佐藤榮作の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 曽称君にお答えいたします。
 参議院選挙が終わって、私の所信表明について謙虚さがないという御注意でございます。この御注意はありがたくそのまま伺っておきます。私、申し上げるまでもなく、政治を担当する者は国民の声を聞く謙虚さがなければなりません。そこに初めて国民の支持を得、また、政党としても大をなすゆえんだ、かように平素から考えております。重ねて御注意のありましたことを御礼を申し上げておきます。
 そこで、お尋ねに対しましてお答えをいたしますが、経済が成長し、社会機構が複雑化するにつれまして、とかく人間が疎外されがちになります。私が政権担当直後、人間尊重と社会開発を提唱いたしましたのもこの趣旨であります。特に、わが国のように都市化の波が急激に押し寄せた国におきましては、過密、過疎対策、これがたいへんな問題であると思います。社会生活の面におきまするいろいろの現象が出ております。したがいまして、国民の福祉対策も、これらの問題とあわせて解決していかなければならないと思います。その点は御指摘のとおりであります。ただし、このような現象は、単に政治の分野だけで解決ができるものではありません。国土の総合開発という大きな柱を立てて、物的な面、精神的な面、これを合わせて新しいビジョンが必要であると、かように思います。
 私は、明治百年を迎えて、政府としても二十一世紀または次の百年にどう対処するか、その理想像の形成につきまして取り組んでおりますが、曽祢君のお説も、これからの日本が、単に経済力だけで強大な国ではなく、人間性豊かな自由の国家でなければならないということを御指摘だと思います。そのとおりであります。最近の一部学生の集団暴力事件を見ましても、これらの若いエネルギーを真に建設的な方向に向けるのでなければ、次の世紀におきまして、精神、文化を兼ね備えた真に世界一流の国家として発展することはできないのではないかという気がいたします。
 次に、物価問題についてお答えいたします。
 物価対策は、先ほどもお答えいたしましたように、政府に課された重要課題であります。したがいまして、政府といたしましては全力をあげて取り組む所存でありますが、一切の公共料金、消費者米価をも含めてこれを据え置けという御提案に対しましては、残念ながら、現実の問題としてはやや無理ではないか、かように思いますので、賛成いたしかねます。しかし、個々の公共料金の取り扱いにつきましては、国民生活に与える影響や物価に関連するというような点もございますから、慎重な上にも慎重にこれを検討してまいらなければなりません。そうして、消費者米価が生産者米価問題に引き続いて検討課題にのぼるということは、お説のとおりであります。私は、一般消費者物価の動向や国民生活の各面に与える影響を考慮いたしまして、家計米価の範囲内で極力その抑制につとめるとともに、便乗値上げの防止に遺憾なきを期してまいるつもりであります。
 生鮮食料品につきましても、その生産性の向上をはかり、供給の円滑化につとめるとともに、卸売り市場等流通機構の整備を進めるなど、価格の安定のための諸般の施策をさらに一そう進めていくつもりであります。したがいまして、値上がりにつきましてはできるだけこれを避けていく、かように抽象的には考えていただきたいと思います。
 次に、景気調整策について、金融引き締め、これはもうすでに緩和すべき時期に来ているのではないか等々、いろいろの御意見がございました。多くは御意見として私が拝聴しておけばいいのではないか、かように思っております。私も、景気動向につきましては絶えず神経をとがらせております。しばしば、ときにこれを引き締めたり、ときに成長に力をかしたり等々の方策をとっております。しかし、長期的には、一つの長期的な総合的な計画のもとに、ただいまのような情勢に相応したそれぞれの対策を立てるということでありますので、全然無計画というようなものではございません。その点をひとつ御了承いただきたいと思います。その点で、欧州におきましてとられた政策なども御披露になりました。しかし、私は今日までのところ、わが国の政策はそれぞれ成功しておる、かように考えておりますので、御注意の、欧州における諸国のとりました具体的政策、これは参考として伺っておきます。
 次に、政治資金規正法についての御意見でございました。この政治資金規正法は、私どもは、一歩でも政界浄化のために前進する、かような考え方で前回提案をいたしたのであります。この政界浄化に一歩でも前進する、先べんをつける、こういうことにすら実は反対をされまして、苦い経験をなめておる次第であります。今後の扱い方といたしましては、これらの経緯にも考えまして、これを慎重に検討してまいるつもりであります。
