曾禰益の発言 (本会議)
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○曽祢益君 私は、民社党を代表して、当面の国際情勢に関し、主として総理大臣並びに外相に対しまして質問を試みんとするものであります。(拍手)
まず、来たる六月二十二日をもって十年の固定期限を終了する日米安全保障条約について質問いたします。
およそ一国の安全保障のあり方は、一方では、しっかりと国民合意の基礎に立ちつつ、他方では、客観情勢の変転に敏感に対応する柔軟性を持たなければなりません。わが国の安全保障体制についても、理想としては、憲法の趣旨に従い、世界情勢が、現在の軍事ブロックの対立にかわり、軍縮の推進や国際緊張の緩和と相まって国連の世界的集団安全保障体系が確立され、わが国がこれに依存できることが望ましいことについては、すでに国民合意が成立しているものと信ずるものであります。また、このような情勢の進展に伴い、日米安全保障条約も、世界のあらゆる軍事同盟と同様に、相対抗する軍事同盟とともに、右のような理想的な安全保障体制にだんだんと融合、解消されるべきこともまた異論のないところだと信ずるのであります。
日米安保に対する評価と安全保障対策についての国論の分かれ道は、国連の安全保障の機能がきわめて不十分な現状と、わが国の憲法に即した限定された自主防衛力から見て、当面の安全保障対策がいかにあるべきかという点についてであります。
この日米安保に対する評価について国論の一致がないことは事実でありまするが、最近の世論調査によっても、安保はいままで全般としてよかったと思うという答えが多数でありました。たとえば、昨年六月、読売新聞調査では、四〇%が肯定しております。このことは、安全保障条約が、憲法に基づく制限された自主防衛力を補完する一定の機能を果たしてきたことを国民が正当に評価しているからと言えると思うのであります。したがって、安保をいかにすべきかという政策論につきましても、即時安保廃棄、非武装または武装中立論は支持率がきわめて低く、さきに述べました調査によれば、それぞれ六・八%、一四・一%でありまするが、これは問題外であることは明らかであります。
しかしながら、このことのゆえをもって、国民が日米安保体制に満足しており、その長期固定化を望んでいると判断するならば、あやまちこれより大なるものはありません。(拍手)
現行安保は、旧条約の持っていた占領時代の遺跡の幾つかを改めたものの、なお米軍の常時駐留と基地の保有、極東の平和と安全のためと称する米軍の基地の使用と日本領域外への発進、事前協議における日本側の拒否権の不明確さ等の幾つかの難点をかかえております。
そこで、いまや安保条約の十年の固定期限が終了するにあたり、次のことが必要と存じます。すなわち、当面なおわが国の自主防衛の補完として、日本防衛に対する米国の正式なコミットメントを戦争抑止力として利用しつつ、しかも、同時に日本の自主性の尊重、駐留と基地にからむ日米両国民の対立の解消、大陸諸国に対する日本の自主平和外交の障害の撤去、並びに何よりもまず日米の永続的な友好関係の確立と、その基礎の上に安全保障の機能を有効に発揮せしめる目的をもって、この際日米両国政府間の協議を行ない、日米安保条約を改定することだと信ずるのであります。(拍手)
以上の観点から、首相に次の諸点についての御所見をただしたいと存じます。
第一に、まず去る十一月ワシントンでのニクソン大統領との会談において、首相は、なぜ沖繩返還に関する日米合意の成立とともに、直ちに同じく日米協力の精神に基づいて、安保条約の内容を現状に即するように検討することの同意をとりつけられなかったのか。沖繩の早期核抜き本土並み返還についての日米の合意の達成に成功したからこそ、日米両当局ともに日米安保の検討をタブー視する従来の消極的態度をここに一てきして、勇気と自信をもって安保協力の新しいあり方に関する協議に入り得たのではないか。首相は、そのような前向きの態度こそ、現行安保の欠陥に端を発する、基地をめぐる日米両国民間の緊張を緩和し、日米友好関係の強化に資するゆえんであり、なおかつ、ニクソン・ドクトリンに基づく極東、西太平洋におけるアメリカの戦略の転換に対応するわが国の外交の先見性を発揮するゆえんと考えられなかったのか、お答えを願いたいのであります。(拍手)
第二に、遺憾ながら首相は、すでにワシントンで安保の事実上の長期固定を意味する条約の自然継続の意思表示を行ない、かつ、帰国後も、この安保についての国会における十分な審議を経ず、解散を行なったわけであります。
