大来佐武郎の発言 (建設委員会)

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○大来参考人 私、この都市計画法の問題につきまして、従来経済計画とか総合計画などを扱ったこともございますので、まず第一に、その全般的な国土利用という問題から考えますことを簡単に申し上げてみたいと存じます。
 将来の日本の経済の成長、人口の都市化現象ということを考えてまいりますと、都市の膨張、ことに大都市の膨張というものの勢いがかなり長期にわたって継続するように存じております。それに対処する受け入れ側の制度、慣行等が、いろいろな面で立ちおくれてまいったのではないか、経済なり社会なり人口の実態の動きに対して、制度のズレと申しますか、地域問題を考えてまいります場合に、特にそういうことを痛感してまいっております。
 今回この新しい都市計画法ができますことは、率直に言えば、もっと十年から十五年早くこういう法律ができておればなおよかったという感じを強く抱いておるわけでございます。もちろん、理想的に言えば、全国の総合的な計画、国土利用の計画なり土地利用の計画がございまして、さらに大きなブロックあるいは府県、それが市町村につながってくるということが必要なわけでございますけれども、しかし、都市計画法を法を新たにするということは、現実の日本の人口都市化現象、特に大都市問題から見まして焦眉の急でございますから、理想的には全般的な土地利用計画の一環として都市計画が考えられるべきだと思いますけれども、現在の事態においては、新たな都市計画法がある程度先行することは、やむを得ないといいますか、必要であろうと存じております。ことに今後の日本の経済成長とか国土利用の姿を考えますと、かなり変転が大きいのではないか。ある地域を工場用地と考えておりましても、それが宅地に変わるかもしれない、住宅用地に変わるかもしれませんし、従来農地が宅地に変わるという例もございましたし、いろいろな土地利用の転換ということが将来も起こり得るわけでございますから、計画においてかなりの弾力性を保つということが必要だと思います。
 それから、従来私ども地域問題を見てまいりまして問題がどうしても出てまいりますのは、府県の範囲をこえた広域の問題、あるいは各省間にまたがる横の総合調整、こういう面で立ち件生というような現実問題がいろいろあるわけでございますけれども、その中で、こういう都市計画法——私も櫛田先生と御一緒に宅地審議会でいろいろ答申の検討に参画いたしておりましたのですが、とにかく都市計画法によって筋を通すということが、何はともあれ、先決ではなかろうかというふうに存じております。ただ、日本の現実問題を考えてまいります場合に、これも諸外国との比較で感ずることでございますが、こういう面につきましてはイギリスがわりあいに制度が整備して進んでおるわけでございます。しかし、どうも過去の事態の推移を考えてまいりますと、必ずしもイギリス的なやり方が日本でできるかどうか、私ども近ごろ非常に疑問を感じておる点があるわけでございます。
 日本とたとえばイギリスを比較してみました場合に、四つくらいの大きな相違点がある。
 一つは、経済の成長率が日本の場合はイギリスの大体三倍あるということで、急テンポに事態が変わってきておるということ。
 第二には、イギリスは人口の都市化現象はほぼ終了段階にきておる。農業人口が労働力の三・五%くらいまで減っております。日本はまだ二〇%、昭和四十年で二五%農業人口があったわけでございますし、まだ今後農業人口の割合が減少し、農村から都市への人口移動が大きく起こる、その時期を終わっておらない。イギリスのような場合と比べましてその点も大きな違いだと存じます。つまり、高度成長と産業構造の変化とが重なりまして、世界に類例を見ないような急テンポで人口の都市化が起こっておる、そういう点、つまり、人口都市化の圧力というものが、たとえばイギリスと日本と比べてみました場合に、段違いであるというような点、これが過去において、現実の事態がどんどん先に進んで、いろいろな制度や取りきめがおくれた一つの原因にもなっておると思います。
 第三には、いまのイギリス等に比べました違いといたしまして、私有財産の考え方におきまして、まあ諸外国であれば、土地というものは他の種の不動産あるいは動産等の一つまり財産の一形態であるということで大体割り切れると思うのでございますが、日本の場合には、土地というものが非常に根源的な、財産の中でも特別の地位を持ったように考えられておるわけでございますし、事実、農民の立場からいたしますと、土地というものが最後のよりどころだという考え方、気持ちというものは、なかなか取り去ることができませんし、また事実、過去における土地の値上がり等から見まして、土地だけは簡単に手放せないという問題がございます。