常に理由が薄弱である。のみならず、これはジュネーヴ協定の精神に違反するものであるし、国連憲章にも違反するものであると考えるのでございます。具体的な北からの攻撃の事実が、いま申し上げましたような点にかんがみまして、きわめてその理由が薄弱であるというときに、ただ、物資や人員の浸透がある、正当な自衛の措置として北に対する爆撃を繰り返すのだということをアメリカ側が言っておる、その点を日本政府がそのまま是認するということは、私はきわめて危険な態度ではなかろうかと思うのでございます。正当な自衛の措置とする法的な根拠は一体どこにあるか。事実の点から申しましてもさようでございますが、法的な根拠から申しましても、国連憲章の第五十一条には自衛権の規定がございますが、その自衛権の規定のどれに一体該当するか。「武力攻撃が発生した場合」という、そのどこに該当するか。どのように日本政府はこの国連憲章五十一条の規定を解釈しておられるか。その点をお伺いいたしたいと思います。
 これは、いま非常に危険な段階に来ておる。もしこのエスカレーター方式によるところの北への爆撃が繰り返されていくならば、十九度線を越えてさらに北のほうに進められてまいりますならば、それこそ第二の朝鮮戦争、また、まかり間違えば核熱兵器によるところの世界最終戦にまで発展する危険がないとは言えない。同時に、これを爆撃しているところのアメリカの空軍の多くの部隊は第七艦隊から飛び立っておる。北ベトナムがそのアメリカ第七艦隊の基地であるところの日本の佐世保を爆撃するといったようなことがないことを私はもちろん願うものでありますが、もしそういう事態が起こった場合に、これまた自衛の措置ということで片づけられるかどうか。そういう点に対して非常に重大な段階に来ておると思うのでございますが、政府の御見解を承りたいと思います。

発言情報

speech_id: 104803968X00419650305_011

発言者: 西村関一

speaker_id: 8562

日付: 1965-03-05

院: 衆議院

会議名: 外務委員会