川田侃の発言 (予算委員会公聴会)
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○川田公述人 私は、大来先生のように全般の予算の問題でございませんで、若干長期的な問題になるかもしれませんが、現在政府がかなり積極的になっております後進国に対する——後進国といってはこのごろいけないのでしょうが、発展途上国に対する経済協力問題のあり方というような問題について、思っておりますことをごく大ざっぱに申し上げたいと思います。
最近、東南アジアの開発閣僚会議とかあるいは農業開発会議のような会議でかなり政府は積極的なイニシアチブをとっているわけであります。そういう点からいきますと、経済協力政策については、かなり日本は最近積極的になったということは言えると思うのですけれども、いささか全体として、私の印象で恐縮ですけれども、若干行き当たりばったり的な感じがしております。それについて政府部内とか国会で十分に論議がかわされて、その上でこの明確な政策が立案されて、それに基づいて経済協力が実行に移されているというふうにはどうも思われない。少なくとも戦後日本が、平和国家として再出発しました日本の平和外交のあり方が、経済協力政策というようなものに十分によく反映されているかどうかという点については問題があるのではないか、あるいはまた低開発国の経済協力要請に今後わが国が引き続いてどのようにこたえていくかという、これは相当長期的な問題ですが、これについても必ずしも十分に明確にされているのではないんじゃないかというふうに思われるわけであります。経済協力政策というのは今後ますます私は大きな問題になっていくと思いますし、それに必要な資金もますます大きくなるのではないかというように思いますので、ひとつ国会でもこの問題を十分に討論していただいて、国民の納得のいく形で経済協力政策というものが行なわれるような配慮をぜひしていただきたいというふうに、国民の一人として、そのように思うわけです。
ところで、現在貧困と戦っております発展途上国の経済開発をどのように進めていくか、いわば世界の貧民窟をどうやって一掃するかという問題、また、それについて先進国——先ほど大来さんが日本も先進国になったというお話がありましたが、先進国がどういう形で協力していくかという問題でありますが、この問題は、一般的には現在南北問題というふうに言われております。そもそも南北問題ということばは戦後すぐ出てまいりましたけれども、これはその発想においては東西援助競争というようなことばによくあらわされておりますように、米ソなどの東西両陣営の先進諸国が後進国に働きかけてそれを自分の陣営に取り入れるという、いわば冷戦の一環として南北問題というものが出てきた。ところが、最近になってみますと必ずしもそうではない。つまり、発展途上国が国際連合あるいはその他国際場裏で非常に発言権がふえまして、そういう発言権の強化を反映して、いわば北方がつくった南北問題ではなくて、つまり北の先進国がかってに言い出したような南北問題としてではなくて、経済的に自立しようという南の貧しい国々の強い願望というものを背景にして、つまり南の国々のイニシアチブのもとに、あらためて南の北に対するところの経済的な国際的不平等の格差是正という要求として世界史の前面に出てきたように思うわけであります。そういう意味で、私は長期化するであろうと申し上げたわけでありますし、それから今後、国際政治経済の上で、ある意味では、南北問題はかなり画期的な意義を持ってくるのではないかと思うわけであります。そういう点で、われわれとしてもそういう南北問題の新しい性格というものを見のがさないで、積極的にこの問題に取り組んでいかなければならないというふうに私は考えます。したがって、経済協力政策の積極化は、私としてもそれ自体は全く大賛成でありますが、その場合、従来のように、北の先進国側のものの政治的あるいは経済的な勢力圏、あるいは利益圏英語で言えばスフィアー・オブ・インフルエンス、スフィアー・オブ・インタレストということばがありますが、そういうものを拡大するという観点でそれを行なうということは、厳に慎むべきである。そういう意味では、北の先進諸国のこれまでの経済協力政策については、かなり根本的な再検討を加える必要があるのじゃないかというふうに考えております。