そこで、首相に伺いたいのは、総選挙の結果に示された国民の判決は、確かに、安保即時廃棄、自衛隊解散論を否としたものであるが、それは決して現行安保のままの長期固定に対する賛意の表明ではなく、改定または段階的解消論を含んでいるものと見るのが客観的な態度と思うが、いかがでございます。(拍手)
また、首相が施政方針演説で、この問題についての広範な国民的合意を云々されている以上は、安保廃棄論でなく、安保協力を否定しない立場に立ちつつも、その協力のあり方を改めるべしとする国民の声に耳を傾け、そのような国民的合意の達成に努力することこそ為政者の当然の心がけだと信ずるが、いかにお考えであるかを承知いたしたいのであります。(拍手)
この問題についての最後に、その意味で、六月二十二日を漫然と迎え、条約の自然延長でその場を糊塗する態度をここに反省し、わが党の提唱する常時駐留の排除と基地の原則的撤廃、戦闘作戦行動にあらざる米艦船の立ち寄りの許容と核兵器持ち込みの禁止、事前協議における拒否権の明確化等を趣旨とする現行条約の改定について、直ちに米国側と交渉し、その実現につとむべきものと考えるが、首相の決意をここにあらためて伺いたいと存ずるのであります。(拍手)
次に、日中問題について質問いたします。
私は、最近発表された二つの共同声明、すなわち、昨年十一月、ワシントンにおける佐藤・ニクソン共同声明と、先ごろの北京における日中覚書貿易に関する会談コミュニケでありまするが、この二つの外交文書ほど、日米中三国関係のむずかしい機微なからみ合いと、したがって、わが国の自主性を米中双方に対して守ることの重要性を浮き彫りにしたものはないと考えるのであります。(拍手)
すなわち、われわれは、十一月の日米頂上会談の結果、沖繩の早期核抜き本土並みの原則はかろうじて守られ、沖繩の返還は決してペテンでも何でもない真実と受け取っておりまするが、同時に、日米共同声明の内容とその表現はあまりにも多く米国側の立場を受け入れ、かえってこのために幾つかの問題を引き起こしております。その最たるものが、沖繩返還の時点までにベトナム戦争が終了しなかった場合の日米協議と、台湾地域の平和と安全の維持が日本の安全にとってきわめて重要な要素云々のくだりだと信ずるのであります。ことさら台湾地域は、韓国のように国連の権威による安全保障問題として日本へのかかわりを持っておらないのであります。もし台湾地域への言及が必要だったとするならば、日本側としては、紛争の両当事国に対し、台湾をめぐって戦争を起こすととは絶対に避けてほしいということを述べるにとどめるべきだったと信じます。(拍手)でき上がった共同声明の字句は、大きくアメリカや国民政府の主張に屈し、米台湾条約に基づく米軍の日本からの出撃について、日本が事前協議の際のイエスを予約したかのように受け取られる表現になっており、首相のナショナル・プレスクラブの演説は、まさにむしろこのことを強調しておるのであります。
さて、他方、佐藤内閣の祝福を受けて北京で交渉した自民党の古井代議士は、現在政府間協定に準ずる重要な日中間のパイプである覚書貿易の延長に成功し、その熱意と努力は称賛に値するものであります。他面、中国側の日本軍国主義及び沖繩返還に関する誤解や独断の字句をコミュニケから削除するに成功せず、また、台湾に関しては、中国側がいつどのような方法で解放するかいかなる国も干渉してはならないという主張に賛同する旨を述べられているのであります。これは、皮肉にも、日米共同声明の場合とちょうど逆に、日本が中国の、北京の台湾実力解放にイエスを言うことを予約する結果にはならないのか。もし、一つの日本が、一方ではアメリカの台湾支援の出撃にイエスを言い、他方の日本が北京政府の台湾の実力解放にイエスを言うとすれば、一体日本の国内の平和と統一はどうなるのか。事態はすこぶる重大ではございませんか。(拍手)よって、ここに、総理並びに総裁としての佐藤榮作氏に明快な答弁を求めるものであります。
私は、この際、わが国の外交が、対米関係においても、対中国、すなわち北京、台湾関係においても、自主性と一貫性とを保持することが何よりも肝要だと存じます。特に、佐藤首相は、前述のように、一方ではワシントン共同声明で台湾問題について北京を刺激する対米譲歩を行ないつつ、他方では帰国後、総選挙中には対北京接近と認められるような思いつきの観測気球を打ち上げ、また選挙後は再び国府一辺倒に戻る等、まことに一貫性のない態度を示してきました。
私は、そこで、国民の名において、この際政府に対し、次のような一貫した外交方針と、前向きの中国政策をあらためて確立することを要求いたします。
その方針、原則の第一は、国民政府と結んだ条約は、憲法に基づきこれを守るということであります。
