外務委員会
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会
会議録情報#0
昭和四十四年七月三日(木曜日)
午前十時七分開議
出席委員
委員長 北澤 直吉君
理事 青木 正久君 理事 秋田 大助君
理事 藏内 修治君 理事 田中 榮一君
理事 山田 久就君 理事 戸叶 里子君
理事 穗積 七郎君 理事 曽祢 益君
宇都宮徳馬君 大村 襄治君
佐藤洋之助君 坂本三十次君
世耕 政隆君 永田 亮一君
橋本登美三郎君 福田 篤泰君
古内 広雄君 松田竹千代君
毛利 松平君 山下 元利君
石橋 政嗣君 木原津與志君
堂森 芳夫君 帆足 計君
松本 七郎君 山本 幸一君
渡部 一郎君
出席国務大臣
外 務 大 臣 愛知 揆一君
出席政府委員
内閣法制局第三
部長 荒井 勇君
外務大臣官房領
事移住部長 山下 重明君
委員外の出席者
外務大臣官房領
事移住部旅券課
長事務取扱 林 祐一君
外務省アジア局
外務参事官 金沢 正雄君
参 考 人
(日朝貿易会専
務理事) 相川理一郎君
参 考 人
(日本航空株式
会社会長) 伍堂 輝雄君
参 考 人
(一橋大学教
授) 田上 穰治君
参 考 人
(国際貿易促進
協会事務局員) 平井 博二君
―――――――――――――
七月三日
委員宇都宮徳馬君、小泉純也君、宮澤喜一君、
勝間田清一君及び伊藤惣助丸君辞任につき、そ
の補欠として古内広雄君、大村襄治君、山下元
利君、帆足計君及び渡部一郎君が議長の指名で
委員に選任された。
同日
委員大村襄治者、古内広雄君、山下元利君及び
帆足計君辞任につき、その補欠として小泉純也
君、宇都宮徳馬君、宮澤喜一君及び勝間田清一
君が議長の指名で委員に選任された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
〇二号)
――――◇―――――
この発言だけを見る →午前十時七分開議
出席委員
委員長 北澤 直吉君
理事 青木 正久君 理事 秋田 大助君
理事 藏内 修治君 理事 田中 榮一君
理事 山田 久就君 理事 戸叶 里子君
理事 穗積 七郎君 理事 曽祢 益君
宇都宮徳馬君 大村 襄治君
佐藤洋之助君 坂本三十次君
世耕 政隆君 永田 亮一君
橋本登美三郎君 福田 篤泰君
古内 広雄君 松田竹千代君
毛利 松平君 山下 元利君
石橋 政嗣君 木原津與志君
堂森 芳夫君 帆足 計君
松本 七郎君 山本 幸一君
渡部 一郎君
出席国務大臣
外 務 大 臣 愛知 揆一君
出席政府委員
内閣法制局第三
部長 荒井 勇君
外務大臣官房領
事移住部長 山下 重明君
委員外の出席者
外務大臣官房領
事移住部旅券課
長事務取扱 林 祐一君
外務省アジア局
外務参事官 金沢 正雄君
参 考 人
(日朝貿易会専
務理事) 相川理一郎君
参 考 人
(日本航空株式
会社会長) 伍堂 輝雄君
参 考 人
(一橋大学教
授) 田上 穰治君
参 考 人
(国際貿易促進
協会事務局員) 平井 博二君
―――――――――――――
七月三日
委員宇都宮徳馬君、小泉純也君、宮澤喜一君、
勝間田清一君及び伊藤惣助丸君辞任につき、そ
の補欠として古内広雄君、大村襄治君、山下元
利君、帆足計君及び渡部一郎君が議長の指名で
委員に選任された。
同日
委員大村襄治者、古内広雄君、山下元利君及び
帆足計君辞任につき、その補欠として小泉純也
君、宇都宮徳馬君、宮澤喜一君及び勝間田清一
君が議長の指名で委員に選任された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
〇二号)
――――◇―――――
北
北澤直吉#1
○北澤委員長 これより会議を開きます。
旅券法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
本日は、本案の参考人として相川理一郎君、伍堂輝雄君、田上穰治君、平井博二君の四名の御出席を願っております。ただいまお見えになっていない伍堂参考人は、後ほど御出席される予定になっております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。今回参考人各位の御意見を承ることになりまして、本案の審査に多大の参考になることを期待いたしておる次第でございます。各位におかれましては、忌憚のない御意見を御開陳くださるようお願い申し上げます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際はそのつど委員長の許可を得ることになっておりますので、さよう御了承願います。
議事の進め方につきましては、お一人十五分程度において順次御意見の御開陳を願い、その後委員から質疑が行なわれることになっておりますので、お答えを願いたいと存じます。
それでは、まず田上参考人からお願いいたします。田上参考人。
この発言だけを見る →旅券法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
本日は、本案の参考人として相川理一郎君、伍堂輝雄君、田上穰治君、平井博二君の四名の御出席を願っております。ただいまお見えになっていない伍堂参考人は、後ほど御出席される予定になっております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。今回参考人各位の御意見を承ることになりまして、本案の審査に多大の参考になることを期待いたしておる次第でございます。各位におかれましては、忌憚のない御意見を御開陳くださるようお願い申し上げます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際はそのつど委員長の許可を得ることになっておりますので、さよう御了承願います。
議事の進め方につきましては、お一人十五分程度において順次御意見の御開陳を願い、その後委員から質疑が行なわれることになっておりますので、お答えを願いたいと存じます。
それでは、まず田上参考人からお願いいたします。田上参考人。
田
田上穰治#2
○田上参考人 御下命によりまして、旅券法の改正法案につきまして、簡単に意見を申し上げたいと存じます。
第一は、旅券とは何か、旅券の法律学的な意味でございます。これは国家による自国民の国籍の証明ということが第一の意味でございますが、同時に、在外邦人、海外にある国民に対しまして国家の一般的最終的な保護の責任がある。この保護をするために、必要な限度において海外渡航に規制を加える、こういうものでございます。この点は、憲法第十三条に、一般的に「生命、自由及び幸福追求に判する國民の權利」これを立法その他国政の上で最大限の尊重を要するという基本的人権ということの保障からくるものでありまして、これはむろん取り締まるというふうな意味が重点ではございませんが、保護するために必要な、やむを得ない限度においてはある程度の制限も伴うという意味でございます。
この具体的なあらわれとしては、国民が出国をするときに、現在の法令でございますと、入管令によって証印を受けることになっておりますが、旅券の上に証印を受ける。そしてこれは、海外に渡航する場合、日本を出る場合に、国家がその国民に対して最終的な保護の責任があるということから生ずる一つの規制でございます。
もう一つは、やや具体的になりますが、渡航先として旅券に記載されている国々に対しまして、ある場合は相手国の事情によって査証を条件とすることもございますが、あるいはそうでない場合には、そのまま当然に相手国に対して入国を求め、また、その滞在中はわが国民を保護してもらうということの要請を含むことでございまして、その点からも若干の必要最小限度の規制を国民に対して加える、こういう性格のものと理解するのでございます。
次に、当面の改正法案につきまして、国交の回復しておりまする、いわゆる承認関係の国に対する渡航が、きわめて幅広く認められるようになったという点を指摘したいのでございます。これは同時に、未承認の国への渡航が制限されるという意味にも通ずるのでございますが、この制度は、改正法案におきまして、外務大臣が指定する範囲内の渡航先につきましては、法案の第三条第五世でございますが、数次往復用の旅券を出すことができる。その数次往復用というのは、五年以内ということになっているようでございます。それからもう一つが、渡航先の包括記載ができる地域の範囲というものが外務大臣の告示によって示されることになっております。法案の五条の二という条文でございます。これらのことから、結果といたしまして、表面にはあらわれておりませんが、承認関係の国に対する渡航が従来よりも一段と容易になるということがわかるのでございます。このような改正がどうして行なわれるかという点は、私にもよくわかりませんが、外国の制度を見ますと、従来の日本の数次往復用の旅券が二年以内というふうになっておったのは、あまりに期間が短過ぎる。アメリカにしてもカナダにしても西ドイツにいたしましても五年になっておるようでございまして、イギリスに至っては十年。また旅券の渡航先の記載につきましても、包括的な記載はイギリスをはじめとして若干の制限はつけられるようでありますが、カナダ、西ドイツ、フランスなどにおいても認められておるところであり、世界の趨勢でございまして、まことに当然だと私は考えるのでございます。
ただ、このことが、逆に未承認の国に対する渡航の制限となるのではないか、少なくともそのような印象が持たれるのでございます。これはしかし、相対的な、つまり承認関係の国に対する渡航がゆるやかになったということから比較して、そのように感ぜられるのでございまして、私の法案を読みました感じでは、未承認国への渡航は従来どおり、特に法案において制限を加えておるというふうには見られないのでございます。問題は、しかしながらそれにしても、何かそのような外務省の指定する範囲というふうなことにおきまして、差別が出てくるのはどういうものかという懸念もございますが……。
〔私語する者あり〕
この発言だけを見る →第一は、旅券とは何か、旅券の法律学的な意味でございます。これは国家による自国民の国籍の証明ということが第一の意味でございますが、同時に、在外邦人、海外にある国民に対しまして国家の一般的最終的な保護の責任がある。この保護をするために、必要な限度において海外渡航に規制を加える、こういうものでございます。この点は、憲法第十三条に、一般的に「生命、自由及び幸福追求に判する國民の權利」これを立法その他国政の上で最大限の尊重を要するという基本的人権ということの保障からくるものでありまして、これはむろん取り締まるというふうな意味が重点ではございませんが、保護するために必要な、やむを得ない限度においてはある程度の制限も伴うという意味でございます。
この具体的なあらわれとしては、国民が出国をするときに、現在の法令でございますと、入管令によって証印を受けることになっておりますが、旅券の上に証印を受ける。そしてこれは、海外に渡航する場合、日本を出る場合に、国家がその国民に対して最終的な保護の責任があるということから生ずる一つの規制でございます。
もう一つは、やや具体的になりますが、渡航先として旅券に記載されている国々に対しまして、ある場合は相手国の事情によって査証を条件とすることもございますが、あるいはそうでない場合には、そのまま当然に相手国に対して入国を求め、また、その滞在中はわが国民を保護してもらうということの要請を含むことでございまして、その点からも若干の必要最小限度の規制を国民に対して加える、こういう性格のものと理解するのでございます。
次に、当面の改正法案につきまして、国交の回復しておりまする、いわゆる承認関係の国に対する渡航が、きわめて幅広く認められるようになったという点を指摘したいのでございます。これは同時に、未承認の国への渡航が制限されるという意味にも通ずるのでございますが、この制度は、改正法案におきまして、外務大臣が指定する範囲内の渡航先につきましては、法案の第三条第五世でございますが、数次往復用の旅券を出すことができる。その数次往復用というのは、五年以内ということになっているようでございます。それからもう一つが、渡航先の包括記載ができる地域の範囲というものが外務大臣の告示によって示されることになっております。法案の五条の二という条文でございます。これらのことから、結果といたしまして、表面にはあらわれておりませんが、承認関係の国に対する渡航が従来よりも一段と容易になるということがわかるのでございます。このような改正がどうして行なわれるかという点は、私にもよくわかりませんが、外国の制度を見ますと、従来の日本の数次往復用の旅券が二年以内というふうになっておったのは、あまりに期間が短過ぎる。アメリカにしてもカナダにしても西ドイツにいたしましても五年になっておるようでございまして、イギリスに至っては十年。また旅券の渡航先の記載につきましても、包括的な記載はイギリスをはじめとして若干の制限はつけられるようでありますが、カナダ、西ドイツ、フランスなどにおいても認められておるところであり、世界の趨勢でございまして、まことに当然だと私は考えるのでございます。
ただ、このことが、逆に未承認の国に対する渡航の制限となるのではないか、少なくともそのような印象が持たれるのでございます。これはしかし、相対的な、つまり承認関係の国に対する渡航がゆるやかになったということから比較して、そのように感ぜられるのでございまして、私の法案を読みました感じでは、未承認国への渡航は従来どおり、特に法案において制限を加えておるというふうには見られないのでございます。問題は、しかしながらそれにしても、何かそのような外務省の指定する範囲というふうなことにおきまして、差別が出てくるのはどういうものかという懸念もございますが……。
〔私語する者あり〕
北
田
田上穰治#4
○田上参考人 これは、先ほどから申しておりまする旅券の制度が、憲法十三条の国民の権利、生命、自由その他の権利を国家が尊重しなければならない、最終的に国民の生命、自由保護の責任を負うということから、条約を結んでおる国々の場合には、比較的にその責任を果たすことが容易であり、相手国との間の条約上の権利義務がございますから、そのほうからこの保護についての裏づけができるわけでございます。また、承認関係国との友好を促進するというふうなことも、これも条約を尊重する義務というふうなことから、これは憲法九十八条第二項にございますが、当然のことでありまして、ただ、私の希望するところは、現在まだ条約を結んでいないと申しますか、いわゆる未承認国というものができるだけ近い将来に少なくなるように、すなわち、世界のほとんどの国とすみやかに国交が回復される、そうなれば、おのずからこのような差別が消滅するわけでございまして、そういうことを希望するものでございます。
次に、多少問題になるところとしまして、いわゆる横すべりに関する罰則という問題がございます。これは御承知のように、渡航先を追加する義務が、従来から旅券法第八条にございますが、これについてもしこの手続をとらないで、渡航先を明確にしないで、その国、その地に参ったような場合には、結局旅券法違反ということでございますが、従来はこれについて罰則がなかった。今回の改正法案には罰則がございます。こうなりますと、先ほど申しました包括的な渡航先の記載というふうに今回からなるといたしますと、未承認国へ渡航する場合に、渡航先がその点旅券に明示されていない。その結果、罰則が適用されるということになるわけでございます。つまり、この点が未承認国へ渡航することにつきまして、この改正法案が新しい制限を加えた、規制を加えたといえるところでございます。これにつきましては、しかしながら、もし罰則がないといたしますと、現行の制度であると、渡航先を追加する義務というのは、義務に違反してもほとんど道義的なものでありまして、法律的には何らの不利益を受けないという結果になるのでございます。つまり、旅券の没収もないし、あるいは将来における旅券の発給を拒否するということにもならない。したがって、これは単に法律的な義務というよりも、むしろ道義的な義務というふうになるわけでございます。しかしながら、渡航先を明確にするということは、初めに申し上げた旅券制度の一つの重要なポイントでございまして、外国に国民が出かけるときに、どこに行くか、あるいはいつ出かけるかということは、政府に対して明確にする義務がある。これに対して政府のほうでは、その渡航した国民について最終の保護責任を負う、こういうたてまえでございます。したがって、その意味におきまして、私は、罰則をつけることは必要であると考えております。
ただし、問題は二つございまして、その罰則の程度がどういうものか。一つの考え方は、先ほどは触れませんでしたが、外国に日本国民が出国をする場合に、旅券がないあるいは確認を受けないような場合には――確認というか、承認を受けない場合には、一年の懲役、十万円の罰金というのを限度とする相当きびしい罰則がございます。あるいは旅券を申請するときに、虚偽の事実を記載して申請したというふうな場合には、従来からこれまた一年の懲役、三万円の罰金を限度とする相当きびしい制裁がございます。それとの比較において、今回の罰則は三万円となっておりますが、どうかと申しますと、私はこれ以上きびしく罰する必要はない、それは、大体の考えが一種の行政上の秩序罰、秩序犯的なものと考えるのでございまして、刑事犯のごときものとはやや性格が違う。また、旅券制度の根本から申しましても、第一には、海外に出かける出国そのものについての規制というものがまず前提でございまして、その次に、いずれの国に、どこの地におもむくかということについて、政府と十分連絡をし、了解を得なければならないというのが第二段として考えられるわけでございますから、そういう意味においても、この旅券の証印なく、あるいは旅券なく出国する場合とは程度においてかなり違ったものであると思うのでございます。
それから第二点として、やや重要だと思いますのは、一度このような渡航先を隠して、いわゆる横すべりをいたしまして処罰された場合に、処罰となりますと、将来は旅券の発給を受けることができない、こういうおそれがございます。この点は、私は当局におかれて慎重に扱うべきだと思うのでございます。海外渡航の自由というのは憲法二十二条で保障されております。むろん、これは先ほどから言っておる旅券制度によって示されるように、公共の福祉に反する場合には制限を受けるということは私ども考えているのでございますが、さればといって、一度この点で渡航先追加を怠って横すべりをしたために罰せられて、罰金刑はそれほどではないと思いますが、それによって永久にその人が将来旅券の発給を拒否されるということになりますと、その限りでは、いずれの国に対しても渡航できなくなる。渡航の自由がその人についてはほとんど絶対といいますか、完全に奪われるようなおそれもないわけではございません。したがって、私は、この改正法案に反対ではなくて、罰則の必要は考えるのでありますが、しかし、これを旅券法十三条の第一項と結びつけまして、その場合に常に、このような違反があって罰せられたときに、当然旅券が将来は発給が拒否されるというふうにしてはならない、これは行き過ぎであると思うのでございます。たとえば再犯のおそれがないと認められるような場合には、旅券の発給も認めるべきではないか。現行法は旅券の発給を拒否することができるとありまして、拒否しなければならない、当然に拒否されるという条文ではございません。したがって、この法案なりあるいは法律の運用にあたりまして、慎重な考慮が払われるべきであり、もしこの点で解釈を誤りますと、むろんこれは訴訟において争われ、裁判所の審査を受けることになるわけでございますから、そういう意味において当局が軽たしく発給を拒否しないようにということをお願いしたいのでございます。
なお、もう少し時間がいただけるようでございますが、旅券法案の十九条に返納命令の規定がございまして、その中に、在留邦人の一般的信用または利益を著しく害しているために渡航の中止をさせ、帰国させる必要があると認めるときには、外国におりまする邦人、渡航者に対して旅券の返納を命ずることができるという条文が新しく加わったのでございます。これはいろいろ過去に、最近におきましても在留についての弊害があるようでございまして、外国におきましても、やはり日本の国民に対しては、公共の福祉に反する場合に、憲法で認められた自由について必要な限度における規制を加えることはできると考えるものでございます。したがって、滞在国、在留しておりまする国の一般国民の秩序を破壊するような場合は、これは滞在国の問題でございますから、わが国が法律によって取り締まるわけではございませんが、在留邦人並びに渡航者の保護のために必要な限度においては、公共の福祉の要請から、ある程度の制限を加えて、つまり、渡航した者が帰らなければならないようにするということもやむを得ないと思うのでございます。しかし、むろんこれはやはり国民の憲法二十二条の権利に関するものでありますから、訴訟上の救済は当然与えられるべきであって、それは帰国後において訴訟で争うことを許す。したがって、この点も、やはり当局が裁量権を乱用しないように、この法案の運用にあたりまして慎重な態度を希望するものでございます。外交上、むろんそういった場合には、在留しておりまする国との関係において、当局に裁量の余地が残ることはやむを得ない。外交上特に著しく害があるというふうな場合、そういう影響、関係も出てまいりますから、一般的信用、在留邦人の利益を著しく害するという場合には、単純な国内における行政処分とはやや違ったものでありますけれども、しかし、人権の保障に関係のあることは当然でありまして、そういう意味において、訴訟上裁判所による審査の対象となり得るものであり、したがって、この条文の運用にあたりまして慎重な配慮を希望するものでございます。
それでは時間が参ったようでございますから、あとは御質問がありましたらお答えしたいと思いますが、一点だけ繰り返し申しますけれども、憲法二十二条におきまして、海外渡航の自由というのが保障されている。それは一体どこに書いてあるかということですが、私どもは一応通説に従いまして、第二項の海外移住の自由というのが書いてございますが、それに含めて類推して憲法の保障を認めるものでございます。しかし、その場合に、第二項には「公共の福祉に反しない限り」ということが書いてない。二十二条第一項には書いてあるということから、一部の学説としては、第二項のほうは無制限の自由が保障されている、いかなる意味においても法律によって規制することはできないのだという説がありますけれども、判例また通説は、二十二条第二項の場合あるいは海外渡航の自由についても、一定の限度で、憲法十三条に示されておるような「公共の福祉に反しない限り」という一般の制約を受ける、かように見るのでございますが、この点は時間の関係で簡単にいたしまして、ただ現行法もそのようになっているということを申し上げておきます。
なお、もう一点は、法務省との関係がございますが、直接これは法案と関係ございませんが、外務省と法務省との関係、もし御質問ございましたらお答えいたしますが、時間になりましたので、一応これをもって私の意見を終わります。
この発言だけを見る →次に、多少問題になるところとしまして、いわゆる横すべりに関する罰則という問題がございます。これは御承知のように、渡航先を追加する義務が、従来から旅券法第八条にございますが、これについてもしこの手続をとらないで、渡航先を明確にしないで、その国、その地に参ったような場合には、結局旅券法違反ということでございますが、従来はこれについて罰則がなかった。今回の改正法案には罰則がございます。こうなりますと、先ほど申しました包括的な渡航先の記載というふうに今回からなるといたしますと、未承認国へ渡航する場合に、渡航先がその点旅券に明示されていない。その結果、罰則が適用されるということになるわけでございます。つまり、この点が未承認国へ渡航することにつきまして、この改正法案が新しい制限を加えた、規制を加えたといえるところでございます。これにつきましては、しかしながら、もし罰則がないといたしますと、現行の制度であると、渡航先を追加する義務というのは、義務に違反してもほとんど道義的なものでありまして、法律的には何らの不利益を受けないという結果になるのでございます。つまり、旅券の没収もないし、あるいは将来における旅券の発給を拒否するということにもならない。したがって、これは単に法律的な義務というよりも、むしろ道義的な義務というふうになるわけでございます。しかしながら、渡航先を明確にするということは、初めに申し上げた旅券制度の一つの重要なポイントでございまして、外国に国民が出かけるときに、どこに行くか、あるいはいつ出かけるかということは、政府に対して明確にする義務がある。これに対して政府のほうでは、その渡航した国民について最終の保護責任を負う、こういうたてまえでございます。したがって、その意味におきまして、私は、罰則をつけることは必要であると考えております。
ただし、問題は二つございまして、その罰則の程度がどういうものか。一つの考え方は、先ほどは触れませんでしたが、外国に日本国民が出国をする場合に、旅券がないあるいは確認を受けないような場合には――確認というか、承認を受けない場合には、一年の懲役、十万円の罰金というのを限度とする相当きびしい罰則がございます。あるいは旅券を申請するときに、虚偽の事実を記載して申請したというふうな場合には、従来からこれまた一年の懲役、三万円の罰金を限度とする相当きびしい制裁がございます。それとの比較において、今回の罰則は三万円となっておりますが、どうかと申しますと、私はこれ以上きびしく罰する必要はない、それは、大体の考えが一種の行政上の秩序罰、秩序犯的なものと考えるのでございまして、刑事犯のごときものとはやや性格が違う。また、旅券制度の根本から申しましても、第一には、海外に出かける出国そのものについての規制というものがまず前提でございまして、その次に、いずれの国に、どこの地におもむくかということについて、政府と十分連絡をし、了解を得なければならないというのが第二段として考えられるわけでございますから、そういう意味においても、この旅券の証印なく、あるいは旅券なく出国する場合とは程度においてかなり違ったものであると思うのでございます。
それから第二点として、やや重要だと思いますのは、一度このような渡航先を隠して、いわゆる横すべりをいたしまして処罰された場合に、処罰となりますと、将来は旅券の発給を受けることができない、こういうおそれがございます。この点は、私は当局におかれて慎重に扱うべきだと思うのでございます。海外渡航の自由というのは憲法二十二条で保障されております。むろん、これは先ほどから言っておる旅券制度によって示されるように、公共の福祉に反する場合には制限を受けるということは私ども考えているのでございますが、さればといって、一度この点で渡航先追加を怠って横すべりをしたために罰せられて、罰金刑はそれほどではないと思いますが、それによって永久にその人が将来旅券の発給を拒否されるということになりますと、その限りでは、いずれの国に対しても渡航できなくなる。渡航の自由がその人についてはほとんど絶対といいますか、完全に奪われるようなおそれもないわけではございません。したがって、私は、この改正法案に反対ではなくて、罰則の必要は考えるのでありますが、しかし、これを旅券法十三条の第一項と結びつけまして、その場合に常に、このような違反があって罰せられたときに、当然旅券が将来は発給が拒否されるというふうにしてはならない、これは行き過ぎであると思うのでございます。たとえば再犯のおそれがないと認められるような場合には、旅券の発給も認めるべきではないか。現行法は旅券の発給を拒否することができるとありまして、拒否しなければならない、当然に拒否されるという条文ではございません。したがって、この法案なりあるいは法律の運用にあたりまして、慎重な考慮が払われるべきであり、もしこの点で解釈を誤りますと、むろんこれは訴訟において争われ、裁判所の審査を受けることになるわけでございますから、そういう意味において当局が軽たしく発給を拒否しないようにということをお願いしたいのでございます。
なお、もう少し時間がいただけるようでございますが、旅券法案の十九条に返納命令の規定がございまして、その中に、在留邦人の一般的信用または利益を著しく害しているために渡航の中止をさせ、帰国させる必要があると認めるときには、外国におりまする邦人、渡航者に対して旅券の返納を命ずることができるという条文が新しく加わったのでございます。これはいろいろ過去に、最近におきましても在留についての弊害があるようでございまして、外国におきましても、やはり日本の国民に対しては、公共の福祉に反する場合に、憲法で認められた自由について必要な限度における規制を加えることはできると考えるものでございます。したがって、滞在国、在留しておりまする国の一般国民の秩序を破壊するような場合は、これは滞在国の問題でございますから、わが国が法律によって取り締まるわけではございませんが、在留邦人並びに渡航者の保護のために必要な限度においては、公共の福祉の要請から、ある程度の制限を加えて、つまり、渡航した者が帰らなければならないようにするということもやむを得ないと思うのでございます。しかし、むろんこれはやはり国民の憲法二十二条の権利に関するものでありますから、訴訟上の救済は当然与えられるべきであって、それは帰国後において訴訟で争うことを許す。したがって、この点も、やはり当局が裁量権を乱用しないように、この法案の運用にあたりまして慎重な態度を希望するものでございます。外交上、むろんそういった場合には、在留しておりまする国との関係において、当局に裁量の余地が残ることはやむを得ない。外交上特に著しく害があるというふうな場合、そういう影響、関係も出てまいりますから、一般的信用、在留邦人の利益を著しく害するという場合には、単純な国内における行政処分とはやや違ったものでありますけれども、しかし、人権の保障に関係のあることは当然でありまして、そういう意味において、訴訟上裁判所による審査の対象となり得るものであり、したがって、この条文の運用にあたりまして慎重な配慮を希望するものでございます。
