小野明の発言 (文教委員会)

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○小野明君 ただいま議題となりました産炭地域における公立の小学校及び中学校の学級編制及び教職員設置に関する特別措置等に関する法律案につきまして、その提案の理由と内容の概略を御説明申し上げます。
 石炭産業の構造的不況に基づく合理化整備が、産炭地域における経済の破綻、離職者の大量の発生、生活保護家庭の急増、自治体財政の危機等を招来してから、すでに十年近い年月を経過しております。この間、国、地方公共団体等の産炭地域振興対策、離職者対策等が行なわれてまいりましたが、極端な経済的貧困と社会不安による産炭地の荒廃した事態は解決されないばかりでなく、ますます長期化ないし固定化して深刻の度を深めている現状であります。このような現状は、教育の面に最も強い影響を与えているのであります。すなわち、産炭地域に残された者は、その多くが老齢者、病弱者、労働障害者、災害未亡人と子供たちで、ほとんどが貧困家庭であり、閉山の朽ちてゆく炭鉱住宅で長年にわたる生活保護に依存しながら、将来に何の希望もなくかろうじて暮らしており、また、出かせぎ、家出、別居、離婚等による欠損家庭や共かせぎ家庭もきわめて多い実情であります。このような社会環境、家庭環境の悪化のもとでは、保護者の子供の教育に対する関心は欠除し、子供の教育は完全に放置されているのであります。したがいまして、学校がすべての教育活動を一手に引き受けなければならない状態の中で、教職員は学習指導のほかに夜間の家庭訪問、生活指導等に涙ぐましい努力を払っているにもかかわらず、産炭地域における教育は、次のような憂うべき状況に置かれているのであります。
 まず、第一には、非行少年や問題児の増加が著しく、その非行はますます若年化の傾向にあり、さらに悪質化、集団化の道をたどっております。福岡県における昭和三十九年度の非行少年の数は、警察で判明した数だけでも、小学校三千四百五十四人、中学校一万百四十八人の多きを数え、この数は年々増加しております。また、警察庁刊行の「昭和四十年の犯罪」によれば、福岡県における触法少年の数は五千四百三十九人で全国一多数であり、虞犯少年の数も十万五千七百三十九人と東京に次いで第二位のきわめて高い数を示しております。さらに、北海道や福岡県では、全生徒数の二〇%近い非行少年が発生している学校の例も報告されており、このほかにも潜在的に多くの問題児をかかえているのであります。
 第二には、勉強する意欲を失い、長期欠席、怠学常習の児童、生徒の数がきわめて多いことであります。福岡県における産炭地域の全就学児童生徒数に対する長期欠席児童、生徒数の割合は、産炭地域外に比べてはるかに高い比率を示しております。
 第三には、炭鉱の休閉山に伴う児童、生徒の激減や生活のため一カ所に永住することなく、転々と職場を変え住居を変える家庭が多いことによる児童生徒の転出入の著しさは、子供の心理に大きな不安を与え、落ちついた生活態度を困難にするとともに、教師の子供の十分な把握による教育を不可能としております。児童、生徒数が炭鉱の休閉山以前に比べて五〇%以下になった学校はきわめて普道の状態であって、はなはだしい学校にあっては三分の一以下に減少しております。また、長崎県の例によりますと、転校歴三回から五回といった子供が多数存在するのであります。
 第四には、一般に児童、生徒は、学習意欲に欠ける、怠惰で生活に活気がない、根気に乏して、注意力散漫で落ちつきがない、情緒不安定で道徳意識が低い、陰うつである等教育の危機的状況を示しているのであります。このことは、当然に学力の著しい低下を来たしております。たとえば、福岡県のある中学校の一年生の学級では、整数計算、九九算のできない者、アルファベットの読めない者が、それぞれ三分の一近い数を占めていることが報告されております。
 第五には、産炭地域における児童、生徒の体位、衛生状態の劣悪や疾病の著しい増加が見られることであります。
 第六には、産炭地域の特殊条件や生活環境から特殊児童生徒数及び促進該当児童生徒数が著しく多いのでありますが、特殊学級に収容されている児童生徒はきわめて少数にとどまるのであります。福岡県の産炭地域についてみますと、特殊教育を行なう必要のある児童生徒数は、小学校において全児童数の一五%、中学校において全生徒数の一七%を占めておりますが、そのうちわずかに小学校三・五%、中学校三・三%が特殊学級に収容されているにすぎない状況にあります。また、これらのことは、一般家庭の児童、生徒等にも大きな悪影響を与えているのであります。