ところで、発展途上国の経済開発をどのように進めていくかという問題ですが、そのためには、明らかにこの発展途上国自体の努力が必要であるということは言うまでもありません。発展途上国が何も努力しませんで、自立的な民族経済の建設というふうな目標が達成されるわけがないのであって、その意味では、発展途上国は、その大部分の国々の政府が進んで公言して、やると言っておるような農地改革などは、首尾一貫して、ほんとうにどんどん実施してもらいたいし、それに基づいて農業の発展をはかるなり、また、外国からの度の過ぎた援助にたよるというようなことをしないで、自立的な工業化計画を推し進めるなり、それぞれの経済状況に応じて、もっと努力をしてほしいというふうに私自体としても考えるわけであります。しかし、そのことは発展途上国の経済開発に対して国際的な協力が必要はないということを何ら意味しないのであって、発展途上国が経済開発を進めるためには、どうしてもたくさんの資本財あるいは中間財などを輸入しなければなりませんし、そのためには、先進国との貿易拡大は不可欠の条件になっておる。また発展途上国は資本蓄積が十分ではありませんから、自立的な工業化の推進を妨げないような形での外資の導入というものも、何ら非難するに当たらないというふうに思います。そういう意味では、発展途上国の経済開発にとって、先進国との経済協力の持つ意義というものは、今日の世界ではきわめて大きいと言わなければならないように思います。したがって、具体的問題に入ります前に、ここで、はなはだ抽象的で恐縮でありますけれども、一般的なこととして、われわれは、発展途上国の自助努力をもちろんしなければならないと思いますが、それと同時に、国際協力の必要を十分に認識して、先進国の経済協力を、発展途上国の自立的な発展に結びつくような形で積極化する努力を積み重ねていかなければならないということを、一応確認しておきたいと思います。その上で、次に、まず貿易に対する経済協力はどのように進めていくか、あるいは援助による経済協力はどのように進めていくべきかということについて、それぞれ簡単に思うところを述べてみたいと思います。
まず、貿易の問題から入りたいと思いますが、現在問題になっておりますところの、発展途上国の輸出停滞のおもな原因は、御承知のように、一次産品の輸出が伸び悩んでいるというところにあるわけですが、これは確かに先進国の関税政策などの、いわば政策的な障害に責任の一半があるということは明らかであります。また、今後発展が期待されておりますところの低開発国の製品や半製品に対しても、先進国のいろいろな自国産業保護のための措置が障害になりそうであります。こうしたことから、発展途上国は、貿易障害の除去とか全般的特恵、いわゆるゼネラル・プリファレンシスなどを供与するように先進国に要求するようになっておりまして、最近、ニューデリーで、UNCTADの席で特恵問題などが論議されているのは、御承知のとおりであります。
この全般的特恵につきましては、無制限方式とか、アドバンスカット方式とかタリフクォーター方式など、いろいろなものが考えられますけれども、一般的に特恵を供与した結果として、先進国にどういう影響が、出てくるかと言いますと、第一は、開発途上国から先進国への輸出が増加する、いわゆる貿易創出結果、トレード・クリエーティング・エフェクトがあります。第二に、これまで他の先進国から輸入していたものを発展途上国から輸入するようになりますから、これは貿易転換効果、いわゆるトレード・ダイバージョン・エフェクトがあるわけで、その二つが考えられるわけであります。わが国以外の先進国でありますと、非常に大まかでありますけれども、第一の貿易創出効果による影響はあるように思われますが、その貿易転換効果はあまりないのではないか。ところがわが国の場合には、そうはいかないので、わが国の場合には、軽工業製品の輸出の割合が総輸出の約四割を占めておる関係から、むしろ貿易転換効果による影響、つまりアメリカに輸出していたものがアメリカに輸出できなくなるというような、貿易転換効果による影響のほうが大きいのではないかといわれているわけであります。ただ、この貿易転換効果として予想されますことは、何よりもさっき申しましたように、わが国の軽工業の対米輸出が減退するということだと思います。もっともこの場合も、いろいろ通産省その他のはじいたところによりますと、総額としてはたいしたことはないので、せいぜい年間一億三千円ドルから一億八千万ドル程度にとどまるといわれておるのでありまして、それほど大きいものではないという数字が出ておりますが、ただ私は個々の業種、あるいはそれぞれの地域によっては、かなりに重大な影響が出てくるのではないか、業種として申し上げますと、綿織物とか、敷きもの、それから衣類、はきもの、運動用具、あるいはおもちゃ、ベニヤ板、ミシンあるいは自転車、ラジオというようなものが考えられます。このうち一地域に集中しているものもあることを忘れてはならないので、将来さらに発展途上国の工業化が進んできますと、その影響は他の業種にも及んでくるということになるかと思います。