それでは時間が参ったようでございますから、あとは御質問がありましたらお答えしたいと思いますが、一点だけ繰り返し申しますけれども、憲法二十二条におきまして、海外渡航の自由というのが保障されている。それは一体どこに書いてあるかということですが、私どもは一応通説に従いまして、第二項の海外移住の自由というのが書いてございますが、それに含めて類推して憲法の保障を認めるものでございます。しかし、その場合に、第二項には「公共の福祉に反しない限り」ということが書いてない。二十二条第一項には書いてあるということから、一部の学説としては、第二項のほうは無制限の自由が保障されている、いかなる意味においても法律によって規制することはできないのだという説がありますけれども、判例また通説は、二十二条第二項の場合あるいは海外渡航の自由についても、一定の限度で、憲法十三条に示されておるような「公共の福祉に反しない限り」という一般の制約を受ける、かように見るのでございますが、この点は時間の関係で簡単にいたしまして、ただ現行法もそのようになっているということを申し上げておきます。
なお、もう一点は、法務省との関係がございますが、直接これは法案と関係ございませんが、外務省と法務省との関係、もし御質問ございましたらお答えいたしますが、時間になりましたので、一応これをもって私の意見を終わります。
北
平
平井博二#6
○平井参考人 私は、現在日中貿易業界で実際に旅券を利用し、あるいは使用しております体験上から、この問題についての意見を申し上げたいと思います。
この法案を読みまして第一番に感じましたことは、手続の非常な簡素化ということでございますけれども、実は私ども日中貿易その他四カ国との貿易を行なっているものは、非常に複雑な手続をいままで要請されておりましたために、これが改正されるのであれば非常に賛成であるわけでありますけれども、実際にこの法案の内容を読んでみましたところ、実はそれに名前をかりまして、むしろ特定の国に対する差別を非常に強化しておるのではないか、もう一つは、特定の国に対する渡航をより一そうきびしくしておるのではないか、こういうふうに考えるものでございます。
具体的に申し上げますと、第一点は、五年間有効の数次旅券というものを今後全面的に取り入れる、こういうお話でございますが、これにつきましては、私どもはこの内容を読みまして、旅券法の部分的な改正ではなくて、むしろ新しい旅券法ではないかというふうに考えるわけでございます。いままで私どもが参りますたびに、毎回ごとに旅券の申請もしくはその前の複雑な趣意書の手続というものをやっておりましたのですが、今度五年間できるということは、五年間しなくてもよろしい、こういうことになるわけでありますから、いままでとは全く――山下部長のお話をかりますと、新しい制度というふうに私どもは感じております。その場合に、その考え方の根拠となっておりますものが、つまり、五年数次にわたって御本人に旅券を渡しつばなしで自由に使っていただく、こういう政府答弁がございました。これをお聞きしまして、なるほどいままでとは全く違うということを感じたわけです。したがいまして、この中で、五年間どこへ行かれてもかまわない、つまり、どこの国へも五年間は自由に行ける、こういうお考えでございます。ところが、私どもがよくこの法案の内容並びに外務委員会におきます大臣と山下さんの御答弁を伺いましたところ、それを実行しない国、つまり、五年間有効の数次旅券を出さない国というのがある。法文の上では、外務大臣が指定する範囲内の渡航先、こうなっておりますが、これを大臣のおことばをかりますと、北朝鮮と中国と北ベトナムと東ドイツ、こういうふうになっております。私どもは、どういうわけでこの四カ国がこのような差別を受けるのか、こういう気持ちをまず持つわけでございます。このおことばの中では、未承認ということばがございましたけれども、この四カ国以外にまだ未承認の国はあるはずでございます。なぜこの四カ国だけ差別するのかという点は、どうしても合点がまいりません。いろいろ私どものほうで検討いたしました結果、これはこういう立場ではないか。つまり、中華人民共和国を承認しないで、いわば台湾におります蒋介石グループを承認するという問題、それから朝鮮民主主義人民共和国政府を承認いたしませんで、いわゆる韓国を承認しておるという問題、それからベトナム民主共和国政府を承認しないで、いわゆる南ベトナムを承認しておる、こういう立場。最後にドイツ民主共和国政府を承認せず、ドイツ連邦共和国政府を承認している。この立場からこの四カ国が排除されている、こういうふうにしか考えられないのであります。したがいまして、この四カ国を差別するというお考えの基礎には、つまり、この四カ国に対しては絶対に承認しないという立場、そういう立場が貫かれているのではないかというふうに考えるわけであります。
たとえば現在までの旅券法を拝見いたしますと、やはり二年間有効の数次旅券がございました。しかし、この数次旅券はむしろ特定の用務ということが重点になっておりまして、特定の国に行くか行かないか、国による差別というものはむしろ書いてございません。今度の新しい旅券法の場合には、まさに国によって差別をするという考え方がここにまず第一に貫かれているのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。しかも、その差別の根拠と申しますものは、いま申し上げたような政府の態度というところから生まれているのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
第二点は、いわゆる渡航先の追加の問題でございます。いま申し上げたように、今度は旅券というものが五年間有効で、いわば商用であろうと観光であろうと、自由に行っていただく、こういう政府御答弁のお話のような内容でございますと、そしてまた、その記載の中に包括記載というのがございまして、全世界地域、こういうことになりますと、その旅券を持っておりますならば、全世界いついかなるときでも、相手国がよろしいといえば自由に行ける、こういうふうになっております。ところが、先ほど申し上げた四カ国に対しましては、従来どおりのシングル旅券ということでございますが、もちろん、そのうちにシングル旅券を出してない国もあると思いますが、このシングル旅券しか出さないということになりますと、先ほども田上先生のお話のいわゆる横すべりという問題でありますけれども、これは全世界地域の包括旅券を持っております者にとりましては、この四カ国を除いて横すべりというふうな問題は全然ございません。したがいまして、渡航先の追加というふうな問題が起こります国はどこかということを考えてみますと、これはいま申し上げた四カ国しかないのではないかというふうに考えられるわけであります。つまり、この考え方の中には、やはりこの四カ国に渡航しようとする場合、どうして全世界地域の中にこの四カ国を含めないのかという問題でございます。この四カ国をはずすということになりますと、五年有効の数次旅券を持っております者でも必ずその追加を申請しなければならない。現在私どもの体験しておりますことでは、この申請はとても一週間やそこらでは終わるものではなくて、二十日から四十日もかかっております。貿易業界にとりまして、現在しょっちゅう世界に出ております。そして貿易の必要上に応じまして、いろいろな国に飛ぶ必要はしょっちゅう起こっております。まして、国交のない国との貿易関係をどういうふうに発展させようか、このように民間は努力しておるのでありますから、いろいろのときに生じました必要性から、たとえば中国から朝鮮に行く、あるいはベトナムに行く、あるいは東ドイツに行く、こういうふうな問題は当然起こり得る問題でございます。したがいまして、これは商売上からいきましても、他の国と何ら変わりのない問題でございます。しかし、これでまいりますと、必ずこの四カ国で、たとえば北京におきまして――私どもは北京にしょっちゅう行っておりますけれども、そこのベトナムの代表部あるいは朝鮮の代表部、そういうふうなものとの接触の中から、急拠商売をしなければならないという場合になりましても、この法案からまいりますと、現在では二十日から四十日間、たとえば香港にまで出まして、そして申請をして、また戻ってきて行かなければならぬ、こういうふうなことになっておるのであります。特に横すべりの問題につきましては、いわゆる横すべりという考え方自身について申し上げたいと思います。と申しますのは、一体、横すべりということが悪いことなのかということでございます。私どもにしてみますと、相手国がどうぞいらっしゃい、こういうふうに言っております。ただ、たまたま私なら私の持っております旅券にその相手国の名前が書いてない。しかし、相手国はそれでもかまいませんからどうぞいらっしゃい。それに行くということがどうして悪いことなのか、私どもにはわかりません。片一方では、五年間有効の数次旅券で世界じゅうどこの国へもいらっしゃい、こういうふうな態度をとっていらっしゃりながら、この四カ国の中で、ある一国がどうぞいらっしゃいといったときに、旅券に書いてないからこれはいかぬことだ、こういうふうな考え方がどうしても私どもにはわからないのでございます。
先ほどやはり田上先生のおっしゃった罰則の問題でございます。考え方としてはいま申し上げたような点でございまして、それに対して罰則が全く新しくつけ加えられております。しかもこの罰則というものが、私ども法案を読みましたときは、ただ三万円の罰金と、こういうことかと思いまして、よく読んでみましたところ、たとえばそれに違反した場合には、旅券の返納命令、十九条が発動できるようになりました。また、旅券の効力無効宣言、つまり十八条が発動できるようになっております。さらにまた、没収することができる、二十五条の発動もできます。そしてまた、今後の旅券の発給やあるいはそのあとの渡航先の追加を禁止することもできる、十三条、こういうふうにまでなっております。どうしてこの横すべりという問題について、いままでよりもかくも格段に罰則を強化するのかという点が、私どもにはどうしてもわからないのでございます。戦前の旅券規則を拝見いたしましたけれども、これにもこのような罰則は書いてございません。したがいまして、私どもは、この罰則というものが現実にどこの国へ行こうとする人間に適用されるのかということを考えましたときに、これはこの四カ国に行く人間に対して適用される、こういうふうにしか考えられないのでございます。
それから第四点といたしましては、利益、公安条項の問題がございます。実はこれは別に改正前の法律と違っている点ではございませんけれども、私どもにしてみますと、この旅券法の第十三条の第一項五号のところに、一般旅券の発給制限の項目の中に、「日本国の利益又は公安を害する行為を行う」場合に旅券の発給を制限するというのがあります。これは私どもが調べました範囲内では、現在の旅券法が作成されましたときに、当時の島津政務局長の御答弁によりますと、「御懸念のように、そのときの政府の政治的な考えで左右されるということは万々ないわけであります。」こういう御答弁がございました。しかし、これがどこに適用されたかということを考えてみますと、私どもの記憶では、一九六六年の夏に、中国に青年交流で行こうという青年約六百人近くだったかと思いますが、この人たちに対する旅券の発給がこの条項によって制限されております。しかもその根拠は、当時の白幡移住局長の答弁によりますと、閣議の決定ということでございます。これは私どもの理解では、明白に政府の政治的な考えできまったとしか言いようがないように考えております。したがいまして、今度の改正でこのような利益、公安条項をなぜ削除しなかったのか、こういう点がまず考えられるわけでございます。
第五点といたしまして、先ほども田上先生の触れられました旅券の返納命令の中で、新しい項目がつけ加わっております。つまり、「渡航先における日本国民の一般的な信用又は利益」これは文章を読む限りにおきまして、あるいは御答弁の中であったかと思いますが、たとえばこれは破廉恥罪であるとかいうものであるというふうなお話も聞いております。しかし、先ほど申し上げました利益公安条項、こういう問題と考え合わせてみました場合に、それからあとで申し上げます渡航趣意書というような差別の問題と合わせて考えてみましたときに、この条項がどういうふうに利用されるか。たとえば私どもが北京におりまして、北京の日本人の集会なら集会もあります。その中で、現在の政府に対する批判的な言動をいろいろ出した、こういうふうな場合に、この国民の一般的な信用に該出する、こういう判定が下されないということにつきましては、いままでの実績から見まして、私どもはどうしてもこの保障が必要である、このように考えております。したがいまして、このような条文を新しくつくったということ、これが私どもいま申し上げたようなことに利用されるという懸念を非常に強く持っております。
第六番目に、新しくできました外国滞在届けというのもございます。これもいろいろお聞きしましたところ、動乱があったときに、そのときの邦人の動向をつかんでなければいかぬとか、こういうふうなお話がございました。しかし、これもこの旅券の名義人で外国に三カ月以上滞在するものについては、届けを当該もよりの領事館に出すということになっておりますが、この国交の回復してない四カ国の場合には、あるいはその他の未承認国の場合には、どの領事館をお使いになるか、これは存じませんけれども、こういうふうな届け出を出すということによりまして、実はこれは事務の円滑化というふうに説明の中で書いてありますけれども、これも先ほどから申し上げております横すべりをかくも厳重に禁止しているという問題、それから事前審査を依然として強硬にやっておるという問題、こういうことと考え合わせてみますと、これはいわば中国など四カ国に対する渡航者の動向を掌握し統制する、こういうふうにしか考えられないのでございます。
第七番目に、渡航趣意書の問題を申し上げます。これはおそらく御存じない方があるいはいらっしゃるかもしれません。これば私どもが中国などへ参ります場合に、法律にも何にもございませんけれども、外務省から共産圏渡航趣意書なるものを要求されます。しかも、これは十五通現在要求されております。この渡航趣意書というものはどの法律に基づくものかということを私どもは調べてみましたけれども、どこにもございません。ただ、昭和四十一年の広田移住局長の答弁によりますと、行政上の便宜でとっておるというようなお話がございました。これを出さなければ実は私どもは旅券申請すらできない状況に置かれております。現在中国などへ行きます場合には、十五通の渡航趣意書というものと、さらにそのほかに相手国の招待状、インビテーションを要求されております。これも十五通要求されております。このこまかい内容をもっと申し上げますとたくさん時間をとるかと思いますので、省きますけれども、この渡航趣意書というものをまず出しまして、現在では比較的多いのが三週間程度の期間を要しております。それから一カ月かかるというのがざらでございます。まあ、はっきり申し上げれば、私どもは航渡趣意書を出しまして、三週間から一カ月かかって、やっとほかの国に行く人と同じような人並みな扱いが受けられる、こういう状況でございます。したがいまして、これは法律にもございませんけれども、このような行政手段は直ちに撤回すべきである、このように考えております。
以上申し上げましたように、私どもは、事務手続を簡素化いたします、こういうことには賛成でございます。現在、日中間におきまして、春と秋に広東で交易会というのがございます。ここで大体年間およそ三億ドル前後の取引が行なわれております。ここへ毎回千人近い日本の商社なりあるいはメーカーの方々が行かれております。この毎回ごとにただいま申し上げたような渡航趣意書を出しまして、そしてまた、今度は新しい法案になりましても、年に二回必ず行くということがございますのに、ほかの国とは違って、五年数次はもらえないで毎回毎回申請しなければならない、こういうふうな状況に置かれておるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、事務の簡素化ということでは別にかまいませんけれども、それに籍口いたしまして、実はいま申し上げたような四カ国に対する差別が現実に非常に強化されておるという点、それから先ほど罰則その他でもありましたように、これを取り締まるという面が非常に強化されている。こういうことを強く感じますので、この法案に対しては私はほんとうに反対でございます。
これが私の意見でございます。
この発言だけを見る →この法案を読みまして第一番に感じましたことは、手続の非常な簡素化ということでございますけれども、実は私ども日中貿易その他四カ国との貿易を行なっているものは、非常に複雑な手続をいままで要請されておりましたために、これが改正されるのであれば非常に賛成であるわけでありますけれども、実際にこの法案の内容を読んでみましたところ、実はそれに名前をかりまして、むしろ特定の国に対する差別を非常に強化しておるのではないか、もう一つは、特定の国に対する渡航をより一そうきびしくしておるのではないか、こういうふうに考えるものでございます。
具体的に申し上げますと、第一点は、五年間有効の数次旅券というものを今後全面的に取り入れる、こういうお話でございますが、これにつきましては、私どもはこの内容を読みまして、旅券法の部分的な改正ではなくて、むしろ新しい旅券法ではないかというふうに考えるわけでございます。いままで私どもが参りますたびに、毎回ごとに旅券の申請もしくはその前の複雑な趣意書の手続というものをやっておりましたのですが、今度五年間できるということは、五年間しなくてもよろしい、こういうことになるわけでありますから、いままでとは全く――山下部長のお話をかりますと、新しい制度というふうに私どもは感じております。その場合に、その考え方の根拠となっておりますものが、つまり、五年数次にわたって御本人に旅券を渡しつばなしで自由に使っていただく、こういう政府答弁がございました。これをお聞きしまして、なるほどいままでとは全く違うということを感じたわけです。したがいまして、この中で、五年間どこへ行かれてもかまわない、つまり、どこの国へも五年間は自由に行ける、こういうお考えでございます。ところが、私どもがよくこの法案の内容並びに外務委員会におきます大臣と山下さんの御答弁を伺いましたところ、それを実行しない国、つまり、五年間有効の数次旅券を出さない国というのがある。法文の上では、外務大臣が指定する範囲内の渡航先、こうなっておりますが、これを大臣のおことばをかりますと、北朝鮮と中国と北ベトナムと東ドイツ、こういうふうになっております。私どもは、どういうわけでこの四カ国がこのような差別を受けるのか、こういう気持ちをまず持つわけでございます。このおことばの中では、未承認ということばがございましたけれども、この四カ国以外にまだ未承認の国はあるはずでございます。なぜこの四カ国だけ差別するのかという点は、どうしても合点がまいりません。いろいろ私どものほうで検討いたしました結果、これはこういう立場ではないか。つまり、中華人民共和国を承認しないで、いわば台湾におります蒋介石グループを承認するという問題、それから朝鮮民主主義人民共和国政府を承認いたしませんで、いわゆる韓国を承認しておるという問題、それからベトナム民主共和国政府を承認しないで、いわゆる南ベトナムを承認しておる、こういう立場。最後にドイツ民主共和国政府を承認せず、ドイツ連邦共和国政府を承認している。この立場からこの四カ国が排除されている、こういうふうにしか考えられないのであります。したがいまして、この四カ国を差別するというお考えの基礎には、つまり、この四カ国に対しては絶対に承認しないという立場、そういう立場が貫かれているのではないかというふうに考えるわけであります。
たとえば現在までの旅券法を拝見いたしますと、やはり二年間有効の数次旅券がございました。しかし、この数次旅券はむしろ特定の用務ということが重点になっておりまして、特定の国に行くか行かないか、国による差別というものはむしろ書いてございません。今度の新しい旅券法の場合には、まさに国によって差別をするという考え方がここにまず第一に貫かれているのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。しかも、その差別の根拠と申しますものは、いま申し上げたような政府の態度というところから生まれているのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
第二点は、いわゆる渡航先の追加の問題でございます。いま申し上げたように、今度は旅券というものが五年間有効で、いわば商用であろうと観光であろうと、自由に行っていただく、こういう政府御答弁のお話のような内容でございますと、そしてまた、その記載の中に包括記載というのがございまして、全世界地域、こういうことになりますと、その旅券を持っておりますならば、全世界いついかなるときでも、相手国がよろしいといえば自由に行ける、こういうふうになっております。ところが、先ほど申し上げた四カ国に対しましては、従来どおりのシングル旅券ということでございますが、もちろん、そのうちにシングル旅券を出してない国もあると思いますが、このシングル旅券しか出さないということになりますと、先ほども田上先生のお話のいわゆる横すべりという問題でありますけれども、これは全世界地域の包括旅券を持っております者にとりましては、この四カ国を除いて横すべりというふうな問題は全然ございません。したがいまして、渡航先の追加というふうな問題が起こります国はどこかということを考えてみますと、これはいま申し上げた四カ国しかないのではないかというふうに考えられるわけであります。つまり、この考え方の中には、やはりこの四カ国に渡航しようとする場合、どうして全世界地域の中にこの四カ国を含めないのかという問題でございます。この四カ国をはずすということになりますと、五年有効の数次旅券を持っております者でも必ずその追加を申請しなければならない。現在私どもの体験しておりますことでは、この申請はとても一週間やそこらでは終わるものではなくて、二十日から四十日もかかっております。貿易業界にとりまして、現在しょっちゅう世界に出ております。そして貿易の必要上に応じまして、いろいろな国に飛ぶ必要はしょっちゅう起こっております。まして、国交のない国との貿易関係をどういうふうに発展させようか、このように民間は努力しておるのでありますから、いろいろのときに生じました必要性から、たとえば中国から朝鮮に行く、あるいはベトナムに行く、あるいは東ドイツに行く、こういうふうな問題は当然起こり得る問題でございます。したがいまして、これは商売上からいきましても、他の国と何ら変わりのない問題でございます。しかし、これでまいりますと、必ずこの四カ国で、たとえば北京におきまして――私どもは北京にしょっちゅう行っておりますけれども、そこのベトナムの代表部あるいは朝鮮の代表部、そういうふうなものとの接触の中から、急拠商売をしなければならないという場合になりましても、この法案からまいりますと、現在では二十日から四十日間、たとえば香港にまで出まして、そして申請をして、また戻ってきて行かなければならぬ、こういうふうなことになっておるのであります。特に横すべりの問題につきましては、いわゆる横すべりという考え方自身について申し上げたいと思います。と申しますのは、一体、横すべりということが悪いことなのかということでございます。私どもにしてみますと、相手国がどうぞいらっしゃい、こういうふうに言っております。ただ、たまたま私なら私の持っております旅券にその相手国の名前が書いてない。しかし、相手国はそれでもかまいませんからどうぞいらっしゃい。それに行くということがどうして悪いことなのか、私どもにはわかりません。片一方では、五年間有効の数次旅券で世界じゅうどこの国へもいらっしゃい、こういうふうな態度をとっていらっしゃりながら、この四カ国の中で、ある一国がどうぞいらっしゃいといったときに、旅券に書いてないからこれはいかぬことだ、こういうふうな考え方がどうしても私どもにはわからないのでございます。
先ほどやはり田上先生のおっしゃった罰則の問題でございます。考え方としてはいま申し上げたような点でございまして、それに対して罰則が全く新しくつけ加えられております。しかもこの罰則というものが、私ども法案を読みましたときは、ただ三万円の罰金と、こういうことかと思いまして、よく読んでみましたところ、たとえばそれに違反した場合には、旅券の返納命令、十九条が発動できるようになりました。また、旅券の効力無効宣言、つまり十八条が発動できるようになっております。さらにまた、没収することができる、二十五条の発動もできます。そしてまた、今後の旅券の発給やあるいはそのあとの渡航先の追加を禁止することもできる、十三条、こういうふうにまでなっております。どうしてこの横すべりという問題について、いままでよりもかくも格段に罰則を強化するのかという点が、私どもにはどうしてもわからないのでございます。戦前の旅券規則を拝見いたしましたけれども、これにもこのような罰則は書いてございません。したがいまして、私どもは、この罰則というものが現実にどこの国へ行こうとする人間に適用されるのかということを考えましたときに、これはこの四カ国に行く人間に対して適用される、こういうふうにしか考えられないのでございます。
それから第四点といたしましては、利益、公安条項の問題がございます。実はこれは別に改正前の法律と違っている点ではございませんけれども、私どもにしてみますと、この旅券法の第十三条の第一項五号のところに、一般旅券の発給制限の項目の中に、「日本国の利益又は公安を害する行為を行う」場合に旅券の発給を制限するというのがあります。これは私どもが調べました範囲内では、現在の旅券法が作成されましたときに、当時の島津政務局長の御答弁によりますと、「御懸念のように、そのときの政府の政治的な考えで左右されるということは万々ないわけであります。」こういう御答弁がございました。しかし、これがどこに適用されたかということを考えてみますと、私どもの記憶では、一九六六年の夏に、中国に青年交流で行こうという青年約六百人近くだったかと思いますが、この人たちに対する旅券の発給がこの条項によって制限されております。しかもその根拠は、当時の白幡移住局長の答弁によりますと、閣議の決定ということでございます。これは私どもの理解では、明白に政府の政治的な考えできまったとしか言いようがないように考えております。したがいまして、今度の改正でこのような利益、公安条項をなぜ削除しなかったのか、こういう点がまず考えられるわけでございます。
第五点といたしまして、先ほども田上先生の触れられました旅券の返納命令の中で、新しい項目がつけ加わっております。つまり、「渡航先における日本国民の一般的な信用又は利益」これは文章を読む限りにおきまして、あるいは御答弁の中であったかと思いますが、たとえばこれは破廉恥罪であるとかいうものであるというふうなお話も聞いております。しかし、先ほど申し上げました利益公安条項、こういう問題と考え合わせてみました場合に、それからあとで申し上げます渡航趣意書というような差別の問題と合わせて考えてみましたときに、この条項がどういうふうに利用されるか。たとえば私どもが北京におりまして、北京の日本人の集会なら集会もあります。その中で、現在の政府に対する批判的な言動をいろいろ出した、こういうふうな場合に、この国民の一般的な信用に該出する、こういう判定が下されないということにつきましては、いままでの実績から見まして、私どもはどうしてもこの保障が必要である、このように考えております。したがいまして、このような条文を新しくつくったということ、これが私どもいま申し上げたようなことに利用されるという懸念を非常に強く持っております。
第六番目に、新しくできました外国滞在届けというのもございます。これもいろいろお聞きしましたところ、動乱があったときに、そのときの邦人の動向をつかんでなければいかぬとか、こういうふうなお話がございました。しかし、これもこの旅券の名義人で外国に三カ月以上滞在するものについては、届けを当該もよりの領事館に出すということになっておりますが、この国交の回復してない四カ国の場合には、あるいはその他の未承認国の場合には、どの領事館をお使いになるか、これは存じませんけれども、こういうふうな届け出を出すということによりまして、実はこれは事務の円滑化というふうに説明の中で書いてありますけれども、これも先ほどから申し上げております横すべりをかくも厳重に禁止しているという問題、それから事前審査を依然として強硬にやっておるという問題、こういうことと考え合わせてみますと、これはいわば中国など四カ国に対する渡航者の動向を掌握し統制する、こういうふうにしか考えられないのでございます。
