高田富之の発言 (本会議)

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○高田富之君 私は、日本社会党を代表して、昭和四十一年度総予算につき撤回のうえ経済財政政策を転換し編成替えすることを求めるの動議につきまして、提案理由を説明いたします。(拍手)
 政府原案は、これを三百で評すれば、大資本の強い要望と圧力に屈し、その立場からの不況対策にのみ重点を置いて、国民の要求する当面の最大課題たる物価の安定を放棄し、ますますインフレをあおり立てて、国の財政経済を根底から危殆におとしいれるおそれのある、無謀にしてかつ国民の利益に反するものであるといわざるを得ないのであります。(拍手)
 すなわち、政府は、四十年度補正予算において二千五百九十億円の国債発行を決定し、また、四十一年度においては七千三百億円の国債を発行しようとしておりますが、そのねらいは、これによって大資本のための需要をつくり出し、また、企業減税を行なって利潤を高めることにより、景気の回復をはかろうとするものでありますが、かつて大衆生活を犠牲にして、大資本優先のいわゆる高度経済成長政策なるものを推し進め、その必然の結果として、今日の設備過剰と不況を招来したにもかかわらず、何ら反省することもなく、いままた国民大衆の生活の犠牲の上に、全く同じ筆法の大資本優先の景気対策をとりつつあるのであります。このような政策の結果は、一体どうなるでありましょうか。
 まず第一に、インフレと物価騰貴をいよいよ悪性化させることは明らかであります。(拍手)
 政府は、国債を市中消化するから、その心配はないと申しておりますけれども、しかし、必ず民間金融市場を逼迫させ、日銀の大量の追加信用を呼び起こすことは避けられないのであります。通貨の膨張に加えて、政府は各種の公共料金をきわめて安易に次々と大幅な引き上げを強行いたしておるのであります。本年一月の東京の消費者物価指数が、私鉄運賃引き上げを織り込まずに、対前月比で一・二%も上昇し、また、二月も引き続いて対前月比一・二%も上昇していることは、四十一年度消費者物価上昇率を五・五%にとどめたいとの政府の全く根拠なき願望を早くも打ち砕いていると申さねばなりません。(拍手)
 第二に、このような政策の結果は、不況の克服ではなしに、反対に、ますます不況を深刻化し、長期化するであろうという点であります。
 現在の不況は三兆ないし四兆円にのぼる供給能力と有効需要とのギャップにあるのでありますが、物価上昇と低賃金政策とによって、一そう国民の購買力を縮小させ、また、大資本のしわ寄せによって中小企業の倒産が拡大し、国債発行の影響によって地方財政はますます窮迫せしめられる等々、独占資本の不況脱出のみに奉仕して、総体的に国民経済のバランスを考えない政府の政策がつくり出しますものは、大資本にだけ潤うせいぜい一時的な見せかけの景気以上には出ないのであって、一般国民諸階層には生活の危機を深め、実体は不況を慢性化することとなるでありましょう。(拍手)
 第三に、国債発行は年々拡大の一途をたどり、予算規模も必ずや雪だるま式にふくれ上がりまして、国債の元利償還のために国債を発行する、いわゆる自転車操業的悪循環におちいることは不可避であります。
 政府は、ついに公債償還の計画も見通しも明らかになし得ず、福田蔵相は、借りかえをすることとなろうと、平然とうそぶいているのでありますが、その無責任さには驚き入るのほかはないのであります。(拍手)また、第三次防衛計画に基づいて、今後ますます防衛費が急増することは明らかでありまして、やがて軍事公債の性格を持つようになるであろうことは否定すべくもないのであります。
 第四に指摘しなければならない点は、国際収支の危機が招来されることであります。
 国内物価の騰貴が、輸出の減少、輸入の増加の傾向に拍車をかけることは言うまでもありませんが、加うるに、アメリカのドル防衛やわが国と欧米諸国との金利差の動向などによって、資本収支の赤字も拡大されてくる。こうして、国際収支の面から経済規模の拡大が制約されることとなるのであります。
 以上のような重大な欠陥を持った政府の財政経済政策は、まことに国家国民の利益に反するものと断ぜざるを符ないのでありまして、この際、政府は、かかる大資本本位の経済財政政策を根本的に転換すべきであり、国債発行はこれを取りやめ、物価安定を第一義といたしまして、混乱した日本経済に秩序と方向を与えるための思い切った施策を断行し、もって国民経済と民生の安定をはからなければならないと考えるのであります。(拍手)
