光村甚助の発言 (本会議)
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○光村甚助君 私は、日本社会党を代表いたしまして、さきに行なわれました佐藤総理の所信表明とその政治姿勢に対し、若干の質問を行なおうとするものであります。
質問の第一点は、災害に対する政府の基本的対策についてであります。ことしは台風の当たり年といわれておりますように、台風十五号、二十三号、さらに二十四号、二十五号と、大きな被害を与えた台風が幾たびか来襲し、政府の災害復旧事業の対象となる被害額だけでも二千億円をこえ、その他の一般民間並びに国鉄、電電等の政府関係機関の被害額を合わせれば、その総額は数千億に達するといわれております。台風被害は俗に一吹き千億円といわれておりますが、台風の進路に横たわるわが国にとって、年々の自然災害によって失われる財産が数千億円にものぼることは、まことにゆゆしき大事であると言わなければなりません。台風は、何も戦後になってあらわれたものではありません。何千年も昔からわが国を襲っていたものであります。そうして、時々の為政者は、被害の復旧にも罹災者の救済にも力を尽くしております。問題としなければならないのは、この長い歴史の間において、災害に対する予防や復旧対策が、旧態依然として進歩のあとが見られないことであります。(拍手)現代の科学技術の粋を取り入れ、積極的な国民福祉の立場に立つ防災行政が行なわれているとは申せないのでありまして、台風災害が天災ではなくして人災であり、政治の貧困からくる政災であると言われているゆえんであります。去る昭和三十六年に災害対策基本法が制定されておりますが、いまだに大きな被害が生じつつあります。その根本の原因は、治山治水などの国土保全その他の災害予防施策よりも、大企業中心の経済開発に力を用いてきた自民党政府の政策そのものにあるというべきでありましょう。私は総理に、暴風をとめなさいとは申しません。先般の災害におきましても、山津波に襲われた山村が防災センターに連絡する無線装置さえなく、あたら助かるべき人命が科学設備の不備のうちで失われていきました。また、都市周辺では、宅地造成法があるにもかかわらず、豪雨のための山くずれで、粒々辛苦の末、手に入れた住宅が押しつぶされ、多くの人々が住宅政策欠除の中で悲惨な最後を遂げたのであります。さらにまた、今月五日から七日にかけ、マリアナ諸島アグリガン島西方海域において台風二十九号に巻き込まれ、遭難した第八海龍丸など七隻のカツオ漁船の乗り組み員二百七名の生命は絶望視されております。これは戦後二番目の大きな海域避難事故でありまして、痛恨の限りであります。遭難者の近親各位に対して衷心より御同情申し上げるものでありますが、こうした事故の陰の問題として、日本の漁民たちが生命を的にして働いている遠い南の漁場では定点観測さえ行なわれておらず、もっぱら米軍による航空観測だけがたよりという心細いもので、それも今回の場合は的確でなかったといわれている状況があるのであります。国が遠洋の気象観測に力を入れなくては、事故はあとを断たないだろうといわれているのであります。
一体、総理は、常に人間尊重、社会開発を唱えておられますが、この事態をどう見られますか。災害に対する抜本的対策を立て、これを実行される用意があるかどうか、とくと承りたいのであります。また、建設大臣には、災害予防のための治山治水事業等をどう進められるのか。さらにまた、運輸大臣には、大切な気象観測の仕事の一部を米軍の航空観測機にたよるといったこそくなことはやめて、航空観測機、レーダー、定点観測船等の施設整備を早急に実行できるのかどうか、具体的に伺いたいのであります。
質問の第二点は、政界、官界の綱紀粛正ということであります。この問題は、いつの国会においても繰り返し繰り返し指摘されてきたところでありますが、改まらないどころか、綱紀の弛緩はますますはなはだしいものがあります。さきの参議院選挙においては、日本専売公社関係の悪質の選挙違反の事例を頂点として、政府機関並びに政府関係機関のいわゆる高級官僚の地位利用による選挙は公然と行なわれました。特に各省関係より立候補した高級公務員九名のうち、実に八名が当選しておりますが、公務員をやめて初めての選挙でかような成績がおさめられたのは、それぞれの候補者が、国の補助金支出の権限を持つ各省庁をバックとして、公的機関を動員できるという有利な地位をフルに利用できたからにほかならないことは、もはや何人も疑いを入れないところであります。(拍手)またその裏には、専売公社の例を引き合いに出すまでもなく、公務員もしくは政府関係機関職員の選挙活動が大いにあったことを物語るものであります。こういう結果になることは当然であるがゆえに、さきの選挙制度調査会でも高級公務員の立候補制限を答申したにもかかわらず、政府はこれを無視したのであります。まことに遺憾千万というほかないのであります。
