二宮文造の発言 (本会議)

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○二宮文造君 私は公明党を代表し、引き続き総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 今五十国会は、いわゆる日韓国会と呼ばれているものであります。総理は、その所信表明の中で、「私は、政権担当以来、国民諸君の強い願望を背景として、わが国の安全を確保し、アジアの平和を守るため、あらゆる努力を傾注してまいりました。」と述べております。
   〔議長退席、副議長着席〕
はたして総理の言うとおり、わが国の安全、あるいはアジアの平和が増進されたかどうか。国民大衆が、はだに感じたものは、断じてノーであります。むしろ、政権担当以来ここに一年、ベトナムの情勢は悪化し、米軍の北爆を含むエスカレーション方式の拡大、インド・パキスタンの紛争、さらにシンガポール独立に続くインドネシア紛争など、いわゆる流動状態が続き、また国内的には、沖繩の基地よりの渡洋爆撃、原子力潜永艦の寄港、米軍機の板村基地使用等々、内外の諸情勢は、かえって戦争の危機感をさえ招くに至っていることを否定できないのであります。しかも、政府演説によれば、「われわれは、単に平和を唱え、安全を希望するにとどまらず、広く国際社会の安全と繁栄をかちとるために、わが国力にふさわしい寄与をなすべき使命と責任を有している」と明言している以上は、東洋民族の持つ独自の思想に根ざす、より高度な次元、より強力な自主外交路線の確立こそが、今日のアジアの外交に寄せられた国民の願望であります。
 したがって、政府並びに自民党のいう日韓条約批准は、現時点においては、かえってアジア諸勢力の激突への道を開くばかりであり、平和確立に名をかりた、党利党略、対米追随外交の結果にほかならないと思うものであります。
 国交正常化は、いかなる国を問わず、わが党の常に主張し、かつ強く望むものであります。さりながら、今次日韓諸条約の成立過程、その内容、さらには、アジア諸国、ひいては世界平和に及ぼす影響を勘案するとき、多くの危惧を抱かせるものがあります。むしろ、真の国交正常化のためには、かつまた平和確立の基盤たるには、なお幾多の前提条件があり、以下、それらについて総理の明快なる答弁を望むものであります。
 すなわち、その第一点は、政府は、開発途上の諸国をめぐって諸勢力が拮抗していると、アジア情勢をとらえております。そのアジアにおける日本外交は、これまで自由陣営の一員であり、かつAA諸国の一員であるという二面性を持ちながらも、その主体は対米協力一辺倒の姿勢で終始してきたのであります。はたして、今後これまでどおりの姿勢で、言うところの自主外交によるアジアの平和と繁栄に寄与し得ると考えるのかどうか。また、米国の軍事力なくしてはアジアの平和は確立できないとの見解に立つのかどうか。まず、対アジア外交の基本的な姿勢をお伺いしたいのであります。
 第二点。伝え聞くところによりますると、政府は、アジア外交の新しい展開として、東南アジア開発をめぐる討議のため、東南アジア閣僚会議を開催する意図のようでありますが、その参加国ないし会議の目的について明らかにしていただきたい。この場合、招請国のうち、ビルマ、カンボジア、さらには、参加を期待したインドネシアは不参加の意を表明しているようでありますが、残された、いわゆる親米派だけの諸国だけでも会議の成果について期待できるかどうか、伺いたいのであります。
 第三点、日本のアジア外交における最大の欠陥は、対中国政策にあると言われております。すでに今日の常識では、アジアの問題ないし世界平和は、中国を除外しては考えられないとされておりますが、どうですか。
 第四点、さらに日本の安全を考慮する場合、中国の核実験はきわめて憂慮すべき事態と言わなければならないのでありますが、政府は中国の核開発をどの程度の成果をおさめたものと理解しているか。伝えられる段階では、すでに水爆を保有するとも言われているようでありますが、明らかにしていただきたいのであります。