第七番目に、渡航趣意書の問題を申し上げます。これはおそらく御存じない方があるいはいらっしゃるかもしれません。これば私どもが中国などへ参ります場合に、法律にも何にもございませんけれども、外務省から共産圏渡航趣意書なるものを要求されます。しかも、これは十五通現在要求されております。この渡航趣意書というものはどの法律に基づくものかということを私どもは調べてみましたけれども、どこにもございません。ただ、昭和四十一年の広田移住局長の答弁によりますと、行政上の便宜でとっておるというようなお話がございました。これを出さなければ実は私どもは旅券申請すらできない状況に置かれております。現在中国などへ行きます場合には、十五通の渡航趣意書というものと、さらにそのほかに相手国の招待状、インビテーションを要求されております。これも十五通要求されております。このこまかい内容をもっと申し上げますとたくさん時間をとるかと思いますので、省きますけれども、この渡航趣意書というものをまず出しまして、現在では比較的多いのが三週間程度の期間を要しております。それから一カ月かかるというのがざらでございます。まあ、はっきり申し上げれば、私どもは航渡趣意書を出しまして、三週間から一カ月かかって、やっとほかの国に行く人と同じような人並みな扱いが受けられる、こういう状況でございます。したがいまして、これは法律にもございませんけれども、このような行政手段は直ちに撤回すべきである、このように考えております。
以上申し上げましたように、私どもは、事務手続を簡素化いたします、こういうことには賛成でございます。現在、日中間におきまして、春と秋に広東で交易会というのがございます。ここで大体年間およそ三億ドル前後の取引が行なわれております。ここへ毎回千人近い日本の商社なりあるいはメーカーの方々が行かれております。この毎回ごとにただいま申し上げたような渡航趣意書を出しまして、そしてまた、今度は新しい法案になりましても、年に二回必ず行くということがございますのに、ほかの国とは違って、五年数次はもらえないで毎回毎回申請しなければならない、こういうふうな状況に置かれておるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、事務の簡素化ということでは別にかまいませんけれども、それに籍口いたしまして、実はいま申し上げたような四カ国に対する差別が現実に非常に強化されておるという点、それから先ほど罰則その他でもありましたように、これを取り締まるという面が非常に強化されている。こういうことを強く感じますので、この法案に対しては私はほんとうに反対でございます。
これが私の意見でございます。
北
相
相川理一郎#8
○相川参考人 今回の旅券法改正案について、私どもは少なからざる問題点を見出しております。しかし、ここでは私が参考人として本委員会に招請されました趣旨をそんたくいたしまして、朝鮮民主主義人民共和国への渡航に即し、改正案、特に第十三条一項五号の存続の問題と、いわゆる横すべり渡航の禁止の問題について、主として意見を申し述べます。
まず、今回の改正案を見ますと、立案者が改良点としてあげている数次往復用旅券の適用の拡大、渡航先の包括記載、代理人申請の承認、旅券の記載事項の訂正、旅券の合冊、査証欄の増補、旅券発給事務の自治体委任などがあります。しかし、これと表裏一体の関係におきまして、未承認国への渡航の差別・抑制、渡航先の追加あるいは横すべり渡航の禁止、旅券発給制限の強化、渡航者の海外活動の規制強化、行政官庁の裁量権の拡大など、無視できない改悪点も含まれていることを申し上げたいと思います。
つまり、一言で今回の改正案の特徴を申せば、手続面では緩和しているけれども、国民の海外渡航の権利という質的に重要な面では、かえって制限を強めているものであるといえます。
続いて、改正案の問題点を具体的に申し述べるならば、その第一点は、現行法の第十三条一項五号、つまり、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」には、旅券発給及び渡航先追加を制限するという規定が、何ら改められもせず、そのままの姿で改正案に存続されていることでございます。
御承知のとおりに、現行の旅券法が制定された当時の本委員会の審議において、二十六年十一月十六日ですが、この条項につき黒田委員は、このようなばくたる規定で渡航の権利が制限できるとすれば、必ずこの第五号が乱用されるおそれがあり、後日人権じゅうりんの問題を起こすと予言しておくと指摘をされておりますし、また大橋法務総裁も、この規定の運用に際しては乱用を戒めるというふうに確言されましたが、不幸にしてその後、この条項をめぐって幾つかの訴訟問題まで継起し、今日なおその乱用があとを断たないという、これは問題の条項でございます。
その実例を次に、現に私どもが体験をしている朝鮮への渡航に即して示し、乱用の実態を明らかにしたいと思います。
現在、私どもは商用で朝鮮へ行く場合、ソ連行き旅券にてナホトカ・イルクーツク経由もしくはモスクワ経由で行っております。東京からパリまたはアムステルダムを経由してモスクワに飛んで、それから朝鮮へ行ったというような実例もございます。外務省の資料によれば、昨年の朝鮮行き旅券の発給件数は十二とされております。しかし、これはすべて国会議員とその同行者だけで、実際には上述のような第三国行き旅券で朝鮮へ渡航している者が、そのほかに主として貿易商社を中心に年間約百名ほどあります。これらの人々は、政府が旅券を発給した国会議員とその同行者が、船で片道二日、船賃三万円程度で渡航している道のりを、お手元に資料を差し上げてございますが、その資料1のとおりに、地球を半周するほどの費用と時間をかけて渡航しなければならないのが実情です。なぜこんなばかなことをしなければならないかといいますと、朝鮮行きの旅券発給は差しとめられているからです。つまり、現行旅券法が制定されてから今日まで十八年近くになりますが、この間、外務省は、朝鮮への渡航については、ごく近年になりまして、国会議員とその同行者に限り平壌行き旅券を発給しているだけで、他の者には一切発給していないのです。この発給制限の法的根拠は、十三条一項五号に相当するからだといわれており、また、この条項以外に発給制限の根拠を見出すことはできません。
では、十三条の、著しくかつ直接に国家の利益または公安を害する行為とは一体何かといえば、大橋法務総裁は、同じ本委員会の審議において、これはたとえば刑法の国家の公益に関する罪、すなわち内乱罪、外患罪、国交に関する罪、また外国為替及び外国貿易管理法、麻薬取締法、銃砲刀剣類等所持取締令などに違反するおそれある行為であり、また、著しくかつ直接に害するというからには、これは原則として犯罪になるものに限るだろうと述べられております。しかし、はたして朝鮮に対する機械、設備を中心とした輸出の振興並びに重要な工業原料の輸入を行なうわが国の業者が、その貿易のために朝鮮へ渡航しようとする場合、その行為がいわれるような十三条一項五号に相当するといえるでしょうか。
大蔵省の通関統計によれば、資料2のとおりに、昨年朝鮮へは約七百二十品目、二千万ドルの輸出を行ない、また約九十品目、三千四百万ドルの輸入を実行いたしましたが、これらはいずれも当然ながら政府許可を得て取引されております。御承知のとおりに、政府は、相手国との取引が国益に反するというふうに認められた場合には、資料3のとおりに、輸出においては輸出貿易管理令第一条六項で、また輸入については輸入貿易管理令第十一条によって、その取引を承認しないか、または条件をつけることができるというふうにされておりますが、朝鮮との通常取引で許可にならなかった取引はほとんどないといってよいと思います。つまり、このことを法的にいえば、これらの取引はいずれも国益に反するものでないということが、通産省当局によって認定されているといってよいと思います。また、この認定は、通産省当局によってだけではなく、外務省当局によっても認められているのです。資料4のとおりに、同省は三十六年四月二十六日、韓国に対して亜北第一三二六号の口上書を送っておりますが、その中には、朝鮮との取引行為は経済的にばかりでなく、政治的にも、政府のいう政経分離の方針に合致し、自由諸国によっても支持されている旨が述べられております。これら二つの事実を考え合わせるならば、政府の許可を得、正規の手続を経て正々堂々と行なっている朝鮮との貿易のための渡航が、大橋法務総裁の言われる国益、公安を害する犯罪行為などに相当するものではなく、また、そのおそれがあると認めるに足りる相当な理由などにも決して該当しないことは明白であります。にもかかわらず、朝鮮への渡航には商用ですら十三条が一方的に適用され、十八年もの長期間、しかも全面的に旅券発給が停止されているのが実情であります。こうした裁量権の乱用の事例は、朝鮮だけではなく、かつて中国及び承認以前のソビエトへの渡航にも同様の問題がありましたことは御承知のとおりであります。
さらに申し上げれば、旅券発給制限は、いつの間にか国益、公安を害する者から特定地域への発給制限に拡大をされているという問題もあります。たとえば旅券法十四条では、外務大臣は、一三条によって旅券発給をしないと決定したときは、すみやかに理由を付した書面をもって申請者にその旨を通知しなければならないというふうに規定していますが、これまで朝鮮への旅券発給拒否について、そのような文書による理由の通知を受けた例はほとんどないと思います。この点について、外務省は、これまで朝鮮行きの渡航申請があったのは、国会議員とその同行者だけであって、それ以外ないと言われるでありましょうけれども、事実は、旅券課の窓口で、朝鮮への渡航については上部の承認がない限り旅券申請は受け付けられないということで拒否されている状況にあるのです。この経験は私自身も持っておりますし、他にも多くの事例があり、現在もあります。
このような事態は、一体どこからきているかと申しますれば、資料5のとおりに、現行旅券法が施行されておよそ四年を経た三十年十月二十四日、各省次官会議では、古屋貞雄議員らの朝鮮行き旅券の発給申請を機会に、朝鮮との貿易その他の交流を禁止する決定を行なったと伝えられています。この決定は、その後五年半もの間朝鮮との貿易を認めぬ根拠とされましたが、朝鮮との人の往来については、今日なおこの決定が法律に優先をしているところにあると思われます。このことは何を意味するかといえば、特定の地域、つまりこの場合は朝鮮ですが、特定の地域に対する旅券発給を制限することにほかならないと思うのであります。
ところで、旅券法には、国益、公安を害する者――つまりその個人です。その個人には旅券発給を制限できる十三条の規定があることは上述のとおりでありますけれども、特定の地域に対する渡航制限や旅券発給を制限する規定はございません。また、三条による旅券申請、五条による旅券発給の規定以外に、申請そのものを受け付けないという規定もございません。このように十三条の規定はいつの間にかかってに拡大され、すりかえられて、法律にないことが現実にはあたかも当然のごとく行なわれているのです。
そして、海外渡航は国民の基本的な権利だといわれながらも、朝鮮への渡航については、全く不法にもこの旅券法全体の適用が除外されるということが行なわれているのです。これは事の性質上、まことに重大なことだといわなければならないと思います。
「ジュリスト」という法律雑誌の四十一年十一月十五日号で、当時の外務省移住局旅券課の田中祥策氏は、いみじくもこの点につきまして次のように指摘しています。つまり「海外渡航は、居住、移転の自由に属する基本的人権の一つであるから、旅券の発給拒否はもとより行政官庁の自由裁量の事項ではなく、法律で規定されるべきものであり、これは戦後、旅券制度に関する基本法規が戦前のような外務省令ではなく、法律として制定されるに至った最も大きな理由の一つである」と書いていますが、上述の実例は、いずれも旅券法制定の正当な趣旨に反するものだと申さなければなりません。
こうした問題が発生いたしますのは、何といっても、十三条の規定により、外務大臣の認定に国民の基本的人権たる海外渡航の自由の禁止制限が一切ゆだねられているところによるのであって、およそ憲法上の自由を制限する場合に、十三条のようなばく然とし、かつ広義の標準に基づき、包括的な判断を行政庁に委任するようなことは許さるべきでないと考えます。
よって、私は、このゆえに、現行法の十三条一項五号をそのままの姿で残している改正案に賛成できぬものです。
また、かりに旅券発給を拒否できるかどうかの判断を外務大臣にゆだねるという考え方をとってみても、海外渡航の自由は憲法上の権利でありますから、行政処分によるその制限に対しては、権利救済のための行政手続の完備が必要です。
改正案は、現行法のこのような欠陥について何ら考慮が払われず、現行法同様、申請者の釈明などについて何らの規定も設けておらず、相変わらず行政庁による切り捨てごめんの余地を残しているので、この面からも、改正案には大きな欠陥があることを指摘せざるを得ません。
次に、改正案の問題点の第二点として、新しく設けられた第二十三条二項の罰則について申し上げます。
以上のように、朝鮮行き旅券が発給されぬため、私どもは、第三国行き旅券で一たん第三国へ行き、そこから渡航先の追加を受けずに朝鮮へ渡航しております。
現行法第八条では、渡航先の追加を受けようとする者は、外務大臣またはもよりの領事館にその申請をしなければならないとしています。しかし、朝鮮へは、もよりの領事館も追加渡航を認めぬし、また、旅券にその記載がなくても相手国は入国を認め、渡航目的が十分果たされているので、渡航先の追加を受けようとせずに朝鮮に渡航してきました。この行為自体は現行の第八条では違法とはならず、したがって、それに対する罰則もありません。
今回の改正案第八条では、これが「当該一般旅券に記載された渡航先以外の地域に渡航しようとする場合には、」渡航先の追加申請をしなければならないというように、つまり、現行法の「渡航先の追加を受けようとする者」という手続規定が、「渡航しようとする場合には、」というように、より明確に、実態的かつ網羅的に改められています。
この改正は重要です。なぜならば、今度は八条の手続を踏まずに追加渡航すれば、改正案に新しく加えられた二十二条二項一号によって罰金刑に処され、十三条一項四号によって自後の旅券発給を拒否される仕組みになっているからです。特に十三条の発給拒否条項には、渡航先、期限について何らの規定もないことに留意されなければなりません。また、八条の手続規定に違反したというだけで刑事罰に処するということは、著しく当を欠くものだといわなければならないと思うのです。
したがって、こうしたきびしい条項を持った改正案がそのまま制定されるとすれば、第一に、朝鮮の場合のように、ある地域に対し旅券が発給されなければ、その地域へはもうだれも行けなくなる。第二に、発給されても、それが渡航希望者すべてに無差別に発給されるのでなければ、発給を受けられぬ者は渡航できないという事態が生ずる。第三に、中国、ベトナムのように、現在は旅券が出ていても、他日情勢の変化とかというような問題で発給がとめられるようなことがあれば、その場合はだれも行けなくなってしまう等々の問題が発生することは必定で、二十三条二項一号の罰則がある限り、その危険性はまた十分にあるといわなければなりません。よって、私は、特定の国への渡航の道を完全にふさぐような危険性を持つこの罰則には全く同意できず、本改正案にはこの面からも賛成できません。
いずれにせよ、渡航の権利が権利として確立されないでいて、罰則を強化することは本末転倒で、立法上も大いなる問題を残すことになるものです。
以上により、私どもは、改正案に引き継がれた第十三条一項五号の適用が、現にとほうもなく拡大され、乱用されている事実と、これに加えて改正案に盛られた罰則、発給制限の拡大あるいは行政庁の裁量権の拡大が、将来国民の海外渡航の権利の一そうの制限につながる懸念を表明いたしまして、本改正案の本院における慎重審議を要望して、終わりたいと思います。
この発言だけを見る →まず、今回の改正案を見ますと、立案者が改良点としてあげている数次往復用旅券の適用の拡大、渡航先の包括記載、代理人申請の承認、旅券の記載事項の訂正、旅券の合冊、査証欄の増補、旅券発給事務の自治体委任などがあります。しかし、これと表裏一体の関係におきまして、未承認国への渡航の差別・抑制、渡航先の追加あるいは横すべり渡航の禁止、旅券発給制限の強化、渡航者の海外活動の規制強化、行政官庁の裁量権の拡大など、無視できない改悪点も含まれていることを申し上げたいと思います。
つまり、一言で今回の改正案の特徴を申せば、手続面では緩和しているけれども、国民の海外渡航の権利という質的に重要な面では、かえって制限を強めているものであるといえます。
続いて、改正案の問題点を具体的に申し述べるならば、その第一点は、現行法の第十三条一項五号、つまり、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」には、旅券発給及び渡航先追加を制限するという規定が、何ら改められもせず、そのままの姿で改正案に存続されていることでございます。
御承知のとおりに、現行の旅券法が制定された当時の本委員会の審議において、二十六年十一月十六日ですが、この条項につき黒田委員は、このようなばくたる規定で渡航の権利が制限できるとすれば、必ずこの第五号が乱用されるおそれがあり、後日人権じゅうりんの問題を起こすと予言しておくと指摘をされておりますし、また大橋法務総裁も、この規定の運用に際しては乱用を戒めるというふうに確言されましたが、不幸にしてその後、この条項をめぐって幾つかの訴訟問題まで継起し、今日なおその乱用があとを断たないという、これは問題の条項でございます。
その実例を次に、現に私どもが体験をしている朝鮮への渡航に即して示し、乱用の実態を明らかにしたいと思います。
現在、私どもは商用で朝鮮へ行く場合、ソ連行き旅券にてナホトカ・イルクーツク経由もしくはモスクワ経由で行っております。東京からパリまたはアムステルダムを経由してモスクワに飛んで、それから朝鮮へ行ったというような実例もございます。外務省の資料によれば、昨年の朝鮮行き旅券の発給件数は十二とされております。しかし、これはすべて国会議員とその同行者だけで、実際には上述のような第三国行き旅券で朝鮮へ渡航している者が、そのほかに主として貿易商社を中心に年間約百名ほどあります。これらの人々は、政府が旅券を発給した国会議員とその同行者が、船で片道二日、船賃三万円程度で渡航している道のりを、お手元に資料を差し上げてございますが、その資料1のとおりに、地球を半周するほどの費用と時間をかけて渡航しなければならないのが実情です。なぜこんなばかなことをしなければならないかといいますと、朝鮮行きの旅券発給は差しとめられているからです。つまり、現行旅券法が制定されてから今日まで十八年近くになりますが、この間、外務省は、朝鮮への渡航については、ごく近年になりまして、国会議員とその同行者に限り平壌行き旅券を発給しているだけで、他の者には一切発給していないのです。この発給制限の法的根拠は、十三条一項五号に相当するからだといわれており、また、この条項以外に発給制限の根拠を見出すことはできません。
では、十三条の、著しくかつ直接に国家の利益または公安を害する行為とは一体何かといえば、大橋法務総裁は、同じ本委員会の審議において、これはたとえば刑法の国家の公益に関する罪、すなわち内乱罪、外患罪、国交に関する罪、また外国為替及び外国貿易管理法、麻薬取締法、銃砲刀剣類等所持取締令などに違反するおそれある行為であり、また、著しくかつ直接に害するというからには、これは原則として犯罪になるものに限るだろうと述べられております。しかし、はたして朝鮮に対する機械、設備を中心とした輸出の振興並びに重要な工業原料の輸入を行なうわが国の業者が、その貿易のために朝鮮へ渡航しようとする場合、その行為がいわれるような十三条一項五号に相当するといえるでしょうか。
大蔵省の通関統計によれば、資料2のとおりに、昨年朝鮮へは約七百二十品目、二千万ドルの輸出を行ない、また約九十品目、三千四百万ドルの輸入を実行いたしましたが、これらはいずれも当然ながら政府許可を得て取引されております。御承知のとおりに、政府は、相手国との取引が国益に反するというふうに認められた場合には、資料3のとおりに、輸出においては輸出貿易管理令第一条六項で、また輸入については輸入貿易管理令第十一条によって、その取引を承認しないか、または条件をつけることができるというふうにされておりますが、朝鮮との通常取引で許可にならなかった取引はほとんどないといってよいと思います。つまり、このことを法的にいえば、これらの取引はいずれも国益に反するものでないということが、通産省当局によって認定されているといってよいと思います。また、この認定は、通産省当局によってだけではなく、外務省当局によっても認められているのです。資料4のとおりに、同省は三十六年四月二十六日、韓国に対して亜北第一三二六号の口上書を送っておりますが、その中には、朝鮮との取引行為は経済的にばかりでなく、政治的にも、政府のいう政経分離の方針に合致し、自由諸国によっても支持されている旨が述べられております。これら二つの事実を考え合わせるならば、政府の許可を得、正規の手続を経て正々堂々と行なっている朝鮮との貿易のための渡航が、大橋法務総裁の言われる国益、公安を害する犯罪行為などに相当するものではなく、また、そのおそれがあると認めるに足りる相当な理由などにも決して該当しないことは明白であります。にもかかわらず、朝鮮への渡航には商用ですら十三条が一方的に適用され、十八年もの長期間、しかも全面的に旅券発給が停止されているのが実情であります。こうした裁量権の乱用の事例は、朝鮮だけではなく、かつて中国及び承認以前のソビエトへの渡航にも同様の問題がありましたことは御承知のとおりであります。
さらに申し上げれば、旅券発給制限は、いつの間にか国益、公安を害する者から特定地域への発給制限に拡大をされているという問題もあります。たとえば旅券法十四条では、外務大臣は、一三条によって旅券発給をしないと決定したときは、すみやかに理由を付した書面をもって申請者にその旨を通知しなければならないというふうに規定していますが、これまで朝鮮への旅券発給拒否について、そのような文書による理由の通知を受けた例はほとんどないと思います。この点について、外務省は、これまで朝鮮行きの渡航申請があったのは、国会議員とその同行者だけであって、それ以外ないと言われるでありましょうけれども、事実は、旅券課の窓口で、朝鮮への渡航については上部の承認がない限り旅券申請は受け付けられないということで拒否されている状況にあるのです。この経験は私自身も持っておりますし、他にも多くの事例があり、現在もあります。
このような事態は、一体どこからきているかと申しますれば、資料5のとおりに、現行旅券法が施行されておよそ四年を経た三十年十月二十四日、各省次官会議では、古屋貞雄議員らの朝鮮行き旅券の発給申請を機会に、朝鮮との貿易その他の交流を禁止する決定を行なったと伝えられています。この決定は、その後五年半もの間朝鮮との貿易を認めぬ根拠とされましたが、朝鮮との人の往来については、今日なおこの決定が法律に優先をしているところにあると思われます。このことは何を意味するかといえば、特定の地域、つまりこの場合は朝鮮ですが、特定の地域に対する旅券発給を制限することにほかならないと思うのであります。
ところで、旅券法には、国益、公安を害する者――つまりその個人です。その個人には旅券発給を制限できる十三条の規定があることは上述のとおりでありますけれども、特定の地域に対する渡航制限や旅券発給を制限する規定はございません。また、三条による旅券申請、五条による旅券発給の規定以外に、申請そのものを受け付けないという規定もございません。このように十三条の規定はいつの間にかかってに拡大され、すりかえられて、法律にないことが現実にはあたかも当然のごとく行なわれているのです。
そして、海外渡航は国民の基本的な権利だといわれながらも、朝鮮への渡航については、全く不法にもこの旅券法全体の適用が除外されるということが行なわれているのです。これは事の性質上、まことに重大なことだといわなければならないと思います。
「ジュリスト」という法律雑誌の四十一年十一月十五日号で、当時の外務省移住局旅券課の田中祥策氏は、いみじくもこの点につきまして次のように指摘しています。つまり「海外渡航は、居住、移転の自由に属する基本的人権の一つであるから、旅券の発給拒否はもとより行政官庁の自由裁量の事項ではなく、法律で規定されるべきものであり、これは戦後、旅券制度に関する基本法規が戦前のような外務省令ではなく、法律として制定されるに至った最も大きな理由の一つである」と書いていますが、上述の実例は、いずれも旅券法制定の正当な趣旨に反するものだと申さなければなりません。
こうした問題が発生いたしますのは、何といっても、十三条の規定により、外務大臣の認定に国民の基本的人権たる海外渡航の自由の禁止制限が一切ゆだねられているところによるのであって、およそ憲法上の自由を制限する場合に、十三条のようなばく然とし、かつ広義の標準に基づき、包括的な判断を行政庁に委任するようなことは許さるべきでないと考えます。
よって、私は、このゆえに、現行法の十三条一項五号をそのままの姿で残している改正案に賛成できぬものです。
また、かりに旅券発給を拒否できるかどうかの判断を外務大臣にゆだねるという考え方をとってみても、海外渡航の自由は憲法上の権利でありますから、行政処分によるその制限に対しては、権利救済のための行政手続の完備が必要です。
改正案は、現行法のこのような欠陥について何ら考慮が払われず、現行法同様、申請者の釈明などについて何らの規定も設けておらず、相変わらず行政庁による切り捨てごめんの余地を残しているので、この面からも、改正案には大きな欠陥があることを指摘せざるを得ません。
次に、改正案の問題点の第二点として、新しく設けられた第二十三条二項の罰則について申し上げます。
以上のように、朝鮮行き旅券が発給されぬため、私どもは、第三国行き旅券で一たん第三国へ行き、そこから渡航先の追加を受けずに朝鮮へ渡航しております。
現行法第八条では、渡航先の追加を受けようとする者は、外務大臣またはもよりの領事館にその申請をしなければならないとしています。しかし、朝鮮へは、もよりの領事館も追加渡航を認めぬし、また、旅券にその記載がなくても相手国は入国を認め、渡航目的が十分果たされているので、渡航先の追加を受けようとせずに朝鮮に渡航してきました。この行為自体は現行の第八条では違法とはならず、したがって、それに対する罰則もありません。
今回の改正案第八条では、これが「当該一般旅券に記載された渡航先以外の地域に渡航しようとする場合には、」渡航先の追加申請をしなければならないというように、つまり、現行法の「渡航先の追加を受けようとする者」という手続規定が、「渡航しようとする場合には、」というように、より明確に、実態的かつ網羅的に改められています。
この改正は重要です。なぜならば、今度は八条の手続を踏まずに追加渡航すれば、改正案に新しく加えられた二十二条二項一号によって罰金刑に処され、十三条一項四号によって自後の旅券発給を拒否される仕組みになっているからです。特に十三条の発給拒否条項には、渡航先、期限について何らの規定もないことに留意されなければなりません。また、八条の手続規定に違反したというだけで刑事罰に処するということは、著しく当を欠くものだといわなければならないと思うのです。
したがって、こうしたきびしい条項を持った改正案がそのまま制定されるとすれば、第一に、朝鮮の場合のように、ある地域に対し旅券が発給されなければ、その地域へはもうだれも行けなくなる。第二に、発給されても、それが渡航希望者すべてに無差別に発給されるのでなければ、発給を受けられぬ者は渡航できないという事態が生ずる。第三に、中国、ベトナムのように、現在は旅券が出ていても、他日情勢の変化とかというような問題で発給がとめられるようなことがあれば、その場合はだれも行けなくなってしまう等々の問題が発生することは必定で、二十三条二項一号の罰則がある限り、その危険性はまた十分にあるといわなければなりません。よって、私は、特定の国への渡航の道を完全にふさぐような危険性を持つこの罰則には全く同意できず、本改正案にはこの面からも賛成できません。
いずれにせよ、渡航の権利が権利として確立されないでいて、罰則を強化することは本末転倒で、立法上も大いなる問題を残すことになるものです。
以上により、私どもは、改正案に引き継がれた第十三条一項五号の適用が、現にとほうもなく拡大され、乱用されている事実と、これに加えて改正案に盛られた罰則、発給制限の拡大あるいは行政庁の裁量権の拡大が、将来国民の海外渡航の権利の一そうの制限につながる懸念を表明いたしまして、本改正案の本院における慎重審議を要望して、終わりたいと思います。
北
伍
伍堂輝雄#10