さらに、最近両院の決算委員会で究明されております大蔵省の国有財産不当処分の問題を見ましても、国家国民の大切な財産を守るべき官庁の指導的立場にある人々が、関係者の間でのみ山分け同様に土地や家屋の払い下げを有利に受けたり、あるいは国有林野の不当貸し付けをしております。これらの事実が便宜的な法律解釈の上で、たとえ違法ではないとされても、国民一般の冷厳公平な目からすれば、明らかに不当であり、道義的に許せない事実として国民大衆の憤激を買っていることは、しごく当然であります。(拍手)また、国や地方の関係機関、外郭団体等の不明朗な政治献金の事実、高級公務員の政府関係機関並びに大企業等への天下り人事など、日常茶飯事のように行なわれておりますが、このようなもろもろの事実こそ、まさに道義の低下、社会の退廃の根源であります。高級公務員の悪い模範は、中級、下級公務員に及び、やがては国民全体ばかりか、総理が呼びかけている青少年にも及ぶおそれがあります。
会計検査院が指摘する不当事項は、件数、金額ともに、この数年間年々増大してきております。自衛官の犯罪件数も飛躍的に高まっていると新聞は報じております。田中証券事件、山陽特殊鋼事件にからまる大蔵省の役人の収賄事件等は、氷山の一角のできごとでありますが、国家社会に多大の損失と迷惑をかけていることは否定できないでありましょう。清潔な責任ある政治を断行すると言明されております佐藤総理は、これらの事実を一体何とお考えになるのか。りっぱな国づくりや明るい社会の建設のかけ声も、こうした精神の堕落、倫理感の喪失という現実の前には、まことに、はかないうわごとにすぎなくなってしまうでありましょう。(拍手)この際、総理は、高級公務員の立候補制限と綱紀粛正をいかに実行されんとするのか、御決意と具体策を承りたいのであります。
質問の第三点は、人事院勧告の実施に関してであります。
御承知のように、本年八月、一般職国家公務員の給与に関する人事院勧告が行なわれましたが、これに先立って、五月には公共企業体の給与改定についての仲裁裁定がありました。仲裁裁定は四月一日より六・二五%引き上げるという内容でありましたが、政府は公労委の裁定を尊重し、直ちに裁定どおり実施いたしました。ところが、人事院勧告に対しては、政府は当初から官房長官談を発表し、勧告の内容は尊重するが、実施時期については財源の関係上困難であるとして、すでに値切るかまえを示し、関係閣僚五人委員会においても財源難を理由に結論を出し渋り、ついには公務員共闘会議をして実力行使決定を余儀なくせしめておるのであります。申し上げるまでもなく、この人事院勧告制度は、非現業の一般職公務員が国家公務員法により、憲法に認められた団体交渉権及び争議権等の労働基本権に重大な制約を加えられている代償として設けられたものであります。したがいまして、人事院勧告を内容的に切り下げたり、実施時期をおくらすということは、政府みずからがこの制度の存在価値をないがしろにするとともに、公務員の労働基本権を踏みにじるものといわれてもいたし方ないのであります。(拍手)ところが、事実、政府はこの勧告の完全実施を怠ることすでに連続五回に及んでいるのであります。こんなむちゃなことは、現代民主社会において許さるべきものでありましょうか。公務員労働者にすべての労働基本権を与えるか、さもなくば公平な第三者機関の勧告、裁定を尊重し、これを完全に実施するか、道は二つに一つしかないはずであります。
この問題は決していまに始まった問題ではなく、国会でもしばしば質疑が行なわれ、昨年十二月には、参衆両院の内閣委員会において、各党共同提案により「勧告の実施時期が今後完全に尊重されるよう政府は財政上の措置について最善をつくすべきである。」との趣旨の附帯決議が行なわれ、これに対し当時の給与担当大臣より、決議の趣旨を尊重する旨の確約があったのであります。また先般のドライヤー報告書の中にも、だれが見ても最もはっきりしていて、政府といえども何ら疑いをいれる余地のないあらわし方をもって、次のように言っております。「ストライキ権が禁止または制限される場合には、労働者の利益を十分に保護する保障が付随すべきである。このため公平な機構を設置し、その決定は完全かつ敏速に実施すべきである。」この、いわゆる公平な機構である人事院の今回の勧告は、実施時期を五月一日よりとしており、また同時に三公社五現業職員の給与改定が四月一日より行なわれている事実を特に付記しております。それにもかかわらず政府は、この実施時期を昨年の九月実施よりも劣る十月実施の線を出そうとしているやに聞くのであります。