 次に、米価と食管制度についての御意見がございました。私の姿勢を御批判になることは、これは御自由でございますし、また、御意見もそれぞれ伺っておきます。私は、収穫期を控えた今日、米価はできるだけ早く決定すべきだ、かように考えておりますので、さらにただいまのような御意見も伺っておきます。しかし、私自身が法を無視する、かような乱暴なことをするつもりはありませんし、私は民主主義のもとにおける総理大臣として、皆さま方から選ばれたものであると、かように考えておりますので、法律を無視する、かようなことはいたさないつもりであります。
 また、食管会計につきまして、これはすでにその根幹を維持しつつ、所要の改善方策を検討すべき時期に来たもの、かような所信表明をいたしました。いかなる改善をはかるかということにつきましては、まだ私きめておりません。もちろん、これは簡単に決定すべきものではありません。慎重に扱うべきものだと思います。各方面の意見を十分に聞きまして、そうして最終的な決定をいたしたい、かように考えております。
 次に、安保条約についての再検討のお話がありました。平素から伺っておるような点を重ねてお話しになりましたけれども、私ども、すでに基本的な問題で安全保障条約体制、これを堅持する、かように私は、しばしば機会あるごとに申しております。その意味で政府並びに自民党の主張は国民大多数の方がよく理解してくれておると、かように私は考えております。しかも、その点では大多数の支持を得ておる、かように私は考えておるのであります。所信表明でも申しましたように、アメリカが日本の国を防衛してくれる、日本政府は米国に対しまして基地及び施設を提供する、これが条約上の相互の権利義務でございます。したがいまして、これを十分に理解していただきたい。しかしながら、何でもこれは義務だからといって、基地周辺の地域住民に生活上の不安を与えるというようなことがあってはならない。危惧、そういうようなものをできるだけ解消すべきだ。これは当然政府の責務だ、かように私は思っております。しかし、国民の皆さん方も、安全を確保しておる現状から、基地あるいは施設の提供等につきまして、ある程度のごしんぼうを願うということにつきましても御理解いただいておる、かように私は思っております。したがいまして、今後とも安全保障条約そのものにつきましては、先ほど申すように、これを堅持する考え方でございます。
 それにつきましていろいろ具体的に米国とさらに対話を重ねて、そうして所要の改正をしたらどうか、こういうような御注意であります。私も、それらの点がもし必要であれば、日米相互間の理解と信頼のもとにただいまのような対話を続けることが必要だと思いますけれども、ただいまのところ、私は、この現条約体制は現下の国際情勢のもとにおきまして国の安全を確保するゆえんだ、かように考えておりますので、これを再検討するような考えは持っておりません。これははっきり申し上げておきます。
 次に、西春彦君の論文を引用されまして、そうしてソ連、チェコ等の紛争等をも、これは他山の石とすべきではないかというようなお話がございました。私は、西春彦君の論文は十分読んではおりません。しかし、ただいまのお話を通じてみまして、そうして安保条約のいわゆる極東条項、これを除いたらどうかという点にお触れになったのではないかと思っております。私が申し上げるまでもなく、わが国の周辺地域における平和と安全なくして、わが国の平和と安全はあり得ないということは自明の理であります。また、アジアの平和と繁栄は、そのままわが国の平和と繁栄につながるものであるということも、いまさら申し上げるまでもありません。したがいまして、ただいまのような、極東条項を削除すべし、かように主張される西君、これはどういう意味からさような主張をされるのか、私にも十分理解いたしかねます。ただいまこの極東条項を削除するという考えは、政府におきましては全く考えておりません。はっきり申し上げておきます。
 次に、沖繩問題について。さすがに曽祢君は外交畑の出身でありますから、スナイダーの発言等につきましても事態をよく御認識いただいておる。スナイダー発言は別に問題にしないが、これで政府がどうも問題をすりかえているのじゃないのか、どうも総理自身の言い分は希望的観測が主になっていて、それがいかにも現実であるかのような主張をしておる、そこに間違いがあるということを御指摘であります。私は、しばしば申し上げましたように、ジョンソン大統領との間に忌憚のない意見の交換をいたしました。そうして沖繩が返還されるというもとに継続的な協議をしよう、そうして結論を出そうということを、いまやっておるのであります。第一回の協議もすでに開かれたことは御承知のとおりであります。これらの事情を十分御理解いただくならば、曽祢君が外交畑の出身であるだけに、私が両三年内に返還のめどをつけ得るという確信を得た、このことも御理解いただけるのではないか、かように私は思うのであります。
