八木徹雄の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○八木徹雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和四十四年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算の三案に対し賛成をいたし、日本社会党提案の組み替え案に反対の意向を表明するものであります。(拍手)
さて、わが国経済は、昭和四十年の不況を克服して以来、今日まで一貫して、実質一〇%をはるかに上回る成長を続け、本年もなお力強い上昇の勢いを示しております。特に昨年は、アメリカのドル防衛措置、国際金融の激動等があり、野党の諸君は、輸出が政府見通しの一五・二%も伸びることはないと、激しく政府を追及したのでありますが、事実はこれらの批判に反し、輸出は当初の見込みを大幅に上回り、国際収支はみごとに改善され、いまや外貨準備は三十億ドルにも達し、大型景気の実現を見ようとしているのであります。(拍手)このことは、国民の創意と努力によることはもちろんでありますが、日米安保体制下、防衛費の重い負担を免れつつ、政府・与党のとってまいりました一連の財政経済諸施策のよろしきを得ている結果にほかならないものと確信いたすものであります。(拍手)
ひるがえって、明年度のわが国経済を展望いたしますに、内外の経済環境必ずしも楽観を許さざるものがあります。すなわち、国外においては、アメリカの経済拡大テンポの低下、国際通貨不安、また、中近東、東欧などの政治的不安が横たわり、国内においては、産業界の一部にいわゆる需給バランスのかげり現象が生じ、長期的には、消費者物価の上昇、公共投資の立ちおくれ、労働力の不足、経済の国際化の一そうの進展など、解決を迫られているもろもろの課題に直面いたしております。
このような諸情勢のもとで、わが国が今後一そうの発展を続けていくためには、物価の安定、社会資本の充実、産業構造の改善、科学技術の振興、労働力の積極的活用等により、経済の一そうの効率化をはかり、均衡のとれた成長を持続させつつ、明るく豊かな社会を築いていくために、私どもは最善を尽くさなければならぬと考えるものであります。明年度予算は、かかる内外経済の動向を十分に認識しながら、財政体質の改善、資源の適正な配分を通じて、長期にわたってわが国経済発展の基礎を強化するために必要な諸施策を十分に盛り込んで、国民の期待にこたえた予算であると確信いたすものであります。
以下、本予算の特長ともいうべき二、三の点をあげてみたいと存じます。
その第一は、財政の節度を保っているということであります。
すなわち、税の増収見込み額約一兆二千億円を、所得税の減税と、国債の減額に、それぞれ千五百億円ずつを充て、一つには国民の減税への強い要望にこたえ、一つには財政の体質改善につとめるとともに、残り九千億円を公共投資等諸施策の充実と経費の当然増に充て、歳出規模を、前年度当初予算に対し、一五・八%の増加にとどめたことであります。世論の一部には、この伸び率は、経済成長の伸び率一四・四%を上回るから景気刺激型であるとの批判があります。しかし、財政規模と景気の動向との関係は、政府の財貨サービス購入額で推計することが本筋であります。ところで、明年度の政府財貨サービス購入の伸び率は一二・三%が見込まれておりますので、この点から、財政の経済に与える影響は、中立型か、やや警戒型とも申すべきものであります。また、公債依存率を七・二%に低下させ、将来における財政の景気調整能力を一そう高めるとともに、好況時に際しては公債発行額を減らすという、公債政策に欠くべからざる節度を保ったことは、まことに適切な措置であると考えるものであります。このほか、本年度に引き続いて総合予算主義を堅持するとともに、補助金については四百十七件に及ぶ整理、合理化を行ない、さらに、行政機構等の新設を抑制し、また、公務員の三カ年五%削減の線に沿って定員の削減を着実に実行するなど、財政硬直化の打開に一そうの努力を重ねていることに対しても、あらためて賛意を表するものであります。
第二は、物価の安定に配慮いたしておることであります。
