河野密の発言 (本会議)

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○河野密君 私は、日本社会党を代表して、佐藤内閣に対する不信任案の提案の趣旨説明をいたしたいと存じます。(拍手)
 まず、主文を朗読いたします。
  本院は、佐藤内閣を信任せず。
   右決議する。
  〔拍手〕
 不信任案提案の第一の理由は、佐藤内閣の経済政策の失敗であります。
 佐藤総理は、本年一月の施政演説において、国民の生活を守り、これを向上させることは、国民に奉仕する政府の任務であり、政治の眼目であると述べております。しかしながら、その佐藤内閣のもとで、国民の生活を脅かす消費者物価の上昇が著しく、中小企業の倒産は増加し、国民の生活はますます苦しくなるばかりであるということは、何という皮肉でありましょうか。(拍手)
 佐藤内閣の発足は一昨年の十一月であります。その年の十二月、政府は、四十年度の消費者物価は四・五%の上昇という経済見通しを発表いたしました。しかるに、最近発表された政府の統計によれば、四十年度の消費者物価の上昇は、実に七・四%に達し、政府見通しを大きく上回って、過去十年間の最高を示したのであります。(拍手)このため、同じく総理府統計局の家計調査報告によれば、昭和四十年における都市勤労者世帯の実質所得は、前年を〇・三%下回るという結果になっております。これは、この調査が開始された昭和二十六年以降初めてのことといわれ、われわれは、佐藤内閣のもとで勤労者世帯の実質所得が初めて低下したという事実を重視せずにはおられないのであります。(拍手)
 そもそも、物価騰貴の原因は何でありましょうか。われわれの見るところによれば、今日の物価騰貴の原因は四つあると考えます。
 第一は、政府のとりつつあるインフレ政策の結果であります。四兆三千百四十億円の膨大な予算、二兆二百七十三億円の財政投融資、一兆三千八百八十七億円に及ぶ政府関係機関の貸し出し計画、加うるに七千三百億円の実質的な赤字公債の発行など、歯どめのないインフレ政策のおおばんぶるまいと申すほかはありません。(拍手)最近における物価高騰の根本的な原因はこのインフレ政策にあるのであります。
 第二は、公共料金の引き上げによる波及的効果であります。鉄道運賃、水道料金、私鉄運賃、バス料金など軒並みに引き上げられました。近く郵便料金も上げられようとしております。政府は、これらの料金引き上げの影響をつとめて過小に評価し、物価へのはね返りをことさらに否定しようとしておりますが、その波及的効果、値上げムードに対する影響は重大だと申さなければなりません。(拍手)
 第三は、流通機構の不備であります。青森県でメーカーの手を五円で離れたリンゴが、東京へ来て四十円、五十円で市販されている事実、九州の港で漁民から一尾十円で買い取られる魚が、東京ではその数倍で売られているという事実、これはいずれも流通機構の複雑と不備によるものであり、これが消費者物価を不当につり上げている原因でもあります。
 第四は、独占企業の管理価格による物価上昇であります。いわゆる不況カルテルの名のもとに、最近まで十七のカルテルがあり、現在においてもなお十三のカルテルが認められ、当然下がるべき物価のてこ入れをしておるのであります。最近卸売り物価上昇の傾向が顕著になってきたのは、もっぱら独占企業の管理価格によるものと申さなければなりません。(拍手)
 佐藤首相は、口を開けば物価問題と真剣に取り組むと公言してまいりましたが、これらの原因のはたしてどの点と真剣に取り組んでいるのでありましょうか。(拍手)佐藤内閣の宣伝する物価対策費は、総額にして百五十七億円、実に総予算の〇・四%にしかすぎません。しかも、それがどこに計上してありますか。総理をはじめ与党の各位はみずから突きとめてみたことがありましょうか。(拍手)顕微鏡をもってのぞかなければならぬくらいにこま切れにされた額が、主として農林省予算に、そうしてその他の各省予算に散在しておるにすぎません。これが物価対策と言えるでありましょうか。(拍手)それよりも私の指摘したいのは公共料金であります。政府の力でどうにでもなるのが公共料金であります。政府の力で左右することのできる公共料金をすら抑えることのできない政府は物価問題を語る資格なしといわざるを待ないのであります。(拍手)