こうしたことを考えますと、わが国としては、発展途上国への特恵供与を前提としながら、一方では、わが国に及ぼす影響をできるだけ緩和する手段をとることが望ましいわけであります。その他最も安易な方法は、セーフガードを相手に認めさせるということで、ニューデリーでも、わが国の政府代表はそういうふうなことに努力はしておるようですけれども、私は、そういうセーフガードというものは非常に安直な方法であって、やはり長期的には、そういうセーフガードに全面的によりかかるのではなくて、長期的観点から、もっと国会なり政府部内で十分論議を尽くして、わが国の産業の意識的な計画調整、いわゆるストラクチャー・アジャストメントを進めていくべきであるというふうに考えます。つまり、もう少し具体的に申しますと、業種の転換や製品の高級化を含むところの中小企業の近代化を推し進めるということ、その中で発生してくるであろうところの業種転換に伴う雇用問題、あるいはさっき大来さんが申したような社会保障の問題などについて、財政的な裏づけを持った十分な政策を用意しなければならないというふうに考えます。その際、特に零細な企業に対しては、特別の考慮を払わなければならないということだろうと思います。経済協力政策というのは、どうしてもこれは対国際問題だけではありませんで、必ず国内問題にはね返るわけでありますから、その点は十分に認識して、明確な政策を立案すべきだと思いますし、その点でも、どうもこれまで国会は十分な論議を、その点についてもしているとは思われないという不満を、私などは印象として持っているわけであります。
なお、特恵につきましては、一次産品の輸入増の問題がありまして、もちろんそうした影響は出てくると思いますが、ただ、わが国の農産物の輸入先は、発展途上国よりも、先進資本主義国のほうがウエートが大きいのであります。たとえば、東南アジアからの農産物の輸入品として考えられますものは、現在輸入しておりますのは、果実とか、野菜とか、砂糖とか、魚介類などにすぎません。わが国に影響の出てくるケースとしては、輸入制限を撤廃した場合には、おそらく紅茶が出てくる、あるいは関税率を引き下げた場合の砂糖とか、バナナとか、水産かん詰め、あるいはタピオカのでん粉、あるいはインスタント茶などというものが出てくると思いますが、しかし、これらの品目のうち、実際に東南アジアから輸入しているものは、それほど私は大きい部分を占めていないように思います。これまでむしろ、この点が不必要に過大視されているように思うわけであります。ですから、むしろ第一次産品の問題に関しては、わが国としては、当面発展途上国からの輸入拡大と、それに伴う国内調整をはかりながら、長期的には、発展途上国の農業発展のための、農業技術援助あるいは農業開発援助などを強化するということが、やはり重要であって、たとえばインドなどの食糧不足国が、南アジア、あるいは東南アジアに多いことなどを考えますと、この分野では、わが国としても大いに貢献し得る能力を持っているわけでありますから、農業援助については、一そう積極的な協力を惜しむべきではないというふうに考えております。
次に、貿易を通ずる経済協力については、以上申し上げましたほかに、国際的な大きな問題としては、EECや英連邦のような、いわゆる逆特恵を含むところの地域的選別的特恵、リージョナル・セレクテッド・プリファレンシスの問題がありますが、これはわが国としては遠慮しないで、その撤廃を堂々と主張していいし、わが国が一番それを主張し得る立場にありますので、英連邦やEECのような、逆特恵を含むような特恵制度はやめたほうがいいということを、国際場裏でもっと強く言っていいのではないかと思います。
