曾禰益の発言 (外務委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○曽祢委員 そこで、日本の中国に対する政策全般について言及したいのですけれども、時間の関係がありますので、やや観点を変えまして、この間北京で発表されました、覚書貿易継続のバックグラウンドになったいわゆる日中交渉代表団のコミュニケに言及して政府のお考えをただしたいと思います。
 私、率直に言いまして、この共同コミュニケができたことによって覚書貿易が継続されたことはけっこうだ。何となれば、覚書貿易は単に貿易だけではなくて、もっと大きな政治的な意味があって、現在の不幸な日中関係の準政府的パイプとしての役割りということで、覚書貿易の継続というものは非常に意味があると思う。したがって、これを喜び、かつここに至る古井君その他の御努力に感謝するものであります。しかし、率直に言って、日本人としてこれを読んでまことにいやな感じに打たれることはいなめないことであります。自分のことにわたってはなはだ恐縮でありますけれども、私は五七年、五九年と浅沼ミッションの一員として中国に旅し、この種に類する交渉に現実に当たった経験もございますが、そういう経験から言っても、一国の総理大臣を呼び捨てにして「佐藤榮作」というような文章は、ちょっと常識から考えても実に考えられない、まことにいやな感じがするわけであります。
 それから内容から見ましても、あちらこちらに中国の独断——誤解だけならばいいのですが、独断と言ってもいいくらいのところもあるようであります。それはむろん多くの場合は中国側の発言として書かれておりますけれども、その最大なるものは三点ある。
 第一は、日本が軍国主義が復活しておる。これは断定ですね。われわれはその懸念を否定しませんし、そういうことはあってはならない。しかし日本軍国主義が米帝国主義、ソ連修正主義と並べて何か現実の問題としてでき上がったものだという取り上げ方にはわれわれは賛成できないのであります。
 また国民の悲願である沖繩返還の交渉の結果が、これをどう評価するにしろ、いわゆる早期本土並み返還の原則はかろうじてであっても貫かれた。ペテンなどということは日本国民は考えておる人は絶対ないと私は思います。危険はあるけれども、ペテンだという評価は間違っておる。
 ただ、私どもが考えまして、台湾に対する日米ワシントン佐藤・ニクソン共同声明の言及は、共同声明の中の最大のマイナス点だと私自身は考えておる。なるほど表現そのものは韓国と違って——「韓国の安全は、日本自身の安全にとって緊要であると述べた。」はっきり韓国の安全ということを朝鮮半島に関しては言っておるのですね。ところが台湾のほうは、「大統領は、米国の中華民国に対する条約上の義務に言及し、米国はこれを遵守するものであると述べた。総理大臣は、台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素である」、よくいえば台湾地域でどっちがやるにしても戦争してほしくないという意味にとれないことはない。ところが、どうも現実にはあまりアメリカの立場を考え過ぎて、台湾で一朝事あるときは、日本地区からの発進に無条件オーケーするのではないかと思われるようにとれないこともない。これは私は共同声明の中で一番譲り過ぎた点ではないかと思うのであります。
 そういう観点で、やはりこういったような正式外交文書であろうと、今度の共同声明を見ても、確かにわれわれが中国側のあまりにも激しい意向にそっくりそのままオウム返しになっておりはせぬかと思われている点がありますが、その中でいま申し上げた軍国主義と沖繩返還がペテンであるということのほかに、もう一つ非常に重要な問題だと私思うのは、何といっても台湾に関してであります。これに関してこういうことを言っておるのですね。「中国側は次のように重ねて強調した。中国人民は必ず台湾を解放する。これは中国人民の神聖にして侵すことのできない権利である。」これは中国の立場としてこういう立場を表明することはあり得ると思う。その次に、「いつ、どのような方式で台湾を解放するかは全く中国の内政問題であり、いかなる国も干渉してはならない。」これを受けて、「日本側は中国側の立場に賛同するとともに、」それから中華人民共和国が唯一の合法政府であり、台湾省は中国の領土の一部であり、二つの中国の隠謀には加わらない。終わりのほうは従来から使っておった字句と思いますけれども、台湾問題には二つの面があって、なるほど中国人から見れば中国の国内問題だとこれを強調されるのは当然だ。しかし、これが現実に国際の平和を決定するかぎであることは事実なんです。したがって、日本の立場からいえば、いついかなる場合であってもどういう方法でも解放は御自由ですということはないはずじゃないでしょうか。あくまで日本は、平和的に中国側が話し合ってくれるならけっこうである。実力によって云々ということは絶対困りますよというのが日本の立場ではなかろうかと思う。
 そういう意味からいって、この点が私が一番心配する点であります。時間がありませんが、一応その点に関する、あるいは共同声明全体に対する評価について、また私がいま申し上げた諸点についての御所見を簡単に伺いまして、最後に私がもう一点だけ質問する時間を与えていただきたいと思います。

発言情報

speech_id: 106303968X01219700427_014

発言者: 曾禰益

speaker_id: 12807

日付: 1970-04-27

院: 衆議院

会議名: 外務委員会