理由は、不景気、財源難のようでありますが、神武景気、岩戸景気の中でばく大な予想以上の税収があったときでも勧告は値切られました経験から、もはや公務員大衆は政府の断わり書きをだれ一人信用しないでありましょう。(拍手)問題は、政府の姿勢がいつも公務員労働者大衆に背を向け、彼らを踏み台にしているところにあるというべきでありましょう。このことは、公務員労働者大衆がこのような片手落ちの政府のやり方に対して抗議集会をもって当然の要求をかちとろうとする動きについて、当局は公務員法違反あるいは服務規律違反として直ちに大量の処分を行なうという弾圧的態度で臨んできたことが証明いたしております。政府は、労働基本権を制約したか弱い立場にある公務員には法に従えと厳命しながら、みずからは法の精神をじゅうりんしてきたのでありまして、まことに遺憾のきわみと言わざるを得ないのであります。政府の経済政策の失敗による財源の不足や、高級公務員の綱紀弛緩に対する公務員批判を口実に、低賃金と物価高にあえぐ下級公務員大衆の賃金の値引きを強行するとしたら、佐藤内閣の最大の看板である「人間尊重」の政治が泣くというものでありましょう。すみやかに人事院勧告の完全実施に踏み切り、二十二日の公務員共闘会議の半日ストが行なわれなくて済むよう、総理の率直な御決断を承りたいのであります。
なお、この勧告実施は当然のことながら地方自治体の職員並びに教職員にはね返りますから、その財源措置についても政府の責任ある答弁を担当大臣から伺いたいのであります。
なおこの際、二十二日の半日ストを控え世論の問題となっている文部省と日教組との話し合いの問題に触れてみたいのであります。中村文部大臣は、先月、日教組の第二次話し合いの申し入れを拒否したのみか、去る五日に行なわれた政府と総評の第三回定期会合においても事実上話し合いを拒否したため、会談は決裂いたしました。文部大臣の言う教師の倫理綱領とその解説の廃止等三項目については、あくまで要望であり、話し合いの前提条件ではないということは、第二回の定期会合、さらには橋本・岩井会談で確認された了解事項でありながら、いかなる事情があるにせよ、これを一方的に破ったことは、重大な背信行為であります。橋本・岩井会談でも了解されているように、相互の不信感は話し合いの積み重ねによって解消していくべきものであり、双方が努力をしていくべきものであります。それを身がってな条件を持ち出して一挙に受諾を迫るというのは、まことに、ものの道理を知らざるもはなはだしいものであります。(拍手)今日お互いが最も真剣に考えなければならないのは、相互信頼の確立が、日本の教育のために、日本の子供全体のために必要であるということ、これであります。教育に携わる文部省と日教組とがけんかをしておって、よい子供が育つでありましょうか。教師たちを信頼しないでおいて文部省はりっぱな教育を期待できるとでもいうのでしょうか。日本の教師の大多数六十万人が参加する日教組に反省を求めたい点があるとされるならば、文部大臣は直接会って話し合うべきではありませんか。日教組も、超過勤務手当や研修手当、あるいは学校警備員の問題について、文部大臣と話し合いたいと言っているのであります。私は、中村文部大臣がこの辺のものの道理をわからぬはずはないと思うのであります。しかし、まことに遺憾ながら、問題は、いまや文部大臣の不可解な言動によって暗礁に乗り上げてしまったのであります。そして明るみ始めた日本の教育に、再び暗い影を投げかけているのであります。また、総評も、政府に対し、強い不信感を持つに至りました。そこで、私は、この重大な問題をいかに解決されんとするか、総理の率直な御所信を伺いたいのであります。また、文部大臣には、相互の信頼回復を必要とお認めにならないのかどうか、必要だとするならいかに努力される所存であるかを承りたいのであります。
質問の第四点は、公共料金の引き上げの問題についてであります。
本年一月には配給米一四・八%の値上げがあり、続いて医療費九・五%の強行引き上げ、バス料金平均二七%の引き上げなどが行なわれました。また、四月には私立学校の入学金、授業料等の大幅引き上げも行なわれました。そして今後においては、年間二千億の増収を見込む大幅な国鉄運賃値上げ案を先頭として、私鉄、地下鉄、国内航空、教科書、国保、郵便、電話、電報、水道料等々、いずれも料金引き上げを実施せんものと、その出番を争っているかのようであります。
