任田新治の発言 (農林水産委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○任田新治君 福岡及び佐賀両県の調査結果について御報告いたします。
去る二月八日から十一日までの四日間の日程で、達田理事、杉原、沢田両委員と私の四名が、福岡県及び佐賀県の農林水産業、特に農業構造改善事業を中心に、土地基盤整備、カントリー・エレベーター、農業試験場、漁港整備、ノリ漁業等の実情を調査してまいりました。
まず、福岡県でありますが、九州農政局から九州の農業情勢について、次いで、県当局から福岡県の農業の現状及び計画の概要、林業、水産業の概況等について、それぞれ説明を聞いた後、三潴町のタマネギ冷蔵施設を視察いたしました。
三潴町農業協同組合のタマネギ冷蔵施設は、工事費約七千三百万円、うち、農業近代化資金が四千百五十万円で、昭和四十四年に竣工、構造規模は、建物、鉄筋コンクリート約四百坪に、冷凍施設一式であり、四十二年度に建設されたタマネギ集荷場に付帯して冷蔵倉庫を増設したものであります。
三潴町は、四十一年八月、タマネギ指定産地として指定され、団地造成を行なう等積極的な生産体制をとって、四十四年度実績は、作付け面積百五ヘクタール、生産数量五千トンで県内生産の七分の一を占め、生産計画の四十七年度の見通しは一万五千トンということであります。
最近、全国のタマネギ生産意欲は目ざましく、特に北海道、兵庫県淡路の出荷、それに輸入品の出回りなどで、消費地の冷蔵倉庫の需要が多く、従来の委託冷蔵による出荷調整も思うにまかせない情勢ともなってきていますので、消費地冷蔵に比べ、作業労働力、容器代の節約と出荷調整可能の産地冷蔵施設を持ち、販売価格の安定による所得向上をはかるということから、この施設が設けられたものであります。
なお、タマネギ冷蔵に先立ち、この農協が四十三年一月に操業開始をした鶏卵集荷場を視察してまいりましたが、ここでは、機械能力毎時一万六千個という洗卵、検卵、選別までの一貫作業による省力化の近代設備が導入されていました。
次に、大川市農業協同組合のカントリー・エレベーターを視察いたしました。
このカントリー・エレベーターは、米麦生産流通合理化モデルプラント設置事業で設置され、四十三年一月に竣工したもので、この一基の設置費は約一億六千万円で、国庫補助が約三千三百万円であります。
施設の内容は、建物が鉄骨構造スレート張り二百六十六平米、サイロは、本サイロが二重構造鋼板製集合サイロ形で、容量三百トン四本と、二百トン四本の計二千トン、間隙サイロが鋼板製で、容量百トン三本の三百トンであります。
他に九州には、稼動しているものが熊本県不知火干拓農協に一つあります。
大川市は、福岡県の西南部の筑後川下流域、クリークに代表される平たん農業地帯で、単位面積当たり収量の高さは全国有数で、有名な筑後の穀倉地帯の中に位置し、昔より農作業の電化機械化が普及しているところであります。
また、当地は、全国的に有名な木工生産地でもあり、農家の兼業化と労働力の不足を深刻なものとしておりますが、これに加えて、特産のイグサの作業が十一月から十二月及び六月、七月に労働のピークがあり、米麦の生産作業と競合し、過重な時間と労力を要求されている実情であります。
これらの改善策として、米麦の生産から流通までの作業体系を改善確立し、農作業の近代化を進め、総合的な農業所得の増大をはかるため、カントリー・エレベーターの設置ともなったもので、この施設により、脱穀から乾燥、貯蔵、調整、包装、出荷等の諸作業の一貫化と省力化による余剰労力を他作物または農家の安定兼業に振り向けることができる効果を期待しているのであります。
ただ、当地は、クリーク密度の高い地域であるため、生産基盤の整備がおくれ、脱穀前の農作業面の合理化が阻害されて、大型農業機械化体系にならないことと、平たん地であるため、水稲品種が中生種一本に限定されていることから、短期間に原料もみの搬入が集中するということで、出荷制限を必要とすること、もみ出荷より代金支払まで若干の日時を要し、農家の本施設利用の障害ともなっているという問題点が見受けられるのであります。
