八木一男の発言 (予算委員会)

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○八木(一)委員 総理大臣が比較的時間をかけて御答弁をしていただいた御誠意は認めだいと思います。ただ、いまおっしゃった中に、ぜひもっと理解を深めていただかなければならないと私は思う問題があるのです。実はおっしゃったように、大学の教授になった人も、相当の実業家になった人も、あるいは国会議員とか県会議員にどんどん進出している人もいます。ところで、眠った子を起こすなという声が世の中に一部あるわけです。これが非常な間違いであります。(発言する者あり)この辺でやじっている連中もそういう考え方を持っているようですが、そうではないのです。実は眠った子を起こすなと言う人は、だれが言うか、それは、部落の出身で実業家になり学者になり議員になり、みずからが相当の社会的の地位を獲得した人がそれを言うわけであります。その人たちは、部落に生まれても、すでに社会的には先生ととうとばれ、社長といわれ、人を使い、人を指導し、自分は解放されているわけです、その人たちは部落の出身であっても。そういう人たちは、昔の自分たちの苦労を忘れたいがために、それを言ってもらいたくない。ところが、世の中の理解が深いと称する一般の人たちのつき合うのは、その部落の指導者であるという、そういう部落から社会的に地位を得た人、そういう人に会う人が多いわけです。したがって、そういう人の意見を聞いて、眠った子を起こさないほうがいいというようなことを言う人がございます。そのために、ほんとうに底辺にある部落の人が置き去りにされておるわけです。百人のうち九十九人までの部落民が、総理大臣も御承知ですが、各大臣はほとんどそこの中心地に入った方はないと思いますが、それは言語に絶する生活環境であります。したがって、それで非常な差別を受けております。
 結婚の問題については、関西以西においては非常な問題であります。当人が相思相愛になる、どうしても添い遂げたいといっても、親がこれを許さない、親が許しても、おじ、おばが許さない。おじ、おばが許しても、それより横の親戚が許さないというような状態で、結婚に関しての自殺者の半数以上は部落の関係の人だと私ども理解をいたしておりまするが、そういう状態であります。したがって、そのようにだんだん解決しているという問題ではないのであります。ほんとうの根本的解決をしなければ、通称三百万といわれ、この同和対策審議会の答申においても、確認された者が百数十万人といわれるその人たちの人権が、完全にじゅうりんされたままになるわけであります。憲法の各条章がそのような日本国民に確立をされていないわけです。したがって、だんだん直るだろうという考え方を世の中の人が言うときには、それはものを半理解、部落の差別を増す言辞であると私は思います。総理大臣はそのことはおわかりだと思いますが、各閣僚にその点はしっかり考えておいていただきたいと思います。
 ところで、この問題を解決するには、一般の労働政策、一般の社会保障政策、一般の零細農業対策、一般の零細漁業対策、そういうものがすべてが浸透することがまず第一に必要であり、一般の教育対策を浸透することが必要であります。しかしながら、これは総理大臣も否定をなさらないと思いますが、たとえば中小企業の問題では、中小企業対策で、その中の小企業が実際上には対処されていない。その中の零細企業が実際的には対処されていない。零細企業の部落産業が中小企業対策といっても全然その均てんにあずかっていない。零細農業対策も、一番の零細農に対しては行き届いていないわけであります。ですから、その一般行政だけではこの問題は解決をしないわけであります。一般の行政は徹底的に下に対して浸透すると同時に、その問題を解決するために特別な対策を国が強力にしなければ、問題は解決をしません。経済的な問題が解決しなければ、民主教育をいかにやっても、民主主義をいかに伸展をしても、人間の中に差別感が残る。残念ながら、世の中の人は貧乏な人に対しては同情はしても、あそこは貧乏だという差別感が一般的にあるわけです。極度の貧乏と身分的な差別とがぶつかったときに、その差別は一そう助長されるわけであります。そういうことではいけないので、その問題が国会において討議をされた昭和三十三年の三月十一日に、佐藤さんのお兄さんである岸内閣総理大臣の時代に、この問題に政府が根本的に取り組む、徹底的に取り組む、これは自分の内閣はもちろん、これからいかなる政党の内閣だろうとも、何びとが総理大臣になろうともあらゆる政府の責任である、この完全な、そして至急な解決が必要である。その解決の方法には、そのような民主主義の伸展だけではいけない、ほんとうに生活の根源が成り立つためにやらなければならない。何百年の残滓が残っているのを短期間で解決をするときには、一般行政だけではだめだ、一般行政に加えて強力な施策が必要である、そういう意思統一がされまして、その問題を総合的に決定をするために同和対策審議会が昭和三十五年に設置され、四十年の八月十一日に答申が出たわけであります。多賀谷真稔君の本会議の質問に対して総理大臣は、同対審の答申を尊重いたします、そして、その中の重要事項である同和対策特別措置法の立案を早急に急ぐ、多賀谷真稔君の要望は二月以内に提出をしていただきたいということでございましたが、それに間に合うかどうかは確約はできないけれども、至急にその提出の準備を政府としては強力に進めたいという御答弁が総理大臣からございました。その前向きの姿勢は非常にけっこうだと思いますが、それがほんとうのものでなければ、この憲法をじゅうりんしている問題、ほんとうに数百万の大ぜいの人間が、大ぜいの日本国民が完全に人権をじゅうりんされる問題を早急に解決をすることはできないわけであります。したがって、ぜひ総理大臣には、この同和対策審議会の答申を尊重する意味において強力に進めていただきたいと思います。その審議会の答申を全部お読みをいただきましたならば、この審議会はこれを一生懸命やったけれども、まだこれでは不完全である、これ以上に施策が必要であるけれども、緊急な問題だからここまで討議したところでこの答申を総理大臣にお出しをする。こういうことで、したがって、これだけでは完全ではないわけです。それ以上に考えられるあらゆることをつけ足していかないと、この問題は解決できないわけであります。それと同時に、この問題は至急に解決をしなければ、その間、人権のじゅうりんがずっと続くわけであります。総合的に年次計画を立てていかなければならないけれども、できるだけ至急にその完成をしなければならないと思うわけであります。そして最後に、その年次計画をつくって、総合計画を策定してやるというところにいろいろなことがございます。
 そこで、具体的に御質問をしますが、私はこの年次計画、総合計画をできる限り政府が努力をされて、短期間で完成をするということが必要だろうと思うわけであります。昭和十一年に、その年のまだ無理解の政府であっても、完全解決のために十年間でこれをなし遂げるという計画をして、戦争でつぶれたわけでございます。民主主義の時代で、この民主主義憲法の時代で、この問題を一生懸命考えなければならない内閣としては、それ以内の短い期間でこの問題を解決する、その問題の具体的なものをやっていくという決心をなさらなければならないと思うわけでございます。佐藤内閣総理大臣の前向きの、私より以上の前向きの決意をぜひお聞かせをいただきたいと思います。

発言情報

speech_id: 105105261X01619660217_006

発言者: 八木一男

speaker_id: 11888

日付: 1966-02-17

院: 衆議院

会議名: 予算委員会