川田侃の発言 (予算委員会公聴会)
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○川田公述人 とてもたいへんむずかしい問題を出されましたのですが、まず、世界貿易全体の伸びですが、これも必ず一五%いくというふうに申し上げたわけではなくて、イギリスないし西ドイツの立ち直りなどを見て、輸出がこのままむしろ落ち込むということはないのではないかというふうに申し上げただけであります。
一つ問題がありますのは、日本の貿易としては、貿易相手国が非常に分散しているにもかかわらずアメリカに対して三分の一もある。ですから、これは他が分散しているということを考えれば、たいへん集中しているということで、決定的にアメリカに依存しているという点が非常に問題がある。それからもう一つは、最近、ここ一、二年の問題としては、ベトナム特需が少ない計算でも八億ドル、私の試算では十二億ドルぐらいいっている。それでかなり救われている面がある。そういうことを考えますと、ドル依存が非常に強まっている。それから、ドルが現在非常に危険になっているにもかかわらず、対外投資について、アメリカは、EECについては完全に規制に入れましたけれども、カナダ、日本、それからイギリスはその除外例として必ずしも規制をしてこない。したがって、アメリカの資本が今後日本に入ってくるということは十分あり得る。これは日本の国際収支にとっては一時的にはプラスでありますけれども、ますます日本がアメリカ経済の中に組み入れられていくということになって、あまりこの一国に依存するということは、やはり日本の将来から見て、地理的な日本の環境から見ても、私は決して賢明な政策ではないと思います。そういう点で、ソ連ないし中国との交流あるいはアジアとの交流も、もっと力を入れて進めていくべきである。ただ、それを輸入課徴金のような問題、大来さんは一億ドルから二億ドルと申しましたが、私も二億ドルないし三億ドル、これは低開発国に対して全般的特恵を与えたよりも、アメリカの輸入課徴金のほうが若干多い影響が出てくるでのはないか。そういう点で、日本の経済にとっては、二億ドルないしそれ以上ということになりますと相当大きな問題になろうかと思いますが、やはり報復措置というのは必ず報復措置を招くといいまして、これは一九三〇年代に御承知のとおりアメリカがホーレー・スムート関税をやりましたら、直ちにフランスが報復し、フランスが報復したらほかの国が報復するということで、世界経済は大混乱におちいったわけでありますから、粘り強く交渉して、そういう政策をとらない、つまり、オープンシステムを主張しているアメリカとしてはたいへんな矛盾になるわけでありますから、そういう矛盾をついて粘り強く交渉し、日本もあまりそれに対して報復処置ということを直ちに考えるのがいいかどうかというのは大問題だろうと思います。現在、たとえばニューデリーで、日本の代表はガット三十五条適用国に対しては特恵を与えないということを主張しているようでありますが、私は、これも問題があるのじゃないかと思います。アフリカの小さな国などみなフランスにならってガット三十五条適用国でありますけれども、ガット三十五条適用国であるからということで、報復的に日本はそれに対して差別待遇をして特恵を与えないというような姿勢をむしろとるべきではないので、やはりその点は長い目で、報復には報復をもってするということでなしにやっていけないものかというふうに考えております。
それから、成長の問題でありますが、経済成長ばかりに目を奪われて日本はきたわけであります。国内における二重構造の改善と申しましたか、そういう御質問がありましたが、日本のストラクチャーアジャストメントのほうにもう少し力を入れるべきであって、あまり成長成長と——成長の中で自然にその二重構造を解消するというような政策をとって、弱いものは切り捨てられて高度化してきたというのが、巨視的に見れば戦後の日本の経済のあり方だったと思うのでありますが、そういうことでなしに、成長よりも、ここらあたりでいわゆる構造改革といいますか、構造調整というほうにむしろウエートを置く必要がある。しかし、そのときに、もちろんリアクションが出てくるわけで、そうなりますと、たとえば外貨準備をため込むとか、それから下請代金を出すというようなことになりますと、全般として財政支出が負担になってくるし、金融引き締めの問題も国際収支で出てくる。そのときにはやはり中小企業に大きく波及してくる。そういうところで、私は、いままでの政府、財界の経済政策の根本的な改革をやらなければならないのじゃないかという気がしているわけであります。
日本の中に南北問題があるのに世界の南北問題に答えるのはどうかという意見もあろうかと思いますけれども、世界の貧民窟と呼ばれているような国々が——インドを旅行すればすぐわかるわけでありますが、ああいう国が世界にあるということはやはり問題が大きいわけですから、日本の中に南北問題をかかえてはおりますけれども、日本の南北問題に対処しながら世界の南北問題に対処しなければならない。しかも、その南北問題が南の側から打ち出されてきているということの世界史的な意味合いというのは、私はこれは一朝一夕では消えないと思います。ベトナム戦争や一時的な戦争によって、南北問題が一時それほど大きな脚光を浴びない時期があるかもしれませんが、これは必ずまた大きな脚光を浴びてくるので、これに対しては積極的に立ち向かわなければならないという気がしておるわけであります。
アメリカに対する依存度が大き過ぎるということと、ドルにあまりたより過ぎた場合にドルと一緒に心中する危険があるという点は十分に認識して、広く世界に経済交流の場を求めていく、これはたいへん抽象的な結論になりまして恐縮でありますけれども、私の気持ちとしてはそういうことであります。