第二に、援助の問題に移りたいと思います。援助による経済協力の問題でありますが、これはわが国の問題については若干あと回しにして、先進国一般の問題について言いますと、これは非常に大きな問題があります。アメリカの事例が端的でありますけれども、アメリカの経済援助は、はなはだ軍事的、政治的色彩が強い。アメリカの政府援助の三分の二くらいは韓国、南ベトナムそれからインド、パキスタン、アラブ連合、タイあるいはユーゴスラビアというような、ちょうど東西の両接点にある国に多量に落とされている。したがって、非常にそういう点でむずかしい問題が含まれている。そのほか、援助があからさまに市場獲得とうらはらになっているケースも非常に多いのでありまして、これはアメリカだけでありませんで、フランス、西ドイツ、イギリスの場合についても、いずれもかなり露骨にあらわれています。それからフランスとイギリスの例を見ますと、フランスの援助はフラン圏に集中的に行なわれている。それからイギリスの場合には、それと似ておりまして、英連邦に対して非常に集中的に行なわれている。いわば援助を通じて、旧植民地主義的な権益を維持しようというような魂胆が露骨に数字の上に出てきているわけで、経済援助というのは、そういう点で私はたいへん問題が多いと思います。
経済援助については、以上のように、政治的な勢力圏を拡大するための意図とか、商品のはけ口を拡大する意図であるとか、あるいは資本投下市場を拡大するような意図が非常にたくさん秘められている点で、たいへんやっかいな問題を含んでおりますが、そのほか、たとえば六六年の発展途上国の援助の返済額を見てみますと、四十億ドルにも達しているわけで、これは元利返済の問題でありまして、この点は発展途上国の国際収支から見ても、たいへんツリアスな問題になっているわけです。むろん国連の援助でありますとか、あるいは技術援助あるいは農業開発援助など、本来低開発国が必要としているような援助に近い援助もありますけれども、そういうものは、全般として見ますときわめて少額で、世界の援助総額に占める割合もたいへん小さいのであります。
近年、発展途上国は、以上のようなことから、援助条件を緩和せよとか、援助内容を改善せよとか、あるいは援助を国際化する、国連などの多国的な機関を中心とする援助機関を設立せよというようなことを強く要求してくるようになっておりますが、私はむしろそれは当然の要求であろうと思います。
ところで、わが国の問題になりますが、これは初めに申し上げましたように、わが国の政府あるいは財界は、最近資本の供与の面などでも、かなり経済協力に積極的に動き始めておりますが、全体として概観しますと、部分的には確かに発展途上国の経済協力に対する要求を受け入れるというような姿勢を持ったものもかなりありますが、全体といたしましては、経済協力の強化という名目のもとで、この機会にアジアに対する経済進出に乗り出すのではないかと疑われるような面もなくはない。それからまた、もう一つは、経済協力を通じて、アジアを中国の影響から引き離して、西側の影響に置こうとしている現在のアメリカのアジア外交に協力しているのではないかというふうに疑われる面も、かなり濃厚にあるのではないかと感じ取れるのであります。その根拠については、いま一つ一つここで申し上げる時間がありませんが、もしそういう意図が今後ますます強められますと、またそういう意図が強められてわが国の経済協力政策がそのままいくと、私は将来に相当大きな禍根を残すようになるのではないかと思います。
まず、経済援助を市場獲得あるいは拡大と直接に結びつけて行なうということになりますと、これはわが国を再び列強による市場争奪戦に巻き込むことを意味するわけで、歓迎できない。わが国の経済協力が現在全部そうであるというわけではありませんが、やはりかなり市場獲得、拡大の意図があるものもあるのではないか。やはり相手国の経済的自立の願望を十分に尊重して、いわば相手国の民族主義あはるい民族自決原則をおかさないように進められている面も決してないわけではありません。たとえば第一次産品を買い付けているとか、あるいは軽工業製品に対して進んで市場を提供しているものもありますし、それから資金援助の中を見ましても、国連機関を通じてやっているものや、アジア開銀の信託基金に出資したり、あるいは拠出したり、あるいは農業援助や技術援助などは、これは私はかなり有効であり、進歩的な日本の低開発国に対する要求に応じた、側面の強い援助も含まれているし、そういうものもあるというふうに思います。さらに、民間企業の海外進出にいたしましても、相手国の自立的な受け入れ態勢が保障されるならば、相手国の経済発展に貢献する可能性も十分にあるというふうに思います。ですから、私はそういう面は十分に評価しているわけです。したがって、そういう面をもっと今後どんどん出していくべきであるというふうに思うわけでありますが、ただ最近の経済援助を見ますと、政府援助についても、民間の資金の移動につきましても、全体とてし見ますと、プロジェクトの援助であれ、あるいは商品援助の形をとるものであれ、わが国のための市場の獲得あるいは資源の獲得、さらには経済的な勢力圏を形成しようというような意味合いまで含まれているようなものがかなりあるのではないかというふうに感じられるわけで、それがかつての大東亜共栄圏的な発想につながってきますと、これはかなり反省すべき余地があると思われるわけであります。
