倉石忠雄の発言 (農林水産委員会)

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○国務大臣(倉石忠雄君) 農林大臣に就任いたしましてから約一カ月半を経過いたしましたが、農林水産業及びこれをめぐる内外の諸情勢がまことに容易でない時期でもあり、その職責のきわめて重大であることを痛感いたしておる次第でございます。全力をあげてこの重責を果たしてまいる所存でございますので、委員各位の御理解ある御協力をお願い申し上げます。
 最近の農業をめぐる諸情勢の変化は著しく、米の過剰をはじめ種々困難な問題に直面しております。このような情勢に対処して、政府としては総合農政の展開をはかることとし、その具体化につきまして昨年九月の農政審議会の答申の線に沿い鋭意検討を続けてきております。
 本日はこの機会をかりまして、農林水産業に対する施策についての私の所信を申し述べ、今国会に提出いたします農林省関係の予算案及び法律案につき、委員各位の御審議の御参考に供したいと存じます。
 第一に、今後の総合農政の推進にあたって最も重要なことは、規模が大きく高能率の近代的農業を育成していくことであると考えております。自立経営農家の育成により、その生産が、農業生産のかなりの部分を占めるように努力するとともに、あわせて今後とも兼業農家がなお相当の割合を占めるものと考えられますので、兼業農家をも含めた各種の集団的生産組織を育成助長することにも努力していきたいと考えております。さらに、基幹施設を有機的に結合して生産から加工、流通まで一貫して組織化される広域営農集団の形成を進めてまいりたいと考えております。
 このような近代的農業を育成するためには、何よりも構造政策の一層の推進をはかっていかなければならないと思います。このため、本特別国会においては、農地法の改正法案等の構造政策関連法案の提出を予定しておりますので、よろしく御審議賜わりますようお願いいたします。
 また、中高年齢層を多数かかえた就業構造の改善をはかることが重要であることは言うまでもありません。そこで農業者が希望に応じて他産業へ円滑に転職できるよう離農の援助促進のための施策を進めていく考えであります。特に農地の利用との調整をはかりながら農村地域の工場誘致を積極的に進めることとし、関係各省と協力して所要の措置を講じていくこととしてまいる考えであります。
 また、来年度から農業者年金制度を創設し、農業者が農業から引退しても老後の不安が残らないようにするとともに、これが経営規模の拡大に資するようにしてまいりたいと考え、これがため、本国会におきまして所要の法案を提案する所存であります。
 このように、農業構造の改善を進めるにあたっての大きな前提となるのは、土地基盤の整備であります。このため、大規模農道等農道網の整備、圃場条件の整備、草地の造成改良など農業生産基盤の整備開発などに力を入れていきたいと考えております。
 第二は、近年、食料の自給率が低下する傾向にありますが、私は、人口が一億をこえるわが国において国民が必要とする食料を大幅に海外に依存するのは適当でないと考えており、今後の農業生産は従前にも増して需要の動向に即して進めることが特に必要であると考えます。
 最近の米の需給の動向を見ますと、国民の食生活の変化により消費は減退しているのに対し、生産は増加しているため、相当な供給過剰の状態になっており、今後ともこの基調に変化はないものと思われます。
 このような米の需給事情にかんがみ、政府の米管理の面におきましても、生産者米価及び消費者米価の水準を据え置く方針をとることとするとともに、米の需要の増進に努力いたす考えであります。
 さらに、新規開田、干拓は極力抑制するとともに、米の生産調整を緊急の課題として実施することといたしました。すなわち、政府としては、米生産調整目標数量を百万トン以上とし、これに見合う水田の作付転換等を奨励するとともに、五十万トンに見合う水田の他用途への転用を見込むことにより米の減産を期することにしております。農地の転用については、私は、農業生産の基礎である農地について、その無秩序な壊廃の防止に十分留意しながらその転用の許可基準の緩和を早急にはかるようにいたしたいと考えております。
 畜産物、園芸作物などについては、需要の伸びが見込まれますので、生産性の向上を基本として生産の振興につとめる考えであります。畜産物については、飼料基盤の整備を中心に対策を進め、また養蚕、野菜、果実などの園芸作物については、主産地を中心に安定した供給を確保するよう対策を講じてまいる所存であります。
 また、地域の特性を生かして、米ばかりでなく畜産物、野菜、果実などを農業者が安心して生産できるように将来の望ましい農業生産の姿を明らかにしたいと考えております。
 第三に、農産物価格政策については、価格変動の著しい生鮮食料品のうち、新たに肉用牛、野菜などについて価格の安定のための対策に意を用いるつもりであります。さらに、農産物の流通、加工の問題も重要でありますので、その近代化を促進してまいりたいと考えております。
 第四に、都市に比べて立ちおくれている農村生活環境の整備と農村の整備、開発を推進することが重要であると考えております。
 このため、農村における道路、通信網、医療施設などの整備を進めることが是非とも必要であると考えております。
 次に林業についてであります。近年、木材需要は引き続き増大傾向にありますが、国産材供給が十分これに対応できないため、外材輸入の著しい増大を招いております。このような情勢に対処するため生産性の向上を基本として林業総生産の増大をはかることが必要であります。このため、林道網の整備など林業生産基盤の整備拡充をはかるとともに、里山の再開発により森林資源の有効利用につとめるほか、資本装備の高度化、森林施業の計画化、林業従事者の就労の安定等をはかることにより林業経営の近代化を促進してまいりたいと考えております。
 また、近年国土保全等森林の持つ公益的機能の発揮に対する要請が強まってきておりますので、これに応じ治山事業等の拡充をはかってまいる考えであります。
 水産業につきましては、近年、漁業労働力の逼迫、公害の増大、国際的規制の強化等に見られるように漁業をめぐる環境はきびしくなっております。このため、漁業生産は、中高級魚介類を中心に堅調に増加している需要に十分こたえることができず、水産物価格の上昇を見ております。
 このような情勢に対処するため、生産流通の拠点となる漁港につきまして第四次漁港整備計画に基づいて重点的整備につとめるとともに、海洋開発の立場から新漁場の開発、試験研究の推進、新技術の企業化の促進につとめる所存であります。
 また、沿岸漁業の振興をはかるため、沿岸漁業構造改善事業の推進の強化をはかるとともに、資本装備の高度化等による経営の近代化を進め、あわせて水産物の流通改善を促進する諸施策を推進してまいる所存であります。
 以上申し述べました農林水産業に対する施策の推進をはかるため、昭和四十五年度予算の編成にあたりましては、所要の財源の確保につとめ、主要な施策を推進するために必要な経費につきましては、重点的にこれを計上いたしたつもりであります。
 また、これらの施策の実施に必要な法制の整備につきましても、鋭意法案の作成を取り進めているところであります。
 以上、所信の一端を申し述べましたが、農林水産行政推進のために今後とも、本委員会及び委員各位の御支援、御協力を切にお願い申しあげる次第であります。何とぞよろしくお願いいたします。

発言情報

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発言者: 倉石忠雄

speaker_id: 18929

日付: 1970-03-05

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会