○伍堂参考人 私は、このたびの旅券法の一部改正についての提案理由と申しますか、改正を必要とし、また改正されようといたしておりますポイントが、現在までの海外渡航につきまして、そのつど旅券の発行を受けなければ海外渡航ができない。例外的にと申しますか、比率的にはごくわずかのようではございますけれども、二年の数次旅行、ビジネスあるいは視察等の場合に、ある条件のもとで許可されておりますけれども、そういう事態が、現在の国際交流と申しますか、ビジネスの面におきましても、あるいは視察とか観光旅行ということが国際的に非常に大幅に増進いたしております中で、特に日本の海外渡航が、いわゆる渡航の自由化ということを契機といたしまして、大幅に伸びておるという時期に、このたび改正されようといたしておりますいわゆる一般的な旅行に対しても、五年間を有効期間とする数次旅券が発行できるということは、この海外渡航の非常に要請の高まっておる、しかも今後も大幅に伸びていこうという実態に即して、まことに適切な改正でもございますし、承るところによりますと、すでに数年前から国連の経済社会理事会あるいはOECD、あるいはICAOの国際会議からも勧告が出されておるようでもございますし、世界の先進国の例を見ましても、すでに三年あるいは五年の期間を有効とする旅券が発行され、それが活用されておるという事態から見ましても、見方によれば、おそ過ぎたくらいであって、早くそういう渡航が自由化され、そうしてそれぞれの手続が簡素化されるということは、まことに望ましいことだと考えます。
特に、旅行の目的がそのつどきめましても、それが変わる場合もあるというようなことを考慮いたしますと、このたび行く先の包括記載というようなことも許されるというような改正は、まことに時宜を得た改正だと考えております。
また、それに伴いましてのいわゆる事務の簡素化と申しますか、これは旅券を受ける者といたしましても、あるいは本人の出頭が場合によって免除されて、簡易な手続で発行される。そういう面では、旅券を受ける者、旅行をしようとする者の便益から申しましても、まことにけっこうでもございますし、また、行政の事務の簡素化、権限委譲をやることによりまして、地方庁でもそれができるというようなことは、事務の簡素化、合理化、効率化ということにもつながることで、そういう面からも、私どもとして、今度の改正はまことにけっこうな改正だと考えます。
あと、技術的な問題につきましては、私どもとしてもよくわからない点がございますが、いまの大きなポイントとしての簡素化、これが旅行いたします者にとっても非常に便益でもあり、今後もますますその必要が高まることに対応する施策としてけっこうでもあり、またそれの手続が簡素化されるということも、その面からもまことにけっこうな改正だと考えます。
以上で、私の意見の要点を申し上げまして、終わらせていただきます。
この発言だけを見る →特に、旅行の目的がそのつどきめましても、それが変わる場合もあるというようなことを考慮いたしますと、このたび行く先の包括記載というようなことも許されるというような改正は、まことに時宜を得た改正だと考えております。
また、それに伴いましてのいわゆる事務の簡素化と申しますか、これは旅券を受ける者といたしましても、あるいは本人の出頭が場合によって免除されて、簡易な手続で発行される。そういう面では、旅券を受ける者、旅行をしようとする者の便益から申しましても、まことにけっこうでもございますし、また、行政の事務の簡素化、権限委譲をやることによりまして、地方庁でもそれができるというようなことは、事務の簡素化、合理化、効率化ということにもつながることで、そういう面からも、私どもとして、今度の改正はまことにけっこうな改正だと考えます。
あと、技術的な問題につきましては、私どもとしてもよくわからない点がございますが、いまの大きなポイントとしての簡素化、これが旅行いたします者にとっても非常に便益でもあり、今後もますますその必要が高まることに対応する施策としてけっこうでもあり、またそれの手続が簡素化されるということも、その面からもまことにけっこうな改正だと考えます。
以上で、私の意見の要点を申し上げまして、終わらせていただきます。
北
北
北澤直吉#12
○北澤委員長 これより参考人に対する質疑に入りますが、伍堂参考人は正午までしか出席できませんので、伍堂参考人に対する質疑を先にお願いいたしたいと思います。
参考人に対する質疑の通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。
この発言だけを見る →参考人に対する質疑の通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。
穗
穗積七郎#13
○穗積委員 きょうは、実務家の皆さんがわざわざこの重要な基本的人権に関連をする法律審議に対して御出席をいただいて、非常に各方面から御意見をいただきましたことを厚く感謝いたします。いま伺いますと、伍堂さん、お忙しくて先にお帰りだそうですから、簡単に質問いたします。
いまおっしゃいましたことは、私ども、与党のみならず、野党全員賛成なんです。つまり、数次、長期にわたってグローバルな旅行ができるという原則、これは原則上も手続上もそういうふうにとりましたことは、これはもう当然なことであって、おそきに失したと実は思っているわけです。御参考までに申し上げておきますが、いまから四、五年前に、私どもは野党の立場ですけれども、この不合理な、何か旅行の自由を実行することを認めるか認めないか、政府の特権であるかのごとき封建的な、権力主義的な考え方はもう時代おくれだ。早くどこへでも自由に行けるようにする。これは先ほど御出席前でしたけれども、田上教授もおっしゃいましたが、われわれは、旅券または旅行に対する基本的なあれは同感なんです。すなわち、それは日本国民であるという身分証明書である、同時に、相手国に対してその保護の依頼を兼ねたものである、こういうふうに理解しております。これは許可証じゃないはずなんですよ。それはたとえば学生でいいますならば、学生の身分証明書のごときものであって、当然発給すべき、要求すべき権利がありますし、大学はこれに対して証明書を出すべき義務があるわけです、国民で国籍を認めておる以上は、学籍を認めておる以上は。それと同様な性質のものであるということをわれわれも理解いたしております。したがって、今度の数次、五カ年間の渡航先不特定な自由な旅行、旅行目的も自由である。それが商用であろうと、政務であろうと、あるいは観光であろうと、気晴らしであろうと、かってだということはいいと思うのです。伍堂さんもさすがに国際人でありますから、その合理性に従って、いまの改正の前段についてはこれをたいへんけっこうであるというふうにおっしゃったと思うのです。ところが、問題はそこにはないのです。いままでお述べになりました田上教授をはじめ皆さんの一致した御意見は、旅行なり旅券に対する基本的考え方は、ここにおります与野党の委員全部一致しております。ところが、その基本的な考えと手続に反する大きな誤ったものがここにくっついておることが問題になっておるわけなんです。その御精神からいけば、特に特定国、未承認国の中の、平井、相川両参考人から摘示されましたように、特に朝鮮、それから中国、北ベトナム、東独、この四カ国に対してきびしい差別取り扱いが行なわれておるわけですし、差別だけではなくて、もう非常な反人権的な制限が加えられている点でございます。これは内容についてはもう伍堂参考人もごらんいただいたことと思いますから、説明を申し上げません。そこの点についての御意見を聞くことができなかったので、国際人であるあなたの立場から見て、いま申しました旅行の自由と、それで旅券というものは身分証明書であり、相手国に対する保護の希望書のようなもの、依頼書のようなものですね。そういうことに立ちますならば、この四カ国に対して絶対に旅行は許さないという原則をやるなら、これは鎖国でございましょう。それも一つの政策かもしれません。ところが、一々点検をして、いろいろな制限、条件をつけまして、そしてこれに差別するということのいわれは、今日の国際環境、特に日本のような、国際的な環境の中においてのみ経済的にも政治的にも生きられるわれわれが、こういう差別をすることは時代おくれであり、不当である、こういうふうに考えるわけなんです。その点について、一点だけあなたの合理的な御判断による御意見を承っておきたいと思うのです。
この発言だけを見る →いまおっしゃいましたことは、私ども、与党のみならず、野党全員賛成なんです。つまり、数次、長期にわたってグローバルな旅行ができるという原則、これは原則上も手続上もそういうふうにとりましたことは、これはもう当然なことであって、おそきに失したと実は思っているわけです。御参考までに申し上げておきますが、いまから四、五年前に、私どもは野党の立場ですけれども、この不合理な、何か旅行の自由を実行することを認めるか認めないか、政府の特権であるかのごとき封建的な、権力主義的な考え方はもう時代おくれだ。早くどこへでも自由に行けるようにする。これは先ほど御出席前でしたけれども、田上教授もおっしゃいましたが、われわれは、旅券または旅行に対する基本的なあれは同感なんです。すなわち、それは日本国民であるという身分証明書である、同時に、相手国に対してその保護の依頼を兼ねたものである、こういうふうに理解しております。これは許可証じゃないはずなんですよ。それはたとえば学生でいいますならば、学生の身分証明書のごときものであって、当然発給すべき、要求すべき権利がありますし、大学はこれに対して証明書を出すべき義務があるわけです、国民で国籍を認めておる以上は、学籍を認めておる以上は。それと同様な性質のものであるということをわれわれも理解いたしております。したがって、今度の数次、五カ年間の渡航先不特定な自由な旅行、旅行目的も自由である。それが商用であろうと、政務であろうと、あるいは観光であろうと、気晴らしであろうと、かってだということはいいと思うのです。伍堂さんもさすがに国際人でありますから、その合理性に従って、いまの改正の前段についてはこれをたいへんけっこうであるというふうにおっしゃったと思うのです。ところが、問題はそこにはないのです。いままでお述べになりました田上教授をはじめ皆さんの一致した御意見は、旅行なり旅券に対する基本的考え方は、ここにおります与野党の委員全部一致しております。ところが、その基本的な考えと手続に反する大きな誤ったものがここにくっついておることが問題になっておるわけなんです。その御精神からいけば、特に特定国、未承認国の中の、平井、相川両参考人から摘示されましたように、特に朝鮮、それから中国、北ベトナム、東独、この四カ国に対してきびしい差別取り扱いが行なわれておるわけですし、差別だけではなくて、もう非常な反人権的な制限が加えられている点でございます。これは内容についてはもう伍堂参考人もごらんいただいたことと思いますから、説明を申し上げません。そこの点についての御意見を聞くことができなかったので、国際人であるあなたの立場から見て、いま申しました旅行の自由と、それで旅券というものは身分証明書であり、相手国に対する保護の希望書のようなもの、依頼書のようなものですね。そういうことに立ちますならば、この四カ国に対して絶対に旅行は許さないという原則をやるなら、これは鎖国でございましょう。それも一つの政策かもしれません。ところが、一々点検をして、いろいろな制限、条件をつけまして、そしてこれに差別するということのいわれは、今日の国際環境、特に日本のような、国際的な環境の中においてのみ経済的にも政治的にも生きられるわれわれが、こういう差別をすることは時代おくれであり、不当である、こういうふうに考えるわけなんです。その点について、一点だけあなたの合理的な御判断による御意見を承っておきたいと思うのです。
伍
伍堂輝雄#14
○伍堂参考人 ただいま御質問のございました、原則として、国民がいわゆる居住移転の自由という基本権を持って、またその意味におきまして海外の渡航についても自由に渡航ができるということは、望ましいことであり、原則的にはそのとおりだと思うのであります。ただ、私も条文をよく勉強しておりませんが、その旅券を出します目的は、確かに日本の政府としては、旅行した人のその行き先でのいろんな安全を保障するというような意味においても、やはりそれをチェックする意味で必要だろうと思いますし、また私、条文は何条でございますか、日本の国益に反するような場合には、そういう場合にもチェックできるというような規定があるやに聞いておるのでございますが、そういう面では、政府としてそういう国益に反するような場合にはこれを制限するということはやむを得ないのではないだろうか。ただ、ただいま御指摘がございました日本の国との承認関係にないと申しますか、国交が正常化されておらない国に対しては、冒頭に申し上げましたような意味で、いつ行かれるかわからないようなことでは、日本の国として、日本の国民の出先での身分の歩全保障とかいう問題についての処置をとりにくいというような面で、そのつど、行く場合にこれをやるということはやむを得ないんじゃないかというように考えますが、しかし、できるならそういう国に対しましても、できるだけ早い機会にそういうような条件が満たされて、国交が正常化されて、どこの国へでも自由に行けるような時期が一日も早く来ることを、私どもとしては希望をし、期待をいたしております。
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穗積七郎#15
○穗積委員 たいへん失礼ですけれども、あなたは法律案を読んでおられないわけです、一番大事な点を。おそらくは、私の推測ですが、いまの御答弁で、邪推であればおわびいたしますが、政府・与党の諸君は、今度の改正案が非常な進歩発展で改善であるという点を一言だけ強調してもらえばいいんだというようなことで御依頼したと思うのです。そういうことでありますと、先ほど言いましたように、あなたからさっきのようなことを伺わなくても、われわれはもう数年前からそのことを主張しておるのですから、十分わかっておるのです。わからないのが、その原則に全く反する、逆行するような、従来よりもよりきびしい罰則までつけて、しかもこれは刑事罰ですよ。そんなもの、あなた徳川時代のことですよ。私は三河の出身だけれども、徳川三百年の時代のことならさることながら、まあばかばかしくて聞いておられない、このような法律案というものは。これは何かといいますと、あなたに御参考までに申し上げておきますが、財界の方もこういうことを理解してもらわぬと困るから申し上げるのです。これは外務省の意見というよりは、むしろ法務省の中の公安の考え方なんですよ。治安立法なんです、これは。基本的人権を、国益または公安を理由として、これをかってに拡大解釈して、あるいは恣意的な解釈、断定によってこれを抑圧しよう、こういうことなんですね。こういう考え方は、これはいまここで内容について実は御意見を伺うべきでありますけれども、お読みにならないので、それを申し上げません。ただ、あなたが尊敬すべき財界のリベラリストでありますし、国際人でもあるし、それから同時に、きょうは日航の会長として来ていただいた。日本のごとき国際貿易に依存する度合いの高い国はないわけですね。これは日航の一会社の問題ではない。国民生活の経済的側面から見ましても、政治的側面から見ましても、国際関係に依存度の一番高い国だとぼくは思うのです。しかもその先端を行く日航の会長として、これは私はちょっとおかしいと思うのですね。旅行というものを、第一政府が許可権を持っておるなんというのはおかしいのですよ。必要があれば、本来はこれは届け出でいいのです。届け出事項だと思うのです、行政事務としては。政府の判断によって、どこへ行ってはいけないの、この人はいいが、この人は悪いなんということを言うべき筋合いのことではないんですよ。ただ、おっしゃるように、相手の国へ行って、これはどこの国の者であるか、それから多少外へ行けば身体、財産の安全等もございましょうから、それで依頼を兼ねた証明書なんですね。こういったものは届け出によって当然発給すべきことであって、私は、許可事項にしておるというのが第一おかしいとすら思っておるわけです。国際人であり、リベラリストであり、しかも国際的な日本航空の会長としてのお考えからいけば、原則的にだけお尋ねしたいのですよ。あと思想、信条、宗派あるいは経済的な立場なんということは、旅券の場合においては差別すべきことではないと思うのです。いかがでございましょう。その点だけお尋ねいたしまして、あまりこまかいことは、まだ読んでいただいておらぬようですから、これは日本航空としては重要な意味を持っているわけですから、ひとつ一ぺん御精読をいただきまして、おそくはありませんから、どうぞ政府・与党の諸君に、そのあやまちを指摘して、修正あるいは撤回するように御進言をいただきたいと思うのです。
この発言だけを見る →伍
伍堂輝雄#16
○伍堂参考人 私はいま申し上げましたように、いまの法律論としまして、これを政府が許可すべきものでないのか、あるいは証明書であるのだから届け出でいいのかという問題については、法律的に私勉強いたしておりませんので、どうあるべきかということはお答えいたしかねると思いますが、たとえば政治、信条その他でそれを区別するというようなことはないはずだと考えております。ただ、先ほど申し上げましたように、政府として、一応国民が海外に出た場合のお世話をするというような意味で、それがいつ行かれたかわからぬというような、相手国との関係のあるような場合には、それをそのつどやるということはやむを得ないのじゃないだろうか。それが許可であっていいのか、届け出でいいのかという法律論は、私としてちょっとお答えいたしかねます。
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穗積七郎#17
○穗積委員 それでは、ほかに伍堂参考人に御質問の方ありましょうか。与党の方、いいですか。――それじゃどうぞお帰りくださいませ。お忙しいところを……。ぜひひとつお読みになって――参考人としてあなたみたいな偉大な人にきていただいて、与野党一致しているいいことだけ言われたのでは価値がありませんから、ぜひどうぞ、お忙しいでしょうけれども、きょう寝ながらでも読んでいただきたい、一番大事なところを。
それでは、ほかの参考人の方に、恐縮ですが、逐次お尋ねさせていただきます。
まず、田上先生からお尋ねいたしますが、国、未承認国の問題が出ましたけれども、平井参考人から言われましたように、未承認国、承認国で区別してないのですよ。未承認国の中でまた区別が行なわれているわけです。これは明らかに政治的、特に政府の外交路線に関する、あるいは思想上の立場に立つ偏向であると思うのです、基本的人権の問題ですから。他のことでありますれば、未承認国と承認国との間において違いのあることぐらいは、われわれも国際常識として心得ております。しかし、この問題は、先生も言われましたように、また私が先ほど伍堂さんへの質問の中で申しましたように、旅行の自由の権利というものは、これは何人も侵すことのできない、近代民主主義社会における基本的人権でしょう。先生もそのように言われた。その場合に、承認国、未承認国について差別すべきものは何でしょうか。ないではありませんか。ただ、先ほど言ったように、外交保護権の義務が政府にあります。それを執行するのに非常に不便であるということだけではないでしょうか。しかもその相手国は、その旅行者に対してインビテーションを出しておるわけですよ。その写しは少なくとも外務省に届け出がされておるわけです。何月幾日から何月幾日まで招待をいたします、どうぞこれこれの方はおいでくださいということでございましょう。もしその国において日本の在外機関がないということであるならば、それはそれで幾らでも折衝のしようはあるわけなんです。承認しようとしまいと、その国のオーソリティーと存在を認めておる以上は、折衝のしようがある。旅行の自由をそこだけ全部禁止するという態度は政府自身かとっていないわけですから。承認国、未承認国の間における差別、昨日、法務委員会におきまして、出入国管理法問題の審議の中で、法務大臣あるいは外務大臣が、承認国、未承認国の間において取り扱い上の差別が生ずることはやむを得ざる当然のことである、こう言われた。それは事によりけりで認めますよ。旅行の自由の基本的人権の執行にあたって、何の差別の必要がございましょうか。その点を実はお伺いしたい。
それから、未承認国の間で分けておること、それから関連して申し上げれば、それは国益、公安を理由にしてこれをチェックしておるわけですね。国益、公安の判断は、一体何をメルクマールにして判断するのか、だれがするのか。時の政府、時の政党、与党、これのかってな御都合主義で判断をして、アトランダムに判断をして、そして基本的人権を侵害しててん然としておるということは許されないことだと思うのです。
そういう意味で、田上先生は実務家ではありませんから、はなはだ一般的、原則的なお尋ねで、ちょっとお答えいただくのにしにくいお尋ねのしかただと思いますけれども、学者であるということでありますから、実務は去りまして、敬意を表して、原則についてお尋ねするわけです。基本的人権の場合における未承認国と承認国との区別の必要がどこにあるか、残るのは保護規定だけだと思うのです。外交保護権の行使に便があるかないかということだけだと思うのですが、いかがなものでしょうか。
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まず、田上先生からお尋ねいたしますが、国、未承認国の問題が出ましたけれども、平井参考人から言われましたように、未承認国、承認国で区別してないのですよ。未承認国の中でまた区別が行なわれているわけです。これは明らかに政治的、特に政府の外交路線に関する、あるいは思想上の立場に立つ偏向であると思うのです、基本的人権の問題ですから。他のことでありますれば、未承認国と承認国との間において違いのあることぐらいは、われわれも国際常識として心得ております。しかし、この問題は、先生も言われましたように、また私が先ほど伍堂さんへの質問の中で申しましたように、旅行の自由の権利というものは、これは何人も侵すことのできない、近代民主主義社会における基本的人権でしょう。先生もそのように言われた。その場合に、承認国、未承認国について差別すべきものは何でしょうか。ないではありませんか。ただ、先ほど言ったように、外交保護権の義務が政府にあります。それを執行するのに非常に不便であるということだけではないでしょうか。しかもその相手国は、その旅行者に対してインビテーションを出しておるわけですよ。その写しは少なくとも外務省に届け出がされておるわけです。何月幾日から何月幾日まで招待をいたします、どうぞこれこれの方はおいでくださいということでございましょう。もしその国において日本の在外機関がないということであるならば、それはそれで幾らでも折衝のしようはあるわけなんです。承認しようとしまいと、その国のオーソリティーと存在を認めておる以上は、折衝のしようがある。旅行の自由をそこだけ全部禁止するという態度は政府自身かとっていないわけですから。承認国、未承認国の間における差別、昨日、法務委員会におきまして、出入国管理法問題の審議の中で、法務大臣あるいは外務大臣が、承認国、未承認国の間において取り扱い上の差別が生ずることはやむを得ざる当然のことである、こう言われた。それは事によりけりで認めますよ。旅行の自由の基本的人権の執行にあたって、何の差別の必要がございましょうか。その点を実はお伺いしたい。
それから、未承認国の間で分けておること、それから関連して申し上げれば、それは国益、公安を理由にしてこれをチェックしておるわけですね。国益、公安の判断は、一体何をメルクマールにして判断するのか、だれがするのか。時の政府、時の政党、与党、これのかってな御都合主義で判断をして、アトランダムに判断をして、そして基本的人権を侵害しててん然としておるということは許されないことだと思うのです。
そういう意味で、田上先生は実務家ではありませんから、はなはだ一般的、原則的なお尋ねで、ちょっとお答えいただくのにしにくいお尋ねのしかただと思いますけれども、学者であるということでありますから、実務は去りまして、敬意を表して、原則についてお尋ねするわけです。基本的人権の場合における未承認国と承認国との区別の必要がどこにあるか、残るのは保護規定だけだと思うのです。外交保護権の行使に便があるかないかということだけだと思うのですが、いかがなものでしょうか。
田
田上穰治#18
○田上参考人 御質問、まことにごもっともでありまして、私が承認関係国、未承認国と申しましたのは、たぶんそうなるだろうというふうなことで申し上げたのであります。別に法案に書いてあるわけではないと思います。
ただ、ただいまの御質問にお答えしなければなりませんが、海外渡航の自由、あるいはこれは広い意味において旅行、居住移転の自由にも結びつくものでありまして、人権の一つであることは当然でございます。しかし、その人権であるがゆえに無制限、いかなる意味においても規制できないというわけでないことは、もう御承知のとおりでございまして、それが憲法の上では公共の福祉に反しない限りというふうに私どもは解釈しております。もっとも、これは先ほど申し上げました二十二条の第一項の場合の「公共の福祉に反しない限り、」という意味ではないのでございまして、第二項の海外移住の自由という項の中にもし含めるといたしますと、直接その二十二条には限定がございませんが、これは判例、学説において大体一致しておるところで、一般的に憲法の保障する個人の自由についても、公共の福祉に反する場合に必要な最小限度において制限を加える可能性がある。具体的にどの条文、いかなる場合にということになりますと、さらに個別的に申し上げなければならないのでございますが、そういう意味において、結局ただいま御指摘の承認、未承認ということよりも、法律論としては、旅券法十三条の一項五号の解釈、運用に帰すると思うのでございます。この点で、結局承認なり未承認というふうなことの区別が若干結びついてくると思うのでございますが、未承認国に対して渡航するということが、当然にはいまの旅券発給拒否理由に該当するとは私も考えないのでございます。けれども、これに関連しまして、未承認といえば、つまり、条約関係、国交が回復されていないということになりますと、そこに承認関係の国とはかなり違ってくる。つまり、条約上の結びつきのある国でありますと、相手国におきましても相互に条約を尊重する義務がございます。そういう意味において、わが国がその相手国に対して、国民の保護のために必要な措置をとる、要求をするという場合に、これが相手国においてその要求を条約に従って慎重に考慮するということになるわけでございますが、条約関係のない国でありますと、その点が必ずしも明確でないし、当然には保障されない。そこで、御指摘のように、未承認の国の場合には、常にわが国民が渡航した場合に保護されないのかというと、そういう抽象論というか、一般的にはわれわれも考えないのでございます。しかし、これはやはりケース・バイ・ケースで考えなければならないのであって、一般論として、どこの国とか、あるいはいつの時代、時期とかいうふうなことを離れまして、一般的には、この承認関係の国に対する渡航とで区別が出てくることはやむを得ない。しかし、御指摘のとおりに、未承認の国に対する渡航であるから、一律に同じようにきびしく規制するとか、あるいは当然に渡航、旅券の発給を拒否する、こういう結論にはならないのでございますし、また判例におきましても一つ、東京地方裁判所の、三十五年でございましたか、判決がございますが、未承認国に対する渡航であるからということだけで、その理由のみをもって旅券発給を拒否するということは、ただいまの旅券法十三条一項五号の不当な拡大解釈であるというふうに申しております。下級審の判決でありますが、この趣旨には私も賛成でございます。しかし、だからといって、この未承認の国に対する渡航が承認関係の国に対する渡航と全く同じように扱われなければならないかというと、かなり条件というか、事情が違っている。その意味で、一方には五年間の数次往復旅券を出すということがありましても、一方の未承認国に対する場合にはシングルな旅券を出すというふうに、従来どおりの扱いといたしましても、この差別は必ずしも憲法の、法の下の平等に反しない。法の下の平等というのは、何ら差別する理由のない場合、つまり、不合理な差別の場合に憲法違反とするのでありまして、ただいま申し上げましたように、条約の関係によって、日本の国が、相手国に邦人が滞在するときに、これを保護するについての有利なある程度の保障のある場合と、そうでない場合とによりまして、差別を設ける一それも程度によりますが、ある程度の差別を設けることは、憲法違反と考えないのでございます。
