斉藤正男の発言 (災害対策特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○斉藤(正)委員 昭和四十四年八月の集中豪雨による被害状況調査のため、議長の承認を得、去る八月十八日から四日間、新潟県及び富山県に派遣されました派遣委員を代表して、調査の概要を御報告申し上げます。
 派遣委員は、自由民主党の湊徹郎君、日本社会党の私、斉藤正男、民主社会党の小沢貞孝君及び公明党の小川新一郎君の四名で、ほかに地元選出議員多数の御参加を得、現地の実情をつぶさに調査してまいりました。詳細は、県及び市町村からの陳情書等、資料を委員長のお手元に提出いたしておりますのでそれらを御参照いただくこととし、以下簡略に御報告申し上げます。
 今回の災害の特徴は、ゲリラ豪雨と呼ばれるきわめて局地的な集中豪雨で、一つの地区が土石に埋もれて壊滅する等、惨状をきわめ、全体的な災害の量はもちろん、局地的な災害の質において特異なものがありました。
 初めに、新潟県について申し上げます。
 県当局の説明によれば、八月九日未明から十二日にかけて、集中豪雨が上越、中越地方を襲い、被害は激甚をきわめ、八月九日青海町及び糸魚川市に、十二日加茂市及び六日町に災害救助法を発動、水害対策本部を設置、関係諸機関からの協力を得、全力をあげ応急対策を実施、民生の安定につとめているとのことでありました。県の報告による被害状況は、八月十八日現在、死者十六名、行くえ不明五名、重傷者二十一名、住家全半壊二百五十二戸、床上浸水八千百九十三戸、被害総額は約四百十八億円の巨額にのぼっております。
 加茂市では、八月十二日、加茂川、下条川等がはんらん、全市の約八割に当たる約六千戸の住家が床上浸水する等、激甚な被害を受け、被害総額は約百六十億円にのぼり、中でも商工業被害が約百二十億円に達し、同市の主要産業である繊維、木工業者は壊滅的被害を受けたとのことであります。視察した市内商店街には、家の中から排除した泥土がうずたかく積まれ、七谷地区の樋脇橋は橋脚が流され、橋がまん中から折れ、上水道の給水管が破損、市内は給水不能となり、応急突貫工事を行なっておりました。黒水地区では堤防の決壊による家屋の流失の被害を、下条長福寺地区では下条川のはんらんで路上約二メートル、川沿いの農家四十四戸が軒下まで浸水した被害を、上下条地区では山くずれによる住家の倒壊の被害を視察してまいりました。市当局及び関係者並びに田上村当局から、加茂川水系の抜本的改修、中小企業者の救済措置等について強い要望がありました。
 六日町では、南魚沼郡の被災町当局等から説明を聴取、六日町は被害総額が約四十一億円にのぼり、山腹崩壊により深沢地区の四十戸が埋没の危険にあり、国営、団体営のパイロットファームが完成後一年目で壊滅的被害を受けたとのことで、早急な救済措置が望まれます。なお、小出町長から魚野川の堤防のかさ上げ等について、大和町長から国鉄の橋梁の改築等について要望がありました。視察した六日町三国川清水瀬橋は、橋が流失、仮橋を建設中で、右岸が幅約五十メートル、長さ約二百メートルにわたってえぐり取られ、鉄砲水の恐怖をまざまざと物語っておりました。
 高田市厚生会館では、上越支所長から管内の総被害額は約九十二億円にのぼり、関川の水防が同地方発展のかぎであるとの説明を受け、高田市、新井市、柿崎町、松代町及び吉川町各当局等から、それぞれ被害状況等を聴取、特に高田市長から関川の早急な抜本的改修、柿崎町長等から地すべり危険地区の農家の移転に助成措置を講じられたいとの要望がありました。
 糸魚川市の被害は、姫川支川等のはんらんによる市内の浸水及び農地の冠水等で、被害総額は約四十九億円にのぼり、また、同市では都市排水に問題があり、下水道の建設を四十五年度から計画していたやさきの災害で、本年度から繰り上げて実施できるよう特別の配慮を講じられたいとのことでありました。
