吉田忠三郎の発言 (本会議)
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○吉田忠三郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました国鉄運賃法の一部を改正する法律案に反対の意思を表明し、国民大多数とともに、国鉄史上最大といわれる運賃値上げ、及び、政府のたび重なる、国民を無視し、政治的民主主義を否定してきた強硬な反動的態度に、強い怒りを示すものであります。
私は、政府自民党が、不況下にあえぐ国民の生活を圧迫する国鉄運賃を、国民の切実なる要求に耳をかさず、運輸審議会を無視し、さらに運輸委員会における強行採決など、相次いで歴史の歯車を逆回転するかのファッショ的態度で強行し、ここに至ったことを、断じて許すことはできないのであります。(拍手)運輸委員会では、わが党の質問通告者は私をはじめ多数残っており、国鉄運賃が国民生活に及ぼす数々の疑念は、いまなお大きく残っているのであります。いな、むしろ、国民の国鉄及び政府・自民党の態度に関する疑念は、ますます拡大し、強まっているのであります。財政法第三条及び特例法が、国鉄と郵便料金決定を国会にゆだねているのは、この二つが、いずれも国民の生活において最も公共的な料金として、国会の審議を経て、これを民主的に決定し、国民大多数の納得と支持を得て行なうことが必要であり、単に国鉄や政府・自民党の意思によってのみ行なってはならないということを規定したものであるはずであります。しかるに政府・自民党は、みずからの手で財政法の精神を放棄し、今国会において、消費者米価と並んで公共料金問題の焦点となっている国鉄運賃値上げ案を、強硬手段によって実施しようとしているのであります。しかも、この案によりますれば、収入の三割増収を目標に、旅客運賃で三一・二%、貨物運賃で一二・三%の大幅値上げを強行するほか、通勤定期券の割引率も、いまの平均七五・六%から六五・八%に引き下げる方針である。この値上げ案を一口で申し上げますれば、貨物よりも旅客、卸売り物価よりも消費者物価、大企業よりも小企業、金持ちよりも低所得層に、より多くの負担を要求した値上げと言うほかはないのであります。過去における公共料金引き上げの歴史の中で、これほど大衆収奪の性格を露骨に示した例はほかにあるまいと思うのであります。
もちろん私も、過密ダイヤの解消、通勤通学輸送を目途とした第三次長期計画のうち、山陽新幹線の建設を除く部門の増強、安全合理化のための投資の必要性は認めるとしても、今日の国鉄の病根は、ただ単なる輸送力の逼迫というよりも、国鉄の基本的使命である安全性にかかわる段階にまできているときだけに、その投資のやり方に私はむしろ多くの問題があると言わなければならないと思うのであります。すなわち、七ヵ年計画によりますれば、二兆九千億円という膨大な資金が必要とされているのであります。その資金を、国鉄の自己資金や限られた財政投融資のみでまかなうことは困難なしわざであると言わなければなりません。この場合は、当然、政府の強力な施策が求められるのであります。しこうして国民は、国鉄はもとより、政府の抜本的な施策を条件に、最低納得のいく限度の負担もやむを得ないとするものであると私は考えるのであります。しかし、今回の値上げ要求にあたって国鉄当局は、国民の足をあずかる責任者として、その手続を踏み最大の努力を尽したと、この点、言えるでありましょうか。借金中心の設備投資が資本コストをふくらませる結果になることくらいは、いかに無能な経営者でも知っている。その結果、経営が苦しくなったから、独占価格である運賃引き上げにすべてを依存するというのでは、あまりにも安易過ぎる態度と言わなくてはならないと思うのであります。特に問題にしなければならないのは、国鉄当局の説明であります。その一つは、運賃値上げに伴う影響を過小に見積っている点であります。その二は、家計支出に占める国鉄運賃の割合は、定期代を含め月三百五十九円、〇・七五%に過ぎないし、また、定期代の八五%は使用者負担だから、たいしたことはないという考え方であります。このような考え方は、あまりにも軽率な考え方と言わなくてはなりません。それは消費者物価へのはね返り〇・四%と推定されているが、これは決して小さい数字ではないし、定期代の使用者負担割りも、その大半が一部自己負担となっている点を考慮に入れるならば、通勤定期の九三%値上げの影響は、今日の物価上昇のムードの中に決して私は無視できないものであると言わなければならないと考えるのであります。それ以上に、公共料金の根幹をなす国鉄運賃の引き上げは、直接間接的に他の物価に波及し、結果、押し上げることになります。便乗値上げの波及作用を織り込むならば、申すまでもなく、家計への深刻な赤信号にほかならないのであります。
