田口長治郎の発言 (農林水産委員会)
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○田口(長)委員 現地調査第二班の御報告を申し上げます。
第二班は、六月四日から七日までの四日間、高知、奈良の両県に派遣され、入り会い林野等の実情について調査してまいりました。
調査班は、森田重次郎君、芳賀貢君、松浦定義君、それに私を加えた四名の派遣委員と、現地参加委員として全調査日程に参加された赤路友藏君、森義=君の六名で編成いたしました。
まず、高知県について申し上げます。
高知県では、知事はじめ関係係官より、県内における入り会い林野等の現状と問題点及び県としての要望事項について説明を受け、次いで幡多郡西土佐村村長、安芸郡馬路村村長及び幡多郡大方町蜷川部落区長より意見の聴取を行ないました。
高知県における入り会い林野等は約一万八千ヘクタールで、県下林野面積五十五万ヘクタールに占める比重は高くはありませんが、これらは地域的に偏在しているため、県当局では、入り会い林野の有効的活用を偏在地域の後進性克服策の重要な課題の一つとして取り上げております。
ところで、これら入り会い林野等の現状は、そのほとんどが団体直轄利用であり、投下労働力は入り会い権者の無償提供、収益は部落の公共的事業費負担分として公費に振り向けられ、個人に分配される例は少ない、いわゆる最も初期の形をとっております。また、これらの入り会い林野等は、蜷川部落の例に見られるごとく、かつて官行造林事業によってかなり成績をあげたところもありますが、大部分は薪炭林として、従来から薪炭原木を供給しておりました。しかし、最近の薪炭需要の減少により、入り会い権者の一部からは、個人分割または入り会い林野等の解体を望む声が高まっております。しかし、入り会い林野等を分割したり解体するにいたしましても、権利関係の調整問題、登記、登録税等の費用負担の問題、及び入り会い林野等のまま個人分割したとしても、造林に必要な資金の確保、森林開発公団または県林業公社等による公営的造林の対象地たり得ず、このまま推移するならば、入り会い林野等は放置されるおそれが十分にあります。
ちなみに、これら入り会い林野等の人工林率を西土佐村の例によって見ますと、国有林、民有林の人工林率は七〇%ないし八〇%でありますが、同村の入り会い林野ではわずかに一四%にすぎないということであります。
このようなことから、今回提案されております法案の早期成立を期待する向きが大きいのではありますが、なお、この法案に対し次のような意見が述べられております。
その第一は、入り会い林野の整備にあたり、権者全員の合意を必要とするという点でございます。この点について、馬路村長及び大方町蜷川部落区長から、一部権者の反対により多くの部落民の希望と熱意が踏みにじられたこともあり、今後もそのおそれがあるので、多数決による解決策が望まれたのでありますが、この点、県関係者にただしたところ、今後この法律によって入り会い林野等を整備するにあたっては、地域振興対策の一環として取り上げるものであり、この施策との関連で関係者の説得に努力するので、問題の解決は可能である旨答弁がなされております。
その第二として、入り会い林野等を協業経営の対象とする場合、生産森林組合がその有力なにない手であるにもかかわらず、その設立、運営、管理等は、施設森林組合と同様にかなり煩瑣な手続等を必要とするので、これを手軽に設立でき、かつ現実に即した運営ができるような制度とするよう検討すること。
第三として、入り会い林野の整備に要する事務費の二分の一が県に対して補助されることとなっているが、このほか、市町村の啓蒙指導事務費、さらに整備計画作成のための調査費、測量、境界設置事業に対しても補助する必要があること。
第四に、入り会い林野等整備後の林業経営を安定させるため、政府関係機関または国の助成による造林の推進、林道網の整備等を強力に行なうことなどの意見が述べられました。
次に、奈良県について申し上げます。
奈良県では、県庁において関係係官より県内における入り会い林野等について説明を受け、次いで奈良県森林組合連合会専務理事及び五所市吐田郷生産森林組合長より意見を聴取し、その後、宇陀郡大宇陀町の現地調査を行ないました。
奈良県は、わが国有数の林業県として、早くから入り会い林野等の解体が進み、優秀な林業経営が行なわれている反面、残された入り会い林野等は権利関係が複雑で、このため集約的な利用がはばまれているのが現状であります。しかも、入り会い林野等の存在する地方は、わが国でも有数な美林地帯であり、まわりの民有林経営は単位面積あたり百三十立方メートルと、全国平均の約二倍に及ぶ蓄積を誇っておるのであります。
このため、県では、入り会い林野等に対し潜在する資源価値を引き出すことを林政の主要な目標の一つとしており、また、入り会い林野等に関係する市町村または部落においても、主として権利関係の調整をはかり、その有効利用をはかることに過去幾多の努力が重ねられてきたようであります。しかし、権利関係の調整、登記等に要する経費の問題、及び個別に私権化した後権利の集中または分散の問題があったため、今日いまだに約二万ヘクタールに及ぶ入り会い林野等が残っているのであります。このような問題は、今回の法案の成立によってそのほとんどが解決される見通しでありますので、入り会い林野等を持つ関係町村並びに住民は、この法案の早期成立を期待しているのでありますが、なお、次のような意見を述べております。
その第一は、高知県の場合と同様、全員同意によってのみ入り会い林野の整備が可能であるため、一部の反対者のため整備がおくれ、またははばまれるのではないかとの不安があること。
第二に、入り会い林野等を個別に分割化するならば、取得面積が少ないため、権利の集中、分散が行なわれる可能性があり、これを防止するには、生産森林組合等による協業の推進または施設森林組合に対し施業の委託を行なうよう強力な指導が必要であること。
その第三として、生産森林組合に対する税法上の取り扱い、特に法人税については個別経営のごとき恩典が与えられていないため、吐田郷森林組合の例に見られるような多額の税負担の問題が起こるので、税制の検討が必要であることなどの意見が述べられました。
以上のような説明並びに意見を聴取したあと、宇陀郡大宇陀町におもむき、町長並びに同町五貫山入り会い関係者より現地の実情について説明を受けました。五貫山入り会い林野は総面積三百ヘクタール、権利者一千戸を有する林野で、古来からまぐさ場として利用されておりましたが、昭和十七年官行造林事業による造林を進めるべく、住民はこれを町有林として無償提供し、その後慣行使用林野として利用しているものであります。しかし、現在は利用する者も少なくなり、原野笹生地として放置され、まわりの民有林に比べ対照的な林相を示しております。かかる現状から、町当局はこの地に造林を進めるべく、昭和三十三年以来権利者と協議を進めたのでありますが、一部の者の反対によって現在に至るも解決されず、原野のまま放置されているのであります。これらの反対は、今後この法案の成立によって、県当局のあっせんも期待でき、早急に解決されるものとして関係者は大いに期待を持っているのであります。
以上をもって入り会い林野等の調査報告を終わりますが、なお、高知県におきまして、去る五月二十日の集中豪雨による農林水産関係災害の復旧に関する要望及び農林水産業振興に関する関係団体からの陳情を受け、あわせてせっかくの機会でありますので、野菜生産に関する現地調査を行ないましたことを御報告いたします。
このたびの調査にあたり、御協力を賜わった高知県、奈良県及び関係地方農政局並びに営林局に対し心からお礼を申し上げ、この報告を終わる次第であります。(拍手)