穗積七郎の発言 (外務委員会)

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○穗積委員 主権国として条約上持っておる権利は放棄しないのだ、すなわち、事前協議権はあくまで放棄することはない、いわゆる包括的な自由使用権を相手に与えることはないのだ——主権を放棄しないと言いながら、形式的なことであって、内容についてはケース・バイ・ケースで、向こうから事前協議にかけたときに、これに対してイエスを与えれば、与えた結果が不利になれば、これは主権放棄と同じことですよ。これは再々申し上げますように、事前協議権というものは、第五条の事前行動の義務規定と相関連をしておるわけですから、義務だけが残るわけでしょう。だから、表面は国民に向かっては、主権国としてあくまで権利は放棄しない、そしてわが国の軍事、外交権は自主的な立場で処理するのだ、そう言っておいて、実際はイエスをやる、戦争に加担をする、戦争に巻き込まれる危険に近づく。こういうことは、新安保条約審議の当時から、条約の内容といたしましても、あるいは政府の態度といたしましても、少なくともそれは堅持するということが国民の理解としては一致しておるわけです。それはこの際形式的には放棄していない。その判断は自主的に行なった。しかし、実際はどうかといえば、自由使用と同じような戦争加担、戦争に巻き込まれる危険に近づいていく。こういうことになれば、何も主権の放棄はしないとか、自主的な問題ということにはならぬではありませんか。だから、そういうことでごまかすことは、これは実に官僚的な狡知だと思うのです。小ざかしき知恵であると思うのです。
 そこで、私はお尋ねいたしましょう。日本の国益になるかならぬかがメルクマールだ、スタンダードだ、基準だ、ものさしだと言われるわけでしょう。たとえばベトナム戦争がまた再開した場合に、これをやったほうが日本のためになるかならぬか、そのときに、安保条約の——われわれは反対でありますけれども、安保条約、与えられた国際条約、現存する国際条約のワクの中で考えてみましても、このときにおける日本の義務というものは、あくまで極東の安全保障には関係ないのだ、日本の固有の自衛のみに限っておるわけですよ。極東の範囲の問題についてもそうですし、適用の範囲についてもそうです。極東の安全保障に対して責任を持つのは米軍のみである。そういったときに、いまのお話のように、政治的に見て、一昨年、佐藤首相は、ベトナムに出兵をしていない国の首相として、あとにも先にも最初に訪問した。そしてベトナム戦争を支持した。日本の自衛に何の関係がありますか。そういうふうに日本の自衛に関係がある、日本の利益になるということ、これはこの間から旅券法なり出入国管理法でも問題になりましたが、そうなれば国益の解釈の問題にかかってくるわけです。そうすると、時の政府の偏向したイデオロギーあるいは偏向した階級的なへんぱな利益、あるいはアメリカに追随をするというようなことで、これを国益と称して、実はその主体性を失い、戦争に加担をし、戦争に巻き込まれる危険を増大している。それが国益である、こういう結果に発展していくわけです。したがって、その場合におきましても、国益の判断は時の政府にまかせるということではない。たとえば、それを外交権を持っておる政府がそうかってに解釈したにしても、この安保条約の体制の中では自衛に限るということは、これはもう変えようと思っても変えることのできない規定であると私は思うのです。制限であると思うのです。そういうことでありますならば、いま申しましたように、南ベトナムの戦争が継続再開されたというような場合に、日本領土となった沖繩基地からの発進に対する態度というものは明確でなければならぬと思うのです。いかがですか。自主性の問題と国益の問題です。そうなりますと、現安保条約の体制からいきましても、日本の義務と権利というものは自衛にのみ限る、すなわち、その場合においては地域についても制限があるわけでしょう。これをかってに拡大解釈すれば、世界じゅうのできごとが全部日本の自衛に関係がある。いまアメリカがとっておるのと同じことになります。特に一昨年の十一月に、佐藤・ジョンソン共同声明の中で、佐藤さんは、第五項でありましたか、特にこのことは積極的に発言もされて、日本の自衛のみならず、極東の安全について、日本の国力の許す限り積極的貢献を果たす決意を表明したと書いてある。そうであるならば、安保体制というものは、実は日本側から見て、日本の固有の自衛に局限をするというのではなくて、極東アジア安保体制に足を踏み出している。これは共同声明の国際関係における法律的または政治的義務問題とも関連いたしまして、明らかに安保条約の極限を割っておるものですね。いまあなたは、自主性は放棄しない、国益の立場に立って判断をすると言っておるわけです。それだけでは私どもは納得できないし、それだけでは歯どめになりません。安保条約自身をじゅうりんするものですよ。拡大するものです。変質するものです。そういう意味で、今度の会談の中で向こうが言ったことがなぜ報告できないのですか。ベトナム作戦の場合における発進についてどうかということを聞かれたという事実があったとしても、それに対してわれわれがあなたよりは危険な判断をするなんということはあり得ません。あなたに判断能力があるなら、われわれにも判断能力がある。国会並びに国会議員が判断力がないから、そういうことは知らしむべからずという態度でしょうか。さっきから聞いていると、私は非常に憤慨せざるを得ない。アメリカが何と言ったということは、おれだけ聞いておればいいのだ——大事なところじゃありませんか、なぜ秘密にされるのですか。各新聞は全部このことの内容を報道しておるでしょう。それじゃどこから漏れたのですか。事実がないとすれば、この報道は誤りなわけですね。事実無根の誤報なわけです。それらの問題をもう一ぺん私は注意を喚起しまして、この自由発進に対するイエスの問題についての向こう側の態度並びに日本側の態度をはっきりしてください。今度の会談で一番重要な点じゃありませんか。それじゃあなたは口では安保条約の変質はしないと言いながら、これは重大な変質ですよ。

発言情報

speech_id: 106103968X03419690801_018

発言者: 穗積七郎

speaker_id: 15879

日付: 1969-08-01

院: 衆議院

会議名: 外務委員会