それから、いろいろ御質問がこまかくございまして、一々お答えするのがあるいはできないというか、漏れているかと思いますが、その点はあとで御指摘いただきまして、外務当局、外務大臣が、ただいまの国益、公安条項でございますか、それを適用して旅券の発給を拒否するということになっておることは、非常に乱用のおそれがあるという御指摘でございます。私も、できるだけこのような規定は条件を明確にすることができれば、立法技術的に見て好ましいと思うのでございます。しかし、若干私の感想を申し上げますと、これは旅券法にはそれほどその点について特別な規定が見えないようでございますが、権利の救済制度につきましては、その後、御承知のように三十七年の十月以来、行政事件訴訟法の規定も国会を通り、実施されているのでありまして、たとえば、先ほどほかの参考人のほうの意見の中にもございましたが、中共あるいは北鮮に対する旅券の発給を申請した、ところが、外務当局のほうでははっきり拒否はしないけれども、しかし、その申請書の受理を容易にしないとかいうふうなお話がございます。事実を私は存じませんけれども、もしかりにそのような発給の申請をし、その申請を受け付けない、あるいは受け付けても直ちに措置をしない、拒否あるいは発給するということをきめない場合には、現行の訴訟法によりますと、不作為の違法確認の訴えという道も新しく開かれているわけでございます。かつての二十八、九年あるいは三十年代の初期に見られたようなそういう場合とは、救済の手続法はかなり改善されているわけでございます。また外務大臣の判断が誤っているという場合には、むろん御承知のように訴訟で争い、裁判所の審査を受けることができるのでありまして、この点は、若干入管法のたてまえとは違っていると思うのでございます。国民の場合と外国人の場合とにおきまして、憲法のほうから申しますと、二十二条が適用されるかされないかという相当の違いが出てまいりますが、旅券法の場合には、国民の海外渡航でございますから、むろん憲法の二十二条が正面から適用されまして、したがって、その行政当局の裁量権の乱用の疑いがある場合には、訴訟上の救済によってこれを直すことができるし、また、将来のそういう事態に対しては、判例によってかなり明確にその点の是正はできると思うのでございます。また、先ほどもちょっと申し上げましたが、承認、未承認という区別は、これは現実にはそういう国によって違いがあることは明瞭でございますが、ここでは、私は外交のほうの特別の専門というか、その立場ではございませんけれども、結局、先ほど申しました海外渡航の自由がどういう場合に制限されるか、あるいは現行の旅券法の十三条の規定などがはたして人権の規定から見て合憲であるかどうかというふうな問題につきましては、結局公共の福祉に反する場合はどういうことかということできまると思うのでありますが、国内の国民の生活につきましては、ほとんどの国法が適用される状況でございます。ところが、海外に渡航いたしますときには、その国民に対しては一般のわが国の国法はかなりの場合ほとんど適用されなくなる、身分的な属人的なものを除きまして適用されなくなる。そこで、公安関係という御指摘がちょっとあったかと思いますが、そういうものについては、これを一応旅券法のいまの発給拒否の条項の中に入れる必要があると私は考えるのでございます。また、国益ということばははなはだ不明確でございますが、これは日本の国家の利益ということでございますが、民主政治あるいは国民主権ということから見まして、国民の総意によって運営される日本の政治あるいはその意味における国家の立場というものが、特に外交関係におきまして――これも先ほどほかの方から御指摘があったかと思いますが、いまの中共でありますとか、北鮮のような場合でありますと、同じ国の中に別の政権が樹立されている。これをどういうふうに評価するかはむずかしい外交の問題でございまするけれども、そういう場合に、一方の政権とはわが国が条約で承認の関係にあるし、他方はそうでないといたしますと、その間の調整はどうするかということは、一般の未承認国の場合とかなり違うと思うのでございまして、そういう場合に、これはだから渡航する国民個人の保護の問題から少し角度が違ってくるのでございますが、渡航によって生ずる国益にはたして害がないかどうか、こういう判断でございますが、この点は非常に私としてはむずかしいし、またはなはだ遺憾なことだと思うのでございますけれども、現実には要するにまだ国交回復してない国がある間は、そういう差別が出てくる。その場合の判断は外務当局だけでなくて、結局これは同時に裁判所の審査ということも考慮いたしまして、そのような意味で慎重に考えなければならない、かように先ほどから申し上げたのでございます。あるいは答弁が不十分かと思いますが、なお御指摘をいただきましてお答えしたいと思います。
この発言だけを見る →ただ、ただいまの御質問にお答えしなければなりませんが、海外渡航の自由、あるいはこれは広い意味において旅行、居住移転の自由にも結びつくものでありまして、人権の一つであることは当然でございます。しかし、その人権であるがゆえに無制限、いかなる意味においても規制できないというわけでないことは、もう御承知のとおりでございまして、それが憲法の上では公共の福祉に反しない限りというふうに私どもは解釈しております。もっとも、これは先ほど申し上げました二十二条の第一項の場合の「公共の福祉に反しない限り、」という意味ではないのでございまして、第二項の海外移住の自由という項の中にもし含めるといたしますと、直接その二十二条には限定がございませんが、これは判例、学説において大体一致しておるところで、一般的に憲法の保障する個人の自由についても、公共の福祉に反する場合に必要な最小限度において制限を加える可能性がある。具体的にどの条文、いかなる場合にということになりますと、さらに個別的に申し上げなければならないのでございますが、そういう意味において、結局ただいま御指摘の承認、未承認ということよりも、法律論としては、旅券法十三条の一項五号の解釈、運用に帰すると思うのでございます。この点で、結局承認なり未承認というふうなことの区別が若干結びついてくると思うのでございますが、未承認国に対して渡航するということが、当然にはいまの旅券発給拒否理由に該当するとは私も考えないのでございます。けれども、これに関連しまして、未承認といえば、つまり、条約関係、国交が回復されていないということになりますと、そこに承認関係の国とはかなり違ってくる。つまり、条約上の結びつきのある国でありますと、相手国におきましても相互に条約を尊重する義務がございます。そういう意味において、わが国がその相手国に対して、国民の保護のために必要な措置をとる、要求をするという場合に、これが相手国においてその要求を条約に従って慎重に考慮するということになるわけでございますが、条約関係のない国でありますと、その点が必ずしも明確でないし、当然には保障されない。そこで、御指摘のように、未承認の国の場合には、常にわが国民が渡航した場合に保護されないのかというと、そういう抽象論というか、一般的にはわれわれも考えないのでございます。しかし、これはやはりケース・バイ・ケースで考えなければならないのであって、一般論として、どこの国とか、あるいはいつの時代、時期とかいうふうなことを離れまして、一般的には、この承認関係の国に対する渡航とで区別が出てくることはやむを得ない。しかし、御指摘のとおりに、未承認の国に対する渡航であるから、一律に同じようにきびしく規制するとか、あるいは当然に渡航、旅券の発給を拒否する、こういう結論にはならないのでございますし、また判例におきましても一つ、東京地方裁判所の、三十五年でございましたか、判決がございますが、未承認国に対する渡航であるからということだけで、その理由のみをもって旅券発給を拒否するということは、ただいまの旅券法十三条一項五号の不当な拡大解釈であるというふうに申しております。下級審の判決でありますが、この趣旨には私も賛成でございます。しかし、だからといって、この未承認の国に対する渡航が承認関係の国に対する渡航と全く同じように扱われなければならないかというと、かなり条件というか、事情が違っている。その意味で、一方には五年間の数次往復旅券を出すということがありましても、一方の未承認国に対する場合にはシングルな旅券を出すというふうに、従来どおりの扱いといたしましても、この差別は必ずしも憲法の、法の下の平等に反しない。法の下の平等というのは、何ら差別する理由のない場合、つまり、不合理な差別の場合に憲法違反とするのでありまして、ただいま申し上げましたように、条約の関係によって、日本の国が、相手国に邦人が滞在するときに、これを保護するについての有利なある程度の保障のある場合と、そうでない場合とによりまして、差別を設ける一それも程度によりますが、ある程度の差別を設けることは、憲法違反と考えないのでございます。
それから、いろいろ御質問がこまかくございまして、一々お答えするのがあるいはできないというか、漏れているかと思いますが、その点はあとで御指摘いただきまして、外務当局、外務大臣が、ただいまの国益、公安条項でございますか、それを適用して旅券の発給を拒否するということになっておることは、非常に乱用のおそれがあるという御指摘でございます。私も、できるだけこのような規定は条件を明確にすることができれば、立法技術的に見て好ましいと思うのでございます。しかし、若干私の感想を申し上げますと、これは旅券法にはそれほどその点について特別な規定が見えないようでございますが、権利の救済制度につきましては、その後、御承知のように三十七年の十月以来、行政事件訴訟法の規定も国会を通り、実施されているのでありまして、たとえば、先ほどほかの参考人のほうの意見の中にもございましたが、中共あるいは北鮮に対する旅券の発給を申請した、ところが、外務当局のほうでははっきり拒否はしないけれども、しかし、その申請書の受理を容易にしないとかいうふうなお話がございます。事実を私は存じませんけれども、もしかりにそのような発給の申請をし、その申請を受け付けない、あるいは受け付けても直ちに措置をしない、拒否あるいは発給するということをきめない場合には、現行の訴訟法によりますと、不作為の違法確認の訴えという道も新しく開かれているわけでございます。かつての二十八、九年あるいは三十年代の初期に見られたようなそういう場合とは、救済の手続法はかなり改善されているわけでございます。また外務大臣の判断が誤っているという場合には、むろん御承知のように訴訟で争い、裁判所の審査を受けることができるのでありまして、この点は、若干入管法のたてまえとは違っていると思うのでございます。国民の場合と外国人の場合とにおきまして、憲法のほうから申しますと、二十二条が適用されるかされないかという相当の違いが出てまいりますが、旅券法の場合には、国民の海外渡航でございますから、むろん憲法の二十二条が正面から適用されまして、したがって、その行政当局の裁量権の乱用の疑いがある場合には、訴訟上の救済によってこれを直すことができるし、また、将来のそういう事態に対しては、判例によってかなり明確にその点の是正はできると思うのでございます。また、先ほどもちょっと申し上げましたが、承認、未承認という区別は、これは現実にはそういう国によって違いがあることは明瞭でございますが、ここでは、私は外交のほうの特別の専門というか、その立場ではございませんけれども、結局、先ほど申しました海外渡航の自由がどういう場合に制限されるか、あるいは現行の旅券法の十三条の規定などがはたして人権の規定から見て合憲であるかどうかというふうな問題につきましては、結局公共の福祉に反する場合はどういうことかということできまると思うのでありますが、国内の国民の生活につきましては、ほとんどの国法が適用される状況でございます。ところが、海外に渡航いたしますときには、その国民に対しては一般のわが国の国法はかなりの場合ほとんど適用されなくなる、身分的な属人的なものを除きまして適用されなくなる。そこで、公安関係という御指摘がちょっとあったかと思いますが、そういうものについては、これを一応旅券法のいまの発給拒否の条項の中に入れる必要があると私は考えるのでございます。また、国益ということばははなはだ不明確でございますが、これは日本の国家の利益ということでございますが、民主政治あるいは国民主権ということから見まして、国民の総意によって運営される日本の政治あるいはその意味における国家の立場というものが、特に外交関係におきまして――これも先ほどほかの方から御指摘があったかと思いますが、いまの中共でありますとか、北鮮のような場合でありますと、同じ国の中に別の政権が樹立されている。これをどういうふうに評価するかはむずかしい外交の問題でございまするけれども、そういう場合に、一方の政権とはわが国が条約で承認の関係にあるし、他方はそうでないといたしますと、その間の調整はどうするかということは、一般の未承認国の場合とかなり違うと思うのでございまして、そういう場合に、これはだから渡航する国民個人の保護の問題から少し角度が違ってくるのでございますが、渡航によって生ずる国益にはたして害がないかどうか、こういう判断でございますが、この点は非常に私としてはむずかしいし、またはなはだ遺憾なことだと思うのでございますけれども、現実には要するにまだ国交回復してない国がある間は、そういう差別が出てくる。その場合の判断は外務当局だけでなくて、結局これは同時に裁判所の審査ということも考慮いたしまして、そのような意味で慎重に考えなければならない、かように先ほどから申し上げたのでございます。あるいは答弁が不十分かと思いますが、なお御指摘をいただきましてお答えしたいと思います。
穗
穗積七郎#19
○穗積委員 いろいろお尋ねをして、御意見を伺いたいことがありますけれども、時間も限りがありますから、二点だけ、ちょっといまの問題をしぼってお尋ねをいたします。
私が先ほど言いましたことはこういうことなんです。承認国と未承認国との間に国際条約上または外交上区別が生ずること、そんなことを一般的に議論をしておるのではないということ、これはこの点に限定をしていただきたいのです。すなわち、旅行の自由というものはその個人に属した権利です。その場合に、その個人個人の思想上の立場、政治的立場あるいは経済的その他の立場、宗教上の立場等々は差別をしないで、これは享受すべきものだと思います。その旅行自由の原則に限って見たときに、承認国と未承認国と差別をしなければならない条件、または手続上差別をしなければならないということは、何を基準にして差別をしなければならないかといえば、それは一つは保護の問題、すなわち、旅行者の立場に立っての保護に対する政府の責任あるいは義務といいますか、そういう立場から、手続上については承認国とは違った心配があるということで、すべての点を検討をして、そして本人の旅行の安全のために手続や条件を区別するということはありましても、そのときの基準は何かといえば、これはまさに旅行者自身の側に立っての安全保護のことだけを基準にすべきだと私は思いますが、その点を私はお尋ねしたかったのです。この場合における承認国と未承認国との区別は、旅行者自身の安全保障の立場に立ってのみ、これは手続上あるいは条件上の多少の区別はやむを得ない。やむを得ないけれども、その基準はいま言ったとおり、旅行者自身の保護のためである。それ以上の公安のものであるとか、あるいはその他の理由によって差別すべきではないと私は思うのですよ。
それから第二点は、国益、公安の問題です。こういうことですよ。その人が、さきに出たように、麻薬、あるいはその国でも禁止されておる賭博、あるいは淫売、または銃砲弾薬、そういうかの国でも禁止されておる、公安といいますか、公の秩序に非常に明瞭に悪い影響を及ぼすことを計画しておる旅行目的、そういうものは別ですよ。そうでなくて、その人が同じ目的で、同じ旅行の趣旨で旅券申請を出したときに、承認国ならば先ほど言ったような数次五カ年間の包括的な旅券が出る。それと同じ条件、同じ目的をもって未承認国へ行こうとしたときには、これは差別はあるべきではないと思うのです。まさに保護の問題だけになると思うのです。それで、公安の問題というのは、これはわが国の政治の歴史の中で、国益、公安を拡大解釈して基本的人権がじゅうりんされた苦い経験がある。のみならず、最近においてはその危険が増大しつつある。こういう政治情勢の中では、また法理的にも、当然国益、公安というようなばく然とした抽象的なものの場合には、これは明確に限定すべきものである、より具体的に制限をすべきものであると考えます。そのときに、一例をあげてお尋ねいたしましょう。たとえば同じ未承認国であって、分裂国家、分裂政権がある場合でありましても、中国には同じ政府が旅券を出した。ところが、朝鮮民主主義人民共和国には、他の条件は全部同一であるけれども、それには同じ政府が同じ人に対して出さない。これは一体国益の立場で認めらるべき制限でございましょうか。私は、明らかなる乱用であり、偏向である、基本的人権の侵害であるというふうに考えるわけです。
それから最後に、ちょっと先生のおことばで誤解があると思いますから、先生の名誉のために、質問をして明らかにしておいていただきたいことがある。行政執行者に国益、公安の拡大解釈や権利の乱用があった場合でも、裁判制度、訴訟等によって救済措置が認められておるのだということを盛んに先生はさっき言われましたが、それをエクスキューズとして、多少の拡大解釈や乱用もまたそれほど心配したことはないという印象を持たれるわけですよ、さっきの御意見の陳述では。先生はそういうお考えで言われたのではないと思うのです。裁判上あるいは訴訟上の救済制度があるから、多少の拡大解釈や乱用はそれほど気にしなくてもいい、そういうことでバランスがとれておるというふうに説明さるべきではなくて、それがあったにしても、やはり国益、公安というようなものの拡大解釈や権利の乱用が政府に行なわれることに対しては、民主法治国家においては厳格に制限すべきものである、そういう立場を明確にしていただきたいと思うのです。これは先生の学識あるいは立場から見て当然のことですが、先ほどの御陳述の中では、人によってはいささか誤解を招く印象を持ちましたので、これは友好的にちょっと質問の形で申し上げておきますから、先生の名誉のために、そういう救済措置があるからということによって権利の乱用、拡大解釈に対してルーズであってはいけないのだという点は、これはひとつ態度として明確にしておいていただきたいということを期待いたしまして、三つの点についてお尋ねをいたします。
この発言だけを見る →私が先ほど言いましたことはこういうことなんです。承認国と未承認国との間に国際条約上または外交上区別が生ずること、そんなことを一般的に議論をしておるのではないということ、これはこの点に限定をしていただきたいのです。すなわち、旅行の自由というものはその個人に属した権利です。その場合に、その個人個人の思想上の立場、政治的立場あるいは経済的その他の立場、宗教上の立場等々は差別をしないで、これは享受すべきものだと思います。その旅行自由の原則に限って見たときに、承認国と未承認国と差別をしなければならない条件、または手続上差別をしなければならないということは、何を基準にして差別をしなければならないかといえば、それは一つは保護の問題、すなわち、旅行者の立場に立っての保護に対する政府の責任あるいは義務といいますか、そういう立場から、手続上については承認国とは違った心配があるということで、すべての点を検討をして、そして本人の旅行の安全のために手続や条件を区別するということはありましても、そのときの基準は何かといえば、これはまさに旅行者自身の側に立っての安全保護のことだけを基準にすべきだと私は思いますが、その点を私はお尋ねしたかったのです。この場合における承認国と未承認国との区別は、旅行者自身の安全保障の立場に立ってのみ、これは手続上あるいは条件上の多少の区別はやむを得ない。やむを得ないけれども、その基準はいま言ったとおり、旅行者自身の保護のためである。それ以上の公安のものであるとか、あるいはその他の理由によって差別すべきではないと私は思うのですよ。
それから第二点は、国益、公安の問題です。こういうことですよ。その人が、さきに出たように、麻薬、あるいはその国でも禁止されておる賭博、あるいは淫売、または銃砲弾薬、そういうかの国でも禁止されておる、公安といいますか、公の秩序に非常に明瞭に悪い影響を及ぼすことを計画しておる旅行目的、そういうものは別ですよ。そうでなくて、その人が同じ目的で、同じ旅行の趣旨で旅券申請を出したときに、承認国ならば先ほど言ったような数次五カ年間の包括的な旅券が出る。それと同じ条件、同じ目的をもって未承認国へ行こうとしたときには、これは差別はあるべきではないと思うのです。まさに保護の問題だけになると思うのです。それで、公安の問題というのは、これはわが国の政治の歴史の中で、国益、公安を拡大解釈して基本的人権がじゅうりんされた苦い経験がある。のみならず、最近においてはその危険が増大しつつある。こういう政治情勢の中では、また法理的にも、当然国益、公安というようなばく然とした抽象的なものの場合には、これは明確に限定すべきものである、より具体的に制限をすべきものであると考えます。そのときに、一例をあげてお尋ねいたしましょう。たとえば同じ未承認国であって、分裂国家、分裂政権がある場合でありましても、中国には同じ政府が旅券を出した。ところが、朝鮮民主主義人民共和国には、他の条件は全部同一であるけれども、それには同じ政府が同じ人に対して出さない。これは一体国益の立場で認めらるべき制限でございましょうか。私は、明らかなる乱用であり、偏向である、基本的人権の侵害であるというふうに考えるわけです。
それから最後に、ちょっと先生のおことばで誤解があると思いますから、先生の名誉のために、質問をして明らかにしておいていただきたいことがある。行政執行者に国益、公安の拡大解釈や権利の乱用があった場合でも、裁判制度、訴訟等によって救済措置が認められておるのだということを盛んに先生はさっき言われましたが、それをエクスキューズとして、多少の拡大解釈や乱用もまたそれほど心配したことはないという印象を持たれるわけですよ、さっきの御意見の陳述では。先生はそういうお考えで言われたのではないと思うのです。裁判上あるいは訴訟上の救済制度があるから、多少の拡大解釈や乱用はそれほど気にしなくてもいい、そういうことでバランスがとれておるというふうに説明さるべきではなくて、それがあったにしても、やはり国益、公安というようなものの拡大解釈や権利の乱用が政府に行なわれることに対しては、民主法治国家においては厳格に制限すべきものである、そういう立場を明確にしていただきたいと思うのです。これは先生の学識あるいは立場から見て当然のことですが、先ほどの御陳述の中では、人によってはいささか誤解を招く印象を持ちましたので、これは友好的にちょっと質問の形で申し上げておきますから、先生の名誉のために、そういう救済措置があるからということによって権利の乱用、拡大解釈に対してルーズであってはいけないのだという点は、これはひとつ態度として明確にしておいていただきたいということを期待いたしまして、三つの点についてお尋ねをいたします。
田
田上穰治#20
○田上参考人 順序はちょっと正確でございませんが、最後に御指摘になりました、裁判所の救済、訴訟上の救済があるから拡大解釈もそれほど問題にならないというふうに申し上げたといたしますと――そういう意味でお聞きいただいたといたしますと、直すことをお許しいただきたいと存じます。
むろん、法律学の議論として、権利の乱用は違法である。でありますから、乱用にわたってならないことは当然でございます。あとになって裁判所が判決で取り消せば、それで関係当局の責任が免れるという意味にはとうてい解釈できないのでございまして、一つは、そういう乱用を未然に防ぐための立法的な措置、これも当然常識的にくふうしなければならない。と同時に、裁判所にすべてを依頼する、依存するというのでなくて、第一は、民主政治は国会の政治でございますから、国会において、国民の名において、そのような乱用のある場合には、行政当局に対して説明を求め、責任を追求するということは当然でございます。
それからなお、いろいろまだ御質問なりお尋ねを受けておりますが、未承認国ということばは、あるいは使わないほうがよろしいかと思いますが、いまの外務大臣の告示あるいは指定によりまして、数次の往復旅券を出さない場合、あるいは包括的な記載をしない、これは当然結びつくわけでございますが、そういう場合は法案で予想されておりますけれども、御指摘のように、たとえば北鮮であるとか――中共のほうは旅券の問題はだいぶ違うと思いますけれども、現実に北鮮には旅券がほとんど出されていない。国会議員以外には最近出されていないように……。(穗積委員「全然出て出ておりません」と呼ぶ)このことは、法律直接というよりは、私は、そういう法律上当然に旅券を出してはならないというふうな規定とは見ないのでありまして、つまり、未承認国であるから、あるいは北鮮であるからというだけで、何らのそれ以外の理由なく旅券を出していないとすれば、これは現在の旅券法が悪いというより、むしろ旅券法の趣旨に反する、かように私は考えるのでございます。旅券を北鮮なりあるいは未承認国であるから出さないという、そういう簡単な論理でありますというと、これはまあ判例、地裁の判決においても、それは認めておりませんし、私どももそういうふうに旅券法を解釈することはできないと見るのでございます。国益あるいは公安を害するということには当然にはならないと考えております。先ほども申し上げましたように、さらに一歩進んで、そういう承認、未承認というふうな区別がなくなるように、国交をできるだけ回復するという努力が必要だと考えますが、これは法律学の議論でございませんから、一応その程度にしておきたいと思います。
それから、いろいろ御質問がありました渡航者の個人的な政治あるいは宗教、思想、そういうまあ広い意味における一種の信条とでも申しますか、そういうことによって差別をして、ある特定の種類の信条を持っておる者に対しては旅券を出さないとかいうようなことは、これは私は憲法の規定、趣旨、原則に反する、憲法十四条の規定に反すると考えております。したがって、旅券法にもしそのような規定があれば、それは憲法違反でございますが、私は、旅券法はそのように考えていないのでございます。ただ、実際の運用において、あるいは御指摘のように、具体的な事例として、渡航を希望して旅券の発給を申請した者に対して、信条による差別、つまり、宗教、思想あるいは政治的な立場によって、それだけで差別をするということはできない。しかし、そのことが、繰り返しになりますが、あるいは日本の外交上の利益、まあこれも広く考えると、かなり乱用のおそれはありまするけれども、たとえば旅券の問題から離れまして、いろいろたとえば刑法の規定などを見ましても、個人の法益を保護する規定、あるいはその意味の罪の規定でございますが、それを離れまして、公益というか、あるいは外交上の利益、そういうものにつきましても、極端な場合、著しくこれを害する場合には、必ずしもその個人の法益を害しなくても罰則を適用することがございます。私の申しました公共の福祉に反する場合というのは、必ずしも渡航者一個人ではなくて、一応それを広げまして、在留法人の一般の利益、さらにこれをもう少し広げますと、国会あるいは――国会において条約は御承認になるわけでございますが、そういう最高機関としての国会が明確に決定された、条約を通して決定されたような外交の方針、こういうものに明らかに矛盾するような場合は、公共の福祉に反するものということが一応いえるのではないか。しかし、条約そのものも、常に絶対に正しいものであるとはいえませんけれども、一応われわれとしては、そういう意味において条約関係を著しく阻害するような場合には、これがひいて公共の福祉に反するということにもなるのではないか。こういう意味におきましては、条約の内容をさらに国会においても御検討いただかなければなりませんし、またできるだけ広く条約によるわが国との国交が回復するように持っていかなければならない、こういう前提はございますが、しかし、とにかく締結された条約につきましては、誠実にこれを順守するという憲法の規定から考えまして、条約関係を著しく阻害するような場合には、その渡航者個人の保護――厳密には結びつかないようでございますが、それはやはり公共の福祉に反するものとして、この海外渡航の自由、広くいえば、そういう旅行の自由というものを制限することも可能である。けれども、これもやはり常に必要最小限度という条件はございます。最大限度に人権を尊重するというのが憲法十三条でございますから、逆に公共の福祉に反するものを取り締まる、規制するという場合は、必要最小限度でなければならない。この判断を誤りますと、繰り返しになりますが、これは違法であり、したがって、訴訟上の救済と同時に、これは違法ということになれば、関係当局の責任ということも、民主政治の上から同時に問われる性質のものでございます。
この発言だけを見る →むろん、法律学の議論として、権利の乱用は違法である。でありますから、乱用にわたってならないことは当然でございます。あとになって裁判所が判決で取り消せば、それで関係当局の責任が免れるという意味にはとうてい解釈できないのでございまして、一つは、そういう乱用を未然に防ぐための立法的な措置、これも当然常識的にくふうしなければならない。と同時に、裁判所にすべてを依頼する、依存するというのでなくて、第一は、民主政治は国会の政治でございますから、国会において、国民の名において、そのような乱用のある場合には、行政当局に対して説明を求め、責任を追求するということは当然でございます。
