矢尾喜三郎の発言 (本会議)

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○矢尾喜三郎君 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党を代表いたしまして、本月四日発生したカナダ太平洋航空のDC8型ジェット機事故、並びに五日午後二時過ぎ起きた英国のBOACボーイング707型機の富士山ろくにおける墜落事故等々、最近における航空事故に関連して、総理並びに関係閣僚に幾つかの点について質問をしたいと存じます。(拍手)
 質問に入る前に、私は、数重なる事故で一瞬のうちにとうとい生命を失われた多くの方々の御冥福をお祈りしますとともに、御遺族の方々に対しまして心から哀悼の意を表したいと存じます。(拍手)
 まず、私は、佐藤総理に、この機会に航空行政についての政府の基本姿勢をお伺いしたいのであります。
 去る二月四日の全日空ボーイング727型機事故からくしくもちょうど一カ月後の三月四日に発生したDC8型機事故等、たび重なる羽田空港における遭難事故及び五日の富士山ろくにおける墜落事故は、国民の深く悲しむところであり、世界の注目を浴びておるのであります。私は、この際にこそ、与野党互いに胸襟を開いて、わが国の航空政策、日本の航空行政をもっと掘り下げ、ともに考え合うときであると存ずるのであります。
 そこで、私は、国際航空に対する政府、国の責任をまずお尋ねしたい。
 政府の今日までの諸計画において、特に国際航空路線は、昔の海上航路にも増して重要な国際交通の手段であり、これが強化には国をあげて取り組むべきことであるが、私たち国民の目には、政府が今日まで十二分な航空政策や政治姿勢を持ってきたとは思われないのであります。なるほど、戦後二十年、日本の航空路線の開発は著しいものがあり、日本の国内、国際にわたる航空政策に対する国民の関心も高まりつつありますが、政府は政府みずからの責任において一体何を行なってきたのでありましょうか。すでに航空業界の間では、政府の航空政策はないのも同然だとか、政府の航空政策は大臣がかわるたびにネコの目のように変わるので、航空事業というものは数年先を見越して行なわなければならない事業であるにもかかわらず、航空政策がこう目まぐるしく変わるのでは事業計画も満足に立てられないといった批判が、公然と常識のように語られているのであります。(拍手)さきの全日空事故といい、今回の事故といい、特に航空の安全については、事故が起こってからあとの政策は無意味であるばかりでなく、むしろ政治的責任を問われるものであります。そこで、その航空政策のうち、最も基本的な交通安全の問題について総理の所見をただしたいのであります。
 私は、陸海空を問わず、交通の安全という問題は、その施設、その運営、その管理のすべてが人命尊重の立場に貫かれて初めてなし得るものと思うのであります。特に、この交通安全という問題を基本に据えた日本の交通政策、航空政策を、たび重なる痛ましい事故のあとではありますが、いま転換する必要があるとともに、強力な政府の指導体制がなければ、民間企業にまかしておいたのでは百年河清を待つ以外の何ものでもないと思うのであります。もちろん、民間企業といえども、人命の安全性を考えないとは思いませんが、それよりも、私企業である限り、企業性ということが一番大きく考えられ、そのため、各企業とも、スピード競争あるいはスタイル、乗りごこち等に重点を置き、宣伝につとめ、サービス第一主義におちいり、過当な競争が行なわれている現状であります。今回のBOAC機が、その真偽は別といたしまして、乗客サービスのため富士山を見せるため、富士山ろくを回ったと伝えられるごときもその一例であります。かかる世界の航空企業競争の中に置き忘れられようとしている安全性については、政府が思い切った指導性を確立しなければ、その目的を達することはできません。たとえば、航空機購入に際しても、安全性あるいは性能等についても、人命尊重の立場より、干渉といわれようとも信念を持って強く指導すべきであると思うのであります。これらに対し総理はどのようにお考えになりますか、御所見をお聞かせ願いたいと思います。(拍手)
 次は、私は、具体的な問題について総理並びに運輸大臣の誠意ある答弁を国民とともに期待したいのであります。
 第一の質問は、国際航空路線の問題であります。
 さきに政府は不平等性を残したまま日米航空協定を改定してきたが、この結果、東京は、ニューヨーク、ロンドン空港とともに世界を結ぶ三大空港として大きくクローズアップされ、最近アメリカの民間航空企業の東京乗り入れ申請が数多くアメリカ政府に出されている現実、また、日ソ航空協定の締結等々、今後羽田空港の持つ責任は国際的にもますます重大であり、十分な安全策を講ずることはもちろんでありますが、この際、国際航空路線の新たなる展開についてどのような政策的見通しを立てておられるか、この点をお伺いいたしたいのでございます。(拍手)
 第二に、羽田空港の安全性について質問したい。
