成田知巳の発言 (本会議)
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○成田知巳君 私は、日本社会党、公明党並びに民社党を代表し、ただいま議題となりました佐藤内閣不信任決議案について、提案の趣旨を説明し、同僚各位の全面的な御賛同を得たいと存じます。(拍手)
まず、決議文を朗読いたします。
佐藤内閣不信任決議案
本院は、佐藤内閣を信任せず。
右決議する。
〔拍手〕
佐藤総理は、本臨時国会での所信表明演説の中で、国際秩序は戦後体制のワクの中では処理しきれなくなったと告白されておりますが、国際秩序はもちろんのこと、国内秩序、国内政治も、戦後体制、すなわち佐藤体制のワク内でもはや処理できなくなっていることは、国民多数のひとしく認めるところであります。(拍手)
内閣不信任の理由は、お手元に配付の文書に記載のとおりでありますが、本決議案は、いわば国民の名による佐藤内閣退陣を要求する冷厳なる告発状というべきであります。(拍手)
以下、告発の理由を順を追うて御説明いたします。
その第一は、佐藤内閣の今日までの外交、防衛政策は、異常なまでの失敗と挫折の連続であり、日本の平和、安全、繁栄を願うわれわれにとって、佐藤内閣の存在は、もはや一日といえども許されないということであります。(拍手)
御承知のとおり、国連総会でアルバニア決議案が圧倒的多数で可決され、中華人民共和国の国連における合法的権利の回復が実現されましたが、これは、真理は必ず自己を貫徹するということ、時計の針はさかさに回すことはできるが、時の流れをさかさに回すことはできないことを示す歴史的な事実であります。(拍手)
総理、あなたは、この歴史の必然を洞察することができず、いわゆる国府擁護のため、知能犯よろしく、逆重要事項指定決議案なるものを考え出し、なりふりかまわず中国の国連における合法的権利回復の妨害工作に狂奔しましたが、その結果は、国際世論からきびしい審判を受け、むざんな敗北に終わったのであります。(拍手)にもかかわらず、総理は、国連における表決の結果は自分の政治責任とは関係はないと言い張ってこられました。国際情勢の変化に正しく対応できず、国辱ともいうべき重大な誤りをおかしてなお責任なしと言う総理は、一体何をもって責任をとろうとしておられるのでしょうか。(拍手)佐藤総理の辞書には責任という文字はないとしか考えられません。
言うまでもありませんが、結果に対する責任よりも手続を尊重するのが、官僚の常であります。政治家は、官僚と異なり、その行動が善意に出たものであっても、また、手続に欠けるところがなくとも、結果に対し責任をとることに敏感であり、勇気がなければなりません。(拍手)責任をとることに鈍感であり、ひきょうである佐藤総理は、政治家としての最も大切な資格を欠く人だと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
もちろん、佐藤内閣を不信任するゆえんは、国連での表決に敗れたからというだけではございません。むしろ、より大きな理由は、日本外交の最大課題である日中国交回復を佐藤内閣に期待することは、すでに絶望的になったということ、いや、佐藤内閣の存在は、日中国交回復にますます大きな障害をもたらす以外の何ものでもないということであります。(拍手)
かの悪名高い保利書簡が中国側からきびしく拒絶されたことでもわかるように、いわゆる日華条約を廃棄しないで中国との国交回復の実現が絶対にあり得ないことは、いまや国民の常識となっております。数日前調印された日中覚書貿易協定の共同声明も、この点を重ねてきびしく指摘しております。もともと、日華条約なるものは、全面講和か単独講和かの岐路に立たされたとき、ダレスの圧力に屈し、国際共産主義の亡霊に引きずり回された吉田総理が、重大な選択上の誤りをおかした結果の産物であります。その吉田総理も、さすがに事の重大性を知ってか、日華条約を限定的なものにしようとしたことは、吉田書簡のみならず、条約第六条並びにその交換公文で明らかであります。にもかかわらず、日華条約の締結で中国との戦争状態は終わったとの政府解釈を固定化し、国府を中国を代表する唯一の政権とみなすという最大の虚構をつくり上げたのが、佐藤総理、あなたであります。(拍手)その総理も、国連から国府が完全に追放されるや、日華条約の基礎はくずれたと今日は認められておりますが、基礎というより、条約の内容そのものがくずれ去ったのであります。だとすれば、日華条約を廃棄し、名実ともにこれを消滅させることは、政府の条約論としても当然過ぎるほど当然のことであります。(拍手)私は、総理が日華条約は廃棄しないとかたくなに主張されるのを聞くにつれ、つくられた虚構のとりこになり、日本民族の将来のために中国政策を転換しようとする一片の意思ももはや総理はお持ちにならないと、残念ながら断定せざるを得ないのであります。(拍手)