それからなお、いろいろまだ御質問なりお尋ねを受けておりますが、未承認国ということばは、あるいは使わないほうがよろしいかと思いますが、いまの外務大臣の告示あるいは指定によりまして、数次の往復旅券を出さない場合、あるいは包括的な記載をしない、これは当然結びつくわけでございますが、そういう場合は法案で予想されておりますけれども、御指摘のように、たとえば北鮮であるとか――中共のほうは旅券の問題はだいぶ違うと思いますけれども、現実に北鮮には旅券がほとんど出されていない。国会議員以外には最近出されていないように……。(穗積委員「全然出て出ておりません」と呼ぶ)このことは、法律直接というよりは、私は、そういう法律上当然に旅券を出してはならないというふうな規定とは見ないのでありまして、つまり、未承認国であるから、あるいは北鮮であるからというだけで、何らのそれ以外の理由なく旅券を出していないとすれば、これは現在の旅券法が悪いというより、むしろ旅券法の趣旨に反する、かように私は考えるのでございます。旅券を北鮮なりあるいは未承認国であるから出さないという、そういう簡単な論理でありますというと、これはまあ判例、地裁の判決においても、それは認めておりませんし、私どももそういうふうに旅券法を解釈することはできないと見るのでございます。国益あるいは公安を害するということには当然にはならないと考えております。先ほども申し上げましたように、さらに一歩進んで、そういう承認、未承認というふうな区別がなくなるように、国交をできるだけ回復するという努力が必要だと考えますが、これは法律学の議論でございませんから、一応その程度にしておきたいと思います。
それから、いろいろ御質問がありました渡航者の個人的な政治あるいは宗教、思想、そういうまあ広い意味における一種の信条とでも申しますか、そういうことによって差別をして、ある特定の種類の信条を持っておる者に対しては旅券を出さないとかいうようなことは、これは私は憲法の規定、趣旨、原則に反する、憲法十四条の規定に反すると考えております。したがって、旅券法にもしそのような規定があれば、それは憲法違反でございますが、私は、旅券法はそのように考えていないのでございます。ただ、実際の運用において、あるいは御指摘のように、具体的な事例として、渡航を希望して旅券の発給を申請した者に対して、信条による差別、つまり、宗教、思想あるいは政治的な立場によって、それだけで差別をするということはできない。しかし、そのことが、繰り返しになりますが、あるいは日本の外交上の利益、まあこれも広く考えると、かなり乱用のおそれはありまするけれども、たとえば旅券の問題から離れまして、いろいろたとえば刑法の規定などを見ましても、個人の法益を保護する規定、あるいはその意味の罪の規定でございますが、それを離れまして、公益というか、あるいは外交上の利益、そういうものにつきましても、極端な場合、著しくこれを害する場合には、必ずしもその個人の法益を害しなくても罰則を適用することがございます。私の申しました公共の福祉に反する場合というのは、必ずしも渡航者一個人ではなくて、一応それを広げまして、在留法人の一般の利益、さらにこれをもう少し広げますと、国会あるいは――国会において条約は御承認になるわけでございますが、そういう最高機関としての国会が明確に決定された、条約を通して決定されたような外交の方針、こういうものに明らかに矛盾するような場合は、公共の福祉に反するものということが一応いえるのではないか。しかし、条約そのものも、常に絶対に正しいものであるとはいえませんけれども、一応われわれとしては、そういう意味において条約関係を著しく阻害するような場合には、これがひいて公共の福祉に反するということにもなるのではないか。こういう意味におきましては、条約の内容をさらに国会においても御検討いただかなければなりませんし、またできるだけ広く条約によるわが国との国交が回復するように持っていかなければならない、こういう前提はございますが、しかし、とにかく締結された条約につきましては、誠実にこれを順守するという憲法の規定から考えまして、条約関係を著しく阻害するような場合には、その渡航者個人の保護――厳密には結びつかないようでございますが、それはやはり公共の福祉に反するものとして、この海外渡航の自由、広くいえば、そういう旅行の自由というものを制限することも可能である。けれども、これもやはり常に必要最小限度という条件はございます。最大限度に人権を尊重するというのが憲法十三条でございますから、逆に公共の福祉に反するものを取り締まる、規制するという場合は、必要最小限度でなければならない。この判断を誤りますと、繰り返しになりますが、これは違法であり、したがって、訴訟上の救済と同時に、これは違法ということになれば、関係当局の責任ということも、民主政治の上から同時に問われる性質のものでございます。
穗
穗積七郎#21
○穗積委員 お尋ねした点が少しそれましたけれども、時間がまだ自由にあるわけではありませんから、少し前へ進めたいと思います。
そこで、お尋ねいたしますが、もう一点、先ほどお尋ねした中で、これは、先生は実務家でもないし、それから裁判官でもないわけですから、国益の乱用であるかないかということの判定をされることは、必ずしも答えることが適当でないとお考えになれば、お答えいただかぬでもいいわけですが、先ほど言ったように、同じ人が、同じ旅行目的で、同じ政府に対して、中国並びに朝鮮へ続いて旅行しようとした、便宜上ですね、北京から平壌へ続いて行くのだといって、申請をしたときに、中国には出したけれども、朝鮮民主主義人民共和国に対しては、渡航先として記載を拒否したということがありましたときに、これは国益の乱用ではないか、こう思うのです。その場合、旅行目的が初めから、非常に公安を害する、社会の秩序、善良な風俗に反することをどうも計画しておるようだ、その証拠は顕著であるというときには、これは別ですよ。許可さるべき範囲内における旅行目的、それで、中国には出したが、朝鮮には出さなかった、こういうことになりますと、朝鮮はいま罰則に触れる結果になるわけですね。こういうことは、私は国益解釈の乱用であると考えておりますが、それは具体的にどうお考えでございましょうか。
それから続いてお尋ねいたします。
さっき第二の重要な先生の御意見の中で、大事なのは横すべりと罰則の問題なんですね。これはもし誤解があると先生の名誉のためにいけませんから、ちょっと失礼ですが、申し上げておきます。横すべり制というのは、本人が従来の規定には罰則がなかったので、その抜け穴を利用して、それでつい渡航目的記載の追加または記載の手続をあえてしないで、脱法または違法な横すべりをやったんだということではないのです。横すべりといえば、そういう印象を持ちがち、違法あるいは脱法性を連想しがちでございますが、そうではないのです。全然出さない。同じ政府の中でも、通産なり大蔵が、大いに北朝鮮へ行って貿易をやってくれ、中国ともどんどん拡大してくれということを言っておる。それは責任ある態度で奨励されておる。私語ではないのです。それで今度は、外務省、法務省はこれをチェックする、こういうことなんですね。そうなれば、申請を出して発給するのは外務省ですから、外務省がうんと言わぬ以上いけないわけですよ。そこで、外務省は一体なぜかといえば、それがもし知れた場合には、韓国から、二分政権の中の一方の韓国から、わが国に対して適視だ、非友好的だといって文句をいってくるから困るのだ、こういうことになるわけですね。それ自身が私は国益判断で間違っておると思いますけれども、そういう事実ですから、実は外務省も、北朝鮮へ行く目的であるということは初めから知っているのですよ。事前に知っておるわけで、行った事実は、何か情報によって行ったことを知ったのではない。脱法または違法行為を知ったのではないのです。初めから知っておる。なぜそういうことをするかというと、日本政府が平壌または朝鮮民主主義人民共和国へ行くということのその渡航先を記載した旅券をその者に出すことは、韓国に対して敵視行為をとったということをみずから証明することになるから、黙って行ってくれ、もし文句が出たら、こっちはそんな者は許可した覚えはないのだというエクスキューズをもって韓国には説明する、そういうことがもう公然たる秘密といいますか、もっといえば、暗々裡の了解のもとで、便宜的にそういう方法がとられておったわけですね。
それからもう一つは、初めから渡航目的はなくても、中国へ行っておる最中に、たとえば商談上あるいは友好上の政治的の意見の交換の中で、隣国の朝鮮にもぜひ足を伸ばすことが貿易上必要になってきたということで行こうとする、そういう場合も多々生ずるわけです。そういうときに、届け出の義務は、これは旅行者に負ってもらっていいと思いますけれども、それに対して全然出さないという事実がずっとあったわけですね。その上での横すべりなんですよ。だから、横すべりは違法性もなければ、違法の主観も全然ない。犯意もないわけです。全然犯意はない。政府もそのことは知っておる。それで、むしろそれを奨励しておる。そういうことで行なわれてまいりましたから、罰則がないから、これで助かっておったわけですよ。今度はそれに対して、いまおっしゃるように、差別待遇をするのはあたりまえだ、国益の判断でこれは制限して解釈すべきであって、乱用は慎むべきであるけれども、それもまたやむを得ないという解釈になってまいりますと、そうすると、未承認国であるということ、それから外交上の国益、そのときの政府の方針に合致しないということ、国益に反するという理由で発給しない。それで行ったときには、一方的に罰則を受ける。本人は全然犯意はないですよ。こういうことがこの法律でできてくるわけですね。これは法の構造上から見て、もう全く矛盾撞着もはなはだしい法の構成であると私は考えるわけです。この横すべりと罰則問題についていかがでございましょうか。
この発言だけを見る →そこで、お尋ねいたしますが、もう一点、先ほどお尋ねした中で、これは、先生は実務家でもないし、それから裁判官でもないわけですから、国益の乱用であるかないかということの判定をされることは、必ずしも答えることが適当でないとお考えになれば、お答えいただかぬでもいいわけですが、先ほど言ったように、同じ人が、同じ旅行目的で、同じ政府に対して、中国並びに朝鮮へ続いて旅行しようとした、便宜上ですね、北京から平壌へ続いて行くのだといって、申請をしたときに、中国には出したけれども、朝鮮民主主義人民共和国に対しては、渡航先として記載を拒否したということがありましたときに、これは国益の乱用ではないか、こう思うのです。その場合、旅行目的が初めから、非常に公安を害する、社会の秩序、善良な風俗に反することをどうも計画しておるようだ、その証拠は顕著であるというときには、これは別ですよ。許可さるべき範囲内における旅行目的、それで、中国には出したが、朝鮮には出さなかった、こういうことになりますと、朝鮮はいま罰則に触れる結果になるわけですね。こういうことは、私は国益解釈の乱用であると考えておりますが、それは具体的にどうお考えでございましょうか。
それから続いてお尋ねいたします。
さっき第二の重要な先生の御意見の中で、大事なのは横すべりと罰則の問題なんですね。これはもし誤解があると先生の名誉のためにいけませんから、ちょっと失礼ですが、申し上げておきます。横すべり制というのは、本人が従来の規定には罰則がなかったので、その抜け穴を利用して、それでつい渡航目的記載の追加または記載の手続をあえてしないで、脱法または違法な横すべりをやったんだということではないのです。横すべりといえば、そういう印象を持ちがち、違法あるいは脱法性を連想しがちでございますが、そうではないのです。全然出さない。同じ政府の中でも、通産なり大蔵が、大いに北朝鮮へ行って貿易をやってくれ、中国ともどんどん拡大してくれということを言っておる。それは責任ある態度で奨励されておる。私語ではないのです。それで今度は、外務省、法務省はこれをチェックする、こういうことなんですね。そうなれば、申請を出して発給するのは外務省ですから、外務省がうんと言わぬ以上いけないわけですよ。そこで、外務省は一体なぜかといえば、それがもし知れた場合には、韓国から、二分政権の中の一方の韓国から、わが国に対して適視だ、非友好的だといって文句をいってくるから困るのだ、こういうことになるわけですね。それ自身が私は国益判断で間違っておると思いますけれども、そういう事実ですから、実は外務省も、北朝鮮へ行く目的であるということは初めから知っているのですよ。事前に知っておるわけで、行った事実は、何か情報によって行ったことを知ったのではない。脱法または違法行為を知ったのではないのです。初めから知っておる。なぜそういうことをするかというと、日本政府が平壌または朝鮮民主主義人民共和国へ行くということのその渡航先を記載した旅券をその者に出すことは、韓国に対して敵視行為をとったということをみずから証明することになるから、黙って行ってくれ、もし文句が出たら、こっちはそんな者は許可した覚えはないのだというエクスキューズをもって韓国には説明する、そういうことがもう公然たる秘密といいますか、もっといえば、暗々裡の了解のもとで、便宜的にそういう方法がとられておったわけですね。
それからもう一つは、初めから渡航目的はなくても、中国へ行っておる最中に、たとえば商談上あるいは友好上の政治的の意見の交換の中で、隣国の朝鮮にもぜひ足を伸ばすことが貿易上必要になってきたということで行こうとする、そういう場合も多々生ずるわけです。そういうときに、届け出の義務は、これは旅行者に負ってもらっていいと思いますけれども、それに対して全然出さないという事実がずっとあったわけですね。その上での横すべりなんですよ。だから、横すべりは違法性もなければ、違法の主観も全然ない。犯意もないわけです。全然犯意はない。政府もそのことは知っておる。それで、むしろそれを奨励しておる。そういうことで行なわれてまいりましたから、罰則がないから、これで助かっておったわけですよ。今度はそれに対して、いまおっしゃるように、差別待遇をするのはあたりまえだ、国益の判断でこれは制限して解釈すべきであって、乱用は慎むべきであるけれども、それもまたやむを得ないという解釈になってまいりますと、そうすると、未承認国であるということ、それから外交上の国益、そのときの政府の方針に合致しないということ、国益に反するという理由で発給しない。それで行ったときには、一方的に罰則を受ける。本人は全然犯意はないですよ。こういうことがこの法律でできてくるわけですね。これは法の構造上から見て、もう全く矛盾撞着もはなはだしい法の構成であると私は考えるわけです。この横すべりと罰則問題についていかがでございましょうか。
田
田上穰治#22
○田上参考人 お答えをいたします。
ただいまの御指摘の事実は、私よく存じません。で、もしそういう事実であるとすれば、私もはなはだ不合理があるというふうに考えるものでございます。一つは、先ほどちょっと私申しましたように、この罰則はむしろ秩序罰的な、秩序犯というか、行政上の秩序犯ということであって、つまり、届け出を怠った。あるいはいろいろなほかの許可制の場合にも、許可の手続をとらなかった場合、実際に実質的には社会の一般公衆に不利益を与えない、あるいはその他実害のない場合であっても、その手続を怠ったということによって罰せられる、こういう制度はかなりございます。むろん、それは刑罰犯罪と申しましても、性質はかなり違うわけでございまして、刑法に書いてあるような犯罪とは、刑事犯的、自然犯的なものとは非常に違うものがある。制度的にはこれももう御承知のとおりでございます。そういう意味で、私も実情はよく存じませんけれども、この三万円の罰金という金額はともかくといたしまして、これは、一応その他の旅券法二十三条にございますかなりのものが一年の懲役以下の刑罰ということでございますが、それとの比較の上で、私は罰金刑が相当であろうということで、原案に賛成なることを申し上げましたが、その一つの意味は、これは秩序罰的なものである、秩序犯に対する処罰というふうに半ば理解しているものでございます。しかしながら、その理屈とは別に、ただいま御指摘のような実情であるとすれば、これはやはり早急にこの運用において改めるべき点があると思うのでございまして、つまり、罰則をつけて、従来と違って――御指摘の点であったように、従来とかなり違うわけでございます。しかも正面から渡航先追加の義務というものを強制し、そして従来暗黙に義務に反してもというふうなことでもしあったといたしますと、非常にたてまえが変わってくるわけでございますから、もしそうであるとするならば、従来の実際の措置、つまり、中共にはある程度旅券を出すが、北鮮には出さないというふうなことは、やはりすみやかに変える必要がある。運用において、北鮮に対してもさらに従来のようなことでなくて、相当数の旅券を発給すべきであるというふうに私は考えるのでございます。
その前提としまして、これもいま御指摘がありましたが、なぜ北鮮と中共と区別するかといえば、私もやはり考えておりますのは、これはもう一つ別の承認関係の政権が双方ともございます。中共の場合には、中華民国、台湾のほうの政権がございます。そして北鮮の場合には、別に南のほうの韓国の政権がございます。そこで、それとの関係において相当違うのではないか。つまり、私もしろうとでよくわかりませんが、中華民国のほうの側ではそれほどわが当局に対してきびしいいろいろな注文と申しますか、あるいは妨害のようなことはなくて、だから比較的容易にこの中共のほうには旅券が出せるが、北鮮のほうには反対の事情から容易に出せないということがあるかと思うのでございます。で、私は、これは必ずしも現在の旅券法十三条一項五号の国益、公安条項の解釈上、外務当局が間違っていると断定はいたしません。つまり、国益という中には、先ほどから申しました日本の外交上の利益、しかし、それはただばく然と外務当局が考えた、外交上このほうが都合がよいというようなことではなくて、そこにはやはり条約というものが一つ加わるわけでございますが、条約によって裏づけられた関係、この点でもってそういうものがそういう意味における外交上の関係に著しく妨げのある場合に、これが国益に反するという解釈が成り立つ余地はあると思うのでございます。しかし、これもむろん具体的に程度問題でありまして、条約関係をある意味で利用して、相手国が不当にきびしい要求なり注文をわが外務当局に突きつけてくるとすれば、それをすべて無条件にのむというか、それに従うということではなくて、これも私は法律学者の立場で、外交の実務の立場ではございませんから、比較的簡単に申すわけでございますが、法律学者としては、できるだけそういう一方の相手国の態度に対しては外交上ひとつ反省してもらって、そういう障害をできるだけ排除して、旅券が出せるように努力すべきである。言いかえれば、少なくとも中共の程度に――中共と北鮮によって渡航者の間に旅券の発給が非常にアンバランスになっているという、ふうなことは、私どももはなはだ不自然だと思うのでございます。全く根拠がないとは思いません。これはいまのもう一つの政権が違っておる。中薬民国と韓国という違いがあるからでありましょうが、しかし、その違いからどのような極端なアンバランスが生じても、それは結局外交上やむを得ないのである、すべては国益から見てしかたがないというふうな解釈は好ましくないし、またおそらく、こういうことは裁判所においてもそう簡単に容認されないと思うのでございます。法律学者というのは、裁判官ではございませんが、こういう問題につきましては、幾ぶん近い立場でございまして、直接政治、外交の立場ではなく、幾ぶん外部から第三者的な立場で憲法、法律に照らして批判する立場でございますが、そういう意味においては、おそらく裁判所の考え方もわれわれとそれほど違っていない、かように見るのでございます。
もう一度つけ加えますと、現状でもし御指摘のように、北鮮に対する旅券の出し方が非常にわずかであって、国会議員以外には出していない、そして中共に対する場合と非常に違っているということでありますと、これは一応事は外交に関する、そしてそれは中華民国と韓国とのわが国に対する態度の違いということのように思われますけれども、これはやはり外務当局としてはできるだけ努力をして、できるだけ近い機会にその非常なアンバランスを解消するようにつとめていただきたい。これは私の希望でございます。
この発言だけを見る →ただいまの御指摘の事実は、私よく存じません。で、もしそういう事実であるとすれば、私もはなはだ不合理があるというふうに考えるものでございます。一つは、先ほどちょっと私申しましたように、この罰則はむしろ秩序罰的な、秩序犯というか、行政上の秩序犯ということであって、つまり、届け出を怠った。あるいはいろいろなほかの許可制の場合にも、許可の手続をとらなかった場合、実際に実質的には社会の一般公衆に不利益を与えない、あるいはその他実害のない場合であっても、その手続を怠ったということによって罰せられる、こういう制度はかなりございます。むろん、それは刑罰犯罪と申しましても、性質はかなり違うわけでございまして、刑法に書いてあるような犯罪とは、刑事犯的、自然犯的なものとは非常に違うものがある。制度的にはこれももう御承知のとおりでございます。そういう意味で、私も実情はよく存じませんけれども、この三万円の罰金という金額はともかくといたしまして、これは、一応その他の旅券法二十三条にございますかなりのものが一年の懲役以下の刑罰ということでございますが、それとの比較の上で、私は罰金刑が相当であろうということで、原案に賛成なることを申し上げましたが、その一つの意味は、これは秩序罰的なものである、秩序犯に対する処罰というふうに半ば理解しているものでございます。しかしながら、その理屈とは別に、ただいま御指摘のような実情であるとすれば、これはやはり早急にこの運用において改めるべき点があると思うのでございまして、つまり、罰則をつけて、従来と違って――御指摘の点であったように、従来とかなり違うわけでございます。しかも正面から渡航先追加の義務というものを強制し、そして従来暗黙に義務に反してもというふうなことでもしあったといたしますと、非常にたてまえが変わってくるわけでございますから、もしそうであるとするならば、従来の実際の措置、つまり、中共にはある程度旅券を出すが、北鮮には出さないというふうなことは、やはりすみやかに変える必要がある。運用において、北鮮に対してもさらに従来のようなことでなくて、相当数の旅券を発給すべきであるというふうに私は考えるのでございます。
その前提としまして、これもいま御指摘がありましたが、なぜ北鮮と中共と区別するかといえば、私もやはり考えておりますのは、これはもう一つ別の承認関係の政権が双方ともございます。中共の場合には、中華民国、台湾のほうの政権がございます。そして北鮮の場合には、別に南のほうの韓国の政権がございます。そこで、それとの関係において相当違うのではないか。つまり、私もしろうとでよくわかりませんが、中華民国のほうの側ではそれほどわが当局に対してきびしいいろいろな注文と申しますか、あるいは妨害のようなことはなくて、だから比較的容易にこの中共のほうには旅券が出せるが、北鮮のほうには反対の事情から容易に出せないということがあるかと思うのでございます。で、私は、これは必ずしも現在の旅券法十三条一項五号の国益、公安条項の解釈上、外務当局が間違っていると断定はいたしません。つまり、国益という中には、先ほどから申しました日本の外交上の利益、しかし、それはただばく然と外務当局が考えた、外交上このほうが都合がよいというようなことではなくて、そこにはやはり条約というものが一つ加わるわけでございますが、条約によって裏づけられた関係、この点でもってそういうものがそういう意味における外交上の関係に著しく妨げのある場合に、これが国益に反するという解釈が成り立つ余地はあると思うのでございます。しかし、これもむろん具体的に程度問題でありまして、条約関係をある意味で利用して、相手国が不当にきびしい要求なり注文をわが外務当局に突きつけてくるとすれば、それをすべて無条件にのむというか、それに従うということではなくて、これも私は法律学者の立場で、外交の実務の立場ではございませんから、比較的簡単に申すわけでございますが、法律学者としては、できるだけそういう一方の相手国の態度に対しては外交上ひとつ反省してもらって、そういう障害をできるだけ排除して、旅券が出せるように努力すべきである。言いかえれば、少なくとも中共の程度に――中共と北鮮によって渡航者の間に旅券の発給が非常にアンバランスになっているという、ふうなことは、私どももはなはだ不自然だと思うのでございます。全く根拠がないとは思いません。これはいまのもう一つの政権が違っておる。中薬民国と韓国という違いがあるからでありましょうが、しかし、その違いからどのような極端なアンバランスが生じても、それは結局外交上やむを得ないのである、すべては国益から見てしかたがないというふうな解釈は好ましくないし、またおそらく、こういうことは裁判所においてもそう簡単に容認されないと思うのでございます。法律学者というのは、裁判官ではございませんが、こういう問題につきましては、幾ぶん近い立場でございまして、直接政治、外交の立場ではなく、幾ぶん外部から第三者的な立場で憲法、法律に照らして批判する立場でございますが、そういう意味においては、おそらく裁判所の考え方もわれわれとそれほど違っていない、かように見るのでございます。
もう一度つけ加えますと、現状でもし御指摘のように、北鮮に対する旅券の出し方が非常にわずかであって、国会議員以外には出していない、そして中共に対する場合と非常に違っているということでありますと、これは一応事は外交に関する、そしてそれは中華民国と韓国とのわが国に対する態度の違いということのように思われますけれども、これはやはり外務当局としてはできるだけ努力をして、できるだけ近い機会にその非常なアンバランスを解消するようにつとめていただきたい。これは私の希望でございます。
穗
穗積七郎#23
○穗積委員 最後に、二点田上先生にお尋ねいたします。いろいろありがとうございました。
私は、台湾と韓国政府の対日政策、態度が違うことを前提として考えることは間違いだと思うのです。わが国が中国あるいは朝鮮と経済、文化の交流、人事の交流をやろうがやるまいが、そのことは自主的な内政問題です。それに対して台湾や韓国が文句をいってくる、これは不当な干渉ですよ。さっきおっしゃったように、両国に対しては、われわれは反対だけれども、とにかく日韓条約、日台条約というものがあります。その条約に基づいて、日本政府がそれに違反し、あるいは履行の義務を怠っておるという場合に文句をいうのはいいですよ。それはある意味で政治的には賛成しなくても、法律的にこれはジャスティファイさるべきものでしょう。ところが、韓国、台湾に関係のない、すなわち、中華人民共和国あるいは朝鮮民主主義人民共和国とわが国の人民が文化、経済、人事の交流をやることが、何の干渉を受けるべき筋合いがありましょうか。国際的に見まして、その不当な干渉によって、われわれ日本人民の基本的人権というものがそれを理由にして侵されるなんということは、法律的に見て、これは許すべからざることではないでしょうか。それを一点お尋ねしたいのです。
第二点は、それは罰則の問題です。罰則は、私も立場としては反対であります。もし置いたとしても、置いてあるこの法律があったとしても、事の性質上、これはさっき言ったように、秩序罰、すなわち行政罰にすべきことだと思いますね。そうでありますならば、罰金ではなくて、過料にすべきことである。さらにはなはだしきあやまちというものは、さっき言ったように、旅券の無効、没収あるいは再発行の拒否、こういうことまで刑罰の内容が発展しておるということは、これははなはだしき権利の乱用であると私どもは考えます。したがって、先生の言われる秩序罰、これはあえていえば、私は行政罰でとどめるべきものである。やるとしてもですよ。やることに賛成ではありません。やるという論理に立ち、必要に立っているという法治国としての日本政府の論理からいきましても、これを越えるべき筋合いのものではないというふうに考えますが、その点は先生はどういうふうにお考えでございましょうか。
それから最後に、先ほど平井または相川参考人から陳述されました。私どもは旅券法によって旅券発給の申請をする正当な権利があるわけですね。それに対して政府は受付をしないのです。受付した上で、法律に従ってこれにノーといい、イエスという場合があっていいですよ。そのことまで言うのではないのですよ。そうではなくて、受け付けることが当然なことではないでしょうか。それに対して、何の法の根拠もなしに、事前審査と称して、共産圏渡航趣意書というものをまず出せ。それは何だといえば、何でもない、紙きれだと、こういうわけです。説明書にすぎない。旅券申請書とは何ら関係のないものである。こういうことで旅券申請の受付を拒否する。怠っておる。これは明らかに違法、権利の乱用行為であると私は考えますが、法律学者としてどうお考えでございましょうか。旅券法に従ってのみ政府は行なうべき義務と権利があるわけですが、それを明らかに逸脱いたしました権利の乱用行為であるといわざるを得ないと思うのですね。
その二点について、尊敬すべき法律学者としての御意見を陳述をしていただきたいと思うのです。
この発言だけを見る →私は、台湾と韓国政府の対日政策、態度が違うことを前提として考えることは間違いだと思うのです。わが国が中国あるいは朝鮮と経済、文化の交流、人事の交流をやろうがやるまいが、そのことは自主的な内政問題です。それに対して台湾や韓国が文句をいってくる、これは不当な干渉ですよ。さっきおっしゃったように、両国に対しては、われわれは反対だけれども、とにかく日韓条約、日台条約というものがあります。その条約に基づいて、日本政府がそれに違反し、あるいは履行の義務を怠っておるという場合に文句をいうのはいいですよ。それはある意味で政治的には賛成しなくても、法律的にこれはジャスティファイさるべきものでしょう。ところが、韓国、台湾に関係のない、すなわち、中華人民共和国あるいは朝鮮民主主義人民共和国とわが国の人民が文化、経済、人事の交流をやることが、何の干渉を受けるべき筋合いがありましょうか。国際的に見まして、その不当な干渉によって、われわれ日本人民の基本的人権というものがそれを理由にして侵されるなんということは、法律的に見て、これは許すべからざることではないでしょうか。それを一点お尋ねしたいのです。