 最近、政府は、みずからの経済政策の貧困を糊塗するために、不況底入れ説をしきりに放送し、景気の上昇を宣伝しております。はたしてそう言えるでありましょうか。政府は、景気回復を宣伝する理由として、第一に、株価の値上がりとこれに伴う証券業界の活況の取り戻し、第二に、在庫の減退と生産の上向き、第三に、セメント、鉄鋼等に見られる操短の緩和、第四に、中小企業を中心とする倒産の減少、などなどをあげております。しかし、はたして政府が言うがごとく楽観することができるでありましょうか。私は多くのことは申し上げません。最も端的に不況を立証する中小企業の倒産について見ましょうか。
 政府の中小企業白書によれば、昭和四十年の中小企業倒産件数は六千百四十一件にのぼり、前年を四五・八%も上回る空前の数となっておるのであります。しからば、本年に入ってからはどうでありましょう。四月末までの累計で、すでに一千八百七十三件、負債の総額が一千三百三億円にのぼっているのであり、昨年並みのハイペースであります。これは、言うまでもなく、高度経済成長政策の破綻による過剰生産の不況のもとで大企業中心の合併とカルテルによる産業再編成が進められ、中小企業には、下請系列の整理、取引条件の引き下げなど、弱小企業切り捨てのしわ寄せが行なわれ、当然大企業が負うべき責任を中小企業に転嫁し、いわば代理倒産の犠牲が押しつけられた結果であるといわなければなりません。(拍手)
 かくのごとく、不況は、底入れどころか、一そう悪質な内攻状態に入っております。しかも、政府の施策は、フィスカルポリシーの名のもとに、単なる財政の膨張と金融緩和方策に終始しているにすぎません。公債政策を導入した大型予算を組み、これによって景気の人為的刺激策をとり、目前の効果のみを期待しておるのが政府の態度であります。
 この結果はどうなるでありましょう。さきに申し上げましたように、第一には物価へのはね返りであります。第二に憂慮せられるのは国際収支の悪化であります。すでに昭和四十年度の実績において国際収支は政府の予想を裏切り、総合収支二億ドルの黒字を期待したのが、結局五千六百万ドルの黒字にすぎないことが明らかとなりました。貿易において十四億七千万ドルの黒字をあげながら、国際情勢から資本収支の悪化した結果で、いまのような数字になりました。これによって見れば、四十一年度においては国際収支はさらに悪化するものと予想せざるを得ず、万一赤字となった場合に、政府はいかなる対策をとられようとするのでありましょうか。少なくとも、大きく政策転換を必要とすることは明らかであります。過去において数回繰り返してきた金融引き締めは、再び必至となってまいりましょう。ゆるめては締め、締めてはゆるめる、これを英国の労働党はゴー・ストップ経済政策と申しておりますが、これによって苦しめられるものは国民であり、勤労者であり、中小企業者であることを忘れてはならないのであります。(拍手)
 佐藤内閣の無責任なるインフレ政策の終着駅を今日において予想できるわれわれは、一日もすみやかなるその退陣を要求せざるを得ないのであります。(拍手)
 不信任案提案の第二の理由は、佐藤内閣の外交政策における失敗であります。
 佐藤総理は、口を開けば平和に徹することを外交の基本方針とすると繰り返しております。しかし、佐藤内閣が現実に進めてきた外交が、はたして平和に徹する外交と言えるでありましょうか。
 昨年二月七日、アメリカは、北ベトナムにまで爆撃を広げ、南ベトナムの米軍を軍事顧問団から正規軍に変えて増派し、二十万の米軍を投入して、面接戦闘に介入させました。しかも、ナパーム爆弾や毒ガス、毒性化学薬品など、非人道的な兵器を使用して、非戦闘員にまで無差別爆撃を行ない、南ベトナムをまさに不毛の砂漠に化そうとしております。このアメリカの残酷な戦争行為は、全世界のきびしい非難の的となっており、すでにアメリカの国内においてすら、徴兵拒否、反戦署名などの運動が広がりつつあります。
 しかるに、佐藤内閣は、アメリカが北爆を続けた一年有余の間に、アメリカに対して北爆停止の要求を出したでありましょうか。非人道的な行動を抑制せよと、一度でも要望したことがあるでありましょうか。逆に、アメリカの北爆を是認し、アメリカの原子力潜水艦の寄港を八回にわたって許し、日韓条約を強行させ、医療物資などをアメリカ政府の要請で南ベトナムに送り、軍需物資の生産と輸送に協力し、北爆のための補給基地として、沖縄、本土各地の軍事基地の使用を認めてきたのであります。(拍手)
