小平忠の発言 (本会議)
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○小平忠君 私は、民社党を代表いたしまして、政府提案の昭和四十四年度予算関係三案に対しまして、反対の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
なお、社会党提案の組み替え動議に対しましても、遺憾ながら反対せざるを得ないのであります。
わが党は、本日の予算委員会の採決に際し明らかにしたとおり、次のような骨子の組み替え動議を提出したのであります。すなわち、昭和四十年代の主要な課題を、福祉、教育国家の創造に置き、この長期的展望に立って、明年度予算を積極的な国民福祉予算に組み替えることであります。この観点から、明年度予算の規模は、政府案より五百四十六億円多い六兆七千九百四十一億円にするとともに、これによる景気刺激的な効果を相殺するため、一方において、大企業法人所得に対し三%の景気調整税を臨時的に設け、国民経済全体の均衡ある発展をはからんとしているのであります。
次に、税制改正におきましては、明年度でいわゆる百万円減税を実施し、新たに勤労未成年者控除を設け、働く未成年者は原則として無税としたのであります。これによる歳入減は、利子、配当の優遇制度など、現在の不合理な税制を極力是正することによって補てんしていることは言うまでもありません。
次に、歳出面におきましては、わが党が従来から強く主張しております行政改革を断行するとともに、防衛費、産投出資を一部削減して、三千六百十七億円を減額し、これを純歳出増の五百四十六億円を、全額民生向上対策費に重点的に増額したのであります。そのおもなものは、国鉄運賃値上げをストップする財源として五百十億円、児童手当の創設による一千二百億円などを増額しているのであります。さらに、物価対策費、文教費、農業、中小企業近代化対策費などをそれぞれ増額したのであります。
以上、わが党の組み替え案の骨子を簡単に御説明いたしましたが、この立場に立って、以下、政府案に対する反対の理由を明らかにしたいと思うのであります。(拍手)
政府提出の予算関係三案に反対する第一点は、わが党が従来しばしば指摘してまいりましたごとく、政府の財政政策における一貫性の欠除と無計画な姿勢であります。
このことについては、政府自身が十分承知のように、あるときは財政新時代の到来と称して、財政主導型の経済成長を進め、財政してインフレ的要素を含めて無計画に膨張させたのでありますが、その次は、膨大な額にのぼる公債の発行が主要原因なるにもかかわらず、財政硬直化の打開を唱えて、総合予算主義という名のもとに、社会保障関係費、公共事業費などの民生的支出を抑制して国民生活の不安と停滞をもたらし、その結果、国民の不信を買うや、四十四年度では再び急転して総花的な予算を組むのみならず、反面、防衛費などの無定見なる拡大をはからんとしています。
また、経済政策の基本となるべきはずである経済社会発展計画も、わずか二年にして破綻し、結局は、民間設備投資は大幅に伸長させたものの、国民生活に密着した社会資本は大きく立ちおくれ、物価の高騰が続いているのがその現状であります。これの是正こそは現在の緊急の課題であるにもかかわらず、政府の政策にはその姿勢と施策が全く見られないことは、まことに遺憾といわなければなりません。(拍手)
反対理由の第二点は、政府の税制改正、特に所得税減税が軽視されている点であります。
政府は、今回の税制改正において、所得税の課税最低限度額の十万円引き上げと税率の緩和によって、初年度一千五百三億円の減税を行ない、これをもって大幅減税であると称しておるのでありますが、これでは全く不十分なことであります。特に、わが党が従来から主張してきたいわゆる百万円減税が、ことしもまた実現を見なかったことは許しがたいところであります。(拍手)これまでの例である自然増収の二〇%を減税に当てるということや、また税制調査会の勧告などを守るならば、本年度の自然増収一兆二千億円のうち二千四百億円を当然減税し、百万円減税という国民の要求を実現しなければならないはずであります。政府は財源難を理由にこの要求を無視し、その一方で、本年度もまた大企業、資本家優遇の租税特別措置を温存し、特に利子、配当の優遇措置では実に八百十五億円にのぼる大幅な減税を行なっていることは、まことに遺憾であります。これでは国民の税に対する不満が解消しないのは当然であります。
