鈴木強の発言 (本会議)

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○鈴木強君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案趣旨の説明がございました電波、放送両法案に対し、質問をいたします。
 わが国において初めて放送が開始されたのは、大正十四年三月二十二日で、すでに四十一年の歳月が流れており、この間、放送事業は多くの紆余曲折を経て、今日では放送史上空前の発展を見るに至ったのであります。すなわち、わが国のラジオ放送がうぶ声をあげたその初期には、東京、大阪、名古屋の三地域において、それぞれ独立経営による放送企業体が併存していたのでありますが、大正十五年になって、統合組織体としての日本放送協会が発足し、実質的な独占形態として全国ネットワークの拡充をはかりつつ、その機能を発揮してまいったのであります。昭和二十五年以降、わが国の放送事業の形態は、放送法に基づく特殊な公共企業体としての日本放送協会と、民間経営によるいわゆる商業放送の二本立ての新放送制度が確立されたのであります。この間、最も大きな時期を画したのは、昭和二十八年二月一日、NHKによるテレビジョン放送の出現であったと思います。かくして、現在、わが国におけるラジオとテレビの受信機数は二千万個をこえており、この二大メディアは国民生活に強く深く浸透して、いまや絶対に欠くことのできない重要な文化機関となっているのであります。
 ところで、一方、放送事業を規律する現行放送関係法令は、十余年前の制定にかかるものでありまして、その後、数次にわたり小改正は行なわれましたものの、放送事業の急激な発展等、わが国放送界の事情の急変に即応するものではなく、特に放送局の開設の根本基準、使用電波の割り当て等、最も重要な事項が法制化されておらず、また、テレビ、ラジオの許可権はすべて郵政大臣の手中に握られており、時の政府の考え方一つによって、いかようにもなるという盲点を内臓しているのであります。このために、放送局の認可をめぐって十二チャンネルの訴訟問題が起こり、第一次チャンネル・プランで姫路に割り当てられておりましたテレビの電波が途中で政治的に大阪に変更されたり、与野党がこぞって時期尚早と強く反対したNTSC方式によるカラーテレビの本放送が一部のものの圧力に屈服し、郵政大臣権限の発動という強行手段によって認可されたり、また、FM放送やUHF帯によるテレビジョン・キー局の放送についても、何らの基本方針も確立されておらず、使用可能な多数のこれら電波は、長い間睡眠を続けているのでありまして、これは国家的損失と言わなければなりません。社会党は、常に政府の御都合主義的電波行政を追及して、不備欠陥の是正を迫ってまいったのでありますが、そのつど、善処する、検討するという、その場限りの答弁に終始して、みずからの責任をサボリ、わが国の電波行政を今日のごとき混乱状態におとしいれたことは、かかって政府の怠慢と言わなければならず、その政治的責任はきわめて大きいのであります。
 私は、ここに、政府に対し、重大なる反省を求めつつ、基本的な問題についてお伺いします。
 質問の第一は、両法案の改正の基本的態度についてであります。この改正案は、おそらく、昭和三十九年九月八日政府になされた臨時放送関係法制調査会の答申を受けて作成されたものと思いますが、当時、徳安前郵政大臣は、国会の論議を通じて、「電波、放送両法案の改正にあたっては、調査会の答申を尊重し、野党、特に社会党の意見もよく聞いて、争いがあとに残らないようにしたい。また、両法案は四十八通常国会には必ず提出する」と言明されたのであります。しかるに、今回の改正にあたっては、立法作業の過程においても全く野党を無視し、政府・与党のみで隠密裏に作業が進められ、大詰めの段階に至って、与党の一部諸君の突き上げを食って、答申とかけ離れた重大決定がなされたともいわれているのであります。第四十八通常国会提出の言明を一方的に破ったこととあわせて、かかる政府のやり方は、民主主義の否定であり、断じて許すことはできません。しかも、このことによって、UHFのチャンネル・プランをはじめ、FM放送局の認可、広域放送と県域放送をどうするか等、当面緊急に解決を迫られております懸案問題の処理は延引に延引を重ね、特にFM放送については、すでに二百十五社、四百三十三局、テレビについては百四十四社、百五十四局の新規放送局の免許申請書が提出されておるのでありますが、すべては法律改正後という、郵政省の合いことばのもとに、ほこりをかぶされたまま、放置されているのであります。総理大臣、あなたは、あなたの内閣の前閣僚が行なった国会における言明、公約無視の事実と、今日までの電波行政の無為無策と、これによって生じている電波行政の混乱に対して、最高責任者として、政治的責任をどうお考えになっているのでございましょうか。また、郡郵政大臣は、徳安前大臣より当然引き継ぎを受けておられたと思いますが、なぜ公約を守っていただけなかったのでしょうか、お伺いします。
