穗積七郎の発言 (外務委員会)

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○穗積委員 お尋ねした点が少しそれましたけれども、時間がまだ自由にあるわけではありませんから、少し前へ進めたいと思います。
 そこで、お尋ねいたしますが、もう一点、先ほどお尋ねした中で、これは、先生は実務家でもないし、それから裁判官でもないわけですから、国益の乱用であるかないかということの判定をされることは、必ずしも答えることが適当でないとお考えになれば、お答えいただかぬでもいいわけですが、先ほど言ったように、同じ人が、同じ旅行目的で、同じ政府に対して、中国並びに朝鮮へ続いて旅行しようとした、便宜上ですね、北京から平壌へ続いて行くのだといって、申請をしたときに、中国には出したけれども、朝鮮民主主義人民共和国に対しては、渡航先として記載を拒否したということがありましたときに、これは国益の乱用ではないか、こう思うのです。その場合、旅行目的が初めから、非常に公安を害する、社会の秩序、善良な風俗に反することをどうも計画しておるようだ、その証拠は顕著であるというときには、これは別ですよ。許可さるべき範囲内における旅行目的、それで、中国には出したが、朝鮮には出さなかった、こういうことになりますと、朝鮮はいま罰則に触れる結果になるわけですね。こういうことは、私は国益解釈の乱用であると考えておりますが、それは具体的にどうお考えでございましょうか。
 それから続いてお尋ねいたします。
 さっき第二の重要な先生の御意見の中で、大事なのは横すべりと罰則の問題なんですね。これはもし誤解があると先生の名誉のためにいけませんから、ちょっと失礼ですが、申し上げておきます。横すべり制というのは、本人が従来の規定には罰則がなかったので、その抜け穴を利用して、それでつい渡航目的記載の追加または記載の手続をあえてしないで、脱法または違法な横すべりをやったんだということではないのです。横すべりといえば、そういう印象を持ちがち、違法あるいは脱法性を連想しがちでございますが、そうではないのです。全然出さない。同じ政府の中でも、通産なり大蔵が、大いに北朝鮮へ行って貿易をやってくれ、中国ともどんどん拡大してくれということを言っておる。それは責任ある態度で奨励されておる。私語ではないのです。それで今度は、外務省、法務省はこれをチェックする、こういうことなんですね。そうなれば、申請を出して発給するのは外務省ですから、外務省がうんと言わぬ以上いけないわけですよ。そこで、外務省は一体なぜかといえば、それがもし知れた場合には、韓国から、二分政権の中の一方の韓国から、わが国に対して適視だ、非友好的だといって文句をいってくるから困るのだ、こういうことになるわけですね。それ自身が私は国益判断で間違っておると思いますけれども、そういう事実ですから、実は外務省も、北朝鮮へ行く目的であるということは初めから知っているのですよ。事前に知っておるわけで、行った事実は、何か情報によって行ったことを知ったのではない。脱法または違法行為を知ったのではないのです。初めから知っておる。なぜそういうことをするかというと、日本政府が平壌または朝鮮民主主義人民共和国へ行くということのその渡航先を記載した旅券をその者に出すことは、韓国に対して敵視行為をとったということをみずから証明することになるから、黙って行ってくれ、もし文句が出たら、こっちはそんな者は許可した覚えはないのだというエクスキューズをもって韓国には説明する、そういうことがもう公然たる秘密といいますか、もっといえば、暗々裡の了解のもとで、便宜的にそういう方法がとられておったわけですね。
 それからもう一つは、初めから渡航目的はなくても、中国へ行っておる最中に、たとえば商談上あるいは友好上の政治的の意見の交換の中で、隣国の朝鮮にもぜひ足を伸ばすことが貿易上必要になってきたということで行こうとする、そういう場合も多々生ずるわけです。そういうときに、届け出の義務は、これは旅行者に負ってもらっていいと思いますけれども、それに対して全然出さないという事実がずっとあったわけですね。その上での横すべりなんですよ。だから、横すべりは違法性もなければ、違法の主観も全然ない。犯意もないわけです。全然犯意はない。政府もそのことは知っておる。それで、むしろそれを奨励しておる。そういうことで行なわれてまいりましたから、罰則がないから、これで助かっておったわけですよ。今度はそれに対して、いまおっしゃるように、差別待遇をするのはあたりまえだ、国益の判断でこれは制限して解釈すべきであって、乱用は慎むべきであるけれども、それもまたやむを得ないという解釈になってまいりますと、そうすると、未承認国であるということ、それから外交上の国益、そのときの政府の方針に合致しないということ、国益に反するという理由で発給しない。それで行ったときには、一方的に罰則を受ける。本人は全然犯意はないですよ。こういうことがこの法律でできてくるわけですね。これは法の構造上から見て、もう全く矛盾撞着もはなはだしい法の構成であると私は考えるわけです。この横すべりと罰則問題についていかがでございましょうか。

発言情報

speech_id: 106103968X03019690703_021

発言者: 穗積七郎

speaker_id: 15879

日付: 1969-07-03

院: 衆議院

会議名: 外務委員会