高田富之の発言 (本会議)
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○高田富之君 私は、日本社会党を代表して、ベトナム問題に関する総理の御発言に関連して、当面のアジア情勢について政府の所信をただしたいと思うのであります。(拍手)
佐藤総理は、去る五月七日、自民党青年部大会に臨まれて行なった演説の中で、先ごろ、東大名誉教授大内兵衛氏ら学者代表が首相に要請したベトナム問題についての要望書に反駁を加えて次のように述べたと報ぜられているのであります。「学者グループは米国の北爆ばかり非難している。米国の北爆にはそれなりの理由があり、爆撃されるほうにも責任がある。北は米国を帝国主義ときめつけているが、米国は北からの浸透がなくなれば爆撃をやめるといっているではないか。われわれが最もおそるべきものは赤色帝国主義である。それは全世界を赤化しなければやまないものだからだ。中共が日本の工業力と結べば世界支配毛可能であり、すでに日本の三割五分、つまり共産党と社会党左派は赤化している、との見方をしている中共の首脳さえあると聞く。赤色帝国主義とはあくまで対決していかねばならない。」もし、このようなことを事実言われたとすれば、いやしくも日本の首相ともあろう人のことばとは思われない、その低俗、愚劣さにただただ驚き入るのほかはないのであります。(拍手)一言で申せば、これは全く理性的判断を失い、アメリカの中共敵対政策に卑屈にも迎合していることを、遺憾なく露呈しているものというべきであります。(拍手)
また、同じ演説の他の個所では、首相は、「先に来日したロッジ米特使は、ハノイを爆撃したり北ベトナムの一部を占領するようなことはしないと約束した。」と、こう述べたのでありますが、ところが、これがさっそく米国務省当局によって否定され、政府をあわてさせたのであります。これは、米国のやっている戦争の見通しや方針について、いかに日本政府がつんぼさじきに置かれているかを暴露していると思うのであります。(拍手)
さて、アメリカのベトナム侵略は、十七度線を越えて北へ北へと延び、そのやり方も、軍事施設の破壊からナパーム弾、ガス兵器による焦土作戦に移行し、ベトナム民衆を虐殺し、農作物、植物を焼き払い、ベトナムの自然の姿さえ変えるほどに、残虐きわまる攻撃を逐次拡大させてきたのであります。
かかるアメリカの残虐行為は、いま再び世界をおそるべき戦争の深淵に臨ませているのであります。かくて、全世界の人々の憂慮と不安は、次第に憤激と怒りに変わり、同盟国たるNATO諸国でさえも終始冷淡であり、SEATOもまた何の機能も果たしていないありさまでありまして、まさに全世界的の良識と世論に全く背を向けているのであります。(拍手)
このような状況下に、日本政府は、終始ベトナムにおけるアメリカの行動に支持を与えてきたのみでなく、全世界の世論が一斉に激しい非難を浴びせたガス兵器使用についてさえ、ただの一言の抗議すら発しようともしなかったのであります。日本のこの追随と支持が、アメリカのアジアにおける冒険にとってどれほど重要な意味を持っているか、われわれ日本人の想像以上のものがあるでありましょう。日本はすでに、戦争拡大の加担者として恥ずべき重大な役割りを演じているといわなければなりません。(拍手)
首相も外相も、今日まで口をそろえて、「北からの浸透があるから」というアメリカの口実をそのままただオウム返しにして、北爆を弁護してまいりました。一体、あなた方には、事態を冷静に判断しようとするまじめさが全くないのではないかと疑わざるを得ないのであります。(拍手)
ベトナム問題解決についてのこれまでの唯一の国際協定はジュネーブ協定であります。ところが、アメリカは、SEATOの結成、ゴ・ジンジエム政権へのてこ入れと政治的反対派に対する弾圧、ばく大な武器と資金の投入、軍事同盟の締結と軍事顧問団の派遣、統一選挙ボイコット等々、アメリカが一貫してジュネーブ協定を破ってきたことは、何人の目にも明らかであります。(拍手)
さらにまた、先般、政府の特使として現地をつぶさに視察してこられました松本俊一氏も言明しているとおり、「ベトコンなるものは、 ベトナムの内部において発生して、非常に激しい民族運動が中核体をなしている。」、「北爆によってベトコンを弱めるということは、これまた非常な難事である。」と、こう述べて、政府の特使すら南ベトナムの民族解放運動であることを認めているではありませんか。(拍手)