 質問の第二は、放送における言論表現の自由の確保についてであります。現行放送法が、放送の不偏不党、表現の自由の確保等を保障していることは、御承知のとおりであります。しかるに、今回の改正案を見ると、従来から設置が規定されております放送番組審議機関を改悪し、また、新たに放送世論調査委員会を設置することといたしましたほか、答申をこえて、推賞や勧告の権限を付与したり、本来規制が加わることが当然とされております事業免許制度を民間放送に新設して、事業監督の道を開くなど、どのように見ましても、放送事業者に対する締めつけを強化しようとするものでありまして、放送による言論報道の表現の自由の保障に重大なる脅威を与えることは、疑いないところであります。このことが、もしなされた場合には、単に放送だけにとどまらず、ひいては、わが国のマスコミ全般にも重大な悪影響をもたらすことになると思います。申すまでもなく、言論報道における表現の自由の確保は、民主国家における不可侵の大原則であらねばなりません。総理は、言論報道の自由の保障について、どうお考えでございましょうか。今回の改正は、自由保障を侵すことになると私は思うのでございますが、いかがでございましょうか、お伺いします。
 また、改正案では、NHKに教育放送を義務づける等、教育放送強化の方針が打ち出されておりますが、これは、教育番組に関し、放送事業者に対する文部大臣の助言と勧告の道を開かんとするものであると伝えられております。この改正を機会に、文部当局が放送に介入してくるのではないかと危惧されているのでございます。文部当局が放送内容に介入することは、もちろん不当であり、許されるものではありません。最近は、小中高校において、テレビ、ラジオの放送利用が盛んに行なわれていると思うのでありますが、文部大臣としては、一体、この放送利用の基本方針として、どういうお考え方をお持ちでございましょうか、お伺いをいたします。
 質問の第三は、広告放送についてでございます。商業放送におけるテレビ、ラジオのスポット広告放送のうち、特に薬品の広告規制に対しては、すでに厚生省が自粛の要望を行なったのでありますが、必ずしも関係業界に受け入れられているとは思えないのでございます。私は、スポット放送は、医薬品に対する知識の必ずしも十分でない聴視者に、誤った認識を持たせたり、乱用さしたりするおそれがないとは言えないと思うのであります。もし誇大広告等が行なわれる場合は、法に照らして取り締まることは当然でありますが、厚生省の指導のしかたといたしましては、あくまで業界の手による自主規制によって問題の起こらないようにすべきだと思うのでありますが、厚生大臣の御所見を承りたいと思います。
 質問の第四は、放送行政の基本に関する最も重要な事項として、調査会が答申した放送行政機構についてであります。初めに述べましたように、わが国の放送行政が今日のごとく混乱を生じております大きな原因の一つに、放送局の開設認可権が郵政大臣にあり、この権限行使が政治的に利用される等、とかく問題をかもし出したことは強く批判をされ、これが改善策は各方面から熱望されていたのであります。この点に関して、調査会は、新たに放送行政に関する委員会を設置し、放送用周波数の使用計画、放送局の免許等は、放送行政に関する委員会の議決事項とし、郵政大臣はこの委員会の議決に基づいてのみその権限を行使し得るようにするとの答申を行なっているのであります。私は、この答申はまことに時宜を得たものでありまして、このことによって従来の弊害が除去され、限りある電波を理想的に使用して、最大の放送文化を築き、放送行政が本来の方向に整備されて、効果的運営が行なわれるものと、かたく信じ、今回の改正案にこの点が入れられることを強く期待していたのであります。しかるに、かかる重要事項が完全に無視されたことは、何としても納得することができません。政府は、答申を尊重すると言いながら、なぜ改正案にこの点を取り入れなかったのか、総理と郵政大臣に御所見を承りたいと存じます。