また、先ほど、最近のわが国の経済協力には、アジアを中国の影響から引き離し、西側の影響下に置こうとするアメリカの対アジア外交に追随する傾きがあるのではないかと申し上げましたが、もしそういう傾向が強まりますと、これはわが国の経済的利益という観点だけに立ちましても、決して好ましいことではない、かなり矛盾することになるかと思います。申すまでもなく、米中対立をめぐるところの緊張状態にあるアジアにおいては、反共諸国へ一方的に傾斜するということは、中立諸国あるいは社会主義諸国、特に対立の一方の当事者であるところの中国との貿易の縮小をもたらす危険性が大であります。ところが、わが国のアジアにおける輸出市場はたいへん分散しておりまして、この点がアメリカやフランスやイギリスと非常に違うところで、わが国の輸出市場はたいへん分散しているわけです。ですから、自国の独自な市場圏というものは持っていないわけで、いわばまた、そのことが戦後日本の輸出が伸びた長所でもあるわけでありますので、したがって、わが国が現在のような反共諸国への一方的な接近に近いアジア外交を続けますと、貿易上相当の痛手を受ける可能性があります。むろんこのことは、こういう外交政策と経済的利益との矛盾については、私がいまさらここで言わなくても、すでに政府自身あるいは財界の一部自身よく認識されておりまして、それがまた、わが国のアジア外交政策の決定に微妙に反映しているということは御承知のとおりであります。政府、財界のアジア外交がしばしば動揺を見せているのも、実はこのためであるというふうに私は考えているわけでありますが、むしろ私は、こうした無定見というか、不明確なアジア外交を改めて、わが国としてははっきり独自の対アジア経済外交のたてまえを確立するほうが賢明である。具体的には、日中貿易をはじめとする社会主義国及び中立諸国との貿易その他経済協力も、何ら他の国に気がねしないで、はっきり明白に推し進めてかまわないし、そうしている国もあるわけでありますから、何もいままで仲のよい国と仲たがいする必要はありませんけれども、積極的に自分の国の政策を立てていいというふうに思います。いま申し上げましたように、わが国の経済援助については、いろいろまだ不明確な点が多いので、援助量がだんだんふえるということを考え合わせますと、援助に関する——つまり政府援助というのはやはり国民の血税を使うわけでありますから、援助に関する審議会あるいは経済協力に関する審議会というのを政府機関として新しく設けて、各界の人々の意見をそこで十分に述べてもらって、論議をかわして、こうした国民的な審議の上で、経済協力を推進し、実施していくべきである。さらに、援助を実施するにあたっては、私は国会審議の対象にしなければいけないのではないかというふうに考えているわけであります。私は、これはぜひそうしてほしいし、ほかの国も議会で十分にその点は討論しているわけでありますから、わが国においても、経済協力については、国会において審議していただきたいというふうに思うわけであります。
なお、民間資本の海外投資については、これは国会でいろいろやるということはできませんけれども、やはりこれも野放し状態に置くのではなくて、投資形態、投資の比率あるいは利潤の現地再投資などについても、発展途上国の経済的な自立の要請と背馳しないように、やはり政府が責任を持ってコントロールを強めるべきであるというふうに考えます。
以上申し上げましたことは、もう自明のことばかりで、いまさらここで申し上げることではありませんが、一応締めくくっておきたいと思います。