次に、柳川市沖端漁港を視察いたしました。
この漁港は、第四次漁港整備計画によって、第二種漁港に指定され、二億六千万円の事業費をもって修築事業を実施中であります。
有明海は、浅海養殖業であるノリ養殖を主体とする海域であり、漁船漁業としてわずかに釣、はえなわ漁業、まち網漁業その他の雑漁業及び貝類の採取があるのみであります。
当漁港は、沖端川の河口を利用した年間水揚げ約十億円という港であります。
次に、佐賀県について御報告いたします。
まず、川副町にあります佐賀県農業試験場及び農業研修学園を視察いたしました。
この農業試験場は、古い沿革を持つものでありますが、農業の近代化に即応した試験研究機関として四十年から移転新築を行ない、総事業費九億一千万円で四十四年四月に落成をみました。敷地総面積は、農業試験場と研修学園とで二千五百十七アールとなっていて、建物敷地が六百十五アール、水田千二百三十二アール、畑二百三十五アールその他であります。試験事業費は、約三千二百万円で、この中には七百万円の国の補助金が含まれております。このほかに、人件費約一億円がありますが、そのうち国からの補助金は二百六十万円であります。当農業試験場では、米麦に関する品種、病害、栽培技術、土地基盤整備等諸対策の調査、試験研究と、茶樹、蔬菜等に関する各種試験を行なっております。
農業研修学園は、四十四年から後継者対策予算三百三十万円を含め、総額二千三百二万円をもって積極的に研修活動をすることとし、旧講習所、指導所等を改組合併して新しく設けられたもので、研修計画は、一般農民及び農業技術指導者を対象として、必要に応じて短期の研修を年間随時行なう短期研修と、高校卒業者を入学資格とし二カ年制により中核農業指導者の教育を行う指導者養成及び高校卒業者を入学資格とし一カ年制により各専門毎に実地を主体とした自営者の教育と、中学卒業者を入学資格とし二カ年制により自営者の教育を行なう自営者養成とを目的とし、全寮制の生活を通して、自治的共同生活を行ない、民主的、協調的な人間形成に努めるよう教育されております。現在の生徒数は、発足当初の旧講習所等からの移行人員のみのため、定員四百名に対し、女子九名を含め二百四十九名となっていますが、四十五年度には定員まで充足する予定になっております。
次に、佐賀県庁におきまして、県当局から佐賀県農業の動向、水産業の概要等について、また、九州農政局から筑後川水系農業開発計画の概要について説明を聞き、次に白石平野の地盤沈下状況を視察いたしました。
白石平野は、有明海に面する約一万ヘクタール、その三分の二は干拓によって造成された水田地帯であります。この平野は、全国でも優秀な米作地帯として名を高めているところでありますが、農業用水は、クリーク、ため池、地下水に依存しているところで、地表水源は限界まで開発されているところへ、近年、土地基盤整備、干拓地造成等による農業用水の需要増加により用水不足に拍車をかけているのが実情であります。昭和初期ごろから導入された深井戸開発は年々平野内に広がり、二十九年ごろから地下水低下、湧水の枯渇等の地下水障害が発生するに至ったのでありますが、その後の再三の干ばつに見舞われる等で、深井戸の乱掘が激しさを増し、現在二百十三本を数えるに至っているのであります。したがって、この結果は井戸の抜き上がり現象としてあらわれ、特に三十五年ごろから地盤沈下の速さが増していることを知ったのであります。深井戸抜き上がり状況からみて、年間五センチから十センチ程度の沈下と調査結果が出されていますが、福富町役場を視察したところでは、正面玄関手すり沈下が八十五センチとなっていましたし、白石町の圃場地下揚水ポンプ、中学校校舎、北明浄水場においても五十センチ前後の沈下状況となっていました。このような地盤沈下現象は、白石平野の有明粘土層ほとんど全域にわたっているのが特徴的で、被害状況は広範にわたっております。
