浅井美幸の発言 (本会議)

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○浅井美幸君 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました佐藤内閣不信任決議案について賛成の討論を行なうものであります。
 昨年七月以来の、ニクソン米大統領訪中発表、中国の国連復帰、ドル・金兌換停止を中心としたニクソン新経済政策、国際通貨危機とその激動から一応のまとまりを見せた通貨の多国間調整、ヨーロッパにおける欧州共同体の拡大、ベルリン協定等、これらの一連の動きは、戦後体制である東西二極構造とアメリカのドル経済支配体制の崩壊を告げるものであり、国際社会の政治、経済の多極化時代が展開されたことを明らかに示しております。
 いまや、世界は新しい秩序づくりに向かって前進を始めております。したがって、いま日本にとって重要な問題は、新しい世界の激動の中で、わが国の位置づけとその進路と体制づくりをしなければならないといろ重大なときが参っております。しかし、今日までのわが国内外の政治を見るとき、これからの日本を佐藤内閣にゆだねるという勇気をどうしても持てないというのが、大多数の国民の心情であると確信するものであります。(拍手)
 アメリカのよきパートナーであると自負していた日本、また、日米安保体制を堅持することを国是であると自認して、沖繩返還交渉を機に、佐藤・ニクソン共同声明で、台湾、韓国の安全は日本の安全にとって緊要であると佐藤総理は合意しました。このことは、日米軍事複合体制の強化を約束するとともに、日米安保をアジア核安保に変質することを積極的に進めてきたことであり、アジアの緊張緩和とはおよそ逆行するものであります。
 さらに、ニクソン・ドクトリンを忠実に実行して、アジアの冷戦構造を崩壊させるどころか、アメリカにかわって日本がその主役をになおうとしているのであります。われわれの強い忠告や反対も押し切って沖繩返還協定に調印し、さらにこれに加え、四次防計画によって軍事力を積極的に強化しようとする政府の姿勢は、平和に逆行するものとして、日本国民はもちろん、アジアの近隣諸国からの疑惑と非難を受けるに至ったのであります。
 特に、アジアの平和と安全のために最も必要な日中国交回復についても、佐藤内閣は依然として虚構の日台関係に執着し、積極的な姿勢をとろうとしないのは、全く遺憾であります。
 佐藤内閣が最も信頼し協力してきたアメリカは、突如、日本の頭越しに訪中計画を発表し、その一カ月後には、新経済政策の発表をいたしました。アメリカは、IMFやガットなどの国際的な体制すら平然と無視し、自国の経済立て直しに非常な高姿勢をあらわしてきたのであります。このアメリカの高圧的態度は、繊維の日米政府間協定の締結という理不尽な要求に発展し、政府はこのどうかつに屈して仮調印をしたのであります。日本の繊維産業界の受けた打撃は想像に余るものがあります。国会の決議を無視し、日本国民の犠牲においてアメリカにあくまでも追随した佐藤内閣の態度は、この一事をもってしても不信任に値するものであります。(拍手)
 一方、国連における中国代表権問題は、これまた、わが党はじめ各野党が理を尽くして、中国国連復帰を実際において阻止する逆重要事項指定、複合二重代表制の不当性について糾弾し、まして共同提案国になるべきではないと注意を喚起したにもかかわらず、それを無視し、アメリカ以上に多数派工作に狂奔し、その結果は惨敗となり、アルバニア決議案が圧倒的多数によって可決され、そして国連は、中華人民共和国政府を中国を代表する唯一の合法政府と認め、国府を国連から追放するという劇的な総会となり、政府が守り続けた二十三年間の虚構の歴史は、動かすことのできない国際世論の潮流によってまさに打ち砕かれたのであります。
 一方、これら一連の佐藤政権の予測を裏切った米国の不当な、また高圧的な態度は、国際社会の激動と変革を背景として沖繩国会の審議が進められ、今日に至っているのであります。その結果、国民の抱く多くの疑惑と不当性を解明、修正もできないまま、沖繩協定特別委員会において採決を強行しましたが、議会制民主主義をじゅうりんした多数横暴は、絶対に許されるべきではありません。(拍手)
