田中伊三次の発言 (本会議)
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○田中伊三次君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました内閣不信任案に対し、反対の討論をいたします。(拍手)
およそ内閣不信任案なるものは、次期政権を担当する準備のある野党によって提出されてこそ、初めて意義あるものであります。(拍手)政権を担当するについて何らの準備もない野党の党利党略的不信任案ほどナンセンスなものはないのであります。(拍手)
佐藤内閣は、組閣以来すでに七年有余にわたり、引き続き政局を担当し、連続の内閣としては明治以来最も長期の記録を持ち、その間における治績はまことに顕著なものがあります。
佐藤総理が初めて内閣を組織された昭和三十九年末ごろは、いわゆるなべ底景気といわれ、まことに不況のどん底にありましたが、新内閣は、まず景気転換のため画期的な財政金融政策を断行して、みごとにこれを克服し、その後五年間、長期間にわたる好景気を持続せしめ、わが国経済に驚異的な繁栄をもたらしましたことは、史上かつて先例を見なかったところであります。(拍手)
昨今、国民総生産は実に八十兆円にも達する見込みでありまして、わが国力が近時とみに増大をしてまいりました。昨年大阪で開かれました万博が、世界各国から絶賛を拍するに至りましたのも、わが国国力の一端を示すものであります。(拍手)
野党は、口をそろえて物価高の攻撃をされるのでありますが、物価問題は世界共通の悩みであります。しかしながら、わが国における消費者物価上昇の根本要因は、何といっても賃金と物価の悪循環であります。春闘が大幅賃金アップをやるから、必然的に物価にはね返るのであります。わが佐藤内閣が物価対策に数々の施策を行なっても、なおかつ効果があがらないのは、大幅賃金アップを年中行事として繰り返すからであります。野党の諸君は、物価高を攻撃される前に、まず大幅賃金闘争を自粛させ、節度ある賃金要求に転換させるとともに、企業の合理化と生産性の向上に協力してくれるよう、とくと御指導を願いたいのであります。(拍手)
先般、十カ国の蔵相会議において決定をいたしました円の切り上げについては、種々論難をする向きもありますが、先般の決定は、わが国円の実勢を正しく反映したものでありまして、何ら非難するには当たらないのであります。ただ、このたびの平価の調整は、わが国経済に少なからざる影響を与えるものでありますから、今後政府は、貿易関係産業はもちろん、体質上特に配慮を必要とする中小企業、農業等に対しましては、この新しい通貨体制に十分なじむようになるまでは、きめのこまかい、周到な施策が必要となり、さらに国民各層に対しましては、社会福祉の向上、社会資本の充実などの施策を通じまして、国民生活の安定に役立つように最善を尽くす必要があります。(拍手)
野党の諸君は、不信任案提案の理由として、佐藤内閣外交の失敗をあげるのでありますが、これは驚くべき見当違いである。佐藤内閣の外交上の功績は、歴代内閣中随一であると申すも過言でないと存じます。
まず、戦乱の多い世界、ことにアジアにおいて、わが国が何らの影響を受けることなく、平和のうちに、穏やかに国民生活を守り抜くことができておりますのは、平和に徹する佐藤内閣の特筆すべき平和外交の功績であります。(拍手)
さらに、永年の懸案であった日韓両国の国交正常化をやり遂げ、小笠原諸島の返還を実現したばかりでなく、ILO八十七号条約の批准、日ソ航空協定の締結にも力をいたし、さらに、アジア、太平洋諸国との関係の緊密化をはかり、一億国民の悲願であった沖繩の祖国復帰という歴史的偉業をついになし遂げんとしておるのであります。戦争によって失われた領土が話し合いによって戻ってくるということは世界史上きわめてまれであることは、世間周知のとおりであります。
佐藤内閣成立して間もなく、総理みずから沖繩を訪問して、沖繩が返らなければ日本の戦後は終わらないと言われて以来、一億国民の悲願を双肩ににない、終始一貫、苦心に苦心を重ね、ついに国民的悲願達成の日を目前に迎えるに至ったのであります。このことは、日米両国の友好親善と相互信頼を外交上の基調としてきた佐藤内閣にして初めてなし得たものであります。(拍手)私たちは、この歴史的成果をすなおに評価すべきものと信ずるのでありまして、沖繩を返せ、交渉には行くな、協定には反対などと、わけのわからぬことは言うべきでないと信じます。(拍手)
不信任提出の理由のうち最も的はずれのものは、日中問題に関する野党の攻撃であります。国連議席問題について国民政府の肩を持ったことがけしからぬと、成田君も仰せになるのでありますが、諸君、おおよそ、外交の基本なるものは、国際信義を重んずるということに尽きるのである。
わが国と台湾にある国民政府との間には、すでに平和条約がある。歴史的にも文化的にも、まことに浅からぬ関係に置かれておる。経済、人事の交流は日々活発となり、わが国からの輸出額は年間すでに七億ドルをこえ、アメリカ、大韓民国に次ぐ世界第三の輸出相手国となっております。在留邦人の数、いまや五千名をこえております。
あの太平洋戦争終結の際、蒋介石総統が、当時中国にあった三百数十万人に及ぶわが同胞に対し、まことに寛大なあたたかい取り扱いをしてくれたことを思い、また、誤った戦争により多大の損害をかけたにかかわらず、わが国の立場に同情のあまり、一切の賠償請求権を放棄してくれたことなどを思い起こすならば、わが国がよその国々と同じような冷たい態度をとり得なかった事情は、心ある人々にはとくと御理解をいただけるものと存じます。(拍手)この重大な国際信義が、はたして成田委員長仰せのごとく、小さい信義として忘れ去られてよいものでありましょうか。私は、政府が国民政府の肩を持ち、国連の議席を守らんとした行動は、国際信義を重んずる佐藤内閣、自由を守り平和に徹する佐藤内閣のとるべき当然の態度であったと信ずるのであります。(拍手)
他方において、わが国と中華人民共和国との正常化は、申すまでもなく外交上の急務であります。現内閣は、去る国連総会に臨むにあたり、中国の国連参加を歓迎し、かつ、安保理事会に加わることにも賛成の態度を明らかにしたのであります。わが党佐藤総裁も、日中正常化については、なみなみならぬ熱意を示しておられるのでありますが、何ぶんにも外交には相手のあることであります。私は、政府が今後とも日中両国の不自然なこの状態をすみやかに解消し、両国の正常化に向かって力強く前進されんことを期待いたします。
最後に一言いたします。内閣総理大臣並びに閣僚諸君、この不信任案は間もなく採決の結果、現内閣は信任されるのであります。国民の名において行なう院議による信任である。内閣諸公は大いなる自信を持たれ、内政、外交に万全を期し、もって国民の負託にこたえられんことを望み、討論を終わります。(拍手)