 質問の第五は、マス・メディアの集中独占の排除についてであります。マス・メディアの集中と独占化は、非民主的な弊害をもたらすおそれがあり、かつ、電波の公正な利用という観点からしても、その排除は電波放送行政の基本でなければなりません。従来、郵政省においてもこの方針をとってこられたことは、高く評価されてよろしいと思います。しかし、最近は、この方針がどうもぐらつき出したように思われてなりません。この点につきましては、答申の中にも示されておりますように、いかなる形式にするかは別といたしまして、明確な根拠を法律に置くようなぜ措置しなかったのでございましょうか。これはたいへん大事な問題でございますから、総理から御所見を承りたいと思います。
 質問の第六は、NHKのあり方についてであります。御承知のとおり、NHKは公共企業体組織でありますから、経営の基本方針とこれに基づく予算の大綱について国会の承認を得ることは当然でありますが、それ以外の運営方針については、できる限り経営委員会と経営者にその責任をまかせ、協会の自主性を尊重して、思う存分力量を発揮させ、もって放送法の目的たる公共の福祉に適合し、健全な民主主義の発達に資するようにすべきだと思います。もちろん、NHKの経営者は、業務運営にあたっては、その財源が受信料にあることを常に念頭に置き、財政経理が安易にならないよう厳に戒めることは当然であります。総理の御所見を承りたいと思います。
 質問の第七は、放送衛星の実用化とオールチャンネル受信対策についてであります。通信衛星を中継媒体として欧米両大陸間を結ぶテレビ中継に成功したのは、昭和三十七年の七月でありますが、その後、全世界的な規模に立つテレビ中継実現への期待は急速に高まってまいり、多くの国では、通信衛星利用による今後の開発に備え、準備を進めているのであります。わが国においても、郵政省、国際電電、NHK、民間放送等において、それぞれの立場から鋭意研究を重ねているのでありますが、それぞれ考え方が違っておりまして、一体どれを信用していいのか、判断に迷うのであります。このことは、開発研究と将来の見通しについて、いまだ政府に一貫した計画と方針の持ちあわせがないからであります。一方、科学技術庁、東京大学においても、通信衛星の開発研究を行なっているのでありますが、これらが一体化となっての研究は国民の強く望むところであります。郵政大臣と科学技術庁長官は、わが国における通信衛星の総合的、一元的開発研究の基本方針を、宇宙開発審議会等において早急に確立すべきだと考えますが、いかがでございましょうか。また、郵政大臣は、放送衛星の実用化はいつごろと判断されておられますか。そうして、これに対して、放送行政的観点からどのように対処しようとするのか、お伺いします。
 今後、UHF電波の本格的使用が考えられ、わが国においてもUV混在による全面的な放送が行なわれることは必至と思います。これに対して、郵政大臣は、アメリカにおけるオールチャンネル法的な法律を制定して、受信者の利益を守るようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 最後に、東京十二チャンネルについてお伺いします。東京十二チャンネルは、発足以来、一年有余ヵにして、約十四億円にのぼる経営上の赤字を生じ、全体としての負債額は四十五億円の巨額に達しております。そこで、やむを得ず、去る四月四日より、放送時間を五時間半に短縮し、百八十一名にのぼる人員整理を断行し、協力会費一億円を財源とする収支予算をもって再建計画を樹立し、風前のともしび的な放送を続けているのであります。昨年六月、郵政省が再免許に際して付された条件は全く破られて、今日のような最悪の経営状態となった十二チャンネルは、もはや放送局開設の根拠を失っているのであります。十二チャンネルに対して設立の認可を与え、監督権を持たれる郵政大臣と科学技術庁長官の責任は、重かつ大と言わなければなりません。再建計画は、十分検討してみましたが、明らかにごまかしのものでありまして、その内容は、再建計画ではなくして、自滅計画であります。私は、ここに両大臣の責任をきびしく追及するとともに、再建計画に対して確信が持てるという言明がここでできるでございましょうか、御所見を承りたいのであります。また、総理大臣は、この問題をどうお考えになっているのでございましょうか。この際、政府は、わが国における科学技術教育専門放送局のあり方について再検討を加え、民放における教育放送経営の可否等をも含めて、抜本的な考究を行なうべきではないかと私は思うのでございますが、総理の御所見を承りたいと存じます。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 105115254X02619660511_015

発言者: 鈴木強

speaker_id: 10501

日付: 1966-05-11

院: 参議院

会議名: 本会議