それで私ども、こういった都市計画法が地価にどういう影響を持つだろうかという問題を考えるわけでございますが、その場合に、やはり公権力でやる部分と、経済的な、いわゆるマーケットメカニズムを利用する行き方と、両方あわせて考えなければならないと思うのでございますが、これに関連して私思い出しますのは、イソップ物語に、旅人のマントをはがすのに風の神と太陽とが競争したということがございますが、ある意味では、土地をどうしても根源的な財産として手放したくない人たちから土地を得るということは、一面において、ちょうど風の神が強い風を吹かして旅人のマントをはぎ取ろうというような点がございます。やはりわが国の場合は、太陽の神といいますか、だんだん気候をあたたかくいたしまして旅人がおのずからマントを脱ぐ、これは土地所有の農民とその土地の利用という問題と関連して、そういうたとえ話がある程度適用できるのではないか。そういう点も、日本とイギリス等と比べました場合の重要な違いの一つの点であろうかと思います。
 四番目の相違といたしまして、やはり法律に対する考え方なり土地所有権に対する考え方の違いでございますが、場合によると、立法いたしましても実行がなかなか困難であるというような問題が起こる可能性もあるわけでございます。これらの点を考慮して、日本的な基礎条件のもとで立法可能な手段というものを考えていかなければならぬ。そうなれば、あまり理想論的な土地利用ということもなかなかむずかしいわけでございまして、法律の内容にある程度弾力性を持たせながら、この法律では約十年間の都市人口の膨張を考えておるようでございますが、いまのような日本の特殊性といいますか、それに基づいて、しかも私どものほうから言わせますれば、すでに十年、十五年立法のほうがおくれておったような気がいたしますが、これをすみやかに実行し得るようにということを期待いたすわけでございます。
 なお、市街化地域に指定された地域の地価がどうなるだろうか、これは私どもも非常に関心があるわけでございますが、私の印象といたしましては、必ずしも市街化地域指定というものがその地域の地価上昇には直接つながらないのではなかろうか。それはいまの日本の大都市の地価がどういうメカニズムで形成されていくか、これは学者の間にもいろいろ意見がございますので、必ずしも統一見解というものはないと思いますけれども、ある学者は、地価は、供給の価格、つまり農地価格等と全く無関係にきまっているのではなかろうか、いわゆる限界宅地需要者の支払い能力によってきまっておるのではないか——ということは、サラリーマンならサラリーマンが、自分の収入なり貯蓄なり、会社から借りられる金の限度で、最小限の独立の家を持ち得る。十坪か十五坪の家を四十坪くらいの土地に建てる、そうすると二百五十万円くらいの金がかかりますが、そういうものの支払い能力によって、それが、たとえば東京の場合には、片道一時間半か二時間で通勤できる肉体的な限界の中で限界宅地というものができてくる。その価格が坪三万円くらいになるのではないかという説もございます。そうでありますと、むしろ都市計画によって宅地として条件の整備された土地の供給がふえてまいるということであれば、限界的な宅地に需要が移っていく、その内側はそれに比例して土地の価格が上がっておる、しかも広大な空地を残しながら先へ先へと限界宅地がいっておる現状から見ますと、市街化地域をはっきり整備することは、むしろ地価に対してある程度冷却効果を持ち得る面もあるのではないか。もちろん、これは通勤施設、都市交通の施設の整備が伴わなければなりませんので、市街化地域の指定ということそのものが地価に直接影響するというふうにはどうも考えられないのではないか。地価形成のメカニズムから見まして、そういうふうに感じております。むしろ住宅問題との関連が特に緊急でございますが、この点につきましては、逐次市街化地域の中で宅地化の程度に応じましてやはりそれに相応した固定資産税というものをかける、それによって、空地をただ将来の騰貴のために保持していることがコストがかかる、土地を持っている人の相当な負担になる、何とか土地を利用したい、できれば借家を建てて人に貸したいというような方向にだんだん誘導してまいりますと、土地所有者が必ずしも土地を手放さないで、自分の土地を持ちながらそこに借家を建てるというようなやり方で住宅供給が増加する。そういうふうなことになってまいりますと、住宅の供給がふえて、家賃に影響し、その家賃がさらに地価に影響するというような形が出てくれば、非常に望ましいわけでございます。こういった市街化地域の地価の問題は、この都市計画法の問題よりも、むしろ、いま申しましたような宅地供給なり関連税制の問題等に影響を受けるところが多い。あるいはそういう借家建設に対して適当な融資を行なう、地主に対して融資を行なうというような考え方もございますが、そういった方向で検討されるべきものではなかろうか。
 二、三この法律につきまして私の考えを述べたわけでございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 大来佐武郎

speaker_id: 17223

日付: 1968-04-11

院: 衆議院

会議名: 建設委員会