 さらに、一六・八八%の大幅な円切り上げは、輸出主導型の経済政策がもたらしたものであり、国民福祉を犠牲にするものであることは実に明らかであるにもかかわらず、政府は、厚顔無恥にも、日本の円の価値が高くなったことを示すものであり、決して政府の経済政策の失敗ではないと佐藤総理が強弁しているのは、いかなる政治感覚によるものでありましょうか。いまになって、おそまきながら、ようやく国民福祉優先の経済政策に転換するなどと言い出していることこそ、いままでの佐藤内閣の経済政策が、国民福祉の犠牲の上に、大企業優先、産業第一主義であったことをみずから示す何よりの証拠ではありませんか。
 総理、七年前に言われた国民生活の安定のためにという公約をあなたがいままでに実行しておられれば、一六・八八%の円の切り上げもなかったでありましょう。また、今日の国民のかかる不満も不安もなく、公害実験国の悪名もなかったでありましょう。また、日本の自然もこんなに破壊しなかったのであります。住宅難も解消していたでありましょうし、国民の心にも大きなゆとりができたでありましょう。ゲバ棒の乱闘もなく、火炎びんや、また爆弾事件もなかった。そして、機動隊のあのものものしい服装や、悲しい犠牲者も出なかったでしょう。調和のとれた資源配分で、GNPの内容も変わっていたでありましょう。GNPが世界第二位になれなくとも、国民福祉は経済成長と調和され、人間性のある政治が国民に意識され、総理も言行一致の名政治家として力強い国民の支持を得られたに違いありません。
 あなたにとってはお気には召さないと思いますけれども、朝日新聞の全国世論調査によりますと、現在の佐藤内閣の支持率は、支持するが二四%、支持しないが五八%、この不支持率はいままでの最高記録を示しております。一方、政党支持のほうでは、議席は本院では三百議席でありますが、もともと、さきの総選挙の得票率は四七・六%、過半数の率を割っております。最近の世論調査によれば、自民党支持率は四二%、野党の支持率はまさに四五%と、自民党よりも多くなっているのが現状でございます。
 政治に大切な条件は、政治は、政治家や政党のためにあるのではなく、国民のためにあるものであり、いかに多くの国民に物心両面の安心と安定を与えるかが、国民の厳粛な信託にこたえる道であり、主権を尊重する道であります。その道を行く情熱、そして、国際社会にあっては平和を追求し、先見性を十分に持ち、また、みずからの政策に責任を持つことであると考えます。したがって、みずからの政策が現実に結果が得られなかった場合は、衆知を集めて政策を正すべきであります。そのために議会制民主主義が存在するというべきであります。
 また、われわれの忠告、われわれの意見を聞き入れず、みずからの予測、方針を確信を持って行なう場合は、その予測に誤りがあれば、みずからその政治責任を自覚し身を引くことが、政治を正すことであると申し上げたいのであります。(拍手)それが政治家としての責任ある行動というべきであります。
 しかるに、政党内閣制における佐藤内閣の国会感覚は、「ともかくも選挙に勝てばすべてが決定する」、このことは、四十四年七月、大学法案の強行採決が因となった佐藤内閣不信任決議案に対する自民党の賛成演説で言われていることばであります。しかし、そのことが、国権の最高機関たる国会運営について自民党の思い上がった姿勢となり、最も衆知を集め、議論を尽くすべき、国運を左右する外交問題においてすら、野党の意見の一分をもはさむことを許さない自民党の体質になっているというべきであります。ここに議会制民主主義形骸化の根源があるのであり、絶対多数に安住して、少数意見を尊重せず、それは、すなわち、野党の背景にある自民党支持者よりも多い国民の存在を忘れた独善的、独裁的態度であるといわねばなりません。
 さらに、その政治責任を言うならば、職権乱用や憲法侮辱、あるいは議会否定、近くは国連軽視の不謹慎な言動によって、多くの大臣が佐藤内閣を追われました。かくも多くの大臣に対し、その責任を佐藤内閣自身が追及しながら、みずからの政治責任を顧みることのないのは、まさに異常な心理といわねばならないのであります。これもみな、最長不倒の記録をつくるための佐藤総理の異常心理でありましょう。まさにこのことに、一将功成って万骨枯るの実際を私は見た感じがする。この点について、私一人がそのように思うのではないと、このように私は確信するのであります。