第一点は、貿易あるいは援助を通ずるところの経済協力に、今後わが国としても積極的に取り組むべきであるというふうに私は考えますが、その際、発展途上国の経済自立の要求を尊重することが重要である。そして援助量の拡大あるいは援助条件の緩和、援助内容の改善などについても十分討議をして、特に発展途上国における——これはさっき大来さんは、わが国の場合を言いましたけれども、私は発展途上国においても同じ問題があると思います。つまり、一般教育とか職業教育あるいは専門教育などの教育活動を強化する、それに応じた技術援助強化に深い関心を払うということがわが国の能力から見ても、できますし、また、それが必要であるというふうに思います。さらに、発展途上国に対するわが国の政府あるいは財界の援助が、政治的ひもつきの援助とならないように、あるいはまた、経済的進出の道具とならないように、十分に配慮をし、そのためには、ぜひ国民的な審議機関を設けるということが必要であると思うわけであります。そして、特にこれに関連して一言しておきたいことは、賠償とか援助とかが、わが国の一部の商社の私利私欲に回されるというようなことが、かりにもないようにしていただきたい。たとえば、某国に対して何千万というような国民の血税を払って援助をし——それは国民の税金から出ているわけでありますが、それが商品援助形態で行なわれて、結局、商品形態の援助で行なわれますと、有効な場合もありますけれども、経済開発にたいして役立たないで、雲散霧消するケースが非常に多いわけであります。結局、結果的に顧みて、得をしたのはだれであったかというと、相手国の某々商社と、それと組んで取引をしたわが国の某々商社であるというようなことになりますと、これはたいへん問題があるわけで、やはり援助を出すからには、慎重に論議をして、相手国の経済発展に真に役立つような形でしていただきたい。以上が第一点であります。
第二点は、民間資本の進出でありますが、これはやはり野放しにしないで、相手国の経済開発に貢献するような形で、受け入れ国の政府との話し合いのもとで、十分なコントロールに政府が責任を持つべきである。いま、たとえばインドネシアでは、地下資源、農林水産資源開発をめぐりまして、アメリカ、カナダ、イギリス、西ドイツ、日本などの民間資本が激しい資源争奪戦を展開しているということがうわさされておりますけれども、これは経済援助に名をかりて、再び戦前のような原料資源獲得戦、あるいは商品市場獲得の争奪戦を、列強の商社がやるということになるわけで、再びこれは帝国主義戦争になる危険性があるし、そういう帝国主義的な奪い合いの再現というような、はなはだ好ましからぬ事態を呼び起こすことになるわけであります。したがって、発展途上国に対する民間資本進出についても、わが国としては、国際的に何らかの投資保障協定といいますか、投資相互保障協定のようなものを国際的につくるような、新しい国際協力の道を模索したほうがいいじゃないか。かりにもそういう争奪戦に短期的な視野から、民間資本をかり立てるというようなことがあってはならないし、けしかけるというようなことがあってはならない。長期的には、わが国の利益から見てもそういうことは好ましくないので、国際的な投資相互保障協定みたいなものをつくって、受けるほう、出すほう、真に両方とも利益を得るような形にしていただきたい。
第三は、いずれにしましても、貿易、援助を通ずる経済協力は、UNCTADのような国際機関を中心に行なわれることが望ましいので、一国の経済進出の道具としたり、あるいは冷戦の道具にならないように、わが国としては、やはり平和国家としての援助の道を経済協力についても貫徹していただきたいし、その点はわが国の安全保障の問題についてもかなり貢献をし、その点で積極的にイニシアチブをとれる地位に、わが国はあるというふうに考えます。
第四、最後の点でありますが、発展途上国の一次産品輸出促進のための国際的な市場協定とか、あるいは先進国の市場の開放であるとか、あるいは発展途上国の軽工業輸出に対する特恵の供与、それに対応する先進国の産業構造を調整するというようなことは、わが国としても積極的に取り組んでいくべきでありますが、わが国の場合には、いま申し上げましたように、まだおくれた経済部門を残しております。ですから、経済協力の観点から、やはり農業、中小企業問題にどう対処するかという点で、国民的な政策を用意することがきわめて肝要である、これについても早くしっかりした政策を立てるべきであるというふうに考えます。特に中小企業の業種転換、あるいはそれに伴う雇用問題、あるいは職業再訓練などの計画をもって、構造の調整に臨むべきであるというふうに考えます。つまり、経済協力問題は、実はすべて国内問題でもあるということを忘れないで、特恵問題その他についても、直接に日本の中小企業、零細企業あるいは農業、あるいは労働の需要供給の問題に結びついているということを確認されて、経済協力を今後積極的に進められるようにこの機会に要望して、時間も参りましたので、これで失礼いたします。(拍手)