佐藤榮作の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 三宅君にお答えいたします。
 われわれ日本国民は、世界における唯一の被爆国民として、核兵器のもたらす悲惨な経験から、核兵器はつくらない、持たない、持ち込ませないという原則を国民の総意としてきめております。また、この基本方針のもとに、世界じゅうの核兵器が絶滅されることを念願しており、国際間の現実から見て、当面実行可能なところから核兵器の国際的規制や管理を行ない、核軍縮を実現するよう最善の努力を払っている事実は、国民各位の御理解と強い支持を得ているものと私は確信しております。(拍手)
 しかしながら、戦後二十数年にして世界第三位の先進工業国としての地位を占めるに至ったわれわれ日本人は、科学技術の進歩という面については、あくまでも積極的でなければならないと思います。したがって、人類を破滅に導く核兵器と、人類の福祉と繁栄のかぎを握る原子力の平和利用については、はっきり区別して考えなければならないのは当然であります。被爆国日本であればこそ、この点について勇気をもって国民各位の理解を求めていくことが、科学者だけでなく、私ども政治家の責任であると信じます。(拍手)
 このような意味から、わが国の原水禁運動が、イデオロギーや政治的な葛藤の具に供されていることを私はまことに残念に思います。(拍手)
 また、原爆被爆者の実態については、昭和四十一年、現存被爆者の健康面及び生活面について全面的な実態調査を行ない、昨年二月と十一月の二回に分けてその結果を発表いたしましたが、政府としては、被爆者の実態を明らかにするため、できるだけの努力を払っております。
 次に、沖繩問題についてお答えをいたします。
 しばしば申し上げているように、日米間の友好と信頼の基礎に立って沖繩の早期返還を実現するというのが、私の基本的な態度であります。昨年の私とジョンソン大統領との会談の結果は、日米共同声明に明らかにされているとおりであって、それ以上でも、またそれ以下のものでもありません。あの共同声明そのままであります。すなわち、私は、両国政府がここ両三年内に双方の満足し得る返還の時期につき合意すべきであることを強調いたしました。これに対しジョンソン大統領は、これら諸島の本土復帰に対する日本国民の要望は十分理解していると述べました。そして討議の結果、両者は、日米両国政府が沖繩施政権を日本に返還するとの方針のもとに、かつ以上の討議を考慮しつつ、沖繩の地位について共同かつ継続的な検討を行なうことに合意いたしたのであります。
 この共同声明を受けて、去る五月、沖繩返還に関する継続協議は第一回会合を行なったのであります。以上の協議を通じましても基地のあり方については、その核心に触れるところまではいっておりません。
 私は、この問題は、国際情勢の推移、科学技術の進歩、世論の動向等を見きわめながら慎重にきめる方針であり、現段階においては白紙であります。いずれにいたしましても、沖繩百万の同胞の願望を一日も早く実現したいというのが私の基本的な政治姿勢であり、両三年内に返還の時期についてめどをつけるという私の信念には、いささかのゆるぎもありません。はっきり申し上げておきます。(拍手)
 また、祖国復帰が実現するまでは本土との一体化についてあらゆる努力をいたしますが、それについて、沖繩の国政参加の問題についてのお尋ねがありました。私は、沖繩住民の国政参加については、本土との一体化の推進という観点から、沖繩住民の要望にこたえ、何らかの方法でこの国政参加を実現するよう努力しております。去る七月一日の第十四回日米協議委員会において、米国政府に対し、この問題についての配慮を要望したところであります。今後ともこの問題については鋭意努力してまいる考えであります。
 また、施政権返還が一日も早く実施するように努力すべきはもちろんでありまするが、祖国復帰が実現するまでの間は、本土との一体化を進めることは政府の方針であります。このために、日米琉諮問委員会は活発な活動をしておるのであります。一体化調査団の調査報告もこの委員会に提案されましたので、一体化施策のために委員会の活動が今後期待される次第であります。
 次に、日米安保と憲法の問題についてお尋ねがありましたので、お答えいたします。
 安保条約のもとで平和が保たれたのは偶然の結果によるという三宅君の御意見、これは三宅君だけでなく社会党全体の御意見のようでありますが、全く私は承服できません。平和憲法のもとで他国の内政に干渉せず、いずれの国とも仲よくする、すなわち、自由を守り、平和に徹する国是によってわれわれは戦後の繁栄をかちえてきましたが、これも基本的な安全確保の手段として日米安保体制を基調とし、自衛力を整備するという平和確保への努力を怠らなかったからであります。私は、今度の参議院選挙におきまして、このような基本的政策を訴えた結果、国民大多数がわが党の基本方針に賛成であるという強い確信を得ました。(拍手)
 われわれ日本国民は、その主義主張のいかんを問わず、戦争には反対であります。したがって、戦争に巻き込まれないために、戦争を抑止する手段を講じなければならないのは当然であります。日米安保体制が、現実の国際情勢の中では最も有効適切な戦争抑止の方法であることは、戦後二十数年の平和の歴史によって証明されております。われわれは、現行憲法を貫く自由主義、平和主義、これを維持するために、日米安保体制を選択しているのであります。(拍手)私は、その意味におきまして、平和憲法も高く評価いたしますが、しかし、三宅君のように、平和憲法をソ連にも中共にも及ぼせと、これなどは、私は内政干渉はいたさないつもりでありますから、その説には賛成しないことをはっきり申し上げておきます。(拍手)