 私はこの一年を顧みて、内外ともに孤立の政策をとられ、明らかに政策の失敗の集積がこの点についてあらわれているにもかかわらず、その反省もされず、さらに新しい公約で局面を糊塗される総理の厚顔無恥ぶりに、国民はあきあきしているのであります。あまりにも長い道中でありました。それはまた、力ある総理としての存在を証明するためでありましょうか、それとも自民党に人なきゆえでありましょうか、このように国民は思っております。
 すでに、心ある自民党員の中においてすら、退陣要求の声が高まっています。したがって、新しい時代に新しい日本の進路を開くために、平和と国民福祉を軸とした、そして新しい国際社会の平和国家として、大国主義から脱却した日本の政治パターンを確立するために、すみやかに退陣されることをあえて要求するものであります。(拍手)
 以上、総論的に、佐藤内閣不信任決議に賛成する理由を明らかにしました。
 さらに次に、佐藤内閣の七年間はいかに言行不一致、公約不実行の歴史であったかを、総理自身の発言から申し述べたいと思います。
 第一点は、三十九年第一次佐藤内閣以来、本年まで七年の星霜を経ましたが、旧態依然として佐藤総理の所信は何の前進もありません。佐藤総理は、三十九年のその所信表明演説で、池田内閣のとった高度成長のひずみを批判して、あなたは次のように述べております。「このような時期に国政を担当するにあたって、私は、人間尊重の政治を実現するため、社会開発を推し進めることを政策の基調といたします。」さらに、「経済と技術が巨大な歩みを見せ、ともすれば人間の存在が見失われがちな現代社会にあって、人間としての生活の向上発展をはかることが社会開発であります。」「私は、長期的な展望のもとに、特に住宅、生活環境施設等社会資本の整備、地域開発の促進、社会保障の拡充、教育の振興等の諸施策を講じ、もって、高度の福祉国家の実現を期する考えであります。」このように述べられました。ところが、今国会の所信表明演説においても、「経済の成長のあり方を改めて、活力に満ちた福祉社会の建設に向かうことが、基本的な課題であります。」と、七年たった今日においても全く同じことを繰り返して述べ、問題が何一つ解決していないことをみずから認められておるのであります。(拍手)
 さらに、先日の国際通貨調整で、円切り上げ後の記者会見においては、記者団からの、「円の大幅切り上げは日本のゆとりのあらわれと自慢したが、国内では住宅、道路、生活環境整備が立ちおくれ、物価上昇に国民は泣いている」との質問に対して、総理は、「確かにその一面はある、そこで、今度はもっと内政に力を入れ、国内でもほんとうに豊かになった感じを持たせることが政府の責任であり、このための政策に力を入れる」と答えておられるのであります。まさに、この七年間の高度成長のひずみの是正は全く行なわれず、生産第一主義、設備投資、輸出主導型の経済政策の中で物価の上昇はすさまじく、土地価格は暴騰を続け、消費者物価の高騰は毎年五%以上を記録し、四十五年は七・七%と、池田内閣時代では記録しなかった高騰を示し、総理が口ぐせに言ってこられた物価の安定は、ただ口先だけのものにすぎなかったと言うべきであります。
 しかも、総理就任のときに赤字に転落した国鉄財政は、根本的な再建策も推進されず、運賃値上げによる国民の犠牲によってお茶を濁してきたにすぎず、七年間三回の運賃値上げ、さらには、消費者米価のほか、一連の公共料金値上げは、政府主導型物価上昇のパターンをつくったのであります。
 また、保険医総辞退の紛糾まで引き起こした医療保険制度の抜本改正の怠慢さは、常に国民負担においての安易な解決策を求めるのみであり、全く政府の無策といわざるを得ないのであります。
