河野正の発言 (本会議)
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○河野正君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案せられましたいわゆる健康保険等関係三法について、総理並びに関係閣僚に対しまして若干の質疑を行ない、国民の疑問に対し解明を行なわんとするものであります。(拍手)
佐藤総理は、今日まで常に社会開発に対する構想を強調せられ、また、本年初頭における施政演説の中においても、社会開発に関する施策を協力に推進することを述べられているのであります。また一方、今日国民の重大な関心事は物価の安定と生活の安定、そしてその向上方策についてであります。したがって、大蔵大臣も、さきには日本じゅうの家庭が健全で豊かな消費生活ができる福祉国家の建設をはかっていくことがきわめて急務であることを強調せられているのであります。
ところが、実際には、総理や大蔵大臣の今日までの公約に反し、昨年に引き続き消費米価、私鉄運賃、国鉄運賃、郵便料金等と、公共料金は軒並みに値上げされんとし、あまつさえ御念入りに今回の健康保険料の大幅引き上げまで強行しようと企図し、不況の克服も、物価安定も、社会開発も、単に国民に淡い幻想を与えたのみで、国民生活を一そう圧迫し、社会保障は大きく後退せしめられ、政府の公約はいまや一片のから手形に終わっているのであります。(拍手)すなわち、政府の公約ははげ頭の毛はえ薬のようなものであって、国民はだれ一人として信頼するものはいないと思うのであります。
特に、社会保障の問題は低所得者層に重大な影響を持つものでありますから、社会保障を中心とする厚生行政に対しては、今日国民の期待と関心は異常なものがあると思うのであります。しかし、これまた現実には厚生大臣のポストが敬遠され、あるいは自民党の大臣病患者にいやがられる、こういう事実が暗示いたしまするように、政府の意欲と姿勢は、全く国民の期待を裏切っているのであります。特に、今回の健康保険法等の改正は、その意味で国民を愚弄する最も悪質な改悪案と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
御承知のとおり、今度の保険料大幅引き上げについても、各審議会の答申を無視した点に対しまして国民の激しい憤りがあったと思うのであります。ところが、すでに医療問題をめぐっての紛争は一昨年以来のことであります。もちろん医療費問題の紛争には幾多の要因があったのでありますが、なかんずく、中央社会保険医療協議会をはじめとして、各審議会の答申を無視した点は、各界より強く指摘せられたところであります。したがって、国会においても、その責任が追及されたつど、総理、厚生大臣は、今後それぞれ関係審議会の意見や答申を全面的に尊重することによって、再び紛争の起こることがないよう、大いにつとめることを確約せられてまいったのであります。
また、現に法的にもその一例をあげまするならば、社会保障制度審議会設置法第二条第二項には、総理、関係各大臣は、社会保障の企画、立法、運営の大綱については、あらかじめ審議会の意見を求めねばならぬことが、明確に規定されておるのであります。しかるに、政府は、本年初頭より、国民の健康と医療を守る懇談会の構想を公表し、また、最近に至っては、深刻化する医療保険の財政危機に対処し、同制度の根本的改善に取り組むため、今度は、厚生大臣の諮問機関として、臨時医療保険制度審議会を設置する方針を固めたとも新聞は報道いたしておるのであります。深刻化いたしまする保険財政の危機に対処することは、これはいいといたしましても、すでに尊重すべきはずの各審議会があるにもかかわらず、さらに屋上屋を重ねるごとき諮問機関を新設いたしますることは、今日までの総理の発言と明らかに矛盾するものと考えるのでございますが、この点、いかがお考えでございますか、率直にひとつお聞かせをいただきたいと思います。
私は、要はむしろ医師会、支払い側団体の相互の根深い不信感をすみやかに解消せしめることにあると信ずるものであります。もし、単にその審議会の新設というその理由が、審議機関の御用化や、あるいはまた御都合主義にあるとするなら、これは国会審議尊重の上からも、断じて許しがたいと思うのであります。これが総理大臣にお尋ねしたい第一の問題点であります。
次は、今日の医療保障のあり方についてであります。
すでに社会保障制度審議会は、全国民に対し、その職域、地域の別なく、最高水準の医療を保障し、生活と健康を守る医療保障を緊急に確立せしめる必要のあることを答申いたしておるのであります。もちろん憲法第二十五条におきましても、その基本的なあり方については明らかにいたしておるところであります。ところが、現在の政府の方針は、この答申が示しております医療保障の理想像をむしろ逆用していると私は思うのであります。すなわち、政府・自民党の企図するところは、終始一貫医療保障をことごとく被保険者が拠出する保険料のワク内でまかなおうとする安上がり社会保障であり、給付水準をできるだけ低く押えようとする低医療政策にほかならないのであります。このような事実は、むしろ医療保障の後退であり、破壊であり、佐藤総理みずからが憲法第二十五条の精神を踏みにじっておられると思うのであります。この憲法でいいますところの医療保障についてのあり方、これが私が総理にお尋ねしたい第二の問題点であります。
次いでお尋ねしたいと思いまする点は、今後、日本の医療保障の展開についてであります。
医療には最高度の技術が必要でありまして、また、その医学、医術の進歩は保険医療にも極力取り入れられなければならぬと思うのであります。しかも、今日疾病構造の変化等がありまして、医療保険の費用、経費が漸増する傾向にあることは当然の理であります。さらに、近年はその傾向が異例的に激しくなり、経済高度成長のテンポを大きくこえるに至っておるのであります、したがって、国民総医療費の国民所得に占める比率も、すでに五%に達するに至ったのであります。ところが、政府はこのような背景を全く無視して、依然として腰だめ式の医療費の引き上げと、保険財政の収支のつじつまを合わせるといった方策のみに終始いたしてまいりましたことは、まさしく政府・自民党の無為無策ぶりを暴露したものと断ぜざるを得ないのでございます。(拍手)
