中尾辰義の発言 (本会議)
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○中尾辰義君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました所得税、法人税、租税特別措置法案に関しまして、若干の質疑を行なうものであります。
新年度予算は、四兆三千百四十二億円になっておりまするが、そのうち、減税の規模は、国税で、平年度が三千六十九億円、初年度で二千五十八億円になっております。政府は、三千億円の減税を史上最大の大幅減税と宣伝をいたしておりますが、かつては、一兆円予算で一千億円減税と騒がれたこともある。今日四兆三千億円の財政規模で、国税三千億円の減税と言いましても、それは歳入予算のわずか七%にすぎないのでありまして、必ずしも大幅減税とは言えないのであります。しかも、国債導入政策による財政規模の拡大と、相次ぐ物価の値上がりによる名目的な増加所得に対する租税並びに減税でありまして、実質的な所得減税とは言えないのであります。したがって、国民大衆の中には、減税の実感がわかない減税、あるいは三千億円減税も物価高で帳消しと、このような辛らつな声さえ聞くのであります。
新年度の税制改正の特徴を見ますると、所得減税が千五百五億円、企業減税が千七十七億円、その比率は六対四になり、企業減税は、昨年に比べまして、かなり重視されております。所得減税は、年収百万から三百万円の所得層を中心として税率が緩和されており、また、従来、税制調査会から整理縮小を勧告されている租税特別措置法が、逆に拡大をされていることであります。しこうして、国税三千億円減税の中身は、企業減税と特別措置の新設に、かなり占められているのであります。もちろん、税調答申が政府案の理論的裏づけをしているものと思われまするが、新年度の減税の規模と減税政策は、何を基準に、また、いかなる方針のもとに行なわれるのか、総理、大蔵大臣にお伺いしたいのであります。また、従来の減税の基準は、自然増収の二〇%とか、あるいは三分の一とか、また、国民所得の二〇%というように示されておりましたが、今後公債発行下の財政政策におきましては、将来何を減税の基準にするのか、あわせて承りたいのであります。
質問の第二点は、所得減税と物価との関係であります。
大幅減税といわれるわりあいに減税の実感がないのは、案外、所得減税が少ないことと、さらに最近における国鉄、私鉄、米価等をはじめ、一連の公共料金の相次ぐ大幅値上げと諸物価の値上がりによるものであります。改正案は、一応課税最低限が、標準五人家族で、五十六万四千円から六十三万一千円に引き上げられ、また、税率も多少緩和されておりますが、年収百万円の親子五人家族では、その減税額が年間一万一千三百五円、一ヵ月ざっと千円、一日にピース一個分であります。また、年収六十万円の親子三人世帯の場合は、減税額が年間三千二十四円、一ヵ月二百五十円、一日わずか八円の減税にすぎないのであります。一方、都市勤労者が生活面にこうむった最大の打撃は、今回の国鉄運賃の値上げであります。一例をあげますというと、国電柏駅から新橋駅まで、その運賃は、一ヵ月千百七十円から二千二百七十円に改正をされ、さらに地下鉄に乗りかえまして新橋から国会まで参りますと、六百三十円から八百九十円に改正をされ、合計一ヵ月の値上がり分が千三百六十円であります。一年間では約一万六千円の値上がりとなるのであります。そのほか、食料費をはじめ、その他の生活費等を加えますというと大幅な支出増となり、一日八円くらいの減税では、とうてい物価高の調整減税にもならないと思われますが、大蔵大臣の所見をお伺いしたいのであります。
質問の第三点は、非課税層に対する物価の値上がりに見合う調整措置であります。物価の値上がりにより一番困るのは、所得税を納めない低所得階層の人々であります。このような非課税階層に対しまして、物価の値上がりに対する手当てをどのように施策の面にあらわしたか、関係大臣にお伺いしたいのであります。
まず厚生大臣には、生活保護基準をはじめとする民生関係では、どのような措置をされたか。文部大臣には、生活の苦しい世帯の児童についての給食費等の補助については、いかように措置をされたか。大蔵大臣には、所得税を納めない階層に対して間接税の減税をどのように考えるか。経企長官には、食料品をはじめ、物価抑制にどのように努力をし、また実効があがりつつあるか。
以上、一連の物価値上がりに対する調整的救済措置についてお伺いをいたします。
質問の第四は、大企業に対する租税特別措置に関してであります。
新年度の企業減税は、所得税に比べて、はるかに優遇をされております。わが国の法人税は、諸外国に比べまして決して高くなく、税負担の公平という面から見まするならば、企業減税より所得税のほうが重税となっております。さらに、今回の税制改正によりまして、企業の体質改善促進という名目で、資本金一億円以上の大企業に対して、自己資本比率の改善のための減税、また合併の助成、機械設備のスクラップ化促進のための特別減税措置等は、従来大蔵省が言ってきた、特別措置は整理をしていくという方針に、全く逆行するものであります。今回の特別措置は、産業界の要望をいれたものと思われまするが、スクラップ化にしても、合併助成にしても、また資本構成の是正措置にいたしましても、単なる誘導のための税制であって、不況下に遊休設備をかかえる大企業のみが恩恵にあずかるものとしか思われないのであります。また、これを実施をして、どの程度の効果があがるのか、はなはだ疑問であります。むしろ、大企業の下請によって不況のしわ寄せを受ける中小企業のための減税措置を、さらに考慮したらどうか、とのような特別減税を、税負担の公平という見地から、いかように考えるか、総理、大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。
質問の第五は、所得税に関連をいたしまして物品税についてお伺いをいたします。
今度の物品税の減税は、小型乗用車、腕時計、大型テレビ、石油ストーブ等、四十八品目が選ばれておりまして、若干の免税点の引き上げと、税率の緩和が行なわれておりまするが、従来の経験から見まして、はたして減税の分だけ商品価格が安くなるかどうか疑問であります。中でも、家庭電気器具の業界におきましては、原材料や人件費、生産調整によるコストアップ等により、値上げの動きさえあるように思われるのであります。一般の消費者は、物品税が減税されれば、その分だけ商品が安くなるものと正直に考えまするが、政府は、消費者にこたえまして、いかように行政指導をなさるのか、また、値下がりが見込みがないようであれば、むしろ物品税の減税分二百八十七億円を所得税の減税に回して、国民の購買力を刺激したほうが効果的ではないか、この点、大蔵大臣にお伺いをいたします。
最後に、三千億減税と言われますが、その内容は、はなはだこれは総花的でありまして、皿数の多い、中身の少ない減税になり過ぎた感がいたすのであります。新年度予算は不況克服を当面の目標として編成したのであれば、減税にいたしましても、そこに重点を置いて、このようなこま切れ減税を、あれもこれもと盛り込むよりも、大衆課税としての所得税を一挙に軽減したほうが、税負担の公平、景気刺激としても、より効果的であると思われるのであります。それには、わが党がしばしば言明をいたしておりまするように、標準五人家族の現行五十六万円の課税最低限を一挙に百万円まで引き上げ、中堅勤労者以下の所得税負担を大幅に減税したほうが、より効果的であると思うが、大蔵大臣にお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