 そこで、以下、わが党の要求する政策転換の方向と、その骨子を申し述べたいと考えます。
 第一は、物価の安定であります。
 まず、日銀法の改正によりまして、日銀の運営を大資本奉仕から国民奉仕へ転換し、インフレの根源を抑え、通貨価値の擁護に万全を期する必要があります。
 また、各種公共料金を引き上げないためには、消費者米価、郵便料金には一般会計からの繰り入れ、国鉄については、経理の徹底的な洗い直し、含み資産の厳正な把握を行ない、その上でなお必要な経費は、これを一般会計から繰り入れるべきであります。
 各種健康保険は、国の補助率を引き上げ、国民の負担を増加させないこと、また、地方公営企業についても、長期低利資金の供給、国家の補助等により、料金引き上げを押えるべきであります。
 一般物価につきましては、公取の機能と独禁法の適用を強化し、不当なカルテル行為の禁止等によって、独占管理価格を引き下げる必要があります。
 また、生鮮食料品については、生産基盤の強化、計画的生産出荷体制、流通機構の整備等による需給と価格の安定をはかることが必要であります。
 特に、地価対策につきましては、土地利用区分の設定、市街化指定地域内の土地売買、宅地造成を国で管理し、宅地基準価格を設定すること、その他国有地開放、空閑地税等々によりまして、地価引き下げを積極的に推進すべきであります。
 以上の諸措置と並行して、物価安定法を制定し、物価安定委員会を設置して、物価に関する諸事項の調査と、国会と政府に対する勧告権をこれに付与する必要があると考えます。
 第二は、所得の不均衡是正と最終消費需要の拡大であります。
 まず、全国一律最賃法、家内労働法の施行と、大幅賃上げの実施が必要であります。社会保障についても、生活保護基準、失対賃金、福祉年金等の大幅引き上げ、医療保険の国庫補助引き上げを実施し、また、税につきましては、勤労大衆に対する所得税、住民税の大幅軽減、大衆消費品目の物品税引き下げを行なうべきであります。
 教育については、義務教育の父母負担の解消と高校、大学の予算の充実、私立学校に対する助成、私学振興費の利子補給、番付金の免税等の措置をとることを要します。
 住宅につきましては、五カ年間七百六十万戸、うち四百六十万戸を政府施策住宅として建設し、住宅難を一挙に解決する方策を断行すべきであると考えます。
 第三には、産業間、地域間の不均衡の是正をはかることであります。
 まず、中小企業対策としては、中小企業倒産防止のため、公取の機能を強化して、取引の公正化をはかるとともに、下請関係調整法をつくり、下請条件の公正化をはかり、また、中小企業の事業分野を守るため、大企業の進出を規制し、官公需の確保をはかるとともに、小規模事業については協同化を推進しつつ、一口二百万円までの無担保、無保証、低利融資を確保することであります。
 農林漁業の関係では、農用地の開発、農林漁業の基盤整備、機械化、共同化等による生産性向上、所得の上昇をはかるとともに、食糧の自給度を高めなければなりません。また、米作、畑作、畜産、果樹の育成のためには、価格支持政策の強化と、米麦、牛乳、肥飼料を国家の管理とすることが必要であります。漁業については、採取漁業とともに、育てる漁業を育成し、特に大衆魚の価格安定指貫を早急に確立すべきであります。
 地域開発に関しては、従来の大企業偏重、地方財政圧迫、住民福祉無視の地域開発をとりやめ、また、太平洋ベルト地帯編垣主義を是正せねばなりません。そして地場産業の育成、農工併進の開発、農山漁村など後進地域、災害地域の投資を拡大すべきであります。
 第四には、わが国対外貿易の構造を改め、経済自立の強化をはかることであります。
 過度の対米依存から転換して、北米、中ソ、東南アジアの三大市場を中心に、広く世界各国と交流する体制をつくり、輸出入の均衡と貿易規模の拡大をはかるべきであります。
 中ソ、北朝鮮貿易については、一切の制限を撤廃し、輸出入銀行の延べ払い条件を改善し、輸出を急速に増加すべきでありまして、特に中国に対しては、政府間貿易協定を締結し、中ソ、北鮮と往復二十億ドルの貿易規模を実現すべきであると考えます。なおまた、これがためにも、アジアの平和を一日もすみやかに回復することが望ましいことは言うまでもないことでありまして、わが国は、アメリカのベトナム侵略への協力を一切やめて、ジュネーヴ協定に従って、米軍を撤退させるための国際会議をすみやかに実現せしむるため、わが国としてなし得るあらゆる努力を尽くさなければならないと考えるのであります。(拍手)