今後、日本の医療保障をどう展開していくべきか、いまや抜本的に再検討を加えるべき時期が訪れておるものと私は信ずるのでありますが、この点は、総理の御見解を率直にひとつ承っておきたいと思います。これが総理にお尋ねをしたい第三の問題点であります。
次いで、改正案の中で、具体的な点について若干お尋ねしたいと思うのであります。
その一つは、厚生省は、四十一年度の保険財政の赤字は七百二十億円と見込んでおるのでございます。しかして、その赤字を補てんする方策といたしましては、今度の改正により標準報酬の上限引き上げで百三十八億円、保険料率の引き上げで二百九十億円の増収を見込んでおるのであります。このことは、一例をあげて説明をいたしますならば、月収十万円の人の保険料は、現在千六百三十八円であったものが三千五百円というぐあいに、その二倍増というふうにきわめて大幅な負担増となるのであります。しかるに、大蔵大臣は、この国民の加重負担には全く目をおおい、依然として三者三泣きを主張しておられるのであります。
ところが一方、各審議会は、今日の保険財政の赤字は全く政府の責任であり、特に、精神、結核医療等の他の制度の負担のしわ寄せもあることであるから、平年度二百億円の国庫負担と、他は借り入れ金で処置すべきであることを、強く強調いたしておるのであります。また、さきの自民、社会両党の国対委員長会談における取りきめの内容も、わが党の主張する定率補助にあったということは御承知のとおりであります。
たとえ、当面の赤字対策に限ったといたしましても、あくまで国庫負担の大幅増額が行なわれなければならぬと考えるのであります。ところが、今回の予算措置はわずか百五十億円にとどまっているのであります。このことは、保険財政が漸増するおりからでございますから、再び保険料引き上げが行なわれるということがこのままでは必至の状況でございます。
そこで、今回予算措置をされました百五十億円の根拠と、いま申し上げまするような理由によって今後この財政処置を大幅に増額する用意があるものかどうか、この点はひとつ大蔵大臣のほうからお答えをいただきたいと思うのであります。
この国庫負担に関連いたしまして、いま一言お伺いいたしたいと思いまする点は、赤字財政と医療機関に対しまする支払い遅延の問題についてであります。
医学、医術の進歩は人道上からもまた当然保険医療に取り入れられなければならぬと思いまするし、さらに疾病構造の変化もございますので、今後医療保険の費用が逐次漸増の一途をたどりますことは、いま申し上げたとおりでございます。したがって、赤字財政の問題は、好むと好まざるとにかかわらず、大幅国庫負担を中心とする抜本的改善が行なわれぬ限り、悪循環はさらに繰り返す問題であるということを私は強く指摘いたさなければならぬと思います。今日すでに残念ながら結核、精神医療の措置費は、支払い遅延という深刻な事態を引き起こしておるのであります。この医師、医療機関に対する支払い遅延という攻撃こそは、政府独占の資金計画の本質を暴露し、健保、医療破壊の野望なりと私どもは糾弾せざるを得ないのでございます。(拍手)
国民健康保険におきましては、国民健康保険法の中で支払い遅延を防止するため、その支払い期日を明確に規定いたしておるのであります。そこで、いま申し上げましたように、一般健康保険におきましても、国民健康保険の例もあることでございますので、この健保医療の不安を除去するためにも、支払い遅延という深刻な事態を防止するためにも、私は、そのような支払い遅延を防止するための措置、具体的には法制化というものが必要になってまいるであろう、こういうことを考えるわけでございますが、この点は厚生大臣のほうから、さらには財政上等の問題もございますから大蔵大臣からもお答えいただければ非常にけっこうだと思います。
一方政府は、赤字財政克服の一環として行政努力によって九十八億円の節減をはかろうと言っておるのであります。四十年度におきましては五十八億円、本年は実にその二倍の節減であります。しかし、私は、元来行政努力というものは、赤字の有無にかかわらず行なわるべき筋合いのものであって、いまさらあらためてここに一挙にばく大な節減を行なうことは、常識的にも全く納得のできぬ点でございます。すなわち、このばく大な額の節減は、不当なる審査、不当なる監査、あるいはまた不当なる減点といった適正医療の運営をはばむ政府の収奪行為なりと指摘せざるを得ないと思うのであります。(拍手)このような納得いかぬ行政努力について、厚生大臣はどのようにお考えになっておるのか、率直にひとつお答えをいただきたいと思うのでございます。
最後に、一点お尋ねいたしたいと思いまする点は、診療報酬体系の適正化の問題であります。
いずれにいたしましても、医療保険の赤字の病根は、実に根深いものがございます。しかし、その制度については国民の福祉の面からも、その健全化をはかっていかなければならぬことはきわめて緊要な事柄でございます。なかんずく、国民医療向上のたてまえからの技術尊重の診療報酬体系の適正化は、早急に検討をし、早急に解決をしなければならぬ重要な問題であろうと考えます。中央社会保険医療協議会もすでに審議すべき議題の決定を行なったようでございます。今日の国民医療の向上を前提とする医療保険問題の早急な解決というたてまえから、診療報酬体系適正化と、さらに議題を決定いたしました中央社会保険医療協議会が今後どのような方向で進展するものか、この点につきましては国民の前に明らかに解明をしていただく必要があろうかと考えます。
以上の点を厚生大臣より率直にお答えを願いまして、鈴木善幸厚生大臣の行政が、文字どおり善幸であることを心から私どもは期待して、そうして私の質問を終わらんとするものであります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