大来佐武郎の発言 (予算委員会公聴会)
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○大来公述人 ただいま御質問の第一点は輸出の見通しでございますが、先ほど申し上げましたように、非常に不安定な要因が国際経済にございますが、ただ実質的には昨年の一九六七年の経済というのはかなり停滞的でございました。アメリカの経済、ヨーロッパの経済の成長がかなり停滞しておりまして、これが六八年には成長率が上がるだろう。西ドイツの場合でもそうでございますが、もしそうしますと、世界貿易の大きさは北米及びヨーロッパの経済活動にかなり密接に結びついておりますので、OECDあたりでは七%の世界貿易の伸びを見ておる。一九六七年は大体五%くらいの実績だったろうと見積もられておりますが、そういたしますと、日本の輸出にも一般的には条件がよろしい。対米輸出も昨年かなり——一昨年非常に大幅にふえましたが、昨年日本からの対米輸出は停滞しておりましたので、ことしはそれに比べればまだ伸びるのではないかというような予想も立つわけでございます。ただ、通貨面の問題がかなり大きな混乱にまでいくということが起こりますと、これはどうしても世界貿易の実体面にもはね返りが出てこざるを得ないかと思います。ドル防衛問題をめぐりまして、たいした混乱なしにこれが乗り切れるか、あるいはドルの平価切り下げその他の問題にまで発展して、一時的に世界的な取引にかなりの障害が出てくるというところになるか、正直に申しまして、まだ私どもはっきり見通しが立たないわけでございます。もしもその面から大きな障害が出なければ一五%程度の日本の輸出増大は、従来の実績等から見まして可能ではなかろうか。ことに国内の生産が、たとえば政府の見通しのように、四十三年度経済の実質成長率が七・六%で、鉱工業生産の伸びが九%ということをもしそのままとりますと、四十二年度に鉱工業生産指数は、大体対前年同月比で一九%から二〇%くらいの伸びを続けてきたわけでありますから、かりにことしの春から鉱工業生産が全く横ばいになったといたしましても、年度間平均の数字で見ますと、大体八%前後の鉱工業生産の成長になるわけでございまして、もしそうだとしますと、年度後半には、増大した供給能力と停滞する需要という形で、一種のデフレギャップ的なものがかなり出てまいり、それが日本の輸出に対して強い圧力になってまいる。国内的な条件からいえば、かなり輸出が伸びる条件になってまいるわけでございますので、私の判断といたしましては、いまのような世界の通貨、金融面で大きな混乱が起こらなければ、いまの程度のことは可能ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
第二の御質問でございますが、太平洋圏の問題。実はことしの一月に私どもの日本経済研究センターで太平洋五カ国から経済学者を呼びましていろいろと討議がございました。先ほど川崎先生もおっしゃったように、将来の世界貿易の姿を考えてまいります場合に、地域的な結びつきというものはどういう役割りを果たすか、これは現在ニューデリーで会議が開かれております低開発国にも同様の問題があるわけでございますが、いままでケネディラウンドということで、大体においてグローバルな無差別の関税引き下げという交渉が行なわれてまいったわけであります。これは昨年一応妥結を見たわけでございますけれども、この前私どものほうの会議でもいろいろ議論が出まして、セカンド・ケネディラウンドが可能であろうかどうか、つまり世界的な無差別な関税引き下げ協定をもう一段進めることができるだろうかということにつきまして議論が出ましたが、かなり多数の学者が疑問だ、各国は相当この方式にくたびれておる。それから、このグローバルな無差別方式でありますと、その交渉に参加しております国の中で一番自由化がむずかしい国の、つまり最低レベルで世界的な自由化が制限されるというような点もあって、次のステップとして、場合によれば、比較的相互に自由化が進めやすい幾つかの国が自由化を進める。これをフリー・トレード・エリア、自由貿易地域というような形でやりまして、それをただEECのような閉鎖的な共同市場ではなくて、開放的な自由貿易地域というふうな形で、地域的な自由化をさらにグローバルに広げていくような道をあけておくというようなことが次のステップとして考えられるのではないか。そういう意味で、太平洋地域で部分的な自由化を自由貿易地域的な考え方で進めることは、次の世界経済の段階として意味があるのではないかという議論がだいぶ出ておったわけでございます。ただアメリカはグローバリズムといいますか、世界全体の問題に非常に執着しておりますから、米国の学者の人たちは必ずしもその意見に同調しなかったわけでありますが、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、それからイギリスから参りましたハリー・ジョンソンという学者等はそういう主張をいたしておったわけでございます。