 こうした中で深刻さを加える産業公害、さらに、ごみ戦争の新語を生んだ都市廃棄物の中で、住宅資本ストックの水準は欧米の二・五分の一ないし六分の一であり、国民の住宅難はいまだ解決の糸口さえも見つからないのが現況であります。また、都市公園は、欧米の四分の一ないし五分の一の面積でしかない。公共下水道普及率は、東京区部においても五〇%に満たない等々。さらに看過できない問題は、年間一万六千数百人を数える死亡者、百万人近い負傷者を出している交通事故、年間六千人をこえる労働災害死亡者、火災死亡者の急増、天災、航空事故の惨事等々、GNP至上主義のもとで現出した悲惨と国民生活の苦悩は、限りないものがあるのであります。
 政府が誇らしげにいう繁栄が、国民不在の政治で進められてきたこの実態は、七年前に総理就任の際の所信表明とはあまりにもかけ離れたものとなりました。いままた国の盛衰を分かつ重大な局面で同じことばを繰り返す胸の中で、はたしてみずからの責任を総理は反省するものがあるかいなか、私は聞きたいのであります。
 その第二点は、対米追随姿勢であります。米中接近を頭越しにされようが、強圧に屈した繊維の日米政府間協定であろうが、沖繩返還協定並びに関連法案の内容が、日米安保、佐藤・ニクソン共同声明、さらに久保・カーチス取りきめ等々、四次防計画強行というラインの中で、日米軍事複合体制を至上方針として、沖繩の公用地強制収用法案のごとく、憲法解釈を独断しての違憲のかたまりといわれる法律を立案しようが、アメリカにさえすがっておればよいという政府の姿勢に、われわれは全く納得できないのであります。そのために、国民としての権利を抑圧されることもやむを得ないとする佐藤総理のアメリカに対する誠意が、今後の日米関係をいよいよ緊密にするとする考えがあるとすれば、それは大きな間違いであります。その間違いの第一は、すでに繊維、中国、円の切り上げでも明瞭であり、その第二は、国民感情を忘れた外交姿勢をありありと見せつけているということであります。
 アメリカのうしろについていて、国際情勢が見えるわけはありません。周総理への保利書簡を美濃部都知事へ託して失敗したことも、そうした結果にほかならないといわなければなりません。国家指標も持たず、みずから平和の道を切り開く情熱もなく、しかも、対米追随の中で孤立政策をとっている限り、かえって、アメリカ政府と国民からも対等の独立国としての信頼をなくし、依然として経済大国として国力、国情に応じた軍事力強化政策を強行する限り、すでに戦後の冷戦構造が組みかえられる中で、アジア諸国からの脅威の的となるのは当然というべきであります。同時に、経済大国主義のもとで軍事力増強を推進するならば、国際経済社会において再び円の切り上げを要求されることは必至であります。
 第三点は、対中国姿勢において、いまだに虚構の日台関係の亡霊に取りつかれる硬直姿勢であり、日台条約を結んだ吉田首相のダレスあて書簡も、日台条約締結の意図も、その本意は台湾を中国の代表としていないことは、その地域限定から見ても明らかに読み取れ、今日あることは予測した上のことであったことは、いままで指摘したとおりであります。
 また、いわゆる吉田書簡の日中貿易輸銀利用の停止も、とりあえずその年のものであり、その後輸銀利用停止を継続してきたのは、ほかならぬ佐藤総理であります。日台条約が虚構の歴史に基づくものであったことは明らかであり、中国の国連復帰、国連からの国府追放は、国際世論から、日台条約の不当と廃棄さるべきことを意味するものであります。にもかかわらず、日台条約の廃棄に断を下し得ない佐藤総理には、もはや日中国交回復の意思はないと断ずる以外はないのであります。(拍手)その奥にあるものは、長期にわたる大陸侵攻と誤った戦争と敗戦の事実に対する反省があるやいなやと、疑いを持つものであります。
 以上、私は、佐藤内閣七年のよって来たる失政の姿と無責任さのごく一部を見ただけでも、もはや今日の重大な局面において政権担当の資格なしと断じ、すみやかなる佐藤内閣総辞職を迫るものであります。
 以上をもって私の賛成討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 106705254X02719711224_026

発言者: 浅井美幸

speaker_id: 32206

日付: 1971-12-24

院: 衆議院

会議名: 本会議