 しかも、佐藤内閣は、口ではベトナム和平を唱え、去る一月、椎名外相の訪ソにあたり、ソ連に、北ベトナムや南ベトナム民族解放戦線への和平説得を依頼し、たちどころに拒絶されるという失態を演じております。(拍手)あたかも、椎名外相が訪ソするちょうどそのころから、わが国のベトナム特需は急激にふえ、軍服、軍用トラック、軍事基地建設用資材の調達をはじめ、戦闘機や艦艇の修理契約までがふえております。また、二月末から三月にかけて行なわれたアメリカ上院軍事委員会の秘密聴聞会において、マクナマラ国防長官は、日本は憲法上南ベトナムに軍隊を出せないが、五千五百万ドルの経済援助、六人の医療班、二万台のラジオ、二十五台の病院車を提供し、全部で九十人の日本人がベトナム援助計画で現地に送られていると報告しております。このような戦争協力を行ないながら、いかに日本がベトナムの平和解決に努力すると宣伝しても、世界のどこの国が信用するでありましょうか。(拍手)
 ユーゴのタンユグ通信は、日本の行動はベトナム問題を目的としている限り、初めから方向を間違っている、その方向は、ワシントンからモスクワヘでなくて、東京からワシントンヘと向かうべきだった、日本は、アメリカの態度を改めさせるよう、その影響力を行使すべきだと批判しております。佐藤内閣がベトナム和平工作を目的としてわざわざ派遣した横山特使が、北ベトナムの打診さえ行なえず、完全に失敗に終わったことも、佐藤内閣の誤った外交姿勢の結果であけます。(拍手)わが国のなすべきことは、アメリカの下請和平工作を行なうことでなく、沖縄からB52の発着を即時やめさせることであるのであります。(拍手)
 また、佐藤総理は、一昨年、総理就任後初めての記者会見において、中国との関係を前進させると言明しながら、その後の姿勢は、逆に中国敵視の姿勢を強め、中国人民外交学会代表の訪日を不当にも拒否し、さらに、中国の国連代表権問題については、みずから進んで重要事項指定方式を提唱しようとするなど、日中関係の前進どころか、後退悪化を進めようとしておるのであります。(拍手)
 アジアにおいて、七億の人口を持つ中国と、すぐれた工業国である日本が国交を回復し、日中がともに戦わないことを約束することこそが、ベトナム情勢をめぐる米中衝突の危険を確実に回避し、アジアに平和をもたらす道であると信じます。しかるに、佐藤内閣は、かえって日中の関係を悪化させ、進んでベトナムの戦争に日本が加担する方向を強めようとしております。
 さらにまた、南ベトナムに一万五千の軍隊を送り、空軍の派遣まで行なおうとしている韓国が、明らかに反共軍事同盟を目ざして提唱しているアジア外相会議に佐藤内閣は参加を決定し、準備会議に政府代表を出席させております。これに参加している韓国、フィリピン、タイ、オーストラリア、台湾、マレーシア、ニュージーランドなどの国々が、いずれも南ベトナムの残酷な戦争に軍隊を送るか、あるいは緊密なる戦争協力を行なっている国であることを思うとき、佐藤内閣は、平和に徹し、戦争の解決に努力するのでなく、戦争を行なう一方の側に加担し、日本を戦争に巻き込む危険な道を歩もうとしていることは明らかであると存じます。(拍手)
 昨日の外電は、米空軍が中国の領域を侵犯し、中国の戦闘機を撃墜したと報道しております。かねて北爆にあたり爆撃に聖域なしと声明していたアメリカが、新たなる戦争拡大に一歩を踏み出したものというべきであります。ベトナム戦争は米中戦争である。少なくともアメリカは米中戦争の一環と考えていることが如実に立証されたものであります。アメリカの方針に従って戦争が次々に拡大されていく姿を、佐藤内閣は何と考えておるのでありましょうか。日本を戦争に巻き込む危険性はこれまた数歩を進めたと申すべきであります。(拍手)
 かつてアジアにおいて太平洋戦争を引き起こして幾多の同胞とアジア人の血を流した日本は、その反省のもとに生まれた平和憲法を守り、中国とも北朝鮮とも、またビルマ、カンボジア、北ベトナム、ラオス、インドネシア、インド、パキスタン、セイロンなど、アジアのすべての国々と平和友好の外交を進めるべきであります。われわれは、日本をますます戦争の危険に近づけようとする佐藤外交を、これ以上容認することはできないのであります。(拍手)
 不信任案提案の第三の理由は、佐藤内閣の内政、外交の両面にわたる反動化であります。
 最近、佐藤内閣は、自衛隊の海外派兵問題をはじめ、核のかさ、安保条約の期限等の諸問題について活発なる発言を行ない、軍事問題を前面に押し出して、防衛力の増強、対米協力に積極的な姿勢をとろうとしております。