この点は、地域主義の結びつきが、先進諸国の間と、もう一つは低開発国を含めての問題がございます。御承知のように、これは川田先生からお答えになる問題だと思いますが、ヨーロッパのEECとアフリカとの結びつき、特にフランスとアフリカにおける旧仏領諸国との結びつき、これは第一回の国連の貿易開発会議で、いわゆる市場組織化案というのがフランス側から出ておりましたが、これはとにかく世界全体について低開発国を助けるといっても、なかなか事実上やりにくい。むしろある程度関係のある国々が、先進国も低開発国もグループとして結びついて援助を進めたほうが実際的だ、これは従来からフランスやベルギーの立場でございます。これに対して、アメリカが非常に強くグローバリズムの立場から反対しております。日本も従来反対しておりますし、またプレビッシュ事務総長も、これは低開発国の団結を乱すものだということで反対をしておるわけでございますが、事実上各国の援助の重点が、ある程度地域主義にならざるを得ない。日本としても東南アジアに比較的重点が置かれるような形になっておりますが、こういう場合に、やはり一国対一国というような形でなくて、先進国も低開発国もある程度グループをなして、地域的な援助の促進をはかるというような結びつき方も将来考えられることかと思います。この点は非常に議論のある点でございますけれども、いまのような先進諸国間の結びつきと、それから援助における地域主義という問題と、両方からみ合わせて考えてみますと、アジア太平洋地域構想というのは、今後真剣に検討に値する問題を含んでおるのではないかというふうに私ども感じておるわけでございます。
なお、川崎先生の触れられました中国との関係でございますが、これは確かにもうすでに、日本の近隣諸国の工業化がだんだん進んでまいりますに従いまして、日本の軽工業部面は、あるいは農林水産業の一部も相当な競争にさらされておるわけでございます。もし中国七億が、そのような豊富な労働力を利用する方向に、それで輸出を伸ばす方向に政策を向けてまいりますと、日本の従来の輸出とかなり競合する面が出てまいると思いますが、ただ日本の国内の産業構造は、いずれにしても、その豊富な労働力と比較的低廉な賃金に依存する部面というのは、だんだんやっていきにくくなる。国内情勢から申しましても、高い賃金を払ってもう十分採算の成り立つ高度の技術と高度の資本力を必要とする方向にだんだんいかざるを得ない。それでお互いに所得が上がってまいりますれば、おそらく私どもは、アジア地域におきまして、中共も含めて工業製品のいわゆる水平分業といいますか、工業製品の取引が相互に拡大する段階に将来だんだん入っていくのではないか。そういう意味では、かりに中国が工業化を進めてまいった場合にも、それが日本の経済にとって大きな競争、大きな打撃というふうには必ずしも考えない。むしろこの地域全体の貿易拡大ということにつながる可能性がある。もちろんそのためには、日本の経済なり技術が日進月歩で前に進んでおる、より高度のものに発展する力を持っていなければだめなわけでございますけれども、その可能性があるといたしますれば、私どもそれほど心配することではないように感じておるわけでございます。
最後に、統計のおくれの点でございますが、これは一つは、先ほど正木さんのお話にもございました、だんだんいろいろと予算のシステムを近代化していく、それと予算編成の技術、方法にもできるだけ客観的な評価の方法を加えてまいる、最近では、PPBS、プラニング・プログラミング・バジェット・システムというようなこともだいぶいわれるようになりましたが、そういった方向にもしだんだんと行政の近代化、予算の近代化を進めていくという場合を考えましても、それの一番の実行上のボトルネックは、それに必要なデータがそろっているかどうか、特にこういう面に入りますとコストベネフィット、費用便益の比較が必要になってまいりますけれども、政府の統計の弱い点と申しますと、たとえば建設統計——差しさわりがあるかもしれませんが、こういう面などがかなりおくれておりますし、公共部門におけるこの資金の動きを経済的に分析できるようなデータが比較的いままで——これは中央、地方の財政を通じて見なければなりませんが、おくれている面があるように存じます。
そのほか、先ほど御指摘の土地利用。従来土地利用国土調査の予算もいろいろついておるわけですが、これは農地についてのなわ延びというようなことでかなり進行がおくれておりますが、国土調査の、特に都市近郊について相当しっかりした土地台帳というようなものを整備する面、こういう点は御指摘のようにやはり一つのおくれている面だと思います。それから国民所得統計におきまして、やはり在庫統計の部分が、だんだん改善はされてまいっておりますけれども、まだ弱い面がある。その他、いろいろなこれからの行政の近代化を進める上にこの統計の質の向上をはかる——私ども諸外国の例などを見ましても、たとえば、統計の専門家を各省を通じて活用できるようなシステムのようなことも、将来は統計の質を上げる上に望ましいかとも思うのでございますけれども、一応大体のお答えを申し上げます。(拍手)