 今回のDC8型機の遭難事故について、運輸大臣は、日本側の管制に責任があったとは思われないという点を強調しておられるのであります。しかし、私たちが羽田空港の管理体制を視察してみると、現在の施設、現在の人員配置、現在の指導方針ではぎりぎり一ぱいで、私は、政府が国際航空路線における事故について責任がないと言い切るのは早計であると思われるほどであります。このとうとい人命を失った重大な経験からも、私は、政府が羽田の航空安全、交通安全について行なうべき施策はまだまだあって、この不十分さをみずから反省すべきであり、みずからの政策的欠陥を補うことこそ重要であると感ずるものであります。
 一昨日の英国の新聞、ラジオの報道を見てみましても、BOACボーイング707型機は六億二千万キロメートルを飛び、無事故できた今日、日本での相次ぐ事故は日本での航空管制に疑問があるのではないかと言っておること等につきましても、完全に一矢報ゆることのできる完全なる体制が必要であると思うのでありますが、どうでございます。運輸大臣は、現在のままで完ぺきであるとお考えになっておられますか。
 また、運輸大臣、羽田空港のレーダー、誘導施設、化学消防車等々の安全施設は十分であったのか、要員は充実されていたのかどうか。また、四日のような天候条件の悪い場合、その悪条件を克服し得る施設、装置を十分に配置するか、さもなければ、一定の確実な安全基準に基づいて航空機の避難を指導すべきであって、こうした事項はあげて政府の負担すべき任務であり、責任であるはずであります。
 また、空港の安全には念には念を入れて、視界不良の際は、気象条件を的確に把握し、着陸を断じて許可しない方針を強くとるとともに、出発の際には、確実に把握した気象条件を関係者に熟知せしめる手段がとられるべきであります。
 また、四日の太平洋航空DC8型機の入港の際、計器着陸装置が使用できなかったが、かかる場合には特別の保安対策を講じておく必要があるのではないかと思うのであります。視界が非常に悪い場合、判断を機長にまかせ、管制を不十分な装置と人員とに依存している現状のままでは、大臣、第四、第五の同種の事故を予約するにひとしいのでありまするが、この際、羽田空港の保安施設、管制装置、保安要員の倍加を直ちに公約する必要があるのではありませんか。
 空の安全を預かる航空交通管理官の定員は四百八十名で、これが満たされても安全管制はむつかしいといわれながら、その実在数は四百四十名で、定員を四十名も欠けておるのであります。機体を点検する検査官も足りない。試験官も、ここ数年航空機数が激増しているのに、これに見合う増加はされていない。飛行機は新型新型と進んでいくのに、飛行場の設備はこれについていけないほど老朽化している。これで事故が起こらなければうそであるといわれるほどであります。
 また、消防要員については、前からすでに指摘されているように、現在羽田では、消防車十台に五十六名の常員を必要とするのに、これが配置は二十八名、常時勤務十名の要員といった現状では、今回のような事故に即応し得るものではありません。
 運輸大臣、このような不十分なる体制を、あなたは御存じですか。これらの問題は特に重大であると思いますので、この際総理よりも明確な御答弁をいただきたいと思うのであります。
 ことにまた、この事故と関連して、防潮堤と誘導灯のあり方にも再検討の必要があると思うが、どうか。
 最後に、私は今回のたび重なる事故が日本の航空行政に、また世界の国際航空路線に与える影響の大きさを考えて、次の指摘をするとともに、それぞれについて政府の所見を伺いたいのであります。
 その一つは、国内航空についての徹底した安全施設、保安要員の充実であります。これは政府の航空政策の直接の責任範囲としていま直ちに行なう事項であり、その徹底をはかるためには、政府の強力な一元化政策への展望を明らかにし、国民大多数の納得と支持とを得ることが必要であると考えますが、どうですか。
 その二つは、政府は、航空の安全を確保するために、操縦士、機関士、整備員、管制官、航空保安要員など、航空実務に従事する人々の代表者会議を定期的に開き、安全性問題について必要措置を勧告させ、政府がその勧告をすみやかに実施することにしたらどうか、また、同様の会議を国際的規模においても開くよう、日本政府が各国政府に提唱してはどうかと思うが、総理はどういう考えを持っておられますか。
 第三点として、国際路線の問題についてでありまするが、何よりも不平等性を取り除き、国内航空基盤の着実な建設に基づいて実質的な航空協定を政府が全責任を持って締結すべきであります。そのためには現行の日米航空協定の不平等性をさらに改定し、また、安保条約に基づいて日本の上空を横断するアメリカ軍用機のための米軍専用航空路線を整理することが、将来の国内航空事故防止の大きな条件であると考えるのでありますが、政府の所見はどうですか。(拍手)
 以上、私は、今回の悲しむべき航空機事故に直面して、この貴重な体験から、政府のとるべき航空行政と交通政策のあり方について、若干の問題を総理及び運輸大臣に質問をいたしました次第でございます。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕

発言情報

speech_id: 105105254X02419660308_005

発言者: 矢尾喜三郎

speaker_id: 18904

日付: 1966-03-08

院: 衆議院

会議名: 本会議