 青海町外波地区は、外波川からの土石流により同地区百六十戸、全戸が土砂に埋まり、壊滅するという惨状で、ひどいところでは屋根まで土砂に埋まり、ものにつかれたようにわが家を掘り続ける住民の姿は、水害の悲惨さを如実に物語っておりました。町当局の説明によれば、八月九日、二時間で百三十二ミリという集中豪雨のため、外波川に約十万立方米の土石が流出、堤防を決壊し、国道橋、鉄道橋につかえたため、水と土砂が農道橋から部落に入り一瞬にして地区じゅうが泥土と化し、住民は小学校に避難、たき出しを続けているとのことであります。町当局からは、外波川の早急な改修のほか、家屋の被害が大きく自力で再建できないので低利の特別な融資の配慮を、また地区の分散を考慮して、土石で埋まった農地の上に三千坪、六十戸の宅地造成を計画しているので、この助成に特別の措置を講じられたいとの要望がありました。
 県からの要望事項のおもなる点について申し上げます。第一は、激甚法の適用について特段の配慮をされたいこと。第二は、公共施設、農業用施設の災害復旧にあたっては、早急に災害査定を実施し、復旧事業の早期着工をはかり、大幅な改良復旧、復旧年次の短縮の措置を講ぜられたいこと。第三は、現行の治山、治水五カ年計画を抜本的に改定され、強力に実施されたいこと。第四は、県及び被災市町村に対し、特別交付税の大幅交付をされたいこと。第五は、降雨状況を的確迅速に把握するため水系別雨量観測体制の強化措置を講じられたいこと。第六は、個人災害に対する援助について前向きで検討されたいこと等であります。特に、上越地方は昭和四十年九月の台風第二十四号で、中越地方は昭和四十二年八月の集中豪雨によって、激甚な災害を受け、重ねて今回の災害であり、これが復旧にあたっては、国はその実情を十分に勘案すべきであると考えます。
 次に、富山県について申し上げます。
 県当局の説明によれば、八月八日夜半から十二日朝にかけ、県東部山岳地方を中心に、時間最高雨量九十二ミリ、三日間で七百七十三ミリという驚異的な集中豪雨に襲われ、黒部ダムが百年に一度とした計画流水量毎秒千二百トンを四百三十二トンもこえる千六百九十二トンの水がダムへ流入、同ダムから毎秒千二百七十一トンの水が下流に流出する等、県東部の各河川、谷川が瞬時にしてはんらん、多大の被害をもたらしたとのことであります。県では、八月九日朝日町に、十一日滑川市、立山町、上市町及び入善町に、十二日富山市、魚津市、宇奈月町及び大山町に災害救助法を発動、八月豪雨災害対策本部を設置、地区住民、自衛隊等の協力を得、復旧に全力をあげているとのことでありました。
 県の報告による被害状況は、八月二十日現在、死者五名、行くえ不明一名、重傷者九名、住家全半壊百四十一戸、床上浸水二千百十五尺被害総額は約二百四十億円にのぼっております。
 朝日町の被害は、山地崩壊及び土石流によるもので、約十二億六千万円の被害額にのぼり、視察した笹川地区では土石流で河床が上がり、住家が浸水、また簡易水道施設が埋没、林道が各所で決壊するという大きな被害でありました。
 入善町では、黒部川の右岸に当たる福島地区の堤防決壊現場を視察、八月十一日、黒部川の洪水流水量毎秒四千二百トンに対し五千トンの水量が流れ、堤防が約四百米にわたって決壊、入善町に浸水、甚大な被害をもたらしたとのことであります。台風期を目前に応急な築堤工事を行なっていましたが、ふたたび大雨に襲われると決壊のおそれがあり、川原に川倉という同地方独特の工事をするなど、関係者は応急対策に苦慮しておりました。
 宇奈月町では、愛本橋の流失現場を視察いたしましたが、この橋は、黒部川が急に狭隘となった谷間に愛本ダムと並列して建設してあり、八月十一日、計画流水量毎秒二千トンに対して五千トンの水が流出、一瞬にして鉄骨の橋を押し流し、濁流は愛本地区の住家に浸水、右岸の旅館では水位が三メートルにも達し、住民を恐怖のやみにおとしいれたとのことであります。
 滑川市では、入会橋地区を視察、入会橋付近は早月川の左岸の県道が約二百メートルにわたって流失、橋梁が流失、交通不能となり、上流の地区は孤立し、下流にあった上水道施設が埋没、全市にわたって時間給水を家施中で、被害総額は約九億五千万円にのぼっているとのことであります。
 上市町では、眼目新地区で上市川左岸の堤防が約六百メートルにわたり決壊、県道約四百メートルが流失の現場を視察、同町は八月十一日の豪雨により、町内至るところで堤防が決壊、被害は激甚をきわめ、被害総額は約四十億円にのぼっているとのことであります。
