大来佐武郎の発言 (予算委員会公聴会)
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○大来公述人 最初に、国際収支の問題でアメリカの輸入課徴金問題でございますが、昨年私もちょうどニューヨークに行っておりましたときに、あちらの経済学者と話しておったときにも出たわけでございますが、国際収支の対策としてこの輸入課徴金が一つ考えられる。これは一部に言われております輸入クォータ、鉄鉱とかその他の特定の品目についてのクォータよりは課徴金のほうがいいんだ。それはクォーターをやりますと、あとではずすことが非常にむずかしくなる、特定の産業や商品に結びつくものですから。課徴金であれば国際収支の問題がある程度めどがつけばすぐ全面的に撤廃するという点で、どちらかといえば、そのほうがいいんだということを、これはアメリカのサミュエルソンという学者が申しておりましたが、その後、ことしになりましていろいろ具体的な問題が出てきておりますので、私どももはっきりした見通しはつかないわけでございますが、場合によると実行される可能性——ヨーロッパ側はむしろ流動性過剰といいますか、外貨状態が非常にいいわけでありますが、そういう状態から考えて、一時的ならばアメリカがやってもしかたがないという方向に行く可能性もあるかもしれない。これは日本政府の反対にかかわらず、そういうことになるかもしれないという感じがいたしておりますので、もしそうなりますと、日本の輸出にどの程度響くか、これもいろいろ政府内部にも見通しが、計算もあるようでございます。私、はっきりわかりませんが、二%ぐらいのときだったらば、その一億から二億ドルぐらいの輸出に影響するのではないか、五%だと相当響くのではないかというような御意見もございます。ただ、この輸入課徴金ないしボーダータックスでアメリカが予定しておる外貨節約が世界全体に対して大体五億ドル前後ということになりますと、これが全部日本にかかってくるということはたぶんないだろうと思うのですが、やはり日本の輸出にとってはマイナスの要素に働き得る。その辺も最初に申しました不確定要因でございますので、日本の経済としては、その場合にはある程度輸出をマイナスとして考えざるを得ないということになるかと思います。これは、いろいろな報復措置というのは、日本の立場としては、いかにもこういうやり方、アメリカ側が商品貿易で黒字であるにかかわらずこういう行き方をとるということは、どうも客観的に見て合理性が薄いように感じられるわけでございますが、反面、世界的にこれが報復措置のはね返りになってまいりますことは、世界貿易全体、縮小さして、それがまた日本経済にはね返ってくるということになるおそれもありますので、私、これは非常に個人的な考えでございますが、かりにそういう課徴金をやる場合の期間について、できるだけはっきりした言質といいますか、きわめて短期の臨時的措置であるということについての約束が何とか得られないものかどうか、そういう点も実はひとつ考えるべきではないかと存じます。そういう意味では、報復措置ということはできれば避けたほうがいいのじゃないか。短期的には、どうもあまりこのまま黙っておるということもどうかという気はいたしますけれども、日本の貿易国としての立場からいうと、やはりその辺はやや長期的に考える必要があるように感じております。
それから、外貨準備につきましては、これもどうもなかなかとらえどころがございませんで、現在二十億ドルということで、だいぶ数年横ばいでございますが、その間輸入規模はかなり伸びておりますので、私どももう少しやってもいいのではないかという気がいたします。ただ、外貨をため込むということは、それだけ経済の成長、伸びに使い得る輸入を抑制するような面もございますので、安全と見られる大体ぎりぎりのところで運転していくというのが、経済政策としては賢明だろうと存じます。日本の円に対する信用は、外貨準備や金の保有高ではなくて、むしろ日本の経済の成長力とか輸出産業の競争力というのが、現実に円の裏づけになっておると思いますので、その点がやはり一番基礎だと思いますので、準備についてあまりはっきりした限度というものが引けない。それで、今度の景気調整政策によって、やはり従来どおり日本が国際収支を比較的短い期間で黒字にできるかどうか、その実績が示されれば、この外貨準備の量というのは、金額というのは、それほど対外的な信用に影響しない。国際収支が長期にわたって改善できないとなると、いろいろ批判が出てくるというような性質のものではないかと思うわけでございます。
それから、第三の引き締めと中小企業の問題、私も最初に申し上げましたが、一般的な引き締めということが、従来言われておりますように、どうしても資金調達力の弱いところに大きな圧力がかかるわけでございまして、その場合のいろいろ救済手段、田中先生のお話しのような下請代金その他の点についても、当然必要でございますが、同時に、大企業の設備投資が非常に大きくフラクチュエートといいますか、動揺するというような点につきまして、何とかもう少し大企業の設備投資についてのゆれの幅を小さくするような政策というものを今後は十分考えておく必要があるのではないか。そうすれば、景気調整の際に中小企業に来る波の力も弱まるという点がございますので、やや根本的なことになるのでございますけれども、その面は、中小企業対策としてもそういう行き方が望ましいかと存じます。
私の受け持ちとしては以上であります。