 沖繩の基地のあり方につきまして、いまから一定の結論を持って米国との協議に臨むということではなく、今後沖繩における基地の現状、極東情勢の推移、用事技術の進歩等、また世論の動向等を考慮して、慎重に検討していくとの私の考えは、すでにしばしば申し上げたとおりであります。これでその点もはっきりしたかと思います。民社党の御意見は、先ほど曽祢君から詳細にお話がございました。私も十分敬意を表してその点を伺ったのであります。問題は、やはり日米誤解のないようにするということが、最も大事なことだと思います。私は、相互信頼と友好の間におきましてこの問題を解決したい、かように思っております。
 次に、中国問題についてお答えをいたします。
 これまでどおり、中華民国との間には正式の外交関係を持続し、中共との間には政経分離の原則にのっとり経済、文化の交流を促進していくということが、現下の国際情勢のもとでは最も現実的な政策であり、かつ、わが国の国益に合致するところである、かように考えております。
 御提唱の方式は、何だか私自身は、伺っておりまして、一つの中国、一つの台湾、ないしは二つの中国、かような点につながるものではないだろうか、さように聞き取ったのであります。これは、二つの中国論に対しましては、国府並びに中共、これが現在の立場を固執する限り、双方から強い反発を招くだけで、問題の実質的解決にはなり得ないものであります。私は、先ほども社会党の三宅君にお答えしたのでありますが、やはり、中国の問題は、中国のその内政に干渉しないというのがわれわれのたてまえではないか、かように思いますので、この説には賛成をいたしかねます。
 また、吉田書簡についていろいろ御批判をいただきました。さすがに吉田先生の薫陶を受けられた曽祢君、さような意味におきまして、たいへん理解のあるお話のように思いますが、私が申し上げるまでもなく、政府がしばしば主張しておりますように、吉田書簡というものは、政府の取りきめあるいは政府の約束、かようなものではございません。したがいまして、これを緩和するとかあるいは撤回するとか、そういうものでないことを御了承いただきたいと思います。また、吉田書簡の問題がありましても、現状におきましてさしたる支障はないように私は考えております。
 次は、中国の代表権問題につきましても、先ほど申し上げますように、基本的に二つの中国論は私ども賛成できない、かように思っておりますので、この点では遺憾ながら賛成ができません。そうして、重要問題指定方式、これは特にお尋ねがございませんでしたが、私は、現状におきましては対中国政策、これを変更したり、これに加えたりするような何ものもないという、そのことをはっきり申し上げておきます。
 また、中国問題を審議するための委員会、これは積極的にはお尋ねはなかったと思います。中国問題が大事でありますだけに、いろいろの国でいろいろな議論をいたしております。かつてカナダの提唱によりましてこの審議をするための特別委員会を設置されたことがありますが、結論を得ることができないで、そのまま解消したような経過もあります。また、わが国も、この中国代表権問題について、解決ができるならばひとつ十分検討したいという新しい試みを支持するにやぶさかではございません。また、かような意味でイタリア案に賛成をいたしたのでございますけれども、この案も、二年も続いていろいろ審議されましたけれども、賛成者がきわめて少数、支持国がきわめて少数であった、かように考えておりまして、結局否決された。その問題がいかにむずかしいかということが、これらの例でもわかるかと思います。
 次に、西村委員長の提案の点でございますが、私は、外交問題におきまして、たとえば中国の国連代表権問題などで超党派に意見の一致が得られるなら、これにこしたことはないと思います。外国にはそういう国がしばしばあります。いろいろ内政上の問題ではお互いに与野党しのぎを削るけれども、外政の問題については各党が超党派的に話を進める、たいへんけっこうなことだと思います。しかしながら、国の安全を確保するという基本的な問題につきまして全く意見が異なっておる、そういうような政党同士がお互いに話し合いができるだろうか。現状におきましては、私はまことに残念に思うのであります。少なくとも国民的な合意が得られるように、この上とも各政党とも努力すべきではないだろうか、かように思います。ただいま直ちにとは申しませんが、少なくとも各党が、こういう基本的な問題については、党利党略にこだわることなく、国民のために、また国のために、お互いに胸襟を開いて話し合う、そういうことが望ましいように思います。
 お答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣三木武夫君登壇〕

発言情報

speech_id: 105905254X00419680805_022

発言者: 佐藤榮作

speaker_id: 21117

日付: 1968-08-05

院: 衆議院

会議名: 本会議