 さらに、経済的貧困のため産炭地域における要保護、準要保護児童生徒数の増加が著しく、窮迫した地方財政を圧迫すると同時に、他方、教職員のこれら児童生徒に対する扶助費、補助金等の支給に関する事務量のはなはだしい増大をもたらし、学習指導の著しい障害となっているのであります。ちなみに、全児童生徒数に対する要保護、準要保護児童生徒数の割合のはなはだしい例を申し述べますと、北海道においては九四・四%、福岡県においては、七七・七%、長崎県においては六九・四%といった実態があり、四五%を占める学校も数多い現状であります。このほか、市町村財政との関係上、保護の対象とならないボーダーライン層が相当数あるのが実情であります。
 以上申し述べましたように、産炭地域における教育はきわめて憂うべき状況にありますが、これが対策については、他の石炭産業の不況対策等に比べて着手がおくれ、わずかに四十年度から生活指導主事の少数配置、就学援助費の補助率の引き上げ等が行なわれるようになってまいりましたが、きわめて不十分な現状といわねばなりません。このまま推移すれば教育の崩壊を避け得ない事態が予想されるのであります。したがいまして、かような教育環境のもとにある最も抵抗力の弱い児童生徒に対して十分な教職員を配置して学校教育の維持向上を期し、また、激増した要保護、準要保護児童生徒の教育に必要な補助をなし得るよう、疲弊した地方共団体に対し、国が一そうの援助策を講ずることが緊急不可欠のことと考え、この法律案を提案する次第であります。
 次に、この法律案の内容は、石炭鉱業の不況による疲弊の著しい地域及び、これに隣接し、当該不況による影響の著しい地域で、別に政令で定める産炭地域の公立の小中学校について、次の特別の置を講じようとするものであります。
 まず第一に、学級編制の基準について、同学年の児童または生徒で編制する学級は三十五人以内とする等の特例を定めることによって、不安な教育環境のもとに置かれている児童生徒の教育水準の維持をはかろうとするものであります。
 第二に、もっぱら児童生徒の生活指導をつかさどる教員を置かなければならないものとし、就学の奨励、非行の補導等十分な指導をはかろうとするものであります。
 第三に、養護教諭を必置することとし、貧困家庭の急増等により、児童生徒の健康管理がきわめて重要となっている事態に対処しようとするものであります。
 第四に、事務職員を必置することとし、要保護、準要保護児童生徒の急増に伴い、扶助費、補助金等の支給事務が激増し、生活指導はもちろん、日々の授業にも支障を来たしている現状を打開しようとするものであります。
 第五に、義務教育諸学校における教育の教材に要する経費並びに要保護、準要保護児童生徒にかかる教科書費、学用品費、修学旅行費、給食費、日本学校安全掛け金及び医療費に関する国庫補助金の補助率を十分の八に引き上げることとし、これによって、窮迫した財政のもとで、合理化整備に関連して派生する諸般の財政需要や、せっかく措置された特別交付税も一般財源のゆえに就学援助費に優先充当することの困難な事情など、援助措置が徹底を欠いている事態の解決をはかろうとするものであります。
 また、長期欠席児童生徒の中には、通学用品が購入できないため欠席する者が相当多数あり、一部市町村においては貧困な財政のもとで、必要やむを得ずこれを支給している実情にかんがみ、これら児童生徒に対する就学奨励措置として、生活保護法による教育扶助費と同様に通学用品費を加え、国がその十分の八を補助することとしております。
 なお、附則において、本法の施行期日を昭和四十三年四月一日とし、昭和四十七年三月三十一日限り効力を失うものとしております。
 以上がこの法律案の提案の理由及び内容の概要であります。何とぞ慎重に御審の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。

発言情報

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発言者: 小野明

speaker_id: 28797

日付: 1967-06-27

院: 参議院

会議名: 文教委員会