 次に、非武装中立について申し上げます。
 非武装中立論が国民の支持を得ていないことは、もはや明らかであります。この点について多くを申し述べる必要はないと思います。国の安全確保という問題は、かりそめにも実験の具に供すべきことではなく、言うならば、石橋をたたいて、たたいてたたいて渡る、そのくらいの慎重さが必要だと思います。冷厳な国際情勢に目をつぶり、そうして侵略する国はどこにもあり得ないと、かように大みえを切られましたが、国の安全確保に伴う国民的負担を考えずに、中立論に名をかりて、国民がみずからの手でみずからの国を守る気概を否定するような論は、きわめて遺憾といわなければなりません。(拍手)
 三宅君は、中立国オーストリアの例をあげておられますが、オーストリアにせよ、スイスにせよ、スウェーデンにせよ、これら中立国がいずれも重武装中立であり、国民に重い負担がかかっていることを認識されなければならないのであります。
 また、自衛隊の改組について御意見が出ましたが、自衛隊員は、国の独立と平和を守るために、侵略を未然に防止し、万一の場合、これに対処することを使命としております。そしてその存在は、あくまでも憲法にのっとっているもので、国民大多数の支持を得ており、また、隊員の一人一人もその使命を自覚し、これに誇りを持っておるのであります。自衛隊を改組する考え、これは私どもには全然ありません。(拍手)
 北朝鮮帰還問題についてお触れになりました。北朝鮮の帰還、これは人道上の問題でありますから、政府といたしましても、日赤の意向を十分に尊重して、今後とも解決につとめるつもりであります。
 次に、中国問題についてお触れになりました。中国問題について、一つの中国を解決しろ、二つの中国ではいけない、こういうようなお話でありますが、私は内政には干渉いたしませんから、誤解のないようにお願いしておきます。そうして、この中共の態度につきましては、ただいまのところ、基本的な、わが党の、またわが政府の考え方を変えなければならないような変化は全然ございません。誤解のないようにお願いしておきます。
 次に、日本のビジョンについてお話がありました。なぜだか特別に明治百年ということばはお避けになったようでありますが、私どもはこの明治百年ということばを使っております。ただいま三宅君がビジョンということを言われましたのも、おそらく、明治百年のこの機会に日本人はビジョンを持て、こういう御意見だろうと思います。その考え方には私どもも賛成でありますし、明治百年を記念すると申しましても、いわゆるお祭り騒ぎをする考えは毛頭ございません。私は、ただ、明治時代に明治の先人がりっぱな日本をつくった、その意気込み、それに学ぶべきものが今日もあるのではないだろうか、今後の百年に対しまして、私どもも先人から学んで、そして新しいエネルギーを結集してりっぱな日本国をつくりたい、これが私の念願であります。
 次に、米価、食管会計についてのお尋ねがありました。この点は私が所信表明で申しましたように、収穫期も近づいておりますので、できるだけ早く政府は決定をいたします。いずれその決定を見ました暁におきましては、御批判は十分承りたいと思います。また、同時に、その決定前におきまして、今日私どもがさらに考慮すべき点等につきましては御注意を願いたいと思います。ただいまのお尋ねもそういう点について触れたようでありますが、私は、この食糧管理法、これを無視するようなことはいたすつもりはございませんし、食糧管理法第三条第一項の規定による政府買い入れの数量などにつきましても、十分私も理解しておるつもりであります。したがいまして、政府が法を無視する、かような前提からきめつけられることだけはおやめをいただきたいと思います。
 次に、学生運動についてお触れになりました。一部学生の反社会的な集団暴力につきまして、たいへん私も心配しております。おそらく三宅君も御心配ではないかと思います。このような学生の行為がすべて戦後の教育制度に基因するものかどうか一がいに申せませんが、国家の将来につながる問題として、あらゆる角度から真剣に取り組まねばならないと思います。一部学生の無軌道な暴力行為を放置することはできませんが、といって治安取り締まり的な観点だけでこの種の行為がなくなるとは私も考えておりません。教育の場や社会生活の場におきまして、自由に伴う責任、自由と規律というような本質的な規範が理解される環境をつくっていくことが必要であります。これはまた学校や家庭教育だけではできないことであります。新聞やテレビ等、マスコミ関係者の御協力を特に切望してやまない次第であります。
 以上によりましてお尋ねについて一応お答えしたつもりでありますが、なお私の政治信念についていろいろ御批判がございました。御意見は御意見として謙虚に伺っておくつもりであります。(拍手)
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発言情報

speech_id: 105905254X00419680805_016

発言者: 佐藤榮作

speaker_id: 21117

日付: 1968-08-05

院: 衆議院

会議名: 本会議