次に、東与賀町の県営東与賀地区圃場整備事業を視察いたしました。
東与賀町は、総面積千四百七十七ヘクタールで、うち水田は千百六十ヘクタールであり、総世帯数千三百十五戸に対し、農家戸数は九百十九戸という佐賀県の代表的平坦農業地帯であります。本地区一帯は、藩政時代末期ごろから昭和初期にかけて逐次漸進的に干拓されてきたところで、このために、圃場区画の狭小不整形、道路幅員の狭小という事態を招き、また、用排水路の不分離とクリーク利用のかんがいのため、水位は高く保持され、地下水の上昇をきたしていることと、それに近年の農業人口の減少ということで、このままでは、農業生産性の向上並びに農業近代化に甚大なる影響を与えるものと憂慮されておりました。それで、今後の新しい農業経営、農業技術に即応して、大型機械化営農作業を目途とした総合的な用排水施設及び大圃場区画の整備、農地の集団化等により、営農労力を省力化し、米麦作の安定的多収化をはかって、農業従事者の所得の増大をはかることとし、昭和四十年度から県営圃場整備事業を行なっているのであります。現在実施中の圃場整備は、本町南部水田五百八十八ヘクタールで、総事業費八億一千九百二十四万六千円、反当事業費約十四万円の規模であります。
なお、圃場整備事業に関連する事業として、現在、国、県営による用水改良、県営排水改良事業及び建設省の海岸堤塘施設の改良補強工事が実施されておりますが、これらの事業は密接な関係事業でありますので同時完成が期待されています。
次に、南川副漁業協同組合において、有明海のノリ養殖についての陳情を受けるとともに加工施設を視察いたしました。
有明海は、発達した干がたを持ち、ノリ、貝類漁業の全国有数の産地であることは、先ほども御報告申し上げましたが、特にノリ漁業については、県内に天然採苗場はなく、他県から種苗を購入し、むしろ副業的な養殖を行なってまいりましたが、人工的な種苗生産が試験的に成功して、昭和三十年度に県営人工採苗場を太良町に設け事業化に踏みきり、初めて県内生産の種苗が供給されることになり、供給体制の確立がはかられてきました。しかし、養殖技術も年々改良され、新技術も導入されたにもかかわらず、三十九年度以降は、さく当たりの収量は下降の傾向を示し、四十二年には白腐れが発生してその被害金額六十億円にも達しました。この被害の原因は、干ばつなどの異常気象によるものと断定されてはいますが、被害を拡大、助長した要因として漁場管理の不適と密殖が指摘されているのであります。
したがって、この対策として漁場の管理の方法、養殖技術における人為的要因の排除と、漁民による監視体制をとる集団管理方式を採用して安定化をはかるとともに、恒久的方策として、適正規模の養殖による密殖防止と、冷凍網の導入をはかることがあげられているのであります。地元有明海漁協連田中善内会長から、ノリ養殖の安定をはかるためには、冷凍網の導入及び原藻の保蔵が重要な要素となってきているので、これの生産に必要な冷凍保蔵庫の設置についてノリ養殖安定化促進対策事業を創設し助成されたい。また、地域の実態に即した病害対策、種苗の改良等基礎的研究体制を確立し、ノリ養殖業の恒久的安定化をはかるための国立ノリ研究所を有明海地区に設置されたいとの陳情を承ったのであります。
最後に、今回の視察を行ないました筑後、佐賀平野平坦地の典型的な稲作地帯での水田農業は、逆潮を利用した淡水取水と、これを一時貯留するクリークからのポンプ揚水によるところが多く、クリークに依存する水利慣行と圃場の未整理とが当地方の規模拡大の制約等ともなっていて、大型機械化、省力化への大きな阻害要因であると見てまいりました。したがって、積極的な対策として、筑後川下流域一帯のこの不規則、無統制に分散するクリークを整理統合し、不安定な淡水取水を廃止し、あわせて地盤沈下対策をも含めた大規模な用排水系統の再編成をすることが、ぜひとも必要であると痛感した次第であります。
このたびの調査にあにり、関係各位にいろいろの御高配を賜わりましたことを深謝し、報告を終わります。