他方、貨物運賃の値上げを小幅に押えたのは、戦前比較の値上げ率の面で旅客運賃との均衡をはかったためだと説明しているが、これまたまことに根拠の乏しい主張であります。第一に、戦前の国鉄運賃体系が貨物優先主義をとっていた事実を全く無視しているのであります。第二に、これ以上貨物運賃を上げては、他の輸送機関、たとえばトラック運送などに荷物を取られるというのでありますれば、そうした競合関係を改めようとしない国鉄の不手ぎわと経営のあり方について、きびしく追及されなければならないと私は思うのであります。
公共企業体としての性格上、公共性と経済性の二面性を常に求められ、苦しみ悩んでいる実情は、私は理解できるとしても、しかし、その脱出口を、最も抵抗の弱い部面、つまり国民大衆の負担に求め、しわ寄せさせた政府の政策は、断じて許されないのであります。三十九年度に三百億円の赤字を出しながら、一千億をこえる減価償却費——総収入の約一五%——を織り込んでいる事実等も含めて、何が適正利潤なのか、何を最優先投資に振り向けるべきか等々、国鉄経営の基本問題をもう一度洗い直すべきときが来ているのではないかと存ずるのであります。
私は、ただいままでに、本法案に反対する幾つかの理由を申し述べてきましたが、これはすべて政府の運輸交通政策のあり方に関するものであって、佐藤内閣の政治姿勢があまりにも不誠実であり、反動的であるかを指摘したものであります。この中で、私は、政府に、まず、みずからとるべき政策を実行することを要求し、これなしに日本の運輸行政の問題を克服し建設することが困難であると、強く言っているのであります。とりわけ、今日の日本国有鉄道に対する政府の施策は、全体の運輸行政にきわめて重大な影響をもたらすものであることは言うまでもありません。国鉄の問題は、私鉄、都市公営交通等のいわば「かなめ」であって、一歩誤るならば、政府みずから国の政策を放棄することを意味するのであります。交通企業の認可、つまり行政の権限を一手に持つ政府が国鉄運賃値上げの論理を不合理にも認めるならば、政府みずからが他の運賃料金を押えることができないはずであり、これらのすべての責任があげて政府にあることを警告しておきたいのであります。政府は、すみやかに国鉄の長期計画を再検討し、これをみずからのものとして、責任ある指導と投資を行なうべきであると私は考えます。
政府と国鉄は、いまなお運賃値上げによる物価への影響を〇・四%であると宣伝してきたが、これほど悪質な宣伝、これほど国民をあざむく政治は、前に申し述べたとおり、前例のないことだと私は思うのであります。政府と国鉄は、運賃算定基礎を明らかに適用し得ない計算方式をもって架空の数字をはじき出し、これを予算委員会で指摘されると、一応の試算であると逃げてきたが、われわれが試算をした限りでも、二ないし三%以上も物価に影響のあることが明らかになっているのであります。政府が四十一年度の物価上昇を、定期預金の利率である五・五%に押えたいという願望をよそに、今回の運賃値上げによる二ないし三%の物価上昇は、経済成長による自然増の三%程度を加えるならば、明らかに政府の物価政策の破綻を示すものであります。私はここで、政府が独占本位の政策をとることによって、不況を克服するという美名のもと、国民生活の危機を見のがすということは、断じて許されないし、政府の今日まで繰り返してきた経済政策のたてまえ論が破綻していることを、強く指摘しておきたいのであります。政府が、国鉄運賃を実質五〇ないし一〇〇%値上げすることによって、他の交通料金の値上がりをも必然的に可能としたことは、このこと自体、物価上昇は貯金の金利をこえ、みずからが発行した公債金利さえもこえようとしており、もはや財政金融政策におけるサル・カニ合戦ではなくて、政府の失策によっても日本の国民経済全体が危機に瀕しようとしているのであります。それだけに、政府が今日、交通政策を一歩誤るならば、物価問題をも誤り、取り返しのつかないことになる点を、この機会に強く強調しておきたいのであります。この際、政府は、物価への影響を過小に宣伝したり、他の諸物価との比較を、戦争経済下の昭和十一年の政策運賃を基準とした値上げ倍率などを不正に操作することを中止をして、この運賃値上げ法案を撤回し、政策の基本的な観点から再検討すべきであることを、強く主張いたしたいのであります。
私は自由民主党の諸君に訴えます。わが党が交通基本問題調査会の答申を踏まえ、段階的ではあるが、きわめて建設的な国鉄緊急整備法を具体的に提案している際でもあり、また、政府原案を強行することによっては何ら得るところがないばかりか、先ほども申したように、一歩誤るならば国政全体をも失墜させるといった点を十分考慮され、国民の立場に立って、今日勇断をふるって、この悪法、国鉄運賃法の一部を改正する法律案をいさぎよく撤回し、より前向きの運輸交通政策を樹立させることを、強く要求するものであります。
以上、わが党の反対の意思を表明して、私の討論を終わります。(拍手)
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