一方、国民生活の台所の実態はどうかと申しますと、非常に苦しさを増してきております。総理は、さきの施政演説において、日本経済は不況克服の努力を重ねてきた結果、回復のきざしを見せてきた。今後は国民生活の安定、国民の生活を守るという観点から必要な施策を進めると述べておられますが、これまでの政府の経済政策の失敗による不況と物価上昇のしわ寄せは、いまや膨大な中小企業と勤労者階級に集中し、国民大衆は生活にあえいでいるというのが実態であると申せましょう。消費者物価は、本年上半期においてすでに前年のそれよりも八%上昇しているにもかかわらず、勤労者世帯の実収入は、昨年同期に比べ四・四%上昇にとどまり、実質収入は三・六%減少していることでも明らかであります。このような実質減少記録は十年ぶりとのことであります。また、同じく総理府の家計調査報告は、本年五月のエンゲル係数が、過去数年間の三六ないし三七%台から三九・三%に急上昇していることを示しております。台所を預かる主婦はもとより、国民のほとんどが暮らしに強い不安を感じているのも当然のことと申せましょう。
とのような状況の中で発表された国鉄運賃値上げ案をまず見ましても、旅客運賃三七・八%、貨物運賃一五%であり、通勤定期においては一挙に二倍の区間もあります。明らかに経済優先、大企業優先であり、そして国鉄輸送力の増強を勤労大衆の血と汗で得た収入によって実現しようというものであります。輸送力の増強も大資本のためであり、勤労者は、そのおかげでますます郊外遠くへ追い出されて、高い通勤費を支払って、数時間にも及ぶ殺人的な電車の中で呻吟ずることになるのは、目に見えるようであります。また、消費者米価についても、政府は大幅な値上げを再び予定していると聞いております。すなわち、昭和四十年産米の生産者米価の引き上げによる食管会計赤字千七百余億円を口実に、値上げを企図しているのではありませんか。このほか、さきに掲げた各種の公共料金の値上げ案は、どれもこれも高額なものを考えているようであります。
このような公共料金の値上げは、直接的に国民生活を悪化させますが、さらに間接的には全般的な物価上昇ムードをあおり、手をつけられないような経済混乱を招来し、ついには国民生活を破滅に導く結果となることを心から憂慮するものであります。すでに日刊新聞は、平素他の公共料金の値上げに対しては批判的な論調を展開しているにもかかわらず、今月一日から一斉に一カ月購読料四百五十円から五百八十円に、抜き打ち的ともいえるすばやさで値上げを敢行いたしました。値上げ額は百三十円で、約三〇%という大幅な値上げ率であります。数年間値上げをしなかったとか、増ページしたとか、広告収入減など、いろいろ理由はあげられておりますが、このような理由は、さきに述べました各種公共料金についてもありましょう。問題は、国民生活をどう守っていくかというところにあるはずであり、その観点からすれば、道はほかにあるはずであります。そこで、政府は、公共料金値上げを抑制するために、いかなる総合施策をとられようとするのか、伺いたいのであります。
まず、総理に対しましては、公共料金抑制を真剣に考えておられるのかどうか。また、本年当初に閣議決定された物価安定総合対策を、具体的、積極的にお進めになっているのかどうか。第三点として、特に消費者米価と国鉄運賃の引き上げは当面重大な問題でありますので、どう処理されんとするのか、承りたいのであります。なお、その他の私鉄、国内航空、私学授業料、郵便、電報、電話について値上げの動きの状況及びこれに対する態度を各所管大臣から伺い、また、日刊新聞の一斉値上げについて、これは独禁法に触れるものでないかどうか、この値上げをどう思われるか、率直に所管大臣からお答えを願いたいのであります。
最後の質問は、暴力追放に関する問題であります。新聞その他の報ずるところによれば、先月九日、自民党の広報委員長山手滿男代議士は、ばく徒、暴力団、右翼団体等の会合する料亭に出向いて、日韓条約批准支持の要請を行なった由であります。これはまことに驚き入った事柄であります。政府が三悪追放を叫び、暴力追放についても、世論と警察当局の努力の中で、ようやく成果をあげつつあると言われている、そのやさきに、こともあろうに取り締まり当局が解散を求めている団体に、政府与党の責任者がものを頼み、てこ入れをするなどということは、まことにもって言語道断といわなければなりません。(拍手)このような所業は、世論を敵に回し、末端の取り締まり官の努力を水泡に帰せしめるものであります。安保騒動の際にも自民党と暴力組織の関係のうわさが流れ、また、政界の指導者に対するテロが発生したのであります。したがって、今日は時期が時期だけに、政治家は慎重な態度を持し、政府は厳正に暴力団取り締まりにつとめるべきでありましょう。本事件に対する御所見並びに暴力追放に関する御決意を、この際、総理から特に伺っておきたいと思うのであります。
以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