消費者物価上昇は、いわゆる構造的要因がその背景となっていることは明らかであります。したがって、低生産性部門で働く人々の賃金、所得の上昇が消費者物価の上昇となって消費者に転嫁することを避けるため、明年度予算では、農業、中小企業の生産性向上、労働力の流動化の促進、競争条件の整備、流通機構の改善、消費者教育などについて、前年度に対し二一%増の七千四百億円を計上し、施策の充実につとめておることは、適切な措置と存じます。しかし、物価問題は必ずしも構造的要因のみではなく、需要の圧力も物価上昇の大きな要因であります。経済成長をはかりながら物価の安定を期するためには、常に生産能力に見合って需要が調整せられ、いやしくも総需要の圧力によって物価が刺激されないよう、財政金融の慎重な運営がなされる必要があります。明年度予算では、政府の財貨サービス購入をかなり控え目に押え、財政体質の改善、財政の効率化に特につとめておりますから、少なくとも、財政面から物価上昇を招かないものと認められるのであります。しかし、懸念されますことは、最近、賃金コストの上昇が卸売り物価の下方硬直的傾向を強めていることであります。賃金所得の向上は、常に生産性の向上によってのみ実現が期せられるということは、経済の大原則であります。したがって、物価上昇を避けようとすれば、賃金コストの上昇率を国民経済全体の生産性の上昇率の範囲内に見合うような節度を保つことが必要であります。かかる意味合いで、労使とも賃金については慎重な配慮を要するのであって、総評の一律一万円ベースアップ等は、生産性の向上を大幅に上回る物価値上げの要求であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
第三は、財源を適正かつ効率的に配分していることであります。
明年度予算において、公債発行額を大幅に減少するなど、窮屈な財源の中にあって、社会保障費、道路、港湾、農業基盤の整備等公共事業費、文教及び科学技術振興費、貿易振興及び経済協力等、いずれも平均伸び率を上回り、きめこまかく、かつ詳細にわたって措置を講じており、この面から、明年度予算は、まさしく施策充実型予算と称してあえて過言ではないと存ずるのであります。(拍手)
第四は、減税であります。
一般減税を特に所得税一本にしぼり、平年度千八百二十五億円という、いままでの最高減税を実現し、また、地方税についても、住民税七百三十五億円という大幅減税に踏み切ったことは、まことに刮目すべきことであります。特に、課税最低限をイギリスの七十八万八千円、西ドイツの八十八万円を上回る九十三万五千円にいたしたこと、さらに、中堅以下の所得者層に対する税率緩和が、十二年ぶりに実現を見たこと等であります。社会発展のにない手として、外においては第一線で活躍し、内にあっては家庭生活の中軸として、子息等の養育等に任ずる中堅所得者への配慮は、まことに適切な措置であるといわなければなりません。
以上申し述べた諸点から見て、明年度予算は、当面するわが国経済社会の諸課題に積極的に取り組み、現在の好況を維持しつつ今後の長期的発展を保障し、国民諸君に満足と希望を与えるものと確信いたすものであります。
次に、政府に一言の要望を申し上げたいと思います。
すなわち政府は、物価抑制にき然たる態度で臨んでいただきたいということであります。順調な経済成長のもとで、国民所得も大幅に増加いたしておるとは申せ、五%をこえる消費者物価の上昇は問題であります。そして、いまや、物価は上がるものといった風潮がびまんし、一部の企業では、生産性の向上よりも、いとも安易に価格を引き上げて、利潤、賃金の獲得につとめておる事実もあり、まことに憂慮すべき現象があらわれております。この際、少なくとも、政府の関与する物価、料金等については、値上げ抑制のきびしい態度を堅持するとともに、輸入政策の適切な運用、各種の保護政策の再検討、競争条件の整備等をはかるとともに、生産性の向上の成果を価格の引き下げに配分できるよう、環境づくりに十分なる配慮をいたされるよう強く要望申し上げる次第であります。
最後に、日本社会党の組み替え案について一言申し上げます。
社会党の組み替え案は、その基本において、わが党と所見を全く異にするものであり、その内容もまた現状においては実現不可能な要求であります。しかし本年は、従来の公式的観念論より、若干なりとも現実に近づこうといったかすかな気配も感じられないわけではありませんが、残念ながら、われわれは賛成することはできません。
以上、政府提出の三案に賛成いたし、日本社会党の組み替え動議に反対いたし、私の討論を終わります。(拍手)