穗積七郎の発言 (外務委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○穗積委員 いろいろお尋ねをして、御意見を伺いたいことがありますけれども、時間も限りがありますから、二点だけ、ちょっといまの問題をしぼってお尋ねをいたします。
 私が先ほど言いましたことはこういうことなんです。承認国と未承認国との間に国際条約上または外交上区別が生ずること、そんなことを一般的に議論をしておるのではないということ、これはこの点に限定をしていただきたいのです。すなわち、旅行の自由というものはその個人に属した権利です。その場合に、その個人個人の思想上の立場、政治的立場あるいは経済的その他の立場、宗教上の立場等々は差別をしないで、これは享受すべきものだと思います。その旅行自由の原則に限って見たときに、承認国と未承認国と差別をしなければならない条件、または手続上差別をしなければならないということは、何を基準にして差別をしなければならないかといえば、それは一つは保護の問題、すなわち、旅行者の立場に立っての保護に対する政府の責任あるいは義務といいますか、そういう立場から、手続上については承認国とは違った心配があるということで、すべての点を検討をして、そして本人の旅行の安全のために手続や条件を区別するということはありましても、そのときの基準は何かといえば、これはまさに旅行者自身の側に立っての安全保護のことだけを基準にすべきだと私は思いますが、その点を私はお尋ねしたかったのです。この場合における承認国と未承認国との区別は、旅行者自身の安全保障の立場に立ってのみ、これは手続上あるいは条件上の多少の区別はやむを得ない。やむを得ないけれども、その基準はいま言ったとおり、旅行者自身の保護のためである。それ以上の公安のものであるとか、あるいはその他の理由によって差別すべきではないと私は思うのですよ。
 それから第二点は、国益、公安の問題です。こういうことですよ。その人が、さきに出たように、麻薬、あるいはその国でも禁止されておる賭博、あるいは淫売、または銃砲弾薬、そういうかの国でも禁止されておる、公安といいますか、公の秩序に非常に明瞭に悪い影響を及ぼすことを計画しておる旅行目的、そういうものは別ですよ。そうでなくて、その人が同じ目的で、同じ旅行の趣旨で旅券申請を出したときに、承認国ならば先ほど言ったような数次五カ年間の包括的な旅券が出る。それと同じ条件、同じ目的をもって未承認国へ行こうとしたときには、これは差別はあるべきではないと思うのです。まさに保護の問題だけになると思うのです。それで、公安の問題というのは、これはわが国の政治の歴史の中で、国益、公安を拡大解釈して基本的人権がじゅうりんされた苦い経験がある。のみならず、最近においてはその危険が増大しつつある。こういう政治情勢の中では、また法理的にも、当然国益、公安というようなばく然とした抽象的なものの場合には、これは明確に限定すべきものである、より具体的に制限をすべきものであると考えます。そのときに、一例をあげてお尋ねいたしましょう。たとえば同じ未承認国であって、分裂国家、分裂政権がある場合でありましても、中国には同じ政府が旅券を出した。ところが、朝鮮民主主義人民共和国には、他の条件は全部同一であるけれども、それには同じ政府が同じ人に対して出さない。これは一体国益の立場で認めらるべき制限でございましょうか。私は、明らかなる乱用であり、偏向である、基本的人権の侵害であるというふうに考えるわけです。
 それから最後に、ちょっと先生のおことばで誤解があると思いますから、先生の名誉のために、質問をして明らかにしておいていただきたいことがある。行政執行者に国益、公安の拡大解釈や権利の乱用があった場合でも、裁判制度、訴訟等によって救済措置が認められておるのだということを盛んに先生はさっき言われましたが、それをエクスキューズとして、多少の拡大解釈や乱用もまたそれほど心配したことはないという印象を持たれるわけですよ、さっきの御意見の陳述では。先生はそういうお考えで言われたのではないと思うのです。裁判上あるいは訴訟上の救済制度があるから、多少の拡大解釈や乱用はそれほど気にしなくてもいい、そういうことでバランスがとれておるというふうに説明さるべきではなくて、それがあったにしても、やはり国益、公安というようなものの拡大解釈や権利の乱用が政府に行なわれることに対しては、民主法治国家においては厳格に制限すべきものである、そういう立場を明確にしていただきたいと思うのです。これは先生の学識あるいは立場から見て当然のことですが、先ほどの御陳述の中では、人によってはいささか誤解を招く印象を持ちましたので、これは友好的にちょっと質問の形で申し上げておきますから、先生の名誉のために、そういう救済措置があるからということによって権利の乱用、拡大解釈に対してルーズであってはいけないのだという点は、これはひとつ態度として明確にしておいていただきたいということを期待いたしまして、三つの点についてお尋ねをいたします。

発言情報

speech_id: 106103968X03019690703_019

発言者: 穗積七郎

speaker_id: 15879

日付: 1969-07-03

院: 衆議院

会議名: 外務委員会