このような事実に対して故意に目を閉ざし、耳をおおうて、「北からの浸透」だとか「共産主義者の間接侵略」だとかというアメリカ特製のきまり文句をオオム返しに騒ぎ立てることが、一体どんな意味を持っていると政府は考えておるのでありますか。
ベトナムでのアメリカの戦争目的について、マクナマラ長官がはっきり言明しているではありませんか。「問題は、ただ単に南ベトナムの自由と独立を防衛することではなくて、アジアにおける共産主義の膨脹に対してわれわれが戦うかどうかということだ。」こう言っておるとおり、アメリカの戦争の目標は、すでにアジア全域における反共、反中国の戦いに拡大されているのであります。総理は、赤色帝国主義との戦いということばを用いて、アメリカにのみ追随することによって、アジアの民族解放運動にまつ正面から決戦をいどもうとしておるのでありますか。(拍手)
このような情勢下に、中共では第二回目の核実験が行なわれましたが、これを口実に、アメリカがかねて用意した極東における核兵器を一斉に使用する危険がきわめて高いと思うのでありますが、アメリカの核兵器使用に断固として反対し、これに一切協力、加担しないことを明らかにせられたいのであります。(拍手)
ところが、政府は、実際には、在日米軍基地、施設の自由な使用を許し、武器、弾薬、兵員の輸送その他積極的に戦争に参加、協力しているのであります。これは、アジアの平和を脅かしているのみならず、戦火がやがてわが国に及ぶ危険性をはらんでいるのであります。
この点についても、政府は、「国内の基地から直接ベトナムへ出動しているのではない。」と弁明しておるのでありますが、たとえ沖縄を経由しての出動といえども、当然事前協議の対象とし、米軍の出動を拒否すべきであります。さもなければ、安保条約の事前協議制度は、われわれ国民を瞞着する全くのざる法ではありませんか。(拍手)外相のお考えを承りたいのであります。
極東における戦争のわが国への波及の危険という点では、特に日韓会談の危険性を強調せざるを得ないのであります。何ゆえなら、韓国においても、現にベトナムと全く同様の事態が進行しているのでありまして、つい先日もクーデター計画が発覚し、現在民衆の反政府運動は日増しに高まりつつあります。朴政権の政治的基盤は、韓国の民衆の中には全くなくて、アメリカの手中にあるのであります。それゆえにこそ、朝鮮民衆の意思を踏みにじって、南ベトナムに派兵して、アジア人同士の戦争を行なおうとしているのであります。日韓会談がこらした政権を相手に進められていること自体、危険きわまりないものといわざるを得ないのであります。(拍手)
先般国会で暴露されました三矢研究によれば、現在ベトナムで起こったのと共通の原因で、朝鮮半島に第二次戦乱が勃発することを想定しているのであります。しかも、その際、わが国自衛隊は、公然これに参戦し、海外派兵も行なわれ、核兵器も持ち込まれる、そして中ソ両国の介入となり、わが国土に戦火の波及することが、当然の成り行きとして想定されておるのであります。この三矢研究が単なる仮想の問題ではなくして、やがて現実に転化させることを、日韓会談とベトナム侵略への協力によって、政府みずから準備しているではありませんか。(拍手)首相並びに防衛庁長官のお考えを承りたいのであります。
二度と再び戦争はしたくない、これが日本国民すべての偽らざる気持ちであります。そのためには、絶対平和主義に立脚するわが国憲法の本義を、いまこそ不動の信念をもって発揚し、その実現にあらゆる努力を傾けるべきときであると信ずるのであります。
最後に、要約して政府に対する御要望を申し上げ、これに対する御所見を承って私の質問を終わります。
第一に、ベトナムにおけるアメリカの侵略を終わらせるため、政府としてなし得るあらゆる行動をすみやかにとっていただきたいのであります。
第二に、アメリカのベトナム戦争に対しての一切の協力を直ちにやめていただきたいのであります。
第三に、日韓会談の即時打ち切り、そして最後に、来たるべき第二回AA会議出席の基本的態度として、アメリカのベトナム侵略に反対し、アジア・アフリカの民族運動に対する支持と協力、平和共存実現への積極的な姿勢を確立して臨むことを要請するものであります。
以上に対しまして明確なる御答弁をお願いして、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