 立山町では、泉地区及び千垣地区の被害状況を視察、泉地区では、白岩川の左岸堤防が決壊、濁流が富山地方鉄道の軌道を流し、住家の軒下まで浸水、決壊した堤防は応急工事でどうにかふさがれ、軌道も応急的に復旧していたものの、付近の農地は土砂に埋もれ、激甚な被害を物語っておりました。千垣地区では、常願寺川の右岸堤防が約千メートルにわたって決壊、住家十七戸が流され、農地が激流にえぐりとられた惨状がそのまま残され、被害を受けた住民は、山ぎわの保育所に避難しているものの、山くずれのおそれがあり、生命の危険と生活の不安におののいていました。上流の千寿ケ原地区の住民は陳情のため山をおりてきて、住家のほとんどが流失するという壊滅的被害を受けたと、涙ながらにその窮状を訴えておられました。同町の被害総額は約六十八億円にのぼっているとのことであります。
 大山町では、小見地区の和田川、霞橋付近を視察、ここは、上流の崩土の流出による被害で、北陸電力発電所が流失、鉄塔が折れ、土台のコンクリートが破壊され、高圧線が寸断され、右岸の堤防の決壊により社宅が流失、霞橋への取りつけ道路は押し流されており、同町の被害総額は約二十三億円にのぼるとのことでありました。
 県からの要望事項のおもなものを以下申し上げます。
 激甚災害、局地激甚災害の指定。単独災害復旧事業費に対する起債ワクの拡大。被災者に対する所得税の減免または延納。特別交付税の配慮。普通交付税の繰り上げ支給。直轄河川の早期復旧。道路、河川、砂防の災害復旧の早期着工。小河川等の改修事業の促進。治水ダム及び多目的ダムの建設促進。天災融資法に基づく天災の指定。治山災害、林道災害の復旧。農地、農業用施設災害復旧の特別措置。自作農維持資金の災害資金ワクの拡大。中小企業に対する緊急融資。公園施設、水道施設の早期復旧。気象観測機能の抜本的強化。利水ダムの予備放流に対する補償制度の確立等であります。
 最後に、調査団として今回の集中豪雨による災害の調査を終えて感じました点について申し上げます。
 まず、第一に気象業務の整備拡充についてであります。特に、裏日本地方におきましてはその整備の立ち遅れが著しく、今回の災害においても各方面から指摘されているところであります。両県は豪雪地帯に加え複雑な山岳地帯が多く、次の事項について早急な整備が必要であります。一、各河川の水系ごとに降雨量を常時監視できる体制を確立すること。二、立山山系に気象レーダー観測所を設置、また弥彦山レーダー観測所を整備拡充すること。三、富山県東部に測候所を新設、また各気象通報所等を整備拡充し、住民への正確な気象情報を迅速に伝える体制を確立すべきであると考えます。
 第二は、中小河川の改修についてであります。今回調査にあたった地方は原始河川が多く、全般的に治水対策がおくれているように思われます。これら中小河川の改修については、地方自治体の財政力から見て早急に実施することは困難であり、国の援助を強化し、治水対策を強力に推進すべきであります。
 第三は、利水ダムの予備放流に対する補償についてであります。富山県からの要望にもありましたが、最近の局地的豪雨による大災害の発生にかんがみ、発電ダムにおいても予備放流等による洪水調節の機能を持たせ、その際の補償の制度を考慮すべきであると考えます。
 第四は、激甚法の運用についてであります。今回の調査で、被災自治体が一番強く要望しておりましたことは、激甚災害及び局地激甚災害の指定を受けることであります。その適用にあたっては、災害の実情、地域的特殊性等を勘案し、弾力的に運用されんことを切望します。
 第五は、個人災害の救済についてであります。個人災害の救済については従来から種々議論され、制度的困難さも指摘されていますが、最近の災害の実態にかんがみ、個人災害に対する援護措置等について真剣に検討すべき時期ではないかと思われます。
 終わりに、新潟及び富山県並びに各市町村の切実な要望について、政府の積極的な措置を強く要望し、今回の調査に御協力いただいた関係各位に深く謝意を表し、報告を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 106104339X01219690902_002

発言者: 斉藤正男

speaker_id: 6219

日付: 1969-09-02

院: 衆議院

会議名: 災害対策特別委員会