 第五点、したがって、世界平和、それにつながる核全面禁止等々、中国を、国際間の共通の土俵において討議すべきであるとの考え方が、次第に支配的になってまいりました今日におきまして、総理は積極的にその道を開くべきであると思いますが、その意思があるかどうか。すなわち、の国連加盟について、その加盟をはばんでいる重要事項方式の指定を除くため、日本は積極的な努力をはかるかいなか、お伺いしたいのであります。
 第六点、ベトナムの紛争は、言うまでもなく、アジアの平和危機の縮図であります。しかも、政府は、早期平和解決を口にしながら、他方では、米国の北爆を支持する態度をとってきたのであります。もちろんこれは外交政策としては自語相違もはなはだしいし、かえって日本を紛争に巻き込ませる危険さえもあります。したがって、この際、この政府の見解を訂正し、平和解決へのくさびとすべきであると思いますが、その意思があるかどうか、お伺いしたいのであります。
 第七点、これに関連して、再び米国並びに南ベトナム政府の要請があったとしても、今後、医療ないしは民生安定のためと称する協力については、国際間の誤解を招かない意味からも拒否すべきであると思いますが、総理の見解をお伺いしたいのであります。
 第八点、政府は、日韓問題を最も近い問題として、その解決に専念するかのごとくでありますが、過去において、同じ条件のもとに統治され、地理的にも同様な北朝鮮を問題として扱わないのはいかなる理由によるのか。北朝鮮との関係を国民にどのように説得しようとするのか。
 第九点、現に北朝鮮側の入国については、IECの場合のように政府は入国を拒否しております。これは明らかに日本と北朝鮮との間に一線を画した施策のあらわれであると思いますが、入国拒否の理由並びに北朝鮮との国交正常化を阻害している要因は何か、明示していただきたいのであります。
 第十点、政府は、朝鮮半島における南北統一を望むような姿勢を見せながら、その阻害要因を、北朝鮮が国連方式に反対しているからと断定しているのは、一方的にすぎないか。この場合も、中国と同様に、共通の土俵を考慮し、国連加盟の道を開き、国際討議の場を設けることが、両国間の事態解決への方策であると思いますが、総理の見解を伺いたいのであります。
 以上は、いわゆる政府のいうアジアの平和と繁栄のための土壌ともいうべき前提条件であります。その推進こそが、政府のいう広く国際社会の安全と繁栄をかちとるために、わが国力にふさわしい寄与であり、それなくしては真の国交正常化は招来しないと言わなければならないのであります。わが党が、条約批准を延ばすべきであると主張することもそのゆえであります。
 次に、日韓問題について伺います。
 政府並びに自民党は、日韓国交正常化は、日韓両国民の大多数が賛成していると述べておりますが、韓国では、衛戌令下に、与党の単独強行採決という、憂慮すべき非常事態を招いたことは御承知のとおりであります。新聞の世論調査によりますと、佐藤内閣の支持率は、政権担当当時の四七%から、今年八月には三七%と低下しております。もちろん、一連の経済政策の失敗からくるところの支持率の低下もありますが、この数字は、佐藤内閣ないし日韓諸条約批准を支持する者は、必ずしも国民の大多数とは言い切れないことを示しているのであります。したがって、総理に伺いたいのは、
 第一に、このような事態の中で批准を強行することが、両国の国民感情から判断して、時期尚早と考えないかどうか。韓国では、日本の経済侵略について根強い危惧を持ち続けている今日、批准必ずしも国交正常化の促進とは考えられないのであります。むしろ、民間外交を通し、両国民の融和、親善関係の増進を積み重ね、両国民の間に国交回復を歓迎する機運が醸成されるのを待つほうが、より効果的であると思うが、どうですか。
 第二に、条約の内容そのものについては幾多の疑義があり、両国の解釈の食い違いはすでに明らかとなってまいりました。しかも、両国政府は、それぞれの見解を、国内向けであると言い捨てている現状は、条約締結のオーソドックスなあり方とは思えませんし、国民を欺瞞するものでさえあります。ゆえに、政府は直ちにその調整をはかる必要があると思うが、総理の見解を問いたいのであります。さらにその場合、どのような会談を用意するのか、あわせて承りたいのであります。