反対理由の第三点は、国内の社会的不均衡を是正するどころか、むしろそれが拡大せんとしている点であります。
わが国の国民総生産は、周知のとおり、アメリカに次ぎいまや世界第二位まで上昇したことは事実ですが、しかし、住宅、生活環境などの社会資本と社会保障は、先進諸国中でも最低の部類に属しているのがその実情であります。社会開発と安定成長を経済政策の主要な柱にした佐藤内閣において、むしろ社会的不均衡が著しく拡大している事実は、いかに政府の公約が無責任なるものであるかを物語るものであります。(拍手)ことしこそは、こうしたおくれを取り戻し、必要最小限でも経済社会発展計画の目標を達成するためには、住宅、環境衛生整備費、社会保障費の大幅増額が必要であります。しかるに、政府案ではそれらの予算がいずれも目標を大幅に下回っておるのであります。さらに、今年度もまたわれわれの要求する児童手当制度の創設が見送られたことは、政府の社会保障に対する熱意のなさを端的に示すものといわなければなりません。(拍手)一方、陸上自衛官の増員、米軍基地の温存を前提にした基地対策費の大幅な伸び、さらに、七十年対策を露骨に示す治安対策費の増加など、防衛、治安重視の予算になっております。政府は、国民生活の福祉向上こそ治安対策の最良の方法であることを深く認識し、反省すべきであると思うのであります。(拍手)
反対理由の第四点は、大幅な物価上昇が明年度も続かんとしている点であります。
政府は、四十四年度の消費者物価の上昇率を五%と予想しておりますが、これは昨年度の予想四・八%を上回るものであり、みずから物価対策に無策たることをさらけ出したものにほかならないのであります。また、昨年の物価上昇が予想を大幅に上回ったように、ことしもまた五%を上回ることは必至であります。すでに政府は国鉄運賃の値上げを決定しましたが、さらに、私鉄、バス、地下鉄などの誘発的値上げは他の諸物価にも影響し、大幅な物価上昇を招くことは明らかであります。したがってこの際、国鉄運賃の値上げを押え、全面的に公共料金の値上げをストップし、政府の断固たる物価抑制の姿勢を示すことが何よりも重要であると思うのであります。(拍手)それとともに、低生産性部門の合理化、近代化を推進し、同時に、一般物価対策費を重点的に注ぎ込むべきであると確信いたすのであります。
反対理由の第五点は、地方住民の福祉向上に対する施策が軽視されている点であります。
政府は、今年度の予算編成にあたって、わずかばかりの地方財政の好転を理由に、地方交付税率の引き下げなどを画策し、それが失敗に終わると、次には、地方に当然交付すべき地方交付金を借り上げたのであります。こうした措置は、最近ますます増大する地方財政需要と、重い住民税の軽減を要求する地方住民の願いを全く軽視したものといわなければなりません。(拍手)われわれは、かかる政府の措置に強く反対するものであります。
以上、政府予算案に対し、わが党の反対理由をるる申し述べましたが、最後に、予算案と関連して見のがすことのできない重要な点を一つだけ指摘したいと思うのであります。
それは、現在の大学問題と深く関連した管理社会における人間疎外の問題であります。かつて、ある有名な政治家は次のように言っております。すなわち、老いたる者は夢を見、若き者はビジョンを持て。ビジョンなきところ、人間は滅ぶ。現在の日本の政治には、はたまた来年度予算には、この夢もビジョンも、残念ながら全く欠けているのであります。(拍手)ここに人間の精神的荒廃と社会的混乱が起こることは必然でありましょう。したがって、今日ほど政治に夢とビジョンが求められている時代は他にないといっても過言ではないのであります。(拍手)
私は、この点について、きびしく政府に反省を促すとともに、新しいビジョンの提示を切望いたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)