総理は、口を開けば平和、国益、信義を強調されます。総理の言う信義とは、蒋介石個人に対する小さな信義であります。満州事変以来十五カ年間にわたって中国大陸を侵略し、人的、物的に言語に絶する損害を与えたわれわれが果たさなければならない信義とは、中国八億の人々に対する信義でなければなりません。(拍手)この大きな信義と小さな信義を混同するほど国を誤るものはございません。日華条約を廃棄し、中国八億の国民がみずからを代表する唯一の正統政府として支持している中華人民共和国政府と平和条約を結ぶことにより、初めて日中間の戦争状態は終わり、われわれの信義も果たされるのであります。それこそ、総理の言う、日本の平和と国益にかなう道にほかなりません。
われわれは、平和、信義、国益を願うがゆえに、平和に背を向け、信義に反し、国益にもとった外交路線を固執してきた佐藤内閣の退陣を、国民の名において強く要求するものであります。(拍手)
佐藤内閣告発の第二は、沖繩問題についてであります。
政府・自民党は、沖繩返還協定の強行採決、いや、採決の名にも値しない暴挙をあえてやってのけました。沖繩国会の成り行きいかんは、議会制民主主義に対する国民のぎりぎりの信頼感を左右するものとして、民主的な徹底的審議が強く望まれていましたが、その国民の期待もついに自民党の手によりむざんに打ちこわされたのであります。(拍手)この議会制民主主義を圧殺する自民党の暴走をなぜ総理は許されたのか、その答えはまことに簡単であります。
すなわち、沖繩返還協定審議の経過が明らかに示すように、これ以上審議を続けるならば、返還協定の欺瞞性がますます国民の前に明らかになり、佐藤内閣の命取りにもなりかねないことをおそれたためであります。(拍手)
言うまでもありませんが、返還協定は、その前文の示すように、佐藤・ニクソン共同声明を基礎にし、それを条約化したものであります。この共同声明第八項には、核兵器持ち込みについて、「日米安保条約の事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく、」と明記されております。当時、ジョンソン国務次官は、その背景説明として、「特別の事態に際しアメリカがもし必要と認めれば日本と事前協議を行なうというアメリカの権利を慎重に保留しております。しかも、このことが核兵器に適用されることは明確であり、その協議で日本の答えがいかなる場合においてもノーであることを前提としているわけではありません」と述べております。さらに、「それは単に沖繩に関して適用されるだけでなく、日本本土東南部の基地に関しても同様に適用される」と、特につけ加えております。
総理は、今日まで、ジョンソンの背景説明よりも、核の持ち込みは絶対認めないという自分の言うことを信用してもらいたいと言い続けてまいりました。しかし、みずからの主張を国民に押しつける前に、国民の疑惑を解くために、まずジョンソンのこの重大発言に抗議し、その取り消しを要求するのが、日本国総理の国民に対する当然の責任だといわなければなりません。(拍手)また、絶対に核持ち込みを認めないというならば、事前協議の対象から核持ち込みをはずすのが、論理の当然の帰結であります。
この核についての事前協議の問題といい、また、沖繩から核を撤去するといいながら、その点検、調査はできないというなど、全く国民に理解しがたい態度を総理がなぜとられるのか。この国民の疑問は、われわれ野党の追及により、そのよって来たるところが明らかにされたのであります。
私どもは、沖繩の核撤去問題もさることながら、その前にすでに本土へ核兵器が持ち込まれているとの重大疑義を、具体的資料に基づいて指摘しました。さらに、核兵器部隊のみならず、生物化学兵器部隊の配備についての重大な疑惑を示す米軍電話帳が岩国基地で使われておるという事実も明らかにしました。特に、核問題の中心は、現実に核兵器の持ち込みがあったかどうかということよりも、システムとして核配備の体制があるかどうかにあることを考えるとき、われわれの、いや、国民の不安と疑惑が高まるのは当然だといわなければなりません。(拍手)
これに対する政府の答弁は、アメリカが核兵器を持ち込んでいないと言っているからこれを信用しろ、と言うにすぎません。しかも、政府は、われわれの当然の要求である現地調査さえ拒否されたのであります。
〔発言する者あり〕