 低開発諸国との経済協力は、アメリカの下請ではなしに、日本の自主的立場から、アジア・アフリカ諸国の独立達成を助ける友好的協力を推進すべきであります。
 第五には、金融の計画化と資金の有効利用をはかることであります。
 そのため、内閣に強力な権限を持つ資金計画委員会を設け、財政と民間を通ずる長期資金の運用についての資金計画を定め、その計画に基づいて各金融機関を運営させる体制をつくる必要があります。かくして、大企業による過剰投資、オーバーローンを規制し、また、資金の中央集中を避け、歩積み・両建てを解消して、実質貸し出し金利の引き下げをはかると同時に、また、金融の二重構造を打破して、農業、中小企業等、立ちおくれた部面への豊密な資金供給を行なうべきであります。
 以上のような各般の施策の実施によって、初めてインフレ、物価騰貴は抑制され、不況は克服でき、安定して、しかもかなり高い経済成長が実現できるものと信ずるのであります。(拍手)
 このような新しい経済の土台の上に編成される財政は、所要の租税収入を十分に確保することが可能でありますから、実質上の赤字公債である七千三百億円の国債発行は不要であります。
 歳入においては、税制の大幅改正を断行し、大企業本位の特別措置を整理し、法人税率に累進制を導入し、会社交際費や過当広告費への課税、利子配当の分離課税の廃止、土地、山林、有価証券等の譲渡所得への総合累進課税、富裕税の新設、大口脱税の捕捉等によって、当然取るべき税収を確保しなければなりません。(拍手)その反面、所得税の免税点を、標準世帯年収八十万円に引き上げ、初年度約三千億円の所得税減税を行なうこと、及びその他間接税、住民税を含め、初年度約四千億円程度の大衆減税を断行すべきであると考えます。(拍手)
 歳出面では、防衛関係費、公安調査庁の反動機関の経費、農地報償、対韓国供与等のうしろ向き経費の削減、削除、各種補助金の整理、合理化を行なうことが必要であります。そして歳出の重点を農林漁業、中小企業、社会保障、文教、住宅、未解放部落対策などの民生安定と格差解消に向けなければならないと思うのであります。(拍手)また、特に沖繩に対する財政措置その他の援助措置の思い切った強化は当然なすべきことと考えます。
 地方財政については、国と地方の事務及び税源の再配分と、十分な自由起債ワクを地方公共団体に付与するような制度改正がぜひとも必要であります。また、各種公共事業の予算単価の適正化による地方公共団体のいわゆる超過負担を解消すべきであります。
 最後に、財政投融資については、重点を住宅建設、生活環境整備、各種の国営事業や地方公営企業の経営改善に向ける。特に住宅建設については、所要資金調達のため、生保、損保、農協などの余裕資金を活用すべきであります。
 以上のような大原則に基づいて、財政の大胆な再編成を行ないますならば、赤字国債の発行はその必要がなく、十分な租税財源で予算が編成できまして、しかも、大企業と産業偏重ではなしに、産業と地域の二重構造を是正し、国民生活優先の立場に立った財政運営が実現されるのであります。(拍手)これこそ、憲法第二十五条に規定されておりまする、すべての国民に健康にして文化的な生活を保障する道であり、私は、このようにしてはじめて明るく豊かな平和日本が実現されることを確信し、また、これこそすべての国民の待望するところであると信ずるのであります。(拍手)
 したがって、この際、昭和四十一年度総予算政府原案を撤回し、以上申し述べました趣旨に基づいて、財政経済政策を転換して、編成替えを行なうべきことを強く要求する次第であります。
 どうか皆さんの御賛同あらんことをお願いして、提案理由の説明を終わりたいと思います。
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発言情報

speech_id: 105105254X02319660305_009

発言者: 高田富之

speaker_id: 8851

日付: 1966-03-05

院: 衆議院

会議名: 本会議