その第二は、外交政策においてはフィクション、うそ、虚構は禁物であり、現実に立脚するならば、大陸に北京政府が権威を確立していることを尊重し、これを政策の基礎の一つに加えるということであります。
この二つの原則は、(「何言っているかよくわからぬ」と呼ぶ者あり)わからない人はよく聞いてください。この二つの原則は、衝突する面もむろん持っているが、両立する面もあります。つまり、国府との条約も、その附属交換公文において、条約の効力を現に国府の支配する地域に限ることを認めております。したがって、国府といえども、わが国と北京政府との交流そのものに反対できないわけであります。また日本側も、対北京貿易についての輸銀の融資についてまで国府側の指図は受け入れるべきでないことは当然であります。他方北京側も、直ちに日本政府が国府との条約を破棄することを要求しないであろうし、もしそのような要求をするならば、日本側がこれを容認すべきでないことは言をまたないところであります。わが国の対中国外交は、この二つの原則の共通部分を逐次広げることにあります。
第三の原則は、中国問題解決への接近は、日本対北京、日本対台湾の二カ国方式のみにたよらず、国連を通ずる多数国間方式に従って打開をはかるべきだということであります。すでにカナダの対北京交渉がその困難性を明示しているとおり、いわんや国府との条約関係を持つ日本と北京とのバイラテラルな二国間の交渉には限界があります。他方、北京政府の核ミサイル能力の開発等の事実は、いまや同政府の国際社会への出場、登場は、日本の安全のみならず、世界平和のかぎとなりつつあります。わが国もまた、日本のひとり相撲で中国問題の解決をと気負うよりも、インドシナ戦争収拾のための国際会議、軍縮会議等を通じ、北京政府の国際社会への復帰と、特に国連の場への北京政府の参加を実現するよう多角的な努力をなすべきものと信ずるのであります(拍手)
政府は、従来国連総会における中国代表権問題に示したたな上げ方式や、重要事項指定方式のような末梢的な手続論をいまこそ一切やめ、進んで大陸の実権者である北京政府を国連に迎えるための実質討議を総会に持ち込む方針に切りかえるべきだと信ずるのであります。(拍手)
その際、国民政府の処遇と台湾住民の民族自決権の尊重等のこれに関連する事項もまた国連が大局的見地から検討すべきであります。
この際、最も避けなければならないことは、政府が一つの中国論を隠れみのに利用して、実は国民政府のみを相手とし、中国大陸と日本並びに世界との関係の正常化という重要課題に対し、全く無為無策に終始し、かえってそのことが、日本が片や国府ロビー、片や北京ロビーに分極化する危険をおかすことだと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
私は、政府に対しては、むしろ国民政府に対しまして、大陸中国の存在を認めしめるように努力することを求め、また北京との接近論者に対しては、むしろ国府との条約の存在を認めしめるように努力することが、実はわが国民の声だと信ずるものでありまするが、この重大な歴史の転換点に立つ日本の総理としての佐藤さんの確信ある答弁を要求するものであります。(拍手)
最後に、ベトナム戦争のすみやかなる終結をこいねがい、一昨年十一月、北爆停止以来の平和解決と、ニクソン大統領の戦闘縮小計画に賛意を表してきた私たちは、今回、同大統領のカンボジアに対する米軍の直接介入や北爆の再開始の決定を深く遺憾とするものであります。むろん、北ベトナム及び解放戦線側の前々からのカンボジアの中立を無視したいわゆる聖域の占拠と、これがベトナム戦争への利用も非難さるべきでありますが、米国側のあの今回の決定は、ベトナム戦争が全インドシナどろ沼戦争にエスカレートする危険をはらむものであって、断じて不可であります。カンボジアの事態は、やはりしんぼう強く、一九五四年ジュネーブ協定の線に沿った国際会議によるカンボジアの中立回復以外に断じてあり得ないと思うのであります。
私は、政府において、右のような当面の事態の収拾と、ベトナム戦争終結への平和外交を、あらゆる方法を通じて関係諸国並びに国連等に働きかけることを強く要求いたします。もし、マリク外相の提唱にかかるジャカルタ会議が開催されるならば、これが危惧されるような反共戦線の結集などに走らぬよう、大いに日本の平和外交を発揮し、また、情勢の推移によっては、わがほうの出席を見合わすことをも含めて、万遺憾なきを期することをここに要求し、これに対する首相並びに外相の所信を伺って、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