第二点は、それは罰則の問題です。罰則は、私も立場としては反対であります。もし置いたとしても、置いてあるこの法律があったとしても、事の性質上、これはさっき言ったように、秩序罰、すなわち行政罰にすべきことだと思いますね。そうでありますならば、罰金ではなくて、過料にすべきことである。さらにはなはだしきあやまちというものは、さっき言ったように、旅券の無効、没収あるいは再発行の拒否、こういうことまで刑罰の内容が発展しておるということは、これははなはだしき権利の乱用であると私どもは考えます。したがって、先生の言われる秩序罰、これはあえていえば、私は行政罰でとどめるべきものである。やるとしてもですよ。やることに賛成ではありません。やるという論理に立ち、必要に立っているという法治国としての日本政府の論理からいきましても、これを越えるべき筋合いのものではないというふうに考えますが、その点は先生はどういうふうにお考えでございましょうか。
それから最後に、先ほど平井または相川参考人から陳述されました。私どもは旅券法によって旅券発給の申請をする正当な権利があるわけですね。それに対して政府は受付をしないのです。受付した上で、法律に従ってこれにノーといい、イエスという場合があっていいですよ。そのことまで言うのではないのですよ。そうではなくて、受け付けることが当然なことではないでしょうか。それに対して、何の法の根拠もなしに、事前審査と称して、共産圏渡航趣意書というものをまず出せ。それは何だといえば、何でもない、紙きれだと、こういうわけです。説明書にすぎない。旅券申請書とは何ら関係のないものである。こういうことで旅券申請の受付を拒否する。怠っておる。これは明らかに違法、権利の乱用行為であると私は考えますが、法律学者としてどうお考えでございましょうか。旅券法に従ってのみ政府は行なうべき義務と権利があるわけですが、それを明らかに逸脱いたしました権利の乱用行為であるといわざるを得ないと思うのですね。
その二点について、尊敬すべき法律学者としての御意見を陳述をしていただきたいと思うのです。
田
田上穰治#24
○田上参考人 お答えをいたします。
第一点の三万円の罰金でございますが、今日は過料のほかに行政上の――秩序罰ということばは、学問的にはことばづかいがいろいろございまして、過料ということを秩序罰というふうに、内容ではなくて、むしろ刑罰の罰、処罰の形式についてそういうことばを使う場合があります。しかし、私どもは、先ほどから御質問もおそらくそのように伺っておるのでございますが、実質的な違法性よりも、形式的な手続の上において渡航先を追加しなかったという意味における義務違反というか、違法であるというように伺っているのでございますが、私といたしましては、大体そういうふうな考えでございまして、そういう意味で、反社会性が実質犯というほどの顕著なものではない。したがって、刑罰も軽くしなければならないということを申し上げたのでございます。秩序犯といったほうが正確でございますが、行政法上の義務違反、行政犯と申しますか、そういう意味において、刑罰は軽くしなければならない。けれども、過料でなければならないというふうには考えないのでございます。過料は戦前にはかなりございましたが、戦後はむしろその点において、罰金刑は必ずしも行政犯に対する処罰としてきびしいとは考えないのでございます。むしろ問題は、非常にきびしくおとりになると思いますが、それは旅券を将来において発給しない、発給を拒否するという効果が伴うことではないかと思うのでございます。それは先ほど私ちょっと初めに申し上げたところでありますが、この旅券発給拒否の現出として、旅券法十三条の一項に五つ列挙してございますが、その中で、いまの第五号あたりはもちろん重大であり、特にそういう比較的例外の場合ということが一応文章の中に織り込んであるのでございますが、第四号の、旅券法の罰則、二十三条違反の事実があった場合、これにはいろいろその違法性と申しましても、程度の差があり、しかも、それは一度二十三条によって罰せられますと、当然四号に該当するということになってしまって、あとで反省をしても必ずしもそれが旅券をもらえないような感じがするかと思いますが、私はそのように法文を見ないのでございます。旅券の発給または渡航先の追加をしないことができるという法文でございまして、これは必ず機械的に発給を拒否するという理由とは見ないのでございます。もしそのように具体的にこの法を適用するといたしますと、それはおそらくわれわれとしても法律の規定に合わないと思いますし、また訴訟の問題になれば当然裁判官のほうからも違った解釈が出てくると思うのでございます。つまり、この二十三条の規定に該当して刑に処せられた者については旅券を発給しないこともあるというのであって、常に当然旅券が発給されないというふうには読むことができない。ことに罰せられてから何年かたっておる場合、あるいはその違反の理由、事情によるのでございますが、たとえばただいま御指摘になっておる、中共に行く旅券を出してもらって、中共に渡航するためにわが政府から旅券を発給された者が、横すべり――このことばもあるいは不適当かと思いますが、渡航先を追加しないで北鮮に入ったということで、将来二十三条の規定によって罰せられるといたしますと、その次に今度はまともに北鮮に向けて渡航したいから旅券を出してもらいたい、こういう申請に対しては、また再度横すべりのおそれがあるということを考えましても、それは北鮮の問題ではなくて、この北鮮からさらによその国に無断で旅行するのではないか。こういうおそれがない限りは、北鮮に横すべりをしたという事実が直ちに北鮮向けの旅券の発給の拒否の理由にはならないのじゃないか、かような考えでございます。したがって、一応それは旅券発給申請においてはマイナスの事由として一つ計算には入るといたしましても、それだけで直ちに機械的に旅券の発給が拒否されるという結論にはならないし、またそう簡単に解釈をし、結論を出してはならないというふうに考えるのでございます。ただ、ほかの場合、たとえば同じく十三条の一号、二号、三号あたりのほうになりますか、かなり明白でありまして、おそらくこれに該当すれば、もう機械的に当然に発給されないという感じがするのでございますが、四号の場合はかなり幅が広いものでございますから、二十三条の規定に該当して何らかの形で処罰されれば、もう何か何年たっても旅券が発給されないような受け取り方、読み方もあるかと思いますが、それはわれわれのほうの解釈としては、そういう結論は十分警戒を要するし、また機械的にそのように判断することは誤りであるというふうに見ているのでございます。それから……。
この発言だけを見る →第一点の三万円の罰金でございますが、今日は過料のほかに行政上の――秩序罰ということばは、学問的にはことばづかいがいろいろございまして、過料ということを秩序罰というふうに、内容ではなくて、むしろ刑罰の罰、処罰の形式についてそういうことばを使う場合があります。しかし、私どもは、先ほどから御質問もおそらくそのように伺っておるのでございますが、実質的な違法性よりも、形式的な手続の上において渡航先を追加しなかったという意味における義務違反というか、違法であるというように伺っているのでございますが、私といたしましては、大体そういうふうな考えでございまして、そういう意味で、反社会性が実質犯というほどの顕著なものではない。したがって、刑罰も軽くしなければならないということを申し上げたのでございます。秩序犯といったほうが正確でございますが、行政法上の義務違反、行政犯と申しますか、そういう意味において、刑罰は軽くしなければならない。けれども、過料でなければならないというふうには考えないのでございます。過料は戦前にはかなりございましたが、戦後はむしろその点において、罰金刑は必ずしも行政犯に対する処罰としてきびしいとは考えないのでございます。むしろ問題は、非常にきびしくおとりになると思いますが、それは旅券を将来において発給しない、発給を拒否するという効果が伴うことではないかと思うのでございます。それは先ほど私ちょっと初めに申し上げたところでありますが、この旅券発給拒否の現出として、旅券法十三条の一項に五つ列挙してございますが、その中で、いまの第五号あたりはもちろん重大であり、特にそういう比較的例外の場合ということが一応文章の中に織り込んであるのでございますが、第四号の、旅券法の罰則、二十三条違反の事実があった場合、これにはいろいろその違法性と申しましても、程度の差があり、しかも、それは一度二十三条によって罰せられますと、当然四号に該当するということになってしまって、あとで反省をしても必ずしもそれが旅券をもらえないような感じがするかと思いますが、私はそのように法文を見ないのでございます。旅券の発給または渡航先の追加をしないことができるという法文でございまして、これは必ず機械的に発給を拒否するという理由とは見ないのでございます。もしそのように具体的にこの法を適用するといたしますと、それはおそらくわれわれとしても法律の規定に合わないと思いますし、また訴訟の問題になれば当然裁判官のほうからも違った解釈が出てくると思うのでございます。つまり、この二十三条の規定に該当して刑に処せられた者については旅券を発給しないこともあるというのであって、常に当然旅券が発給されないというふうには読むことができない。ことに罰せられてから何年かたっておる場合、あるいはその違反の理由、事情によるのでございますが、たとえばただいま御指摘になっておる、中共に行く旅券を出してもらって、中共に渡航するためにわが政府から旅券を発給された者が、横すべり――このことばもあるいは不適当かと思いますが、渡航先を追加しないで北鮮に入ったということで、将来二十三条の規定によって罰せられるといたしますと、その次に今度はまともに北鮮に向けて渡航したいから旅券を出してもらいたい、こういう申請に対しては、また再度横すべりのおそれがあるということを考えましても、それは北鮮の問題ではなくて、この北鮮からさらによその国に無断で旅行するのではないか。こういうおそれがない限りは、北鮮に横すべりをしたという事実が直ちに北鮮向けの旅券の発給の拒否の理由にはならないのじゃないか、かような考えでございます。したがって、一応それは旅券発給申請においてはマイナスの事由として一つ計算には入るといたしましても、それだけで直ちに機械的に旅券の発給が拒否されるという結論にはならないし、またそう簡単に解釈をし、結論を出してはならないというふうに考えるのでございます。ただ、ほかの場合、たとえば同じく十三条の一号、二号、三号あたりのほうになりますか、かなり明白でありまして、おそらくこれに該当すれば、もう機械的に当然に発給されないという感じがするのでございますが、四号の場合はかなり幅が広いものでございますから、二十三条の規定に該当して何らかの形で処罰されれば、もう何か何年たっても旅券が発給されないような受け取り方、読み方もあるかと思いますが、それはわれわれのほうの解釈としては、そういう結論は十分警戒を要するし、また機械的にそのように判断することは誤りであるというふうに見ているのでございます。それから……。
穗
田
田上穰治#26
○田上参考人 その申請を受理しないということは違法でございますが、ただ、私もその点細目の規定を存じませんけれども、その申請にあたって、添付すべき資料なり文書が――むろんそれはおそらく外務省令か何かの規定にあると思うのでございますが、それが発給の審査に必要な限度、無用、無意味な多数の書類、同じようなものを何通も出すということは理解しがたいのでございまして、審査に必要な限りにおいて申請者がその書類を用意すべきである、かように見るのでございます。しかし、この点は、今回の旅券法改正法案の趣旨でもございまして、できるだけ事務の簡素化ということが原則でございますから、もし法律でなくて、政令とか省令の問題でありますと、当然私としては、この改正法案の趣旨に従って、そういう点も簡素化できるものは簡素化すべきである、簡略にすべきである、かように見ております。
それからもう一つは、とにかくそういう法律の趣旨に反する無用な書類を要求し、あるいはその他の事情で発給の申請を受理しなかったらどうかと申しますと、それは私はいまのような点を若干考慮いたしますけれども、つまり、常に付属する、添付する書類を要求する制度が当然違法であるとも思いませんけれども、とにかく一応適法に申請をしたのに、当局が受理しない、あるいは受理しても、それに対する適切な発給なりあるいは拒否処分も含めまして、何らかのそういう明確な答えをしないといたしますと、それは違法でございます。しかし、その違法については、先ほどちょっと申し上げましたように、前は、二十七、八年ごろの事件を私は存じておりますが、旅券を発給せよという訴えを地裁に出した事件がございます。この場合は、そういう訴訟は初めから不適法であるということで、裁判所がむしろそういう訴えに対してたしか却下の裁判をしたと思いますが、今日はそうではなくて、その点についても訴訟法の改正によって争う、救済が与えられる。言いかえれば、相当な期間経過してもなお当局が結論を出さない、旅券を出すか出さないかという返事をしない、処分をしない場合には、その不作為を違法として確認を求めることができる。確認の裁判があれば、あとはすみやかに当局としてイエスかノーか、発給するかどうかということをいわなければならないという点で、若干ではありますが、従来よりは救済の手続は改善されていると見るのでありまして、御質問に対してちょっとよけいなことを申したかと思いますが、受理しない、あるいは受理してもそれに対して返事をしない、処分をしないということは違法である。しかし、審査に必要な限度において書類の添付を要求し、あるいは必要な限度においてある程度の期間処分をしないで待ってもらうということは適法でございますが、その限度を越えた場合には違法ということで、今日は違法として争えるというか、あるいは非難する、責任を問うように制度がなっていると見るのでございます。
この発言だけを見る →それからもう一つは、とにかくそういう法律の趣旨に反する無用な書類を要求し、あるいはその他の事情で発給の申請を受理しなかったらどうかと申しますと、それは私はいまのような点を若干考慮いたしますけれども、つまり、常に付属する、添付する書類を要求する制度が当然違法であるとも思いませんけれども、とにかく一応適法に申請をしたのに、当局が受理しない、あるいは受理しても、それに対する適切な発給なりあるいは拒否処分も含めまして、何らかのそういう明確な答えをしないといたしますと、それは違法でございます。しかし、その違法については、先ほどちょっと申し上げましたように、前は、二十七、八年ごろの事件を私は存じておりますが、旅券を発給せよという訴えを地裁に出した事件がございます。この場合は、そういう訴訟は初めから不適法であるということで、裁判所がむしろそういう訴えに対してたしか却下の裁判をしたと思いますが、今日はそうではなくて、その点についても訴訟法の改正によって争う、救済が与えられる。言いかえれば、相当な期間経過してもなお当局が結論を出さない、旅券を出すか出さないかという返事をしない、処分をしない場合には、その不作為を違法として確認を求めることができる。確認の裁判があれば、あとはすみやかに当局としてイエスかノーか、発給するかどうかということをいわなければならないという点で、若干ではありますが、従来よりは救済の手続は改善されていると見るのでありまして、御質問に対してちょっとよけいなことを申したかと思いますが、受理しない、あるいは受理してもそれに対して返事をしない、処分をしないということは違法である。しかし、審査に必要な限度において書類の添付を要求し、あるいは必要な限度においてある程度の期間処分をしないで待ってもらうということは適法でございますが、その限度を越えた場合には違法ということで、今日は違法として争えるというか、あるいは非難する、責任を問うように制度がなっていると見るのでございます。
穗
穗積七郎#27
○穗積委員 あとに与党の御質問もあるようですから、御遠慮いたしまして、あと平井、相川両参考人に一問ずつお尋ねをして、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
両参考人のお述べになりましたことは、理論的にも、また経験的にもたいへん正しいことを陳述していただいたのでありまして、きょうは大臣がおらぬのがはなはだ残念でございますけれども、部長、課長はいらっしゃいますから、よく謹聴して反省していただけたということを、私は高く評価をいたしております。いずれ私は、次の機会に、外務、法務両大臣をはじめとして政府当局に対する質問をいたしますけれども、その参考としてお尋ねいたします。
まず、平井参考人にお尋ねいたしたいのは、先ほど申しましたように、渡航趣意書は、私は明らかな違法行為、権利の乱用だと思うのです。いま田上教授がおっしゃったとおりですよ。必要な書類なら受付と一緒に要求すればいいんだ、いつでも出すのですから。そこで、先ほど伺いますと、その趣意書のために三週間から一月かかるという。私どもは、商業上の目的をもって両国その他問題になっている四カ国へ渡航申請をしたことはありません。ありませんが、われわれの経験からいたしましても、たとえば相手の招待を受けたときに、どういう会合がある、セレモニーがあるから、この機会に来てもらいたいということで、それはタイミングがあるわけです、文化あるいは友好の交流訪問の場合におきましても。そういう経験があります。まして、経済のことになりますと、商機がございまして、特に最近の国際的に激甚な競争の中で、政府の非協力のもとでこれを促進しなければならぬということになりますと、その商機を逸する、タイミングを逸するために、非常な損害をこうむる、あるいは損害だけではなくて、全然その行く目的が拒絶されたと同じ結果になるという場合があると思うのです。この趣意書の審査、こういうことで受理すらしないということが、今度新法になったら、この手続を相変わらずとるのかとらぬのか、私はお尋ねするつもりでおりますよ。これは大事な問題ですからね。しかも実害を生ずるわけです。だからお尋ねいたしますが、いままでは少なくともこのことが行政上の便宜という理由で不当にも行なわれてきた。そのために非常な実害を生じたという例がおありになるのかないのか。具体的なこまかいケースは必要ありません。そのために商機を逸し、そして渡航者の個人または会社、団体、これが非常な損害を生じたり、あるいはその時期を逸したために拒絶されたと同じ結果になって、実害を生じたということがありましょうか、ありませんか。それを伺っておきたい。それが一点。
それからもう一つは、たとえば第三国、他の国へ行っておった。そうすると、出先から中国、朝鮮、ベトナムへ行く商業上の必要が生じた。そのときに、その国には日本政府の在外機関がありませんから、だから電報その他で追加申請をするわけだ。そうすると、いまの事前審査みたいなことから、政治的な討議から始めるわけですね。その間にまた非常なあれが生ずる。そういうことが、私どもしろうとでありますが、特に貿易上の実務に当たっておられる方からすれば、その時間、タイミングが問題になるわけですね。許可するしないじゃない。そのときに必要なんだということが、横すべりの合法性というか、妥当性というものが、そこでやはり生じてくるのではないかと推測するわけですよ。つまり、いまの渡航先追加の問題について、その実情についてお答えをいただきたい。
それから時間の節約上、失礼ですが、相川参考人に続いてお尋ねいたしますから、一括してお答えをいただきたいと思うのです。これは何かといいますと、実は朝鮮の場合に特に問題が多いわけでございますが、最近、朝鮮と日本との貿易については、日本からのプラント輸出というものがあるだろうと思うのです。私も一、二そういうことを経験したことがございます。そういうことになりますと、わが国から向こうへ国益の増進のために、貿易拡大のために行く必要があるわけですね。ところが、そのために、ソビエトを回ったり、あるいは中国を頼んで通してもらったり、いろいろしなければならないために、非常なヨーロッパとの競争の中で行なわれておるこういうものに障害が生ずるわけですから、いま平井さんにお尋ねしたように、朝鮮貿易の場合でも、タイミングを失したために、大魚を逸したという例があるのかないのか、それをお尋ねしたいわけです。
それからもう一つは、いま申しました取引の中で、プラント輸出が最近になって増加しておるとすれば、そのときには、こちらから行くだけでなくて、向こうの技術者を商談を固めるために呼んで、機械を持っていくわけにはいかぬのですから、来て見てもらって、それを点検した上で、商談というものは妥結するものだと思うのですね。そういうことで、かつて、商談を固めるために、日本の国益になるプラント輸出をするために、朝鮮から技術者あるいは商談の代表者を招待することを申請されたことがあるかどうかですね。それがもし断わられたとすれば、そのために非常に国益を失しておる事実が生ずるだろうと思うのです。その有無についてお尋ねをいたします。
それから、これは近い将来のことですが、漏れ承りますと、ことしの秋あたりをめどにいたしまして、わが国の工業展覧会を朝鮮国内において開くという御計画を進めておられるやに伺っております。もしこれが両者の間において意見の一致を見て実行に移りますならば、中国の場合と同様に、両国の友好理解と貿易増進のために、直接の商淡あるいは説明員以外に人が行くことは当然でありますが、相当の人数の者が行く必要が生じましょう。その場合に、私の考えでは、これらに対して理解を持っておる、あるいは利害関係のある人が、用談は済んでおるけれども、行って向こうの政府または経済関係の担当者と接触をしながら、日本の実情を説明し、向こうの実情を相互理解をする。これは展示会をやる以上は、持っていった物だけを売るのが目的ではない。さらに両国の貿易の潜在的な可能性を顕在的に拡大しようということでございますから、すなわち、日本からの渡航が最小限度の事務担当者だけではなくて、そういうような友好的な相互理解発展のための訪問が必要であろうと思う。そういう計画がありますかないか。この必要をどうお考えになっておられるか、お伺いをしたいと思うのです。
それから最後に、これは共通した問題ですから、両方からお答えをいただきたいと思いますが、いま申しましたようなことで、基本的人権が脅かされただけでなくて、経済上の実害を生じておる例があるだろうと思うのです。それに対して、かつて行政訴訟損害賠償請求を提起されたことがあるかないか。将来は私は起こすべきだと思うのですね。損害賠償請求を含む違法行為に対して訴訟を起こすべきだというふうに思うのです。そうでありませんと、皆さんのような実害をこうむった方からやっていただかないと、われわれがこの裁判を提起して、国益、公安の拡大解釈または行政権の法の範囲を越えた乱用、これを是正することは困難になるわけですから、過去の実害に対しては、これは十分な取り返しがつかぬにしても、これからの、将来の拡大解釈、乱用を戒めるためには、私はいまの三権分立による訴訟制度というもの――田上教授もその点を強調されましたが、私は、これはぜひ実害をこうむった当事者が提起すべき訴訟でありますから、かつてあったかないか。かつてないとしても、今後はこれはやるべきだと私は期待をかけてお尋ねするわけですが、どういうお考えであるか、そのことを御両人からお答えをいただきたい。
以上をもって私の質問を終わります。
この発言だけを見る →両参考人のお述べになりましたことは、理論的にも、また経験的にもたいへん正しいことを陳述していただいたのでありまして、きょうは大臣がおらぬのがはなはだ残念でございますけれども、部長、課長はいらっしゃいますから、よく謹聴して反省していただけたということを、私は高く評価をいたしております。いずれ私は、次の機会に、外務、法務両大臣をはじめとして政府当局に対する質問をいたしますけれども、その参考としてお尋ねいたします。
まず、平井参考人にお尋ねいたしたいのは、先ほど申しましたように、渡航趣意書は、私は明らかな違法行為、権利の乱用だと思うのです。いま田上教授がおっしゃったとおりですよ。必要な書類なら受付と一緒に要求すればいいんだ、いつでも出すのですから。そこで、先ほど伺いますと、その趣意書のために三週間から一月かかるという。私どもは、商業上の目的をもって両国その他問題になっている四カ国へ渡航申請をしたことはありません。ありませんが、われわれの経験からいたしましても、たとえば相手の招待を受けたときに、どういう会合がある、セレモニーがあるから、この機会に来てもらいたいということで、それはタイミングがあるわけです、文化あるいは友好の交流訪問の場合におきましても。そういう経験があります。まして、経済のことになりますと、商機がございまして、特に最近の国際的に激甚な競争の中で、政府の非協力のもとでこれを促進しなければならぬということになりますと、その商機を逸する、タイミングを逸するために、非常な損害をこうむる、あるいは損害だけではなくて、全然その行く目的が拒絶されたと同じ結果になるという場合があると思うのです。この趣意書の審査、こういうことで受理すらしないということが、今度新法になったら、この手続を相変わらずとるのかとらぬのか、私はお尋ねするつもりでおりますよ。これは大事な問題ですからね。しかも実害を生ずるわけです。だからお尋ねいたしますが、いままでは少なくともこのことが行政上の便宜という理由で不当にも行なわれてきた。そのために非常な実害を生じたという例がおありになるのかないのか。具体的なこまかいケースは必要ありません。そのために商機を逸し、そして渡航者の個人または会社、団体、これが非常な損害を生じたり、あるいはその時期を逸したために拒絶されたと同じ結果になって、実害を生じたということがありましょうか、ありませんか。それを伺っておきたい。それが一点。
それからもう一つは、たとえば第三国、他の国へ行っておった。そうすると、出先から中国、朝鮮、ベトナムへ行く商業上の必要が生じた。そのときに、その国には日本政府の在外機関がありませんから、だから電報その他で追加申請をするわけだ。そうすると、いまの事前審査みたいなことから、政治的な討議から始めるわけですね。その間にまた非常なあれが生ずる。そういうことが、私どもしろうとでありますが、特に貿易上の実務に当たっておられる方からすれば、その時間、タイミングが問題になるわけですね。許可するしないじゃない。そのときに必要なんだということが、横すべりの合法性というか、妥当性というものが、そこでやはり生じてくるのではないかと推測するわけですよ。つまり、いまの渡航先追加の問題について、その実情についてお答えをいただきたい。
それから時間の節約上、失礼ですが、相川参考人に続いてお尋ねいたしますから、一括してお答えをいただきたいと思うのです。これは何かといいますと、実は朝鮮の場合に特に問題が多いわけでございますが、最近、朝鮮と日本との貿易については、日本からのプラント輸出というものがあるだろうと思うのです。私も一、二そういうことを経験したことがございます。そういうことになりますと、わが国から向こうへ国益の増進のために、貿易拡大のために行く必要があるわけですね。ところが、そのために、ソビエトを回ったり、あるいは中国を頼んで通してもらったり、いろいろしなければならないために、非常なヨーロッパとの競争の中で行なわれておるこういうものに障害が生ずるわけですから、いま平井さんにお尋ねしたように、朝鮮貿易の場合でも、タイミングを失したために、大魚を逸したという例があるのかないのか、それをお尋ねしたいわけです。
それからもう一つは、いま申しました取引の中で、プラント輸出が最近になって増加しておるとすれば、そのときには、こちらから行くだけでなくて、向こうの技術者を商談を固めるために呼んで、機械を持っていくわけにはいかぬのですから、来て見てもらって、それを点検した上で、商談というものは妥結するものだと思うのですね。そういうことで、かつて、商談を固めるために、日本の国益になるプラント輸出をするために、朝鮮から技術者あるいは商談の代表者を招待することを申請されたことがあるかどうかですね。それがもし断わられたとすれば、そのために非常に国益を失しておる事実が生ずるだろうと思うのです。その有無についてお尋ねをいたします。
それから、これは近い将来のことですが、漏れ承りますと、ことしの秋あたりをめどにいたしまして、わが国の工業展覧会を朝鮮国内において開くという御計画を進めておられるやに伺っております。もしこれが両者の間において意見の一致を見て実行に移りますならば、中国の場合と同様に、両国の友好理解と貿易増進のために、直接の商淡あるいは説明員以外に人が行くことは当然でありますが、相当の人数の者が行く必要が生じましょう。その場合に、私の考えでは、これらに対して理解を持っておる、あるいは利害関係のある人が、用談は済んでおるけれども、行って向こうの政府または経済関係の担当者と接触をしながら、日本の実情を説明し、向こうの実情を相互理解をする。これは展示会をやる以上は、持っていった物だけを売るのが目的ではない。さらに両国の貿易の潜在的な可能性を顕在的に拡大しようということでございますから、すなわち、日本からの渡航が最小限度の事務担当者だけではなくて、そういうような友好的な相互理解発展のための訪問が必要であろうと思う。そういう計画がありますかないか。この必要をどうお考えになっておられるか、お伺いをしたいと思うのです。