 第三点、その一つである竹島の領土権については、総理は強く主張し続けると言っておりますが、過去の北方領土あるいは小笠原、沖繩返還についても、じんぜん時を経て、戦後二十年をこえて未解決のままであります。しかも、竹島については、交換公文による紛争処理方法を適用するとしても、現に韓国は、竹島を占有し、しかも同島をめぐる専管水域をさえ主張しております。紛争解決までは現状のまま放置するつもりかどうか。とすれば、総理の言明は矛盾することになりますが、この点を明確にしていただきたいのであります。
 第四点、李ラインをめぐる条文解釈の食い違いから、将来、かりに批准後といえども、漁業紛争がきわめて憂慮されるのであります。その場合、韓国側は、これまでのような漁船拿捕という、一方的な措置はとらないという保証がありますかどうか。また、日本政府は、その条文解釈のとおり運用するとして、安全操業をどう具体化するのか、お尋ねしたいのであります。
 第五点、政府借款は、七年据え置き、二十年間の返済となっております。ただし、両国間の合議によって、その期間は変更できると規定していることは、解釈のしかたによれば、無償供与と同じ見解が出てくるのであります。また、韓国の今日の経済情勢からも、返済不能になるのではないかと見る向きもありますが、この際、有償、無償の明確な規定をお伺いしたいのであります。
 第六点、さらに生産物、役務の供与となっておりますが、それは、軍事施設、軍需物資を含むのかどうか、あるいは除外するという相互の明確な了解があるかどうか、承りたいのであります。
 第七点、紛争解決の交換公文は締結されておりますが、両国の合意なき場合、どのような措置によってその解決をはかるのか。第三者機関を考慮するのかどうか、この際、明確にしていただきたいのであります。
 第八点、これに関連をいたしまして総理に伺いたいことは、拿捕漁船の補償問題であります。さきに、政府は、国内問題としてこれを処理する旨、明言されているのであります。その金額、補償方法について明らかにしていただきたいのであります。
 以上、要するに、これほどの疑点を持ち、さらに、両国の国民感情として根強い反対の機運をはらみ、また、アジア情勢全般に微妙な関係をもたらすのが本条約の特質であります。したがって、本条約の批准は、相当の冷却期間を設け、両国間で条文解釈をさらに調整し、かつ、先ほどの前提条件との関連において考慮することが、自主外交確立への一歩前進と理解するのでありますが、総理の所見を承りたいのであります。
 次に、国連外交、主としてその平和維持機能についてお伺いいたします。国連中心主義は、政府の一貫した外交政策の基本であります。しかも、今次総会では、安全保障理事会の非常任理事国に立候補を表明したことにより、世界の平和と繁栄に対し、おのずから格段の自覚と責任が要請される立場に立ったのであります。
 質問の第一点は、今回の政府演説でも、その基本方針を確認した上で、しかも、「その平和維持機能強化にはできるだけ努力をする」と述べておりますが、それはいわゆる分担金における協力だけと解してよいかどうか。
 第二に、国際紛争処理のため、これまでも国連警察軍の派兵等があり、さらにその編成ないしは国連常設軍の創設が議論されております現段階において、わが国に対しても、物的協力ばかりでなく、人的協力を要請された場合、国連中心主義を標榜する政府はどう対処するお考えか、伺いたいのであります。
 第三に、それは当然拒否すべきであると思いますが、その場合、国際間で納得せしめ得る論拠をどこに求めるのか。また、総理は、国連の平和維持強化についていかなる構想を持っているか、具体的に伺いたいのであります。
 第四に、池田前総理は、さきに、本院予算委員会の席上、自衛隊の海外派兵について、「池田内閣が続く限り、自衛隊の海外派兵はしない」旨、明言したのであります。先般来総理は、しばしば海外派兵はしないとの答弁をされております。その答弁を同様趣旨のものと解す、すなわち、「佐藤内閣が続く限り海外派兵はしない」と解釈してよろしいかどうか、承りたいのであります。