 自衛隊の海外派兵問題については、さきの衆議院予算委員会において、同僚の野原覺議員の追及に対し、政府は、自衛隊の海外派兵は憲法で禁止せられている、いかなる名称たるとを問わず、自衛隊の派兵は断わると言明したのでありますが、その後においても、執拗に派兵への突破口を開こうとし、派兵と派遣とは異なるという詭弁的な解釈をとろうとしたり、あるいはアメリカの施政下に置かれ、米軍の行動について日本側に一片の発言権もない沖縄への派兵を正当化しようとするなど、佐藤総理みずからが、好みて憲法第九条の精神をゆがめようとする態度がいよいよ露骨であります。
 沖縄の同胞を見殺しにしない唯一の正しい道は、沖縄の祖国復帰を実現し、核基地を撤去させる以外にはないのであります。(拍手)このような要求を一度も行なったことがなく、しかも、沖縄訪問の際、同胞の代表と会うことを避けた佐藤首相が、沖縄への派兵を正当化しようとする意思は、決して同胞のためとは考えられません。アメリカの要求による軍事協力にこたえようとするものであると言われても、おそらく反論できないと信じます。(拍手)
 また、佐藤内閣は、最近、政府の統一見解として、日本も一般的な意味における核のかさのもとにあることは否定することはできないと確認し、みずから積極的にアメリカの太平洋核戦略体制に協力し、中国封じ込めに一役を果たそうとする本質を明らかにいたしました。さらにまた、佐藤総理は、日米安保条約の期限十年が経過した後の措置として、方法はともかく、これをさらに長期間固定化させる必要があるとの所信を明らかにしました。これら一連の佐藤内閣の言動は、核兵器の持ち込みは許さないとか、自衛隊は核武装しないなどと国民を欺きながら、一方において、原子力潜水艦や原子力空母の寄港を認め、さらに自衛隊の海外派兵、アメリカの核兵器持ち込みの公然化などなど、自前の核武装に向かって着々と既成事実を積み上げ、平和憲法をじゅうりんし、平和憲法改悪への道を開こうとするものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 すでに佐藤内閣は、第二次防衛計画の二倍をこえる二兆数千億円の予算を必要とする第三次防衛計画の作成に着手し、防衛産業の育成をはがるとともに、今国会には防衛庁設置法及び自衛隊法の
 一部改正案をはじめとする一連の防衛関係法案を提出しております。また、これと並行して、紀元節を復活させ、軍国主義への逆コースを進ませようとする祝日法案などの反動諸法案を提出し、大幅なる会期延長を行なってまでも成立させようと意図しております。このような佐藤内閣の政治姿勢は、佐藤総理の口にする調和と前進の政治ではなく、戦争へ向こう反動化の政治であるといわざるを得ません。(拍手)
 戦後二十年を経た今日においても、戦争で父を失い、夫を奪われた数多くの犠牲者の傷あとはいえてはおりません。われわれは、このあまりにも大きな戦争のあやまちを再び繰り返すまいとのかたい決意のもとに平和憲法を持ったのであります。われわれは、平和を熱望する日本国民の悲願を代表して、佐藤内閣の憲法をじゅうりんする反動化を強く糾弾するものであります。(拍手)
 最後に、私は佐藤総理に率直に申し上げたいと存じます。
 佐藤内閣の成立以来、ちまたの道義はとみに退廃が月立ってまいりました。官界の綱紀も弛緩しております。これは一体なぜでありましょうか。佐藤総理に政治に対するきびしい反省が足らず、政治を道義と考えず、政治を技術と考えておるからではないでしょうか。(拍手)佐藤総理、政治は誠心誠意であります。真実一路であります。佐藤総理もわれわれと同じく、昭和六年の満州事変に始まる十余年間の暗い戦争の時代を生きてこられたはずであります。この間、二百数十万人にのぼるとうとい同胞の生命が戦争で失われ、多くの人々が空襲で家を焼かれ、家財を失った悲惨な状況をまのあたりに体験されたはずであります。また、戦争中の赤字公債の発行が悪性インフレを生んで、いかに国民大衆の生活を苦しめたかも御存じのはずであります。
 佐藤総理にもし政治的良心があるならば、平和憲法の精神を冷静に反省し、佐藤内閣のおかしたあやまちを率直に認め、本不信任案の提案を見るまでもなく、すみやかに善処せらるべきだと存じます。(拍手)戦争反対こそが佐藤総理の言われる人間尊重の政治の真の精神であることを強調して、本提案の趣旨説明を終わる次第であります。(拍手)
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発言情報

speech_id: 105105254X05119660514_006

発言者: 河野密

speaker_id: 28496

日付: 1966-05-14

院: 衆議院

会議名: 本会議