それから最後に、これは共通した問題ですから、両方からお答えをいただきたいと思いますが、いま申しましたようなことで、基本的人権が脅かされただけでなくて、経済上の実害を生じておる例があるだろうと思うのです。それに対して、かつて行政訴訟損害賠償請求を提起されたことがあるかないか。将来は私は起こすべきだと思うのですね。損害賠償請求を含む違法行為に対して訴訟を起こすべきだというふうに思うのです。そうでありませんと、皆さんのような実害をこうむった方からやっていただかないと、われわれがこの裁判を提起して、国益、公安の拡大解釈または行政権の法の範囲を越えた乱用、これを是正することは困難になるわけですから、過去の実害に対しては、これは十分な取り返しがつかぬにしても、これからの、将来の拡大解釈、乱用を戒めるためには、私はいまの三権分立による訴訟制度というもの――田上教授もその点を強調されましたが、私は、これはぜひ実害をこうむった当事者が提起すべき訴訟でありますから、かつてあったかないか。かつてないとしても、今後はこれはやるべきだと私は期待をかけてお尋ねするわけですが、どういうお考えであるか、そのことを御両人からお答えをいただきたい。
以上をもって私の質問を終わります。
平
平井博二#28
○平井参考人 お答え申し上げます。
第一番に、実害を受けたことがあるかどうかという問題でございますが、これは私自身の体験から申し上げますと、ちょうど一九六七年に私一年ほど北京におりました。六七年のいろいろな商談がございまして、北京にも各社の代表がおいでになっております。それで、現実に毎日中国側の貿易顧問と話をするわけでございますけれども、やはり一人では一これは、貿易会社はいろいろ専門の部かございまして、機械にいたしましても何にいたしましても、専門的な知識というものが非常に必要でございます。ですから、一人ですべての商品を扱うということはできないわけでございます。したがいまして、たとえば豆の商談である場合には豆、機械でも、たとえば工作機械の場合には工作機械の専門家というものがどうしても必要でございます。しかしながら、北京におきまして、数カ月間各商社の代表が滞在しておりまして、中国と折衝しております。その中で、この中国市場と申しますものは、たとえば機械を取り上げましても、西欧諸国と非常に激烈な競争下に置かれております。したがいまして、値段の点につきましても、納期につきましても当然のことでございますが、向こうとしましては、技術的な内容、それがたとえば西欧諸国より日本のほうが非常にすぐれておるというような説明を非常に要求するわけでございます。ところが、残念ながら、おります人間は、そのことについてそう専門的な知識を持っておるわけではございません。ところが、西欧諸国の場合には、あとで申し上げますけれども、たとえば西ドイツの場合ですと、世界各国フリーに回れる旅券を持っておりまして、いついかなるときでも中国がオーケーと言ったらすぐに入ることができます。ところが、私どもが商談の過程で、こういう専門家をどうしても北京に呼ばなければならぬ、この専門家と向こう側の最終的なユーザーと話し合いを煮詰めて、この商談を成立させたいと思いましても、六七年の段階におきましては、早くてもとにかく四十日、つまり、先ほど申し上げました渡航趣意書を出すという段階から、旅券をもらいまして、香港のビザを取りまして、それから三日間かかって北京にやってくる、こういう状況でございます。したがいまして、話が起こってから現実にその人が入ってくるまで一カ月という期間はどうしても見なければならぬわけです。こういうことでは国際競争には全然勝てません。したがいまして、六七年のときに、私が北京におきまして各社の方々から痛切なことばとして言われておりますのは、何とかして早く自分たちの必要な専門家がせめてほかの国並みに来てほしい、来れるようにしてほしい、こういうことでございます。現在他の国に対する旅券は、まず趣意書というふうな段階は全くなくて、申請をすれば、およそ一週間ないしちょっとかかる程度でございます。そういたしますと、その時点におきましても、それと同じくらいでやれれば、十日間で北京に飛んでこれる。それが飛んでこれない、こういう状況でございます。この実害については、もちろん計算はいたしておりませんけれども、ほとんどの各社がせっかくいい商談をつかみましても、みすみす西欧に取られる、こういう実害は非常に大きいものだと考えております。
第二点につきまして、それでその次に起こってきます問題は、しかし、何とかしてその商談をものにしたい、非常に偶然的な要素もございますけれども、たとえば西欧諸国の中にそういう機械の専門家がおる、あるいはカンボジアにおる、あるいはインドにおる。国はいろいろございますけれども、こういうところにたまたまその社の専門家がおりまして、そこからすぐ北京に派遣すれば何とか間に合うのじゃないか、こういう問題がございます。この場合にも、今度の法案によりますと、これは全く違法になりますから、現状からいきますと、つまり、二十日間から一カ月間の同じような渡航追加の申請期間を経なければどうしても北京に来れない、こういうことになるわけでございます。こういたしますと、今度の法案が通りましても、簡素化どころではなくて、むしろもっときびしくなったとすらいえるわけです。つまり、世界じゅう――大きな貿易会社になりますと、世界じゅうに駐在員がおりまして、また専門家もいろいろあっちこっちに配置をしております。しかし、こういうふうな人材をすぐに使うということが今度の法律では全く禁止される、こういうことになるわけでございます。これが第二点でございます。
第三点につきまして、先ほど申しましたように、各社ほとんどそういう状況を受けております関係上、たとえば、それについての具体的な損害額というふうなものはまだ計算しておりません。したがいまして、これについて損害賠償の裁判というぶうなものは、私どもとしてはまだ起こしておりません。しかし、先ほどお話がございましたように、私どもとしては、いままでほんとうに民間の努力で、六億ドルに及ぶ日中貿易というものを築き上げてまいりました。この主要な功績というものは、まさに民間の商社あるいはメーカー、ユーザー、そういうふうな人たが、こういうほかの国よりももっときびしい制限の中で、差別の中でつくり上げてきたものでございます。したがいまして、そういう意味で、先ほど先生のおっしゃったような損害賠償の問題は、私どもはこれから十分に取り組んでいきたいというふうに考えております。
なお、もう少しこまかに、趣意書の手続というものについて、おそらく先生は国会議員という形でおとりになっていらっしゃると思うので、私どもが具体的にこの趣意書の問題でどんなふうにいじめられておるか、はっきり私どもの感情からいえば、そう申し上げたいような実情をちょっと申し上げたいと思います。
つまり、通常旅券の申請をいたします場合には、旅券の申請書というものをほかの国へ行く場合には出すわけでございます。ところが、私どもの場合には、まず、名前はいろいろありますけれども、一般的には共産圏渡航趣意書、こういうものを出さなければなりません。これを出して、これがオーケーでなければ外務省は旅券申請を受け付けないわけでございます。先ほど田上先生のおっしゃるように、全く違法な行為をとっておるわけでございます。この渡航趣意書というものはどういうものに基づくかということを申し上げますと、先ほど田上先生は、省令か何かにあるかもしれないというふうにおっしゃいました。私も調べてみました。ところが、この渡航趣意書を出さなければならないという法的根拠をどこにも見出すことができなかったのでございます。渡航趣意書というものを合計で十五通出しております。普通、書類は本文とそのほか若干のコピーということはございますけれども、一体十五通も出して、この十五通がどこへいくのかということでございます。私どもの聞いた範囲内では、この十五通のうち、大体十通ぐらいは、むしろ法務省あるいは公安当局、治安当局、そういうふうに回っておるというふうに聞いております。私ども貿易関係でございますから、一通はまさに通産省のほうに回るだろうと思いますけれども、これがどういうわけで十通もこういった公安、治安当局のほうに回らなければならないのか、全然私どもにはわからないのでございます。しかも、その渡航趣意書のほかに、相手国の中国から参りましたインビテーション、これもコピーをつくりまして、やはり十五通そこに添付して出さなければなりません。つまり、確かに中国側が呼んだかどうかという証明がなければいかぬ、こういうことでございます。旅券申請以前において、そういうことをまず要求されておるわけでございます。それではほかの国はどうかと申しますと、私どもの聞いておりますところでは、ソ連、東欧諸国の場合には、現在五通になっております。そうして、これに対する外務省側の回答も、この渡航趣意書を出しまして翌日か、おそくも翌々日にはほかの国並みに旅券申請をしてよろしい、こういう回答でございます。ところが、中華人民共和国、こういうことになりますと、少なくとも三週間、一カ月がもうざらだ、こういうふうな状況でございます。先ほど、先生はタイミングということをおっしゃいましたが、つまり、もう相当以前からやらなければなりませんけれども、それにつきましても、相手国の招待状というものが要るわけなんです。そうしますと、相手国といたしましても、日本の事情を考慮して、半年前に招待状を出すようなことは、まず常識的に考えてもあり得ない。ちょうどその時間に間に合うような時期に相手国も出すのは、これは当然のことでございます。ところが、間に合う時期にいただいたインビテーションをつけて、それから渡航趣意書を出す、こういう段階でございます。それでは何回も渡航申請書――つまり、旅券は半年間出発まで有効でございますから、一年に二回申請すればよいではないか、こういう問題がございます。しかし、それでは外務省は受け付けない。相手国のインビテーションがなければ、旅券も支給しない。まず渡航趣意書を受理しないわけです。ですから、そういう形になりますと、これはもうどうしても相手国からインビテーションが来なければならない。しかもその渡航趣意書を出してから、二十日から一カ月間どうしても待たなければならない、こういうふうに置かれております。
これは一般的な内容でございますが、もっと詳しく申し上げますと、こういうことがございます。これ以外の文書までいろいろ要求されております。たとえば私ども貿易の場合になりますと、これはどこから来るかわかりませんが、特にメーカーの場合で、あるいは商社の方でも、特にそういった機械関係、ココムの関係とか、こういうものと疑われるような技術なり、そういうものの渡航者の場合には、その人に対して、あるいはその会社に対して、どういうことを話しに行くのか、どういう技術交流の内容を話しに行くのか、こういうふうな問い合わせがございます。つまり、商売の話をするときに、その商売の内容がココムにひっかかるかどうか。ココムそのものも当然問題でございますが、それはちょっと別にいたしまして、そういうことを口実にして、旅券の申請をする以前に、そういう調査なり問い合わせなり、調べというものがございます。それから公務員の場合には、これは地方公務員まで含めまして、監督官庁と申しますか、主務官庁と申しますか、そういうところの旅行許可書というものが必要でございますが、これもほかの国とは違いまして、渡航趣意書の段階で一緒にあるいはそのあとで、やはり十五通要求されております。しかもこれは原本をそろえて十五通要求されております。また、労働組合員の場合ですと、組合専従者でありましても、休暇証明書というものを教育庁からもらって、それもまた十五通コピーをつくって出さなければなりません。また、大学の教授である場合には、以上のほかに、たとえば日程表を非常に強く要求されます。どこの大学に行くのか、どういう研究所に行くのか、どういう内容を話しに行くのか、その日程表をこまかにしたものを要求されるわけでございます。これも趣意書の段階において要求されておるわけでございます。また、労働事議などが起こりまして、それで裁判をしております場合には、担当裁判官の証明書が必要とされておりますが、同時にまた、本人から、公判期日に間に合うように帰ってくるとか、それに類した一札をとる、こういうこともございます。
つまり、一般的に、趣意書というのは、たとえば中国に行きます場合には全部に強要されておるわけでございますけれども、その中を見ますと、さらに細分化されて、こまかいさまざまな書類、そういうものが要求されておるわけでございます。したがいまして、これはもう私どもの感じでは、明白な事前審査でございます。私どもがほかの国に行く場合には、直ちに外務省に旅券の申請をしておるわけでございますけれども、それ以前に趣意書を出して、そしてそれが公安、治安当局で、いわば思想調査と申しますか、何と申しますか、わかりませんけれども、こういうふうな調査を全部やられて、しかもそれが二十日から一カ月間かかって、その上でやっと一人前に扱ってもらえる、こういう状況でございます。そしてそのときに外務省から参りますものに、その趣意書の受付のナンバーがございます。この何番と何番のナンバーの趣意書はおりました、こういう返事でございます。おりなかった場合にどうなるか。旅券申請すらも全然できないわけでございます。
以上申し上げましたように、たとえば中国へは旅券を出しておるではないか、こういうお話でございますが、その旅券を実際にいただくまでにこれだけの多くの不当な差別を私どもが受けておりまして、しかもこういった考え方で現在のこの法案が成り立っている、こういうふうにしか私は思えないのでございます。
この発言だけを見る →第一番に、実害を受けたことがあるかどうかという問題でございますが、これは私自身の体験から申し上げますと、ちょうど一九六七年に私一年ほど北京におりました。六七年のいろいろな商談がございまして、北京にも各社の代表がおいでになっております。それで、現実に毎日中国側の貿易顧問と話をするわけでございますけれども、やはり一人では一これは、貿易会社はいろいろ専門の部かございまして、機械にいたしましても何にいたしましても、専門的な知識というものが非常に必要でございます。ですから、一人ですべての商品を扱うということはできないわけでございます。したがいまして、たとえば豆の商談である場合には豆、機械でも、たとえば工作機械の場合には工作機械の専門家というものがどうしても必要でございます。しかしながら、北京におきまして、数カ月間各商社の代表が滞在しておりまして、中国と折衝しております。その中で、この中国市場と申しますものは、たとえば機械を取り上げましても、西欧諸国と非常に激烈な競争下に置かれております。したがいまして、値段の点につきましても、納期につきましても当然のことでございますが、向こうとしましては、技術的な内容、それがたとえば西欧諸国より日本のほうが非常にすぐれておるというような説明を非常に要求するわけでございます。ところが、残念ながら、おります人間は、そのことについてそう専門的な知識を持っておるわけではございません。ところが、西欧諸国の場合には、あとで申し上げますけれども、たとえば西ドイツの場合ですと、世界各国フリーに回れる旅券を持っておりまして、いついかなるときでも中国がオーケーと言ったらすぐに入ることができます。ところが、私どもが商談の過程で、こういう専門家をどうしても北京に呼ばなければならぬ、この専門家と向こう側の最終的なユーザーと話し合いを煮詰めて、この商談を成立させたいと思いましても、六七年の段階におきましては、早くてもとにかく四十日、つまり、先ほど申し上げました渡航趣意書を出すという段階から、旅券をもらいまして、香港のビザを取りまして、それから三日間かかって北京にやってくる、こういう状況でございます。したがいまして、話が起こってから現実にその人が入ってくるまで一カ月という期間はどうしても見なければならぬわけです。こういうことでは国際競争には全然勝てません。したがいまして、六七年のときに、私が北京におきまして各社の方々から痛切なことばとして言われておりますのは、何とかして早く自分たちの必要な専門家がせめてほかの国並みに来てほしい、来れるようにしてほしい、こういうことでございます。現在他の国に対する旅券は、まず趣意書というふうな段階は全くなくて、申請をすれば、およそ一週間ないしちょっとかかる程度でございます。そういたしますと、その時点におきましても、それと同じくらいでやれれば、十日間で北京に飛んでこれる。それが飛んでこれない、こういう状況でございます。この実害については、もちろん計算はいたしておりませんけれども、ほとんどの各社がせっかくいい商談をつかみましても、みすみす西欧に取られる、こういう実害は非常に大きいものだと考えております。
第二点につきまして、それでその次に起こってきます問題は、しかし、何とかしてその商談をものにしたい、非常に偶然的な要素もございますけれども、たとえば西欧諸国の中にそういう機械の専門家がおる、あるいはカンボジアにおる、あるいはインドにおる。国はいろいろございますけれども、こういうところにたまたまその社の専門家がおりまして、そこからすぐ北京に派遣すれば何とか間に合うのじゃないか、こういう問題がございます。この場合にも、今度の法案によりますと、これは全く違法になりますから、現状からいきますと、つまり、二十日間から一カ月間の同じような渡航追加の申請期間を経なければどうしても北京に来れない、こういうことになるわけでございます。こういたしますと、今度の法案が通りましても、簡素化どころではなくて、むしろもっときびしくなったとすらいえるわけです。つまり、世界じゅう――大きな貿易会社になりますと、世界じゅうに駐在員がおりまして、また専門家もいろいろあっちこっちに配置をしております。しかし、こういうふうな人材をすぐに使うということが今度の法律では全く禁止される、こういうことになるわけでございます。これが第二点でございます。
第三点につきまして、先ほど申しましたように、各社ほとんどそういう状況を受けております関係上、たとえば、それについての具体的な損害額というふうなものはまだ計算しておりません。したがいまして、これについて損害賠償の裁判というぶうなものは、私どもとしてはまだ起こしておりません。しかし、先ほどお話がございましたように、私どもとしては、いままでほんとうに民間の努力で、六億ドルに及ぶ日中貿易というものを築き上げてまいりました。この主要な功績というものは、まさに民間の商社あるいはメーカー、ユーザー、そういうふうな人たが、こういうほかの国よりももっときびしい制限の中で、差別の中でつくり上げてきたものでございます。したがいまして、そういう意味で、先ほど先生のおっしゃったような損害賠償の問題は、私どもはこれから十分に取り組んでいきたいというふうに考えております。
なお、もう少しこまかに、趣意書の手続というものについて、おそらく先生は国会議員という形でおとりになっていらっしゃると思うので、私どもが具体的にこの趣意書の問題でどんなふうにいじめられておるか、はっきり私どもの感情からいえば、そう申し上げたいような実情をちょっと申し上げたいと思います。
つまり、通常旅券の申請をいたします場合には、旅券の申請書というものをほかの国へ行く場合には出すわけでございます。ところが、私どもの場合には、まず、名前はいろいろありますけれども、一般的には共産圏渡航趣意書、こういうものを出さなければなりません。これを出して、これがオーケーでなければ外務省は旅券申請を受け付けないわけでございます。先ほど田上先生のおっしゃるように、全く違法な行為をとっておるわけでございます。この渡航趣意書というものはどういうものに基づくかということを申し上げますと、先ほど田上先生は、省令か何かにあるかもしれないというふうにおっしゃいました。私も調べてみました。ところが、この渡航趣意書を出さなければならないという法的根拠をどこにも見出すことができなかったのでございます。渡航趣意書というものを合計で十五通出しております。普通、書類は本文とそのほか若干のコピーということはございますけれども、一体十五通も出して、この十五通がどこへいくのかということでございます。私どもの聞いた範囲内では、この十五通のうち、大体十通ぐらいは、むしろ法務省あるいは公安当局、治安当局、そういうふうに回っておるというふうに聞いております。私ども貿易関係でございますから、一通はまさに通産省のほうに回るだろうと思いますけれども、これがどういうわけで十通もこういった公安、治安当局のほうに回らなければならないのか、全然私どもにはわからないのでございます。しかも、その渡航趣意書のほかに、相手国の中国から参りましたインビテーション、これもコピーをつくりまして、やはり十五通そこに添付して出さなければなりません。つまり、確かに中国側が呼んだかどうかという証明がなければいかぬ、こういうことでございます。旅券申請以前において、そういうことをまず要求されておるわけでございます。それではほかの国はどうかと申しますと、私どもの聞いておりますところでは、ソ連、東欧諸国の場合には、現在五通になっております。そうして、これに対する外務省側の回答も、この渡航趣意書を出しまして翌日か、おそくも翌々日にはほかの国並みに旅券申請をしてよろしい、こういう回答でございます。ところが、中華人民共和国、こういうことになりますと、少なくとも三週間、一カ月がもうざらだ、こういうふうな状況でございます。先ほど、先生はタイミングということをおっしゃいましたが、つまり、もう相当以前からやらなければなりませんけれども、それにつきましても、相手国の招待状というものが要るわけなんです。そうしますと、相手国といたしましても、日本の事情を考慮して、半年前に招待状を出すようなことは、まず常識的に考えてもあり得ない。ちょうどその時間に間に合うような時期に相手国も出すのは、これは当然のことでございます。ところが、間に合う時期にいただいたインビテーションをつけて、それから渡航趣意書を出す、こういう段階でございます。それでは何回も渡航申請書――つまり、旅券は半年間出発まで有効でございますから、一年に二回申請すればよいではないか、こういう問題がございます。しかし、それでは外務省は受け付けない。相手国のインビテーションがなければ、旅券も支給しない。まず渡航趣意書を受理しないわけです。ですから、そういう形になりますと、これはもうどうしても相手国からインビテーションが来なければならない。しかもその渡航趣意書を出してから、二十日から一カ月間どうしても待たなければならない、こういうふうに置かれております。
これは一般的な内容でございますが、もっと詳しく申し上げますと、こういうことがございます。これ以外の文書までいろいろ要求されております。たとえば私ども貿易の場合になりますと、これはどこから来るかわかりませんが、特にメーカーの場合で、あるいは商社の方でも、特にそういった機械関係、ココムの関係とか、こういうものと疑われるような技術なり、そういうものの渡航者の場合には、その人に対して、あるいはその会社に対して、どういうことを話しに行くのか、どういう技術交流の内容を話しに行くのか、こういうふうな問い合わせがございます。つまり、商売の話をするときに、その商売の内容がココムにひっかかるかどうか。ココムそのものも当然問題でございますが、それはちょっと別にいたしまして、そういうことを口実にして、旅券の申請をする以前に、そういう調査なり問い合わせなり、調べというものがございます。それから公務員の場合には、これは地方公務員まで含めまして、監督官庁と申しますか、主務官庁と申しますか、そういうところの旅行許可書というものが必要でございますが、これもほかの国とは違いまして、渡航趣意書の段階で一緒にあるいはそのあとで、やはり十五通要求されております。しかもこれは原本をそろえて十五通要求されております。また、労働組合員の場合ですと、組合専従者でありましても、休暇証明書というものを教育庁からもらって、それもまた十五通コピーをつくって出さなければなりません。また、大学の教授である場合には、以上のほかに、たとえば日程表を非常に強く要求されます。どこの大学に行くのか、どういう研究所に行くのか、どういう内容を話しに行くのか、その日程表をこまかにしたものを要求されるわけでございます。これも趣意書の段階において要求されておるわけでございます。また、労働事議などが起こりまして、それで裁判をしております場合には、担当裁判官の証明書が必要とされておりますが、同時にまた、本人から、公判期日に間に合うように帰ってくるとか、それに類した一札をとる、こういうこともございます。
つまり、一般的に、趣意書というのは、たとえば中国に行きます場合には全部に強要されておるわけでございますけれども、その中を見ますと、さらに細分化されて、こまかいさまざまな書類、そういうものが要求されておるわけでございます。したがいまして、これはもう私どもの感じでは、明白な事前審査でございます。私どもがほかの国に行く場合には、直ちに外務省に旅券の申請をしておるわけでございますけれども、それ以前に趣意書を出して、そしてそれが公安、治安当局で、いわば思想調査と申しますか、何と申しますか、わかりませんけれども、こういうふうな調査を全部やられて、しかもそれが二十日から一カ月間かかって、その上でやっと一人前に扱ってもらえる、こういう状況でございます。そしてそのときに外務省から参りますものに、その趣意書の受付のナンバーがございます。この何番と何番のナンバーの趣意書はおりました、こういう返事でございます。おりなかった場合にどうなるか。旅券申請すらも全然できないわけでございます。
以上申し上げましたように、たとえば中国へは旅券を出しておるではないか、こういうお話でございますが、その旅券を実際にいただくまでにこれだけの多くの不当な差別を私どもが受けておりまして、しかもこういった考え方で現在のこの法案が成り立っている、こういうふうにしか私は思えないのでございます。
相
相川理一郎#29
○相川参考人 御質問の第一点は、ソビエトもしくは中国を経由して行くというようなために、商機を逸し、損害を受けた事実はないかというお尋ねであったと理解いたします。その問題についてお答えいたします。いろいろありますけれども、典型的な例を一つ申し上げたいと思います。
昨年、私どもは朝鮮に約六百台の工作機械の売却契約をつくりました。そのうち三百五十台は、昨年中に朝鮮に船積みをしまして、これは日本円でいいまして約十億円ほどになります。これは通関統計に載っております。それから残りの二百五十台、約十億円は、ことしになって船積みされるもので、契約残として昨年末では残ったものです。こういう工作機械の大きな取引のほかに、これはいずれも昨年の春に成約ができたものでございますが、さらに昨年の夏から秋にかけまして、工作機械の追加商談が参りました。これは全体で百三十台で、金額は、かなり今度は大型のものがございましたので、三十億円ぐらいになる見込みでございました。日本の業界では、まとまった工作機械がすでに契約ができている上に、重ねてこういう大きな注文が来たので、たいへん意気込んで、私どもの会員商社の者たちも非常に積極的にこれに取り組んだわけです。そしてその商談がたいへん先方で急ぐということでございましたが、昨年の十月に、今年度の朝鮮との取引商談を進めるために、私どもの会員商社を中心に約三十名ほどの商社代表団をつくって、朝鮮へ年末に送りました。実はここで百三十台、三十億の商談を固めるという期待をもって出ていったわけですけれども、すでに日本側の代表団が着いたときには、これが西独のメーカーに全部振りかえられて、西独にかわってしまった。せっかく準備して行ったけれども、あと口の商談は一台もまとめることができなかったというような……。
この発言だけを見る →昨年、私どもは朝鮮に約六百台の工作機械の売却契約をつくりました。そのうち三百五十台は、昨年中に朝鮮に船積みをしまして、これは日本円でいいまして約十億円ほどになります。これは通関統計に載っております。それから残りの二百五十台、約十億円は、ことしになって船積みされるもので、契約残として昨年末では残ったものです。こういう工作機械の大きな取引のほかに、これはいずれも昨年の春に成約ができたものでございますが、さらに昨年の夏から秋にかけまして、工作機械の追加商談が参りました。これは全体で百三十台で、金額は、かなり今度は大型のものがございましたので、三十億円ぐらいになる見込みでございました。日本の業界では、まとまった工作機械がすでに契約ができている上に、重ねてこういう大きな注文が来たので、たいへん意気込んで、私どもの会員商社の者たちも非常に積極的にこれに取り組んだわけです。そしてその商談がたいへん先方で急ぐということでございましたが、昨年の十月に、今年度の朝鮮との取引商談を進めるために、私どもの会員商社を中心に約三十名ほどの商社代表団をつくって、朝鮮へ年末に送りました。実はここで百三十台、三十億の商談を固めるという期待をもって出ていったわけですけれども、すでに日本側の代表団が着いたときには、これが西独のメーカーに全部振りかえられて、西独にかわってしまった。せっかく準備して行ったけれども、あと口の商談は一台もまとめることができなかったというような……。