 第五、国際間の平和維持の課題として、核拡散防止ないしは核兵器全面禁止の問題があります。わが党は、常に核兵器の製造、実験、使用については、生命の尊厳という立場から全面禁止を主張し続けてきたのであります。総理は、平和維持の立場から、核拡散防止ないしは全面禁止に、いかなる主張をしてきたか、具体策を明示していただきたい。さらには、ジュネーブ軍縮委員会に加盟し、その主張を貫くため、これまでどのような努力をしてきたか。また、将来にわたってその努力を重ねるかどうか。
 第六、これに関連して、総理は、憲法調査会の労をねぎらうため、憲法担当の国務大臣を任命し、調査資料の集大成をはかる意図を明らかにしたようでありますが、どういう意味か伺いたいのであります。さきにあげた世論調査におきましても、佐藤内閣にこれだけはしないでくれとして、戦争、再軍備、軍事基地化反対が二三%を占め、具体的には、アメリカの基地を日本に置くな、日本の基地をベトナムに使うな、戦争に巻き込まれないでという表現をしております。このように、憲法改悪、再軍備への国民不安は大きいと見なければならないのであります。したがって、総理は憲法問題についていかなる見解を有するか、明らかにしていただきたいのであります。
 さらに、政府並びに自民党を中心として目下検討中といわれる小選挙区制実施こそは、明らかに憲法改悪への布石であり、かつまた、長く一党独裁への道を開くためであるという強い非難がありますが、この小選挙区制実施について、総理の見解はどうでありますか。
 最後に、今日、日本経済は深刻な不況下にあります。企業倒産は相変わらず、九月には負債額一千万円以上のものだけでも件数五百十五件、その負債総額五百十五億円余と、三月に次ぐ数字を見せております。十月もまた、半ばを出ずして、その件数は二百件以上となり、いつ果てるとも知れない情勢であります。一方、消費者物価指数は、去る九月には東京で二二八を示し、政権担当の昨年十一月に比べて一〇%近くの上昇を見せ、生活不安の影もまた濃いのであります。これが佐藤内閣成立後の実態であり、不況、高物価は、その解決が国民大衆の強い願望として要請されているのであります。総理はその所信表明演説において、「景気は依然停滞の様相を続けているが、政府の景気対策の効果が逐次浸透して、景気は次第に回復に向かう」と言っております。一体いつごろから回復すると見ているのか。前国会の政府答弁では、「秋に底入れして景気は上向きになる」と言明されたのであります。すでに秋となっております。いまだに製品在庫指数は上向きになっており、鉱工業生産指数は減少の傾向にあります。すなわち、これは八月に至っても景気は一向上向いてきていないことを如実に示すものであります。総理の言われる、効果が逐次浸透するとは何を意味するのか、一体いつになったら景気は底つき、反騰を見せるのか、施策の効果促進策はあるのか、お伺いしたいのであります。再三にわたる金利引き下げ、金融緩和も、景気の転換とはならなかったのであります。このことから、強力な景気刺激策をとる必要があります。一部においては、大減税を年内に行なって、最終需要の喚起と中小企業のてこ入れを行ない、景気回復の策とせよという戸があるのでありますが、政府はどうお考えか、承りたいのであります。
 さらにお伺いしたいのは、一体、政府は現在の景気に対し、循環論か構造論か、いずれをおとりになっているかということであります。改造後初の六月九日の第一回経済政策会議では、不況対策を講ずるほど重症でないと言っていたのが、第四回の七月二十七日の会議で、金融緩和だけでは不況解消はできない、有効需要の増大をはからなければならないというように変更したのであります。結局、景気循環説からした考え方によったため、見通しを誤ったと言えるのであります。そのため、経済構造上からきた不況を放流したために景気対策がおくれたと言えるのでありますが、政府はその責任をどうお考えか、お伺いして、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 105015254X00619651018_016

発言者: 二宮文造

speaker_id: 13834

日付